ガンダム・フレームアームズ・ガール   作:不動ユーゴ

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姉(自称)がやってきた その1

「ふぅ、ただいま!」

 

「おかえりなさい、サツキ」

 

 学校から帰宅して、いつもと同じように3人へ向けて声をかけるが、返ってきたのはバルバトスの声だけだった。それを不思議に思った皐月は首を傾げながら訊ねる。

 

「あれ、グシオンとフラウロスは?」

 

「2人は、今バトルしてる。サツキが作った新しい武器、試してるところだ」

 

「あぁなるほど。そういうことね」

 

 グシオンとフラウロスは、先日皐月が作った武器のお試しということで戦闘を行っていた。2人はそれによって別の空間にいるため、帰宅してきた皐月に反応できなかったというわけだ。

 

「サツキ、とても元気。何か良いことあったのか?」

 

「うん、まぁそうだね。今日学校でね、すごい良いことがあったんだ」

 

「やっぱりそうか!なにがあったのか、ぜひ聞きたい」

 

「いいよ。夕飯食べながら今日のこと、話してあげるから」

 

 互いに自然な笑みを浮かべ上機嫌のまま、皐月は靴を脱いでリビングへ向かおうとしていると、

 

――――ピンポーン

 

 突然インターホンが鳴った。

 

「この時間帯に誰かな?……え、まさか3度目なんてことは……」

 

「む?」

 

 皐月は何か怪しみながらも玄関の方へ向かい、ドアを開ける。すると、皐月が想像していた通り、怪しげなダンボール箱が――――そこにはあった。

 

「新しいFAガール、か!」

 

「……アハハ、多分だけど、そうみたいだね」

 

 わくわくしているのか楽しげに声を出すバルバトス。しかし、FAガールが3人からまた増えるのかと思うと、皐月は能天気に喜べるはずもなく、乾いた笑いをするしかなかった。

 

 ただ、これでもらえる謝礼金が増えるのならと割り切り、仕方がないと思いながら、皐月はダンボールを部屋の中へ入れた。部屋に戻ると、二人のバトルはちょうど終わっていたようで、皐月が持っているダンボールに早速目が集中する。

 

「あら、私達以外のFAガールですか。いったい誰でしょうか?」

 

「ケッ、バルバトスとのデータを取るだけなら、俺とグシオンだけで十分だっての」

 

 グシオンはそれなりに興味を示し質問を投げかけてくるが、フラウロスはどちらかというとあまり歓迎している雰囲気ではなかった。無論、フラウロスの場合は照れ隠しでそう表では口にしているのかもしれないが。

 

「まぁまぁ。とりあえず開けてみるね」

 

 ダンボールを開けて、その中の小奇麗に梱包されたパッケージを開くと、そこには青いボディスーツを着用し、白髪で長い髪の毛をストレートに下ろしたFAガールが目を閉じたまま、仰向けになっていた。

 

「えっ!?あなたは……」

 

「マジか!?まさか、姐さんがここに来るなんて」

 

 バルバトスは初対面のためか、特に反応を示さなかったが、グシオンとフラウロスは新しく来たFAガールの顔を見た途端、驚きを隠せないといった反応を見せた。

 

 そして、青いFAガールは目を開けて起き上がると、辺りを見渡していき状況を整理確認を終える。それから皐月に体を向け、自己紹介を始めた。

 

「私の名はバエル。ガンダム・フレームシリーズの原点(オリジナル)とも呼ばれているよ」

 

 いかにもといった偉そうな口調で彼女――バエルは口を開いた。

 

「久しぶりですね、バエル」

 

「バエルの姐さん、今までどこで何してたんだ?」

 

「おお、グシオンにフラウロス!お前たちもここに来ていたのか!」

 

 グシオンとフラウロスの口ぶりから、本当にバエルとは面識が互いにあるらしく、普通に喋っていた。

 

「グシオンとフラウロスはバエルと知り合いなの?」

 

「はい、一応そうなります。知り合いと言いますか何と言いますか、ちょっと表現に困るのですが……まぁ、先輩後輩のような関係を想像して頂ければよいかと」

 

「なに、そう恥ずかしがることはないだろう、グシオン。先程紹介したように、ガンダム・フレームシリーズの原点(オリジナル)。つまりは、私達全員、姉妹同然なのだからな!」

 

「……え~と、うん。スゴイ個性が強いね。バエルは」

 

「……皐月さんがそう思う気持ち、とてもわかります。よくもまぁ堂々と言えますよね。むしろ私は、姉がこんなのだと思うと本当に恥ずかしくて、堂々と公言したくないのですが」

 

 斜め上を行く発言に引きつった笑いを見せ、若干引き気味の皐月に、グシオンは普段は見せることのない微妙な表情を浮かべながら同調するように頷いた。それからグシオンは、話題を真面目な方面へ切り替えて、確認のために質問を投げかける。

 

「ところで、あなたもバルバトスと戦うためにここに来た、ということなんですよね?」

 

「あぁ、もちろんそうだとも。……しかし、今回はラボでの模擬戦というわけではないことだし折角だ。変則ルールでのバトルを提案させてもらうよ」

 

「変則ルール、ですか」

 

「へぇ、それは面白そうだな」

 

「いったい、どんなルールなんだ?」

 

 いままで行ってきたバトルが2回ともスタンダードなルールで行ってきたからか、3人のFAガールは変則ルールーという単語に食いついた。すると、バエルは得意げに笑って、バルバトスの質問に答えるのだった。

 

「バルバトスとグシオン対私、もしくはバルバトスとフラウロス対私だ。どうかな?」

 

 つまり、2対1でのバトルということをバエルは提案してきたわけだ。

 

「2対1、ということか。だが、なぜ1対1じゃないんだ?」

 

「それはただなんとなく、という私の気分もあるが、そのような機会はラボでは滅多になかったからね。それに、有益なデータを収集できるだろうから、バルバトスのマスター――キミにとっても悪い話じゃない」

 

「う~ん、私は別に良いよ。バルバトス達がそれでいいのなら」

 

「私も別にいいぞ」

 

 皐月とバルバトスの二人はバエルの提案をすんなり受け入れた。あとは、グシオンとフラウロスのどちらがバルバトスとタッグを組むかを決めるだけだ。

 

「さて、どうしましょう?フラウロスも戦いたいですよね?」

 

 グシオンは、当然フラウロスもバトルをしたいものだと考え、話し合おうとしたのだが、フラウロスからは意外な答えが返ってきた。

 

「いや、今回はパスするぜ。お前がバルバトスのパートナー、やってやれよ」

 

「……えっ、バトルに積極的じゃないとは、どこか調子でも悪いんですか?あなた本当にフラウロスですか?」

 

「……ッ!俺は俺だっての!」

 

「まぁまぁ、そう怒らないでください。……冗談はさておき、譲ってくれてありがとうございます、フラウロス」

 

「なんだよ、お前こそ俺に頭を下げるなんて、らしくないんじゃねぇか?」

 

「いえ、そんなことはありません。私があなたよりもちょっと大人というだけのことです」

 

 ちょっとした漫才にも似たやり取りが繰り広げられたが、揉めることなく決まった。

 

 セッションベースは、グシオンとフラウロスがついさっきまで使っていたため、既に2つはセット済みであった。バエルとグシオンはそこへ装甲パーツをセットしていき、バルバトスはもう一つのセッションベースを装甲パーツと共に棚から引っ張り出してきた。

 

「もう一つ追加ルールとして、キミ達の初期ライフゲージの合計値が私のライフゲージ、ということでいいかな?」

 

「あなたにとっては初めから不利な条件でしたし、それくらいの追加ルールは構いませんよ」

 

「グシオンはこう言っているが、バルバトスはどうだい?」

 

 準備が丁度終わったバルバトスにもバエルは同じく訊ねると、バルバトス同意の意思を示して、首を縦に振った。

 

「よし、では始めるとしよう」

 

「バエル」

 

「バルバトス」

 

「グシオン」

 

「「「フレームアームズ・ガール、セッション!」」」

 

「さぁ、行こうか」

 

「行くよ」

 

「行きます!」

 

 また、今回は2対1の変則ルールだが、選ばれたフィールドは、前回や前々回で使用した場所に比べると面積が狭く、バトルのためだけに作られたといったような非常にシンプルな空間だった。

 

「久しぶりのバトルだが、どこも錆びついてはいないみたいだ」

 

 青と白がメインカラーの装甲を身に纏っているバエル。武装は腰の提げた二本の黄金色の剣と、背中にある二枚の大型スラスターウィングに併設された細長いレールガンの二種のみ。それと、流線型でスリムなフォルムであることから察するに、瞬発力と運動性能は抜群に良いと見て良い。おそらくは、バルバトスと同タイプの近接格闘での戦闘を得意としているのだろう。

 

「さぁバルバトス、グシオン。先手はキミ達に譲ってあげよう」

 

 彼女は姉の余裕だと言わんばかりに、二本の剣を抜刀して挑発のようにクルクルと手で弄んでから、ピタッと動きを完全に止めた。

 

「ならば、こちらから、行く!」

 

「バ、バルバトス!?ちょっと止まってください!」

 

 フラウロス戦と同じ装備で出撃したバルバトスは、グシオンの制止の声を無視して、太刀を構えたまま一直線で進行。バエルにぶつかる手前で跳び上がると、頭上から太刀を振り下ろしていった。

 

「ハァッ!」

 

「力強く、実に良い太刀筋だ。……だが、あまりにも正直すぎる」

 

 バエルはその正直な攻撃を左手の剣で受けると、それを無理に押し返そうとはせず横へとスライドして躱す。

 

「初手はたしかに譲ったよ。では、今度はこちらの番だ!」

 

 そこからバエルは、二本の剣でバルバトスを攻め立てていった。バルバトスは身体をよじって躱そうとするが、流石に連撃の返し技を完全回避することは叶わず、軽いダメージを受けた。

 

「……バエル、強い」

 

「もう!数的にこちらが有利なのは明白なんですから、もう少し作戦を練ってから行きましょう!」

 

「むぃ。すまない、グシオン。じゃあ、私はどうすればいいんだ?」

 

「そう……ですね。私が遠くから援護しますので、バルバトスは私のことを気にせず、接近して戦ってください」

 

「わかった。言われなくとも、そうするつもりだったし、後ろは任せるぞ」

 

「えぇ、任せてください!」

 

 グシオンの指示を聞くと、バルバトスはまたバエルへ一直線に向かっていき、今度は下から斜め上へと斬り上げていく。バエルはその斬撃もまた凌ぐが、バルバトスの攻撃はまだ終わらない。空いた別の部位を狙って次々払い、斬り、突いていった。

 

「おっと!」

 

 想定していたよりも速度があったのか、バエルは脚部のスラスターを吹いて後ろに後退した。

 

「これはすごい。長い得物をここまで速く振り回すとは。大した妹だ」

 

「……?私、バエルの妹、じゃない」

 

「フフン、照れてるのかい?グシオンのことを真似る必要はないんだよ?」

 

「別に。そういうつもりも、ない」

 

 意表を突かれようとも、余裕を一切崩さないバエルは再び相手の気に障るようなことを口にするが、それにバルバトスは大して動じることは無かった。ただ、バッサリとバエルの言葉を切り捨て、そして攻撃を仕掛けていくだけだった。




花谷 皐月

 私立若葉女子高校に通う高校一年生。性格は明るくとても正直なものの、少し人見知りなところがあるのか、特別に親しい知人は今のところ少ない模様。

 FAガール達のことはロボットだとは考えておらず、むしろ妹のような存在だと思い、みんなと接している。また、手先が起用で、ものづくりも割りと好きな方のため、バルバトス達が来てからは、プラモ作りに興味を示し始めている。
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