ガンダム・フレームアームズ・ガール   作:不動ユーゴ

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プラモデルを買いに その1

「あぁ、どうしようかなぁ……」

 

 休日の朝早い時間帯に、皐月は憂鬱そうな声で嘆きテーブルの上にうなだれていた。バルバトスは起床してすぐに皐月の変わった様子にいち早く気が付き、すかさず声をかける。

 

「どうした、サツキ。朝から元気ないぞ?」

 

「あぁ、おはようバルバトス。実はね……バルバトスの武器(プラモデル)を買おうと思ったんだけど、種類が多いし値段も様々だしでね、どれを買ったら良いか悩んでるんだ」

 

 実は彼女、バルバトスの装甲を組み立てた際に、プラモデル作りが楽しいと感じたようで、新しく買って作ろうと考えついたらしい。……ただ、考えたまでは良かったのだが、ネットを使って実際に検索してみると、想定以上に種類が幅広く、どれを買ったらよいかと悩んでしまったわけなのだ。

 

「なるほど、そういことだったか。じゃあ、私がサツキについていく。それで、一緒に武器選ぶ」

 

「……そっか、その手があったじゃない!」

 

 使用する本人に選ばせる。手っ取り早く済む上に後悔することの無いという、一番良い手段がすっかり抜け落ちていたようで、皐月の顔は明るさを取り戻していく。

 

「――ちょっと待った!」

 

「えっ何?フラウロス。ってか、今日起きるのやけに早いね」

 

「そんなことは別にいいだろ?それよりもさっきの話、俺も一緒に行くってのはどうだ?経験豊富な俺が一緒に行って、バルバトスと相性が良さそうなものを適当に見繕ってやっからよ!な?いいだろ、皐月」

 

「ん~、そうだなぁ……」

 

 二人を模型店へ連れて行くことを、目を瞑りながら想像する皐月。それから10秒も経たないうちに想像がついたのか、目を開けると手でバツを作って言った。

 

「ダメ、連れて行くのは、先に言ったバルバトスだけとします」

 

「なぜだサツキ?別に問題、無いはず」

 

「そうだそうだ。別に一人も二人も変わらないだろ?」

 

「プラモデルの種類については、バルバトスが気に入るものなら相性良い悪いは特に私気にしないからいいの。……だけど、二人一緒にいたら、なんかうるさくなりそうで、周りになんか不審がられそうだし」

 

 うるさくなりそうと言われ、バルバトスはどういうことだと言わんばかりに首を傾げている一方、フラウロスは心当たりがあるかのように、目をゆっくりと逸らしていった。

 

「……ま、まぁバルバトスのマスターである皐月がそう言うんなら仕方がない。……けど買いに行く前に、何が物足りないかをバトルをして確認してみるのはどうだ、バルバトス、皐月」

 

「う~ん、たしかにそうだね。そういえばバトルをしたのはグシオンとだけだったし、買いに行く直前にするのも悪くないかも。バルバトス、どうする?」

 

「わかった、そうしよう。けど、勝つのは、私だ」

 

「へっ、なかなか言うじゃねぇかバルバトス。まぁいいさ、やると決まれば速攻で始めるか!」

 

 バルバトスはフラウロスの提案に即決で返事をすると、フラウロスと共にすぐさま準備に入った。

 

「ふぁぁ……。おはようございます。皐月さん」

 

 そのようにドタバタと二人のFAガールが活発に動いていると、もう一人のFAガールがまだ眠そうに欠伸をしながら起きてきた。

 

「ん、おはよう。グシオン。今日はいつもよりもお寝坊さんだね」

 

「私だってお休みの日ぐらいは、もうちょっと寝てたい気持ちになりますよ。……にしても、いくらお休みの日とはいえ、フラウロスが私よりも早く起きるなんて、今日は雨でも降るのでしょうか?」

 

「……アハハ、私的には降って欲しくないんだけど」

 

「クスッ、ちょっとした冗談ですよ、冗談」

 

「――サツキ、準備完了、した」

 

「なぁ、早いとこ始めようぜ」

 

 皐月とグシオンが関係の無いちょっとした話をしている内に、もう既に二人はセッションベースの上でスタンバイしている。バトルの準備はできるところまではできたようだ。

 

「うん、早速しよっか!」

 

 皐月はスマホ上でアプリを起動させて、前回と同様にバルバトスの装備を確認した。準備はこれですべて整った。

 

「フラウロス」

 

「バルバトス」

 

「「フレームアームズ・ガール、セッション!」」

 

「いっくぜぇ!」

 

「いくよ」

 

 前回のバトルと同様に、二人はセッションベース上からヴァーチャル空間へと転移。バルバトス対フラウロスの戦闘がついに始まった。

 

 今回のフィールドは、高層ビルが多く立ち並ぶ街のど真ん中。前回のバトルとは打って変わり、障害物が豊富に存在している。

 

 フラウロスは派手なピンク色の装甲で身を覆っていて、バルバトスとほぼ同じくらいか、むしろそれよりも軽いかと推測されるほどの軽量感。武器は腰にぶら提げているマシンガン2丁、肩アーマーの両サイドにそれぞれ取付けられたアサルトナイフ、そして何よりも特徴的なのが両肩に担がれた2門のキャノン砲だ。

 

 対するバルバトスは、前回と同じ武装に加えて、左腕にガントレット状のワイヤークロー。それと最初から太刀を持った状態で出撃していた。

 

「よし、このフィールドならいけそうだ!」

 

 フラウロスはこの地形とは相性が良いのか、もしくは戦い慣れして得意なのか、開始早々に飛び上がるとバルバトスの前から姿を消す。

 

「む、逃がすか!」

 

 バルバトスもすぐにフラウロスの後ろを追いかけて、積極的に仕掛けていこうとするが、障害物が多いことによって見失ってしまった。

 

「……どこ、いった?」

 

 キョロキョロと辺りを念入りに探すバルバトスだが、レーダーが指し示しているフラウロスのいる位置はもう既に遥か遠い。

 

「むぅ、かなり速いな」

 

 距離を瞬く間に離されたことに気が付いたバルバトスは、今持てる全推進力を使い、フラウロスの後を追いかけていく。

 

「う、これはかなりマズイですよ」

 

 しかし、この状況を見て、グシオンは苦い表情を浮かべながら皐月に言った。

 

「マズイって、バルバトスがピンチってこと?」

 

「いえ、ピンチとまでは言いませんが、若干不利です。フラウロスは肩に担いだキャノンによる遠距離からの砲撃が得意なんですけど、そのキャノンがちょっと特殊でして」

 

「特殊ってどんな感じに?」

 

「端的に言いますと、あれはレールガンです。なので、飛んでくる弾丸がとにかく速く、放物線を描くことなくほぼ一直線で向かって来るので、発射位置がわかっていたとしても初見で回避するのは非常に困難です」

 

「う~んそうなんだ。……ねぇバルバトス、フラウロスはレールガンを持ってるみたいだから、まだ離れてても気を付けてね」

 

 いまひとつレールガンというものを理解していない皐月だったが、とりあえず念のためにとバルバトスへ忠告を一つ入れた。

 

「うぃ、りょうかい」

 

 すると、バルバトスはそれを素直に聞き入れて、少し警戒しながら、進行を再開させる。

 

 しかし、警戒していたバルバトスだったが、反応できなかった。そのレールガンには。

 

「――食らいな、ギャラクシーキャノン!」

 

 轟音が鳴ったかと思うと、バルバトスのすぐ横を掠めていき、後ろにあったビルへ着弾したのだ。幸運なことにも偶然外れたようだが、何もできなかったのは事実。

 

「……チッ、俺としたことが、外しちまったぜ」

 

「これは凄まじい。弾の軌跡、見えなかった!」

 

「嘘ッ、速すぎ!」

 

 今の砲撃を見て驚きを隠せないバルバトス(と皐月)だったが、焦ることもなければ、臆することもなかった。バルバトスは、太刀を左手に持ち替え、空いた右手で滑腔砲を構えると、スラスターを全開に吹かし、フラウロスが立っているビルへ向かって進行していく。

 

「へぇ、今のを見ても向かってくるか。ま、そういうのは個人的に嫌いじゃねぇけどよ!」

 

 対するフラウロスも動きを見せ、両肩のキャノン砲に次弾をそれぞれ再装填(リロード)

 

「射程距離、入った」

 

 その間にバルバトスは滑腔砲を当てることのできる距離までには接近できたたため、さらに詰め寄りながらトリガーを引き攻撃を始めた。

 

「チッ、流石にグシオンよりかは速いな。もう当てられる距離まで来るのか。……けど、今度はこっちの番だ!」

 

 避けることが容易な距離にいるにも関わらず、フラウロスは何の抵抗をしないままそれを被弾した。ただ、そのまま黙ったままというわけでもなく、フラウロスはキャノン砲の照準をバルバトスに定める。それからまもなくして、ロックオンが完了されるが、バルバトスは障害物であるビルの陰に隠れ、射線上から姿を消した。

 

「うまい!それなら、フラウロスのレールガンも当たらないね。……まぁ、そうしたらバルバトスからも攻撃できなくなるけど」

 

 皐月は攻撃が当たらないと安心しきった声を出すが、それはほんの一瞬だけだった。

 

「ハッ、無駄無駄!そんなもんまとめてブチ抜いてやる。いっけぇ!」

 

「――ッ!」

 

 バトルが始まってから、今日二度目の轟音が唸るようにして発せられた。2発の弾丸は障害物を穿ち、不快な破砕音を立てていきながら進んでいく。

 

 抵抗物があったことによって弾の行き先が逸れたため、バルバトスに命中することはなかったが、フラウロスは言葉通り、「そんなもん」と言い捨てたビル一棟を貫通してみせた。

 

「……威力が、デタラメすぎる」

 

「あわわっ!あんなのどうやって躱せばいいの?これじゃあバルバトス勝てないよ」

 

「まぁまぁ。いったん落ち着いてください、皐月さん。バルバトスには勝算がありますし、確率は高いと思います。なにせ私に勝ったのですから」

 

 大分焦っている皐月とは真逆に、かなり落ち着いているグシオン。まぁ、戦っている当事者ではないからこそ、グシオンが焦らないことは当然といえば当然で、皐月については深く感情移入しているからなのだが。

 

 それはさておき、グシオンの予想にはそれなりの根拠があった。

 

「フラウロスのレールガンですが、あれには弱点もあります。それは、フルパワーで撃つ際、足元を固定しなければならないということです」

 

「……それってつまり、カメラの三脚みたいなもの?」

 

「え、え~と、それよりもさらにガチガチに固めてますけど、ブレないためという目的は一緒なのでイメージはそんな感じです。そうしなければ、反動で砲身がブレてしまい、あの速度、破壊力、高い命中精度は得られないのです」

 

「な、なるほど」

 

 そしてさらに補足を加えると、フラウロスは出力を抑えて撃つことも可能であり、その際は脚を固定せずに動きながらでも命中精度は十分確保できるが、威力と速度が代わりに落ちる、とのこと。

 

「つまりは前回の私と戦った時と同様です。皐月さんの奇策を使って接近し、メイスで叩くか太刀で斬る。それが一番です!」

 

「私の奇策って……まぁ、いいや。聞いてバルバトス。グシオンと戦った時みたいに近付いて、近くで勝負しよう。フラウロスは今ならすぐに動けないみたいなの」

 

 グシオンの情報を元に皐月はバルバトスへ提案を飛ばす。

 

「りょうかい!」

 

 バルバトスはこれもまた、素直に受け答えると、すぐに行動へ移すのだった。




 フラウロスのレールガン発射形態について補足説明しますと、脚部(ふくらはぎ部分)からストッパーを後ろに展開して、地面に突き刺す形という設定です。また、腕アーマーを自身の背面腰部に付け替えて、4本足のような形態をとっています。

 また、次回からの後書きで、バルバトス達の足らなかった補足情報等を書いていこうかと思います。
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