アクア様をほんのちょっとだけ賢くしただけ   作:圏外

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バカと転生と謎の加護

 

「……はぁ」

 

 佐藤カズマは、現在アクセルの冒険者ギルドの酒場で一人ため息を吐いている。

 

 カズマは転生者であり、この世界を救うべく女神アクアによってこの世界に送り込まれた。

 

 このため息は、まさにその女神アクアに対するものだ。

 

 だが、当のアクアは今この場所にはいない。

 

「……チッ……」

 

 周りを見渡す。冒険者たちが酒盛りしていたり、給仕が酒を運んでいたりする。その種族や在り方は十人十色、まさに異世界。まさに冒険者ギルドといった風景。

 

 だが、カズマと目が合いそうになった彼らは、その全てがあからさまに目を逸らす。

 

 まるで、『どうあってもカズマと関わり合いにだけはなりたくない』といった風に。

 

「なんで、なんで俺はあんな奴を……大事な大事な一度しか選べない転生特典なんかに……っ!」

 

 悲壮感あふれるその姿は、見るもの全ての同情を誘うほどのものだった。

 だが、全員が全員目を逸らしている為にその姿に同情した者はいなかった。

 

「……」

 

 死んだ目をしたカズマは、もう何度も、嫌という程確認した自身の冒険者カードを見る。

 

 そこには、今やこの街の住人ほぼ全てに知れ渡っている—————ある呪いが刻まれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カズマが異世界に旅立つ少し前の事。

 

 それは、転生の間(仮)での出来事だった。

 

「じゃあ、あんたで」

 

「……今なんて言った?」

 

 なんやかんやで転生特典として選ばれたチンピラ女神は転生用魔法陣に引きずり込まれ、佐藤カズマによって剣と魔法の異世界に持ち込まれる。

 

『女神ならその神パワーとかで、精々俺を楽させてくれよ!』

 

『いやぁーっ!こんな男と異世界行きなんて嫌ーっ!』

 

 そして、連れてこられたはいいもののそのステータスとは裏腹に、問題を起こし続けてカズマに迷惑をかけていく……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ————だが、アクアはほんのちょっとだけ賢かった。ずる賢かった。

 

『…………どっせーい!』

 

『……えっ』

 

 なんと、女神らしからぬ力強い叫び声と共に、アクアはスポーンとマヌケな音を立てて魔法陣から飛び出てしまったのである。

 

 これには、アクア亡き後ちゃっかりその後釜に収まろうと目論んでいた後輩女神もびっくり。

 

「えっ、ちょっ⁉︎いったいどうやったんですか⁉︎て言うか、それ抜け出せるものなんですか⁉︎」

 

「コレってたしかアレでしょ?ほら、旧式の対象以外は入れないし抜け出せない奴。

 それなら神気を2つに分けて、私の神格をちょちょいーっと『水の流動性』の能力で弄れば勝手に異物認定されて弾き出されて、結果的に抜け出せるわよ?」

 

「はぁ⁉︎これまだ旧式だったんですか⁉︎」

 

『えっ、えっ?なにどういうこと?』

 

 カズマは気づいていないが、カズマの横にはアクアの姿をかたどった青色の光がふわふわと漂っている。それは徐々にほつれて、周りの空気に同化しようとしていた。

 

「残念だったわね!このタイプの魔法陣なら何度も抜け出してきたわ!主に飲み会後に器物破損で牢屋に入れられそうになる時に!」

 

「そ、そんな事やってたんですか……いや常習犯だって話はよく聞くんですが」

 

「まぁ、そのせいで天界の輸送用の魔法陣は改造されちゃったんだけど……あんたみたいなポッと出の新卒は知らなかったみたいね!

 …さーて、この落とし前はどうつけてもらおうかしら?」

 

 アクアは後輩女神ににじり寄る。いじめっ子がいじめられっ子を見つけた、と言う言葉がひどく似合う顔だった。

 

 女神っぽさはカケラもなかった。

 

 後輩女神は冷静になり、顔面蒼白になった。そして逆に笑顔になった。

 

 顔面蒼白でも、彼女は女神っぽかった。

 

「えーっと……し、失礼しましたーっ!」

 

「あっ、こら!待ちなさい!」

 

 そのまま、2人の女神は消えてしまった。天界とやらに向かったのだろうか。

 

『……俺の転生特典ってどうなんの?』

 

 そんなカズマの哀しい疑問に答えるものか居るわけもなく、旧式と言われた魔法陣はアホの女神に認識を騙されたまま正常に作動する。

 

 そうして、カズマは一人で異世界に放り込まれることになった。

 

 

 

 

 だが、アクアは知らなかった。所詮はアクアなので知っているはずかなかった。

 

 アクアが指名されたからと言って、何も本体が転送される必要はなく。

 髪の一本、加護の1つでも与えれば。

『女神アクア』と名のつく物を与えれば。

『転生特典:女神アクア』は成立したと言うことを。

 

 今回の魔法陣は、今までアクアが抜け出してきたそれとは全くの別物であることを。

 

 今までは単に護送用だった為、本人が結界内部から居なくなるとエラーを起こして動作を停止していたことを。

 

 だからこそ2つに分けた神気が直ぐに元に戻り、なんの異常も起こさなかったことを。

 

 正常に作動した魔法陣は、ちゃんとアクアの神気を異世界に持っていっていることを。

 

 アクアは知らなかった。

 

『力をふたつに分けた』ことが何を意味するかということを—————!

 

 

 

「……えっ?」

 

 その意味をアクアが知ったのは、職務放棄して追いかけっこしていた事で上司に捕まり、後輩女神共々叱られていた時だった。

 

「」

 

 その後、()()()()()()アクアは、あえなく左遷されたらしい。

 

 そして、その半身たるアクアの神気は、魔法陣の結界内部で空気に溶けて居場所を失い、『もうこの際なんでもいいや』とでも言うように、近場の器に入り込んだ。

 

 言わずもがな、一人ぼっちで呆然とするカズマの身体に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、現在。

 

 サトウカズマ。

 

 職業『アークプリースト』

 

 状態異常『女神アクアの加護(特大)』

 

 




・全ステータスに高度の上昇補正が発生します。

・アークプリースト以外の職業の選択が不可能になります。

・以下のスキル、及び特性を習得します(なおスキルポイントを消費します。不足分は、今後スキルポイント習得時に随時天引きされます)
スキル
【花鳥風月】
【水系魔法使用可能】
【セイクリッド・クリエイトウォーター】
特性
【浄化・大】
【芸達者・大】
【下級アンデッド寄せ】
【不運】

・知力ステータス、幸運ステータスに関しては低下補正が発生します。

・アクシズ教の信者に対して『女神アクアの加護(特大)』の情報の開示が発生します。

・アンデッド、悪魔へのネガティブイメージが付与されます。

・女神アクア以外への信仰は受け付けません。

・この加護は無効化されません。

・この加護は封印されません。

・この加護を奪うことはできません。

・この加護は破棄できません。

・この加護は他者へ移すことはできません。

・女神アクアの祝福を得ることができます。
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