「あ、あの、そのバルバトスとかグシオンとかフラウロスとか、私全く聞いたことないFAガールなんですけど、い、いったいどんな子達なんですか?あ!あとどんな武器を使うとか、どんな装甲パーツを装備してるとか、教えて欲しい、です!」
「ちょ!ちょっと落ち着いて?ね?寿さん!」
休み明けの月曜日。お昼休み時の学校の体育館裏で皐月は、ある一人の少女にものすごい勢いで迫られていた。
――この子って、クラスでもおとなしかったはずだよね?こ、こんな性格だったの!?
なぜ、このような状況に陥ったのかというと、その原因(?)は朝。皐月が登校してきたところまで時間が遡る。
――――――
「ん、なんだろこれ?」
皐月は靴箱を開けると、その中に手紙が入っていることに気が付く。封筒には名前が書いておらず、差出人は不明。わかることと言えば、この学校は女子校のため、異性からの手紙――つまり、少なくともラブレターではないということだけだ。
「ま、中身を見てみればわかることだし、いっか」
とりあえず中身を見てから考えようと思った皐月は、そのまま手紙を片手に教室へ歩いていくのだった。
教室へ入り自分の席へ着くと、いつもしているように筆記用具と教科書類を鞄から机に入れた。朝のホームルームが始まるまでまだ時間に余裕があるので、先程の手紙を読もうと封を開け、中にある紙を取り出すと、そのまま目を通していった。
『花谷さんと話したいことがあるので、お昼休みに体育館裏へ来てください』
文面に書かれている要件は非常にシンプルなもので、単純に話したいというもの。
「伝えたいことがあります」とか、「大切なお話があるので」といったようなニュアンスの言葉は使われていなかったので、ちょっとあれな展開は無いとわかり、まずは一安心した。
――けど、これだけのことなら、直接言ってくれればいいのに。……あ、差出人は他のクラスの恥ずかしがり屋な人で、教室に入りづらいからこうしたのかな?うん、きっとそうだね。
なぜ手紙で呼び出すのかという素朴な疑問を抱いた皐月だったが、自分の中で納得させてこれ以上は無駄に考えないようにした。
「え~と、私のこと呼び出したのは、あなた……って、寿さん?」
「……は、はい。そうです」
そして、時間は進んで、昼休みのこと。差出人が指定した場所である体育館裏へ皐月は来てみると、そこでは既にクラスメートの
「あ、あの、花谷さんって、土曜日に駅前のボー○スにいません、でしたか?」
「え?……あ~、あのプラモデル屋さんか。うんいたよ」
言ってしまうと悪いが、一番最初に切り出した話題からあまり女子らしくない。
「ほ、やっぱりそうですよね。それでその時、FAガールを連れてきてました、よね?」
「うぇ!?」
「ひャァッ!?」
できる限り隠し通して、誰にも気づかれていなかっただろうと思っていた皐月にとって、彼女からのその質問は非常に心臓に悪いものだった。そのため、自身でももう二度と再現できないような変な声をあげて驚いてしまった皐月だが、それはその声に驚いた盾子も同様だった。
できれば隠しておいた方が良いと思っていた皐月だったが、これを誤魔化すことはできない。そのように判断した皐月は正直に答えた。
「……うん。私の部屋にはFAガール、居るよ」
「や、やっぱり、私の見間違い、じゃなかったんですね。……はぁ、でも嬉しいです。私以外にもFAガールが好きな人が、いたなんて」
「え?じゃあ、寿さんの家にもFAガールはいるの?」
「は、はい。勿論いますよ。……AS搭載型では無いですけど、スティレットを持ってます。花谷さんの持ってるFAガールは、AS搭載型なんですよね?」
「……?うん、まぁそうだけど」
皐月は盾子のその言葉を聞いて疑問符を浮かべる。それもそのはず、皐月はFAガールは全員ASを持っているものだと、この時点では思っていた。グシオンからFAガールについての説明を聞いていたものの、その際に市販品のFAガールとは、彼女達が違うということは一言も話されていなかったからだ。
「やっぱりそうでしたか!FAガールを持ち歩いている方って、コミュニケーションが普通にできるAS搭載型の子を持っていると思ってたんですよね。うん、すごく羨ましいですっ!」
「そ、そうかな?」
「はい。それはもちろん!」
一番最初こそ、恥ずかしそうにして喋っていたはずの盾子だったが、今となっては皐月が圧倒されるほど明るく嬉しそうに、かつ饒舌に語っていた。
「ところで、花谷さんはそのFAガールをどうやって手に入れたのですか?」
「どうやってって言われるとなぁ……ファクトリーアドバンスからなんかの間違いで届いて、それで偶然私が起動させちゃって、それからかな」
「なるほど。聞けば聞くほど羨ましくなりますね!あ、あと、どの種類の子か聞いてませんでしたね。どの子ですか?」
――寿さんって、FAガールのこと本当に大好きなんだなぁ。それに、こんなに人と喋ったの久しぶりかも。
「私のところには、バルバトスとグシオン、あとフラウロスって子が居るよ。知ってると思うけど、みんなすごく可愛いんだ」
皐月は、安堵したことと会話が久しぶりに弾んで嬉しくなったことが相まって、まだ名前を出していなかった3人のことについて話してしまった。
しかし、ガンダム・フレームシリーズはまだ市販品として世に出ていないことを皐月は知らなかった。
「……えっ、私が聞いたことの無いFAガールが3機も……」
「……あれ、お~い寿さん。どうかしたの?」
一般的に出回っていない、聞いたことのないFAガールを持っている。それは、盾子の好奇心をくすぐった。
「あ、あの、そのバルバトスとかグシオンとかフラウロスとか、私全く聞いたことないFAガールなんですけど、い、いったいどんな子達なんですか?あ!あとどんな武器を使うとか、どんな装甲パーツを装備してるとか、教えて欲しい、です!」
「ちょ!ちょっと落ち着いて?ね?寿さん!」
そして、この状態に至ったわけである。
それから、一人ずつ丁寧に説明していき、皐月の話のネタもようやく尽きるかといったところで、授業開始10分前の予鈴が鳴り響いた。
「あ~、もうこんな時間か。寿さん、早く教室に戻ろっか」
「……あの、その。ご、ごめんなさい、花谷さん!……わ、私、すごく興奮しすぎちゃって。迷惑だった、よね?」
そして、その鈴の音で冷静さを取り戻したのか、ハッと我に返り、少しオドオドしながら皐月に頭を下げる盾子。しかし、皐月は決して怒ってなどいない。首を横に振り、笑顔で言葉を返すだけだった。
「ううん、いいよ別に。私も久しぶりにお喋りできて楽しかったし、そんなこと気にしないで。それよりも、授業に遅れるから急ごう!」
そう言うと、後ろを振り返り盾子の手を引いて一緒に教室へ走って向かっていく。盾子は皐月の後ろをついていきながら訊ねる。
「……あの、またこうやって、私とお話してくれます、か?」
「うん。それはもちろんだよ、寿さん。FAガールについて、まだ知らないことがたくさんあるからまた今度、聞かせてよ!」
「……っ。ありがとう、花谷さん!」
――この学校に入学して、はじめて友人ができた!
この時の二人は、全く同じことを考え、そして同じように笑みを浮かべていたのだった。
FAガール グシオン
ガンダム・フレームシリーズの一機で、バルバトスよりも以前に開発されたFAガール。遠、中、近距離の全てに対応可能な性能と豊富な武器を持ち、2本のサブアームを駆使しての4本腕で戦うのが何よりも特徴的。まだ使用していないが、シザーシールドも所持しているとのこと。
他のどのFAガールよりも根が真面目で、クラス委員長を彷彿とさせる性格。しかし、バトルにおいては負けず嫌いという一面も併せ持っている。
ボディスーツの色は薄茶で、髪色はオレンジ系。髪型はポニーテール。
FAガール フラウロス
ガンダム・フレームシリーズの一機で、グシオンとほぼ同時期に開発された。超遠距離からのレールガンによる砲撃を得意としており、相手との距離を素早くとるためにスラスターの出力が高く設定されている。ただ、最大出力での砲撃時は腕部装甲を一度外し、ストッパーとして使用しなければ、反動が激しくて撃てないという欠点がある。
一人称は常に「オレ」を使い、言葉遣いが結構荒い。……のだが、面倒見は悪い方ではない。実はおとなしくて、装甲の色が今のピンクではなく白色だったという過去を持つらしいが、その詳細は現時点で不明。
ボディスーツの色はピンクで、髪色は装甲より薄くなっているが、こちらもピンク系。髪型はショートヘア。
それと、お察しかと思いますが、盾子ちゃんはアニメにも出てきたあの子の妹です。