ガンダム・フレームアームズ・ガール   作:不動ユーゴ

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グシオンとフラウロス その2

 グシオンはサブアームでメイスを受け止めた密着状態のまま、通常の腕で後ろのライフル2丁を取り、そのまま至近距離でトリガーを引こうとする。

 

 バルバトスは慌ててメイスを振り回しながら盾にしつつ全速で離脱しようと試みるが、その2人の距離はあまりにも近過ぎた。決定的な致命打こそ避けたもののグシオンの銃撃をもろに受け、バルバトスのライフゲージは大きく減少していく。

 

「……ウゥゥッ!」

 

「そう簡単には逃がしません!」

 

 弾を弾きつつ後退するバルバトスに追撃を仕掛けるグシオン。つい先程とは立場がまるっきり逆転していた。

 

「アイツ、見たまんまのパワータイプなんだが案外器用なんだよなぁ。ああなっちまうと近距離では、あの4本腕で攻防両方が同時にできる。遠距離においても今のバルバトスよりかは手数が間違いなく多いし、命中精度も補助スコープを持ってるおかげでかなり高い。おまけに装甲が分厚くて堅い」

 

「えぇ〜!それってバルバトスが勝っているところが無いってこと?八方塞がりじゃない」

 

「突破する手段は限られてくるから、こうなった以上、バルバトスが勝つのはかなり厳しいだろうな。けどまぁ、スピードに関して言えばバルバトスの方が間違いなく勝ってるわけだから、まだ詰んではいないだろ」

 

 フラウロスが皐月に解説している間に、バルバトスのライフゲージがついに半分を切る。バルバトスは自分に内蔵されたデータの中からこの状況の打開策を検索するが、戦闘経験が皆無のため、データもほとんど少ない。故に最適解を見つけだすことなどできなかった。最小限のダメージで抑えつつしばらく逃げていると、建物の残骸を発見。とりあえずそれの物陰にバルバトスは隠れた。

 

「このフィールドで障害物を見つけるとは、なかなか運が良いようですね」

 

 グシオンもバルバトスが障害物に身を隠したことで、一旦ライフルによる攻撃を止め、進行していた足も止める。バルバトスは動こうにも動くことができず、グシオンは無理に動く必要が無いため動かない。一種の膠着状態となっていた。

 

「あ〜、俺だったら超遠距離から『ギャラクシーキャノン』をぶっ放すんだが、いや待てよ?接近戦での1発は多分バルバトスの方が上だろうから、俺とは逆に零距離まで近づけばいけるか……」

 

「それってつまり、バルバトスが勝つにはもう一回グシオンに近付かないといけないってこと?」

 

「まぁそうだな。一番可能性のある手段がそれってことだ」

 

「ふーん、そっか」

 

 フラウロスからヒントを貰うと、しばらく黙り込んで考えだす。それから何か良い案を考え付いたのか、皐月はスマホにむかってバルバトスへ話しかけた。

 

「ねぇバルバトス。とりあえずさ、もう一回グシオンに接近しよう。近くでなら勝てる可能性があるみたい!」

 

「もう一回?けど、ライフが少なくなってるから動くのとても困難。それと、グシオンのライフル、邪魔」

 

「……それじゃあ、砂に潜って隠れながら近づいてみる、とか?あ、それと次にメイス使う時は叩くより突いた方がいいかも」

 

「砂、潜る、突き?…………サツキ、わかった!」

 

 皐月のアドバイスとも思えない突拍子の無い提案を受けると、バルバトスはそれを理解したのか否か、隠れていた物陰から飛び出し滑腔砲をグシオンに向け、引き金を引く。と同時に脚部のブースターを全開に吹かした。放った弾丸はグシオンの足元に落ちると、爆風と共に周囲の砂も巻き上げる。つまりフィールドの砂を利用することでグシオンの視界を一時的に遮断したわけである。

 

「なるほど、フィールドの特色を活かした煙幕ということですか。なら、上からだったらどうでしょう」

 

 それでもなお、グシオンは落ち着いていた。陸地で撃つことができないと判断すると、そのまま上空に飛び上がって空中で照準を定めたのだ。さすがに天高くまで砂が昇っていくことはないため、視界は良好。この攻撃が外れるとは思えない。

 

「むぃ……だったら!」

 

 ところが、ここでバルバトスは普通では考えられない行動に出る。グシオンが向かってくるバルバトスに狙いを定めて撃ってくるが、バルバトスは滑腔砲で撃って反撃をする……のではなく、なんと滑腔砲本体を投げ飛ばしたのである。

 

「……クッ、これでは照準が!」

 

 回転しながら真っ直ぐ向かってくる滑腔砲をグシオンはやむを得ずライフルで迎撃、そのまま爆散させる。

 

「随分と荒っぽい真似をしますね!」

 

「――けど、これでグシオンに近付けた」

 

「……ッ!」

 

 滑腔砲を囮としている間にバルバトスも飛び上がり、さらにはグシオンよりも高い位置まで昇っていた。ライフルを騙し騙しでなんとか掻い潜り、ライフゲージも極力減らさないようにして近付くことに成功した。あとはどうにかして相手のライフを自分のが尽きるよりも先に減らし切るだけ。

 

 グシオンは距離的にもうライフルは使い物にならないと判断し、後ろに戻して代わりにナックルガードを4つ、それぞれの拳に素早く装着する。バルバトスは制空権がこちらにあることを生かし、重力に身を任せながらグシオン目掛けて落下、メイスの先端を下に向ける。

 

 勢いそのままにメイスを突き立てようとするバルバトスに、グシオンもやられまいと必死に抵抗をする。そして、グシオンの上にバルバトスが乗るような形で地面に落ちていく。

 

 それでも、バルバトスの重いメイスはグシオンの身体に到達することなく、そのスレスレで止められていた。

 

 グシオンは決着をつけるために、サブアームでメイスを止めつつ、腕をバルバトスに突き出そうと体を動かす。グレネードを撃ち込むためだ。これは勝てると確信し、勝利宣言をしようとしたグシオンであったが、

 

「これで――「とどめ」――えっ?」

 

 バルバトスの不穏な言葉と共にそれは遮られる。グシオンが武装を隠していたようにバルバトスもまた温存している何かがあったのだ。ただ、それはグシオンのようにあえて隠し、切り札として取っておいたわけではなく、皐月に言われるまですっかり忘れていたもの。――それはメイスに仕込んであるパイルバンカーだった。バルバトスがメイスの柄の部分を両手で捻ると、到達寸前のところで止まっていたメイスの先端から、炸裂するかの如くニードルが飛び出した。

 

「…………ッッ!!!」

 

息が詰まるであろうほどの強烈なインパクトをグシオンの腹部に与えると同時に、凄まじい加速度を加えて地面へ突き落とした。地面に叩きつけられたグシオンは目を回しながら気絶。半分近く残っていたライフゲージもゼロとなった。

 

「……きゅう」

 

『Winner、バルバトス』

 

2人のバトルが終わり勝利者がアナウンスされると、ヴァーチャル空間から元いたセッションベースの上に戻された。

 

「勝ててよかったね!バルバトス」

 

「私が勝てたの、サツキのおかげ。ありがとう」

 

 勝ったバルバトスに皐月が賞賛の言葉を送ると、控え目な笑顔を作りながらバルバトスは感謝の言葉を返した。

 

「はぁ。私の負けですか」

 

「おう、お疲れさん。負けて残念だったと思うが、かなり良い試合だったぜ」

 

「……あらフラウロス。あなた起きてたんですか」

 

「なんだよ、慰めてやったってのに。その言い草は無いんじゃねえのか?」

 

「いつも言葉使いが雑なあなたに言われたくありません。それに、今回は負けましたが、次は使用する武器を変更して挑戦です。やはり負けっぱなしは悔しいですから!」

 

「……相変わらずの負けず嫌いっぷり、いつも通りだなお前は」

 

 フラウロスはバトルで負けたグシオンに慰めの声をかけるが、負けたことに関して大して落ち込んでいない様子だった。それを確認した皐月はグシオンに訊ねる。

 

「ところでグシオン。バルバトスのデータ収集ってこれで終わりなのかな?」

 

「いえ、データ収集はまだ始まったばかりです。たとえば、私とフラウロス以外のFAガールも訪問してくるかもしれません。もし来なくとも、様々な地形、使用する武装、そして変則的な集団戦といったように変えようと思えば、いくらだって戦闘の条件は変えられますから、集められるデータは無限と言っても過言じゃありません」

 

 無限という途方もない言葉を聞き、皐月は思わずげんなりするが、グシオンはさらに続ける。

 

「しかし、これにはメリットもあります。バトルを行えば行った分だけ、ファクトリー・アドバンスから謝礼金が出るんですよ。それも高校生のバイト代とほぼ同じくらいの額は貰えます」

 

「え、そうなの!?」

 

「はい、ですからどんどんバトルをしちゃいましょう!」

 

 実質自分は何もせずにお金が貰える。そのような話を聞けば誰だってやる気になるのは当然のことである。皐月は早速バルバトスへ話しかけてみた。

 

「ねぇ、バルバトス。今日はお休みだしさ、まだバトルする?」

 

「……zzz」

 

「……って、あれ。いつの間にか寝ちゃったの?」

 

 ……が、バルバトスはいつの間にか充電くんの上で気持ちよさそうに眠りについていた。戦う本人が寝ていてしまっては元も子もない。

 

「クスッ、バトルの時も思いましたが、面白い子ですね。バルバトスは」

 

「あぁ、そうだな。俺もしばらくバトってなかったし、早く戦ってみたいところだ!」

 

 こうして、バルバトスは起動してからの初戦を勝利で飾ることができたのだった。

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