最強系?
オリジナルIS
セシリア戦がこんなだったらとか思い浮かんだので
「それじゃあ、ちょいといってくるか」
頑張ってこいよと言う一夏に手だけ軽く振り、九十九は発進ゲートにゆったりと歩いて行った。
「あ、あの。織斑先生。九十九君、制服のままでしたよね?」
「ん?あぁ、そうだな。だが問題ないだろう、アイツなら」
心配からオロつく真耶の肩を軽く叩いて千冬はモニター前に陣取った。
アリーナ上空でISを展開して滞空していたセシリアは、軽く目を閉じながらも自身の肉体面精神面、機体面での最終チェックに余念がなかった。
いくら相手がISを動かして間もない素人だとはいえ、イギリスという国を一部を背負う代表候補生なのだ。万に一つ、億に一つの敗北があってはならない。
ザワッ
観客にざわめきが走ったことで相手の登場を認識したセシリアは、ゆっくりと目を開け、そして絶句した。
ISスーツに着替えるでもなく、制服のままの姿で、そしてISを展開もせずに模擬戦用発進ゲートの淵に、地上3メートルを軽く上回る場所に九十九は立っていたのだ。
セシリアが声を発しようとするより早く、九十九は生身で地上に飛び降りた。
「なっ?!」
観客席から響きだす悲鳴より先に、救助に向かおうとセシリアが動き出すよりも先に、九十九のISが展開の輝きを見せた。
ふわりと音もなく着地したその姿は、漆黒の道着であった。
詳しいものが見たらすぐわかることではあるが、脚甲、手甲に細い鎖の帷子も合わせて展開されている。
そして一番目を引くのが深紅の鉢金。金属部も布部も同色で、布の遊びが腰まで垂れている。
「IS…、だというのですか?ソレが」
「展開光をみただろう?これが俺の専用機『夜燕』だよ。さあ、はじめよう。戦の時間だ」
間を置かずに響いた開始の号令に、両者の動き出しは同時だった。
前方に駆け出した九十九と、進行方向を予測したセシリアの狙撃。そしてセシリアは自身の勝ちを半ば確信した。九十九が回避に飛行を使わなかったからだ。
見た目である程度予想はしていたが、九十九のISには飛行機能はないのだろう。
地上を走りまわる九十九に、上空を不定軌道飛行しながら狙撃をしつつ、戦況を見定めた。
「これ以上は無意味ですわ。飛行出来ないあなたではわたくしに勝つのは不可能です」
狙撃を中断したセシリアが九十九に降参するように告げる。
「おいおい。おいおいおいおい。馬鹿を言っちゃぁいけない。現状は五分五分だぜ。お前も俺も傷の一つも負ってないんだ」
同じく動きを止めた九十九がセシリアを小馬鹿にしたように反論した。
「それにだ。飛べないってのと、空で戦えないってのは、イコールじゃねぇなぁ」
瞬間。九十九が駆けだす。しかしそのスピードは先ほどまでの比ではない。傍から見ると黒い塊が赤い線を引きながら駆け抜けているようにも見える。アリーナの外周にそった走行軌道を取っていた九十九が、スピードを一切緩めず、壁を駆け上がり、ドーム状の防御壁をも駆け抜けた。
『はぁっ?!』
観客席からの驚愕の声も気にせず、九十九は走り抜け、セシリアは撃ち落とさんと狙い撃つ。
セシリアとの距離が近くなったタイミングで壁を蹴り、ついに二人は近接接敵を果たした。
ふわり
先ほどまでのスピードが嘘のように柔らかい動きでセシリアの構えた狙撃銃の上に九十九は着地した。
(軽い?)
しゃがみ込むような体勢で着地した九十九の重量が手に伝わらないことで、刹那の疑問が頭をよぎる。疑問は戸惑いに、戸惑いは隙に。そしてその隙は近接戦において充分過ぎる時間である。
狙撃銃にスピードのプラスされた九十九の体重が乗っかってきたのだ。
着地したように見えていたが、九十九は壁を蹴ってから接敵するまでに、あえてゆっくりと体を動かすことで、柔らかい動きで近づいたように見せ、銃に着地する直前であたかも着地したかのような動きをして見せたのだ。
セシリアの、人間の脳を騙すために。
70kgそこそこの九十九の体重に壁を駆け上がることができるほどのスピードが加わると、自動車事故さながらの衝撃が発生する。
構えていた銃に真上からその衝撃を受けたことで、前のめりに体制が崩れた。
(まずいっ!)
ためらうことなく銃を手放したセシリアの左肩に衝撃が走る。空中で体勢を変えた九十九に蹴り落とされたのだ。いくら見た目が生身であっても、ISであることに変わりはない。九十九から放たれた打撃はセシリアを地面にたたきつけた。
(エナジーはまだ大丈夫!)
半分以上削られてしまったゲージから一瞬で視線を切り、両手に使い慣れない拳銃を展開し、同時にブルーティアーズも周囲に展開する。
「ちっ。さすがは代表候補生。態勢の立て直しが早いな」
着地した九十九に拳銃の照準をきっちりと合わせたまま、セシリアは隙を見せないように立ち上がる。
「壁を走るだなんて非常識ですわ。礼儀的な意味合いではなく、人間の固定観念的な意味で」
「戦なんて常識にとらわれた方が負けるもんだろうが」
「なるほど、至言ですわね」
常識にとらわれた方が負ける。その言葉にセシリアは一つの答えを得ていた。
広がる様に展開していた4機のティアーズから唐突にビームが発射される。
「おい、そんな見え見えの不意打ちぃっ?!」
まっすぐ飛んでくるビームをよけようとした九十九の目の前で、『ビームが曲がった』
「っつー。ビームが曲がるたぁどういうことだよおい」
「あら。常識にとらわれた方が負けるのでしょう?」
毒づく九十九に、セシリアは淑女然と微笑んだ。
「あぁくそ。これは一本取られたな。たった今俺が言ったばっかじゃねえか」
「えぇ。あなたのその言葉があったからこそ、私は私の中の壁を越えることができました。感謝を」
セシリアは膝を軽く曲げるだけの略式のカーテシーで感謝を示した。
「よーしよし。じゃぁ続きと行こうじゃないか」
「ですわね。踊ってくださる?ジェントルメン」
「いい曲を奏でてくれるなら、いくらでも」
4機のティアーズからビームが、2機のティアーズからミサイルが、そして手持ちの拳銃2丁から弾丸が九十九を封殺せんと襲いかかる。
しかしそのことごとくをしゃがみ、跳び、転がり、身をひねり、果ては脚甲手甲で軌道をそらし、弾くことで九十九は距離を詰めきる。
セシリアはティアーズ全6機の集中砲火で九十九が大きく回避動作を取った隙に拳銃のリロードを行い、間髪いれずに九十九に照準を合わせた。
1m程の超至近距離。力みなく向け合った拳と拳銃。二人はたがいに笑みを浮かべた。
「フィナーレですわね」
「良い舞曲だった」
セシリアが引き金を引くよりコンマ数秒早く、九十九がその身を深く沈め拳を突き出した。
(そこっ!)
引き金を握りこむのとほぼ同時に、セシリアは体をひねり拳を回避する。そして九十九へその拳銃を向けた。
はずだった。
そこに九十九の姿はなく、自身の腹部に添えられた拳の圧力を感じた。
「これにて幕引き。強襲術『燕返し』」
腹部への衝撃が残りのエナジーを削りきったのを確認して、セシリアはそっと目を閉じた。
あぁ、戦闘シーンなんて書けないとつくづく実感する。
オリ主物って書いてみたいけれど、構想をしっかりと練らないとストーリーが破綻しかねないので苦手です。