消す黄金の太陽、奪う白銀の月   作:DOS

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ヒノ「今日は私の能力が初公開だよ!皆応援してね☆」
ゴン「ヒノの能力ってどんなの?」
ヒノ「ん~、(念を知らない)ゴンに分かりやすく言えば、防御無視の貫通攻撃、みたいな?」
キルア「なんだそれ最強か!?」
ヒノ「もうちょっと詳しい事は1話の最後の自己紹介文を見てね!」



第7話『ベテランには容赦無しで』

 

 

 

 

 

 ネテロ会長が私達に提案した、『勝ったらハンターの資格がもらえるよゲーム』!

 

 ルールは単純明快、ネテロ会長が持つボールを制限時間、次の三次試験会場に着く前に奪い取れば勝利。挑戦者側はどんな攻撃をしようと自由、ネテロ会長からの攻撃は一切無しで避けるのみ。まさにシンプル・イズ・ベスト!

 

「いっけぇ、キルアー。相手を老人だと思うなぁ~。ぶちかませ―。もう別の生物と思っていったれー」

「棒読みなのに意外とひどい事言ってる!?ヒノ、ネテロ会長に恨みでもあるの!?」

「んな事言われなくても、じーさん相手に無茶はしねぇよ」

(ま、あながち的外れの助言(?)というわけでも無いのじゃがな)

 

 もはや念能力者は別の生物だ!って、昔聞いた事があるよ。あ、でもそうなると私も違うのか。………それはいいとして、方針としてはガンガン攻めろって感じで行けばいいと思うよ。

 

「ただとるだけでいいんだよね。じゃあいくよ」

 

 開始と同時にはキルアは、何人にも見える移動を開始した。

 あれは、確か足運びに緩急をつけ、自分の残像を相手に見せるテクニック、肢曲。まあ、ネテロ会長を見てるとあれくらいじゃ捕まらなさそうだけど。

 

 キルアの先手を皮切りに、動いてはボールに手を伸ばし、避けられて、再びボールに手を伸ばす。念を使える使えないという事以前に、ネテロ会長の身体能力は文字通り怪物っぽいね。それが念も使える物だから、素早さや体力だと今のキルアより断然上っぽい。

 

 だんだん煮え切らなくなってきたのか、先にネテロ会長の動きを止めるべく、キルアはボールを取ると見せかけて、ネテロ会長の軸足を攻撃した。しかも向う脛、弁慶の泣き所という、人体の弱点の一つ。………けど、

 

ガッ!!

 

 キルアによるネテロ会長の軸足を攻撃―――キルアに120のダメージ!

 念の、しかも【凝】でガードするなんてネテロ会長、非念能力者しかも子供相手にそれはないでしょう。まあガードしないと足痛いもんね。ていうかあの威力だったら常人なら足が砕ける。両方。

 

「いってぇーー!!」

 

 あー痛そうだなー。あっ、キルア戻ってきた。

 

「鉄みたいだぜあのじーさんの足。ゴン、タッチだ!」

「よーし次はオレだ!!」

「頑張ってね」

 

 次は、ゴンかぁ。これも見ものだね。取るのは難しいだろうけどね。

 

「いくぞ!!」

 

 まずは正面突破の全力ダッシュ!!か~ら~の~?ハイジャンプ!!いや高く飛びすぎだよ!そのまま頭天上にぶつけたけど大丈夫かな?

 

「ってぇー!!」

 

 あ、普通に痛かったみたい。

 

「ジャンプ力がすげーのは分かったからちゃんと加減して飛べよゴン」

「せっかくネテロ会長の意表ついたのに」

(全くじゃ)

 

 今のは会長も確かに油断してたけど、まあゴンらしいと言えばゴンらしいけどね。さて、油断の無くなった会長相手に、どこまで行くのか。

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 暫くして、キルア同様にゴンが疲れ始めた頃。

 

「次、ヒノどうする?」

「そうだね。もう少し傍観してようかな」

「そうかい。これではラチがあかんし一度にかかってきてもよいぞよ」

 

 ネテロ会長、挑発とはこれまたずいぶんと余裕ですな。

 これによりゴン&キルアVSネテロ会長!!これは見ものだね。ちなみにこの戦いはビデオで撮ってます。まあビデオと言っても携帯のだけどね。記念記念♪

 

「フォッフォ。疲れのせいか攻撃が単調になってきとるぞ」

「とりゃ!!」

 

 掛け声と共に、繰り出したゴンの下から顎に向けての蹴りをネテロ会長は少し後ろに下がるだけで軽く避ける、と思ったが、ゴンは靴を脱いで指に挟んで蹴りだし、リーチを伸ばして尚且つ、最初の蹴りから遅れてネテロ会長の顎にヒットした。

 

「汚なっ!!靴をぬぎ蹴りの間合いを伸ばしよるとは………」

 

 そうネテロ会長が言ったと同時、後ろからキルアが隙だらけだとばかりに蹴りを入れる。確かにゴンの予想外の攻撃にネテロ会長は、思わず背後からの攻撃を受け、そしてネテロ会長が球を離したのでキルアがボールに飛びつく。

 

「チャンス!!」

「なんの」

 

 負けじとばかりに、ネテロ会長は左手で地面を支えて逆立ちの要領で後ろで滞空していた球を蹴り、キルアから離した。

 

「あぶないあぶない」

 

 再び球を手に取ろうと思ったら、今度はゴンが先ほど脱いだ靴飛ばして球にぶつけ、さらにネテロ会長から弾き飛ばした。中々にうまい連携プレー。

 

 今ならネテロ会長より、ゴンとキルアのほうが球に近い。

 

「もらったぁー!!」

「ふん」

 

 ネテロ会長は右足に力をこめて踏み出し一瞬にしてゴンとキルアを抜いて球をその手に戻した。

 うわー、床に足の跡がくっきりと。ていうか、今のも念を使用した一手。案外ネテロ会長も負けず嫌い、というか絶対勝たせるつもり皆無でしょ。

 

「……やーめた。ギブ!!オレの負け」

「なんで?まだ時間あるよ!今のだってもう少しだったしさ」

「そりゃ、ネテロ会長右手と左足ほとんど使ってないからでしょ」

 

 ま、それでも本気の本気で何でもやるつもり、ていうならまだ善戦できるかもしれないけど、やっぱりとれるかは微妙だね。

 

「行こーぜ、ゴン、ヒノ」

「あ、おれもうちょっとやってくよ」

「………お前俺のいう事聞いてたか!無駄!絶対ボールなんかとれっこ無い!」

「うん、ボールはいいからさ、まだ時間あるしそれまでにネテロさん右手くらい使わせてみるよ」

「なんか趣旨変わってない?」

「………はぁ。オッケー、頑張りな。俺先に寝るわ。ヒノはどうする?」

「ま、せっかくだし最後まで見ていくよ」

 

 若干不機嫌、というか消化不良のままで、キルアは帰り、そのまま最終ランド開始。それゆけ、ゴン!

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 結果的にゴンはネテロ会長に右手を使わせるのに成功した。ゴンがネテロ会長の腹に頭突き攻撃。しかしネテロ会長は力を込めた腹は鉄のように硬く、キルアの時の二の舞でゴンの頭のほうにダメージ。

 

 が、懲りずに同じ戦法をしたゴンに、流石に二回目も腹に頭をぶつけさせるのはまずいかと思ったネテロ会長は、左手はボールで埋まっている為〝右手〟でゴンを飛び越えて頭突きを躱した。勢いよく壁に頭をぶつけたが、ゴンは右手を使わせて満足かそのまま寝てしまった。まあぐっすり寝て回復してね。

 

 

「さて、結局お主はやらんかの?わざわざ一人になるまで残ったと言うのに」

 

 

 まあ確かに、ネテロ会長同様に念というアドバンテージがあるから、二人の見える所では積極的にボールゲームに参加しなかった、というのも少しあるけど。

 ………………んー?どうしよっかな。

 

「ネテロ会長。こちらから攻撃してもそっちからは攻撃しないよね?」

「うむ………まあそう言ったからのぅ」

 

 よしっ。一泡吹かせてみようかな。怪我しても問題ないみたいだしね。

 

「じゃあ少しお願いしますね、ネテロ会長」

「ふむ、かかってきんさい」

「【硬】!」

「ぬわああぁあっとおぉう!?」

 

 ふむ、やっぱり避けられた。まあ一発で沈むとは思ってなかったししょうがないかぁ。さてと、次はどうしようかな。今度はフェイントを混ぜながら―――、

 

「いやいや、何冷静に次の作戦思考しとるんじゃ!いきなり【硬】て、下手したらわし夜空のお星様になっておったぞ!?」

「でもルールには牴触してないし、怪我は全部自己責任って事で」

「お主意外とひどいのぅ………言っておくがこのゲームわしからボールを奪ったら勝ちじゃぞ?わしを倒すゲームじゃないぞ」

「同義語でしょ。ネテロ会長が倒れる=ボールゲット♪ほら」

「お主やっぱりかなりひどいのう」

 

 瞬間、ネテロ会長がしゃべり終わる一言手前のタイミングで、地面を蹴り、そのまま足の裏をネテロ会長の顔面に突き刺した。………と思ったけど、海老反るようにネテロ会長は器用に避けた。なので、そのまま空中で回転し、踵落としを食らわせた。

 

ドン!

 

 そう思ったら、足が弾かれた。よくよくと見てみれば、ネテロ会長は左手のボールを間に差し込み、私の攻撃をボールで受け止めたみたい。ボールには弾力があるから、逆にはじきとばされちゃった。

 

(思ったより早いのぅ。まだ本格的に念を使っていないのに、正直予想以上じゃ………)

 

 多少の速度を出しつつ、翻弄するように動く。スタイルとしては、私の場合は相手を翻弄する方が性に合っているみたいだし、正面突破はあまりしない。けど今回はネテロ会長からの攻撃は一切無いって事らしいし、思う存分無謀な動きもできる。

 

 たまに念の攻撃も混ぜれば、流石にゴンやキルア達と同じように片手片足は難しいらしく、ネテロ会長も両手両足を使って逃げざるを得なかった。

 

「ほほぅ!よく動くのぅお主。一体どこで念を教わったんじゃ?」

「企業ひーみつ♪」

(末恐ろしい子じゃのぅ。この年齢でこの力。単純な身体能力も正直おかしいとしか言えんし、一体念を覚えてどれくらいなのやら………というか本当に人間か?)

 

 ボールに手を伸ばして取ろうとしたり殴ったり蹴ったりして動きを封じようとしたり、いろいろとしてみたけど、まーやっぱりあまり効果はないみたい。流石に【硬】は最初の一回以外は使ってないけど、このままやってもラチがあかないみたいだし、どうしよう。

 

 

 

 

 

 

『その能力は結構危険だから使っちゃダメだぞ』

 

『じゃあだれにならつかってもいいの?』

 

『そうだな………ネテロとか?』

 

『それだぁれ?』

 

『知り合い。強いから何があっても問題なし。他にもあいつとかあいつとかあいつとか」

 

『ぜぇんぶ、おぼええらんないよ』

 

『じゃあもう少し分かりやすく、相手が念を使えるのは最低条件だ』

 

『うん!』

 

『まあ、後は念の扱いがベテランに限るな。必殺技を持ってるくらいには』

 

『ひっさつわざぁ?」

 

『まあ後は状況によって使い分けるのはいいが、あまり使っちゃだめだ。下手したら、人なんて簡単に死んじゃうしね』

 

『わかったぁ!』

 

 

 

 

 

 ふと、そんな会話が頭の隅を過った。そういえば、あの約束ネテロには使っていいって言っていた気がするね。あのネテロがこのネテロ会長と同一人物かは知らないけど。まあ同じ名前の人は知らないし、相手は念のベテランだから―――別にいいよね?

 

 ただの【凝】ではなく、私は右手に先ほどの数十倍の念を一瞬で込めて、消化した。

 

 

消える太陽の光(バニッシュアウト)】!!

 

 

見た目はただの【纏】と何も変わらないけど、今の私の右手には〝ちょっと特殊な念〟が纏われている。

 

(………なんじゃ?ただの【纏】なのに、この感じ。ううむ、わしの直感じゃか、なぜかやばいような気がする。しかし能力を使った様子はなさそうじゃし―――)

 

 一瞬訝し気たようなネテロ会長だが、私はそれを好機と見て、一瞬の内に正面から近づき、ボールを取るフェイントを一度入れ、右手を掌底にしてネテロ会長の腹へと一撃いれた。

 

「―――ていっ!」

「ぐぬ!?」

 

 予想外の打撃を喰らったかのように、ネテロ会長はただの掌底に表情を歪めた。この程度の攻撃なら余裕で受けられる、そう高を括っただけに、驚きは倍だった。思わず左手のボールを離しかけたが、ぎりっと奥歯を噛みしめてボールを握る手に力を籠める。

 しかしそれで威力が減衰できるわけでもなく、床から足を浮かせて壁まで吹き飛ばされた。

 

 

 ………やりすぎちゃったかな?もしもこれで会長病院送りとかになったら私なんか処罰とか受けるのかな?いや、その時はありのままを話そう。きっと自業自得で済むはず。

 ちなみに私の右手は、すでに普通の【纏】に戻っている

よ。

 

 壁際まで吹き飛ばされたネテロ会長だけど、そこでダウンせずに、壁を蹴ってくるりと回転し、身軽に着地した。無論、その手にはボールが握られたままだった。

 

「ふー。今のはかなり効いたぞい」

「それにしては随分と平気そうだね」

「ちょっと聞きたいのじゃが、今のは一体なんじゃい?わしは確かに【凝】でガードしたんじゃが」

「企業秘密」

(やっぱり教えてはくれんか。しかし今のは本当に効いたのう。腹がちょっとまずいことになっとる)

 

 油断していたとはいえ、攻撃のタイミングで半歩後ろに下がることで威力を軽減、それにさりげなくボールを私の腕にこすらせるようにしてさらに軽減。インパクトの瞬間に念を消されたのを感じて威力軽減に努めるとは、衰えてもハンター協会の会長は伊達じゃないね。

 本来ならこのまま追撃でも仕掛けたい所だけど、ふと時計を見てみると………5時!もうこんな時間。

 

「ネテロ会長、もう5時だし私は一抜けで」

「む?そうかい………あー、確かヒノと言ったな。お主苗字は何と言ったかのぅ」

「?ヒノ=アマハラだけど………」

「ふむ、そうか。いやすまんな。ゆっくり休んでくれ」

「はーい」

 

 少しだけど能力も使っちゃったし休まないと。もうちょっとやりたかったけどまあ今回はハンター試験受けに来てんだし我慢しよう。ゴンは寝てるし、後はネテロ会長に任せようっと。

 

 私は部屋を出てシャワーを浴びてから眠りについたのだった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 ネテロは、疲れて眠っているゴンを一先ず空いている部屋に寝かせてきて、自分以外誰もいなくなり、静寂に包まれたボールゲームの部屋で、一人佇んでいた。ちなみにボールの上で器用に座禅を組んで、微動だにせずに座っている。

 

 飄々とした態度を崩し、顎髭を弄りながらネテロは一人、先程ゲームを行った一人の少女の事を考えていた。

 

(さっきのわしの腹への一撃。【凝】をしていたのも関わらずに念を突き抜けてきた。というよりは、わしの念が()()()()?いや、そんな馬鹿な)

 

 ありえない、そう思い己の考えを払拭する。他者の念に直接的に干渉するような能力など、聞いた事が無い。せいぜいが操作系の能力で相手を操り、同時に相手の念も操る、というのがおよそ一番想像しやすい部類だろう。最も、念の能力は千差万別、一概に無いとは言い切れないのだが………。

 

 攻撃を直に喰らったネテロにとって、喰らった事の無い異様な一撃。そして気になるのが、彼女の名前。

 

 ネテロは、ある一人の人物の顔を思い浮かべた。

 

「ヒノ=アマハラ。アマハラ、か。という事は、あ奴がシンリの育てたと言っていた子なのかもしれんな………」

 

 誰もいない部屋の中で、一人ネテロの呟きだけが、空気に溶け込むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 




いつかネテロ会長との本気ボール取りゲームとかしてみたいね。

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