ガンダム・フレームアームズ・ガール   作:不動ユーゴ

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グシオンとフラウロス その1

 バルバトスが皐月の部屋に来た明くる日のこと。皐月はバルバトスに公言した通り、近所の家電量販店でニッパーを買ってきて、ついに装甲パーツを完成させた。作成の途中、組むパーツを危うく間違えそうになり、バルバトスにプンスカ怒られて指摘されることも数回あったが、無事に終わったのだ。

 

「よ〜し。作り終わった!」

 

「サツキ、頑張った。お疲れ様」

 

「えへへ、ありがと、バルバトス。それで、これを装備して誰と戦うの?」

 

「それは、私以外のフレームアームズ・ガールとだ――」

 

――――ピンポーン

 

「……ん、また宅配便かな。取ってくるよ」

 

 会話の途中だったが、インターホンが鳴り、皐月は玄関の方へ向かう。外には、彼女の予想通りドローンによって運ばれてきたダンボールの荷物が二つ、積み重なるようにして置かれていた。バルバトスがやって来たときと同様、宛名が書かれていなかったため、まさか?と思う皐月だったが、とりあえず二つのダンボールを持ち上げ、部屋の中へと運んで行った。

 

「中身は、なんだ?」

 

 入って早々、バルバトスは興味津々で皐月に訊く。

 

「それは私にもわからないや。けど、とりあえず開けてみるよ」

 

 ただ、皐月自身もその中身が(予想はついているが)はっきりとわからなかったため、開けようとしたその時だった。そのダンボールは皐月もバルバトスも手を触れていないにも関わらず、一人でに勝手に開いたのである。突然のことに皐月は呆然としていると、ダンボールの中からは小さい何かが出てきて、そして言葉を発し出した。

 

「はじめまして、私はグシオンです。本日はバルバトスと戦いに来ましたので、どうぞよろしくお願いします!」

 

「……フレームアームズ・ガールが入ってるんじゃないかとは思ってたけど、まさか勝手に動き出すなんて。……って言うか私、バルバトスと戦うって、具体的にどうするとか、目的とかいまいちわかってないんだけどね」

 

「あっ!すみません、すっかり忘れてました。その説明がまだでしたね」

 

 まだ、戦闘について理解していなかった皐月にグシオンは頭を下げてから、箱の中から手紙のようなものと鍋敷きに似た台座を取り出した。

 

「コホン、花谷皐月さん。まずはじめに、あなたの元に届いたバルバトスについてですが、ファクトリー・アドバンスの手違いで届いたようなもので、本来なら起動しないはずだったのです。何せ、ASの調整が不完全でしたので」

 

「えっ、そうだったの!?」

 

「はい、そうなのです。ですが、あなたは偶然にも起動できてしまった。そこで、その特殊なフレームアームズ・ガールの一機――バルバトスと、起動させた人物――つまり皐月さんにファクトリー・アドバンスは目を付けて、様々なデータを収集しよう。といった目的で私達がここに来たわけです!」

 

「ふ、ふむふむ」

 

 皐月は今の話、半分はなんとか理解したが、他の半分はさっぱりといった様子である。

 

「あと、戦闘についてなのですが、私が今持っている、このセッションベースを使ってバトルを行い、その時に得たデータを収集します。そして、収集したデータで学習し成長したASを製品としてのフレームアームズ・ガールに搭載させます」

 

「それってつまり、サンプルを取る、みたいなこと?」

 

「はい、簡単に言ってしまえばそうなります。そして、そういった内容についてのもっと詳しい情報がこの書類に書かれていますので、渡しておきますね」

 

「あ、ありがとう」

 

 あどけないバルバトスとは違い、しっかりした子だなぁ。と思う皐月。

 

「では、バルバトス!早速ですが、バトルをしましょう!」

 

 皐月への説明をしっかり済ませたグシオンは、急いでいるのか、はたまたこれが平常運転なのか、バルバトスへ戦いを申し込んだ。しかし、当のバルバトスはというと、グシオンのことを見向きもせずにあさっての方向を向いていた。

 

「グシオン、あっちは開けなくていいのか?」

 

「えっ?」

 

 バルバトスの言うあっちとは、グシオンと共に来た未だに開かれていないダンボールのこと。同じタイミングで来たというのなら、もう一つの方もファクトリー・アドバンスからの荷物であると考えるのが自然。バルバトスでもそれは容易に想像がつくことだ。

 

「あぁ、フラウロスのことは別に無視して構いません。時間が経てば多分勝手に起きてきますから」

 

 どうやら、箱の中にいるもう一機の名前はフラウロスというらしいが、どうも起きてこないようだ。

 

「そうか。じゃあグシオンとバトル、する」

 

 そしてバルバトスはというと、箱の中身がいったい何なのかがわかって自分の中で納得したのか、グシオンとのバトルをあっさりと引き受けた。グシオンはその返答を聞き、セッションベースを二枚、向い合せるように合体させて、一方のセッションベース上に乗る。

 

「サツキ。アーマー装着、お願い」

 

 バルバトスも空いているもう片方のセッションベースに乗って、皐月にアーマーを取り付けるよう依頼をする。

 

「アーマー装着……って、どうするの?」

 

「アプリ、使う」

 

「……専用アプリは先程お渡しした書類の中にあるQRコードを読み取ってください。そうすれば、すぐにインストールされるはずです」

 

「…………お、これかな。うん、あったよ」

 

 初めてするバトルのため、当然その方法を知らない皐月はバルバトスに聞き返す。すると、言葉が足らないバルバトスを補足する形でグシオンからも答えが返ってきた。

 

 インストールが終わると、皐月はアプリをすぐに立ち上げて画面上で操作を始める。

 

「このアーマーが、胴体で……腰、脚、腕を着けて……。あとは武器を背中に、っと。これでよし!」

 

 アプリ上でのアーマーの設定が終わり、戦う準備がついに整った。すると、セッションベースが光を放ち始め、それはまるで柱のように上へ上へと昇っていく。

 

「準備ができたようですし、始めますよ」

 

「うぃ」

 

「グシオン」

 

「バルバトス」

 

「「フレームアームズ・ガール、セッション!」」

 

「行きます!」

 

「行くよ」

 

 二人はそれぞれの掛け声と共にセッションベースから姿を消すと、次々にアーマーが装着されていき、光が伸びている先に広がるヴァーチャル空間へと転送された。今回選ばれたエリアは、障害物が片手で数えるほどしか見当たらない広大な砂漠フィールド。

 

「さてと、手加減は一切しませんから、覚悟してくださいね!」

 

 グシオンは薄い茶色を基調にした装甲で全身を覆いつくしており、かなり太めのシルエット、重量感がある。背面上部には小さめの翼のようなユニット、下部にはライフルが2丁とハルバードが1本マウントされている。

 

 彼女は手始めにハルバードを取り出して、バルバトスへと接近を開始した。

 

「望む、ところ!」

 

 対するバルバトスは、白っぽい色合いの装甲に青や赤、黄が所々にアクセントとして見られ、太めのグシオンに比べると大分細身な印象。装備しているものは、自分の身長ほどある長さの滑腔砲とそれと同様の長さのメイスがそれぞれ一本ずつ。それらを後ろに背負っている。

 

 グシオンが接近しているのを確認したバルバトスは、滑腔砲をすぐさま構え迎撃を行う。

 

 バルバトスが撃つ滑腔砲の弾丸は、連射こそできないもののグシオンのことを捉え、ライフゲージを確実に減らしていく。

 

「この程度で私は止まりせんよ!」

 

 しかし、さすがは重装甲のグシオン。防御性能は伊達ではなく、ライフゲージの減りが思っていたよりも悪い。

 

 さらに、そうこうしている内にグシオンとバルバトスの距離は無くなり、グシオンのハルバードが届きそうな位置にまで近付かれていた。

 

「そこです!」

 

 ハルバードを頭の上から思いきり振り下ろすグシオン。バルバトスは滑腔砲を背中に戻しながらメイスに持ち換えると、向かってくるハルバードの進行方向へ強引に持っていき受け止めた。

 

「……むぃ!」

 

「クッ、なかなかのパワーですね。けど、まだまだ!」

 

 そして、そのままグシオンのことを力任せに押し返してみせた。

 

「おぉ、スゴイ!すごい迫力だね!」

 

 二人のバトルを観戦している皐月はというと、想像以上に激しいバトルを見せつけられて、やや興奮気味に歓声をあげる。

 

「このままいけば、バルバトス、もしかしてグシオンに勝てるかも?」

 

 戦況がバルバトス有利に進行しているため、初バトルで初勝利となるかも、といった期待感を皐月は募らせていくが、不意に横から声をかけられた。

 

「――そいつはどうだろうな。グシオンの奴、出し惜しみしてやがるから勝負がこの先どっちに転ぶか、まだわからないぜ」

 

「へ~、そうなの……って、あなたは誰!?」

 

 突然の声、かついままでいなかったはずの隣に知らない顔のフレームアームズ・ガールが、二人のバトルをさも当然のように観戦していたため、皐月は酷く狼狽する。すると、そのフレームアームズ・ガールは、皐月の顔を向いて明るくニカッと笑い、それから名乗った。

 

「おっといけねぇ。さっきまで寝てたから紹介がまだだったな。俺はフラウロス。グシオンと同様、俺もバルバトスとバトりに来た!」

 

「あぁ、なるほど。グシオンがさっき言ってたフラウロスって、あなたのことね」

 

「あ?なんだよ。アイツ、俺のことも勝手に言いやがったのか。まぁ、文句は後で言ってやるとして……さっき言ったことなんだけどな、グシオンはまだ本気じゃねぇ」

 

 皐月とフラウロスが話をしている内にも、バルバトスとグシオンのバトルはどんどん展開していく。バルバトスは突き放したグシオンへ再度接近して、メイスで何度も叩きつけようとすると、負けじとグシオンはハルバードで凌いでいた。

 

「えっ?けどさっき手加減しない、とかグシオン言ってたと思うんだけど」

 

 しかし、グシオンの守りよりもバルバトスの攻めが上回っているようで、ガンガン押し込んでいく。そして、バルバトスは、ハルバードをグシオンの手元から叩き落として、ついに追い詰めた形となる。そのままメイスを振りかぶると、グシオンのがら空きとなっている脳天目掛けて振り下ろした。

 

 金属同士がぶつかる凄まじい音が、耳に突き刺さるようにフィールド全体へ響き渡り、衝撃によって砂漠上の砂が舞う。

 

「まぁ、そりゃあもちろん。アイツは、間違いなく()()()()()()()だろうよ。けど、俺が言ってるのはつまり――ああいうことだ」

 

 砂煙が晴れると、2体のフレームアームズ・ガールは両者共未だに健在だった。勝負が決したかに見えたバルバトスの一撃だったが、なんとグシオンによって防がれていたのである。――背中の翼状ユニットから伸びた3本目と4本目の腕とナックルガードを装着した拳で挟むようにして。

 

「……ッ!?」

 

「腕が4本!?嘘!?」

 

 まさかそのような形で躱されるとは思ってもみなかったのか、バルバトス(と皐月)は驚愕の表情を浮かべる。グシオンはバルバトスのその様子を真正面で確認すると、不敵に笑んでみせた。

 

「フフ、驚いてくれたようで何よりです。私、絶対に負けませんから!」

 

 グシオンの言うようにバトルはまだ始まったばかり。終盤戦にすら差し掛かっていなかったのだ。

 

 バルバトスの残りライフゲージ――12000 /14000

 

 グシオンの残りライフゲージ――7500/14000




 グシオンはリベイクフルシティ、バルバトスは第四形態をベースにしています。
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