カルデアに生き延びました。   作:ソン

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 生き残ってしまった。

 そんな俺に貴方達は居場所を、そして確かな日常をくれた。

 貴方達がくれた恩は、必ず返す。


 今がその時だ。





訣別の時、来たれり

 駆け出す。踏み出すとともに全身の魔術回路をさらに補強。

 直死の魔眼――魔術王とて死ぬ事が難しくとも影響を受けない訳ではない。致命傷に成りうるならば虫の刃とて脅威だ。ヤツがそれを知らない筈がない。故に必ず回避する。

 それを繰り返し続ければ、時間を稼ぎ続けられる。

 だがオレの体は魔術回路を絶え間なく使用し続け、魔術王の体を追い続けなくてはならない。

 忘れるな、これは外敵との戦いではない。崩壊していく体を、どこまで繋ぎとめられるか――即ち自分自身との戦いに他ならない。

 

「助けを乞え! 怯声を上げろ! 苦悶の海で溺れる時だ。

 それが、貴様にとってただ一つの救済であると知れ」

 

 激突する。

 魔術王の放つ攻撃に対して、自動的に同じ魔術が放たれる。

 その衝撃に吹き飛ばされぬよう、強く大地を踏みしめながら。されど一度も足を緩めることなく、ただ駆け抜ける。

 残り、数メートル。

 魔術王が詠唱に移行する。詠唱が終わる頃にはオレはきっと、その間合いに入っているのだ。

 なら、それを弁えた上で間合いを見図らうだけの事。

 

 検索開始。

 

 適合魔術確認。

 

 魔術刻印複製開始。

 

 刻印複製完了。

 

 今ここに、正義に成り切れない執行者を再現する。

 

『僕はね、正義の味方になりたいんだ』

 

 “固有時制御――三倍速!”

 

 世界が加速。武器を振るえば、もう届く。

 魔術王が詠唱を中断する。

 一工程で放つ一撃。だが並のサーヴァントなら消し飛びかねない。

 ――だが、オレにとって刃を振るう時間があるのならそれは無意味に等しい。

 魔術を殺し、返す刃でさらに一閃。

 硝子が砕けるような音――魔術王を守護する結界の一つが消失する。

 

「っぁ……!」

 

 突如、全身が悲鳴を上げ固有時制御が解除される。

 世界の修正による反動。自身の力量、魂すら超えた代償。

 視界をノイズが走る。景色が一瞬だけ灰色に抜け落ちた。

 だが追撃する隙が目の前にある。ならば、戦うだけ。

 

 検索開始。

 

 検索終了。

 

 魔術刻印複製不要。

 

「儀式礼装、投影開始」

 

 その指に挟む三本の黒鍵。

 相手との間合いは近い。最大威力を放つには十分。

 

 魔術複製物確認。

 

 使用手段検索開始。

 

 適合者確認。

 

 適合開始。

 

 今ここに、神の使徒である彼らの技量を再現する。

 

『喜べ少年。君の望みはようやく叶う』

『例え偽善でも、何となく救いがありそうじゃないですか』

 

 黒鍵を投影。間合いを離す魔術王に投擲する。その一撃に物理的な防御は意味を成さない。

 だが、結界の前に容易く弾かれる。――だがこれで、遠距離で結界を破壊するは不可能だと理解した。彼らの力が通用しないのであれば、これ以上のモノは無い。

 視界をノイズが走り、加えて景色すらも色褪せる。先ほどよりも時間が長い。邪魔だ。

 魔術王と目線が合う。

 その瞳の奥が怪しく輝く。

 

 検索開始。

 

 呪いを与える魔術と確認。

 

 検索完了。

 

 神を求め月に散った、求道者の願いを再現する。

 

『人生とは無意味と有意味のせめぎ合いだ』

 

「add_curse――!」

 

 呪いを相殺――。

 魔術王の周囲に魔力が立ち込める。

 

 検索開始。

 

 結界術式を再構築と判断。

 

 検索終了。

 

 最期に光を見た、黒き暗殺者を再現する。

 

『友人を助けるコトに、そう理由はいらないだろう』

 

「seal_guard……!」

「貴様ァッ……!」

 

 結界構築を妨害。

 さらに追撃する――!

 

 検索開始。

 

 検索終了。

 

 魔術刻印複製。

 

 今ここに、地水火風空を修めるアベレージ・ワンを再現する。

 

『事の正否なんて考えず、ただ物事に打ち込めることが出来たら、それはどんなに純粋な事なんだろうって』

 

 ナイフに魔力を通す。性質を変換。

 

「―――Vier Stil Erschiesung……!」

 

 虹色の輝きが放たれる。大英雄の命の一角を削り取った一撃。

 それを魔術王は凌いだ。

 

「無駄な動きをするなッ!」

 

 魔術王の掌が向けられる。超濃度の魔力を確認。

 

 検索開始。

 

 検索終了。

 

 結界複製。

 

 今ここに、矛盾した螺旋の果てを求めた求道者を再現する。

 

『人間には、誰も救えない』

 

「――粛!」

 

 空間が炸裂する。その余波が、頬を薄く裂いた。

 魔術王が手を翳し――瞬く間にその周囲に四つの魔神柱が顕現する。

 

 検索開始。

 

 召喚術式再現不可能。再度検索開始。

 

 検索終了。

 

 魔術刻印複製開始。

 

 今ここに、人を愛せぬ人形師を再現する。

 

『全く老人どもは古臭い!』

 

「影は消えよ。己が不視の手段をもって。

 闇ならば忘却せよ。己が不触の常識にたちかえれ。

 問うことはあたわじ。 我が解答は明白なり。

 この手には光。この手こそが全てと知れ――――。

 我を存かすは万物の理。全ての前に、汝。

 ここに、敗北は必定なり……!」

 

 まず一柱を燃やし尽くす。

 まだ動き出さない。次の一手を警戒している。

 

「repeat!」

 

 残り二つ。まだ行動には移っていない。

 

「repeat!」

 

 残り一つ。その柱が怪しく輝き始めた。

 全体攻撃――だがこちらの方が僅かに速い。

 

「repeat!」

 

 三度の詠唱を以て、残りも殲滅する。

 眩暈がする。今にも倒れそうになる体を無理やり立たせて。叫び続ける魔術回路を容赦なく、酷使する。

 

「っぁ……!」

 

 彼らの全てを宿した。彼らの積み上げたモノ全て。つまり、それは彼らの人生を全て追体験した事に他ならない。その運命に、心が欠けそうになる。

 あぁ、そうだ。なら悲しみを見たくないと。永遠を望むのは当然だ。

 潰えそうになる意思。けれど、記憶がそれを支えてくれる。まだ、戦える。

 魔術王は微動だにする事無く、ただ静かにオレを見つめていた。

 

「……どうした、来ないのか魔術王」

「……フン、今更分かっているだろう。

 我らが手を下すまでもなく、お前は敗れる」

「――!」

 

 こふっ、と血液が体を逆流し、血だまりが地面を赤く染める。

 既にオレの回路から魔力は尽きていた。それでもこの場では戦わなくてはならない。立香がここを離脱するまで。カルデアの皆が、生き延びるまで。

 故に命を絞り出しているのだ。これなら数分は持つ。その後など今はどうでもいい。

 崩れ落ちそうになる体を、無理やりつなぎ留める。

 まだ、戦える。

 

「既にその身体から魔力は尽きている。

 さらに使おうとすれば、それは命を縮める事と知れ」

「――笑わせるな、魔術王。

 今更、戦う相手の心配か? とっくに死んでいたヤツに?」

 

 笑みがこぼれる。

 残る命を、さらに魔力に変換する。

 

「オレは、遺ってしまった命を使い切るために」

 

 この体の全てに代えてでも。

 必ず、彼ら(カルデア)への恩を返す。

 そう、決めたから。

 オレは――

 

「――今、此処にいるんだよ!」

 

 検索開始。

 

 検索終了。

 

 今ここに、正義なき執行者の欠片を再現する。

 

『弱きを助け強きをくじく。いつものアレだろう? いいじゃないか、正義の味方』

 

「投影開始」

 

 その手に再現されたのは、一つのアンプル。

 生粋の投影魔術によって再現されたモノ。彼の起源を扱うには代償が余りにも大きすぎる。

 アンプルを砕き、魔力を補充する。――自分の何かが、喪失した。

 あぁ、確かにこれは。何度も使えないな。

 

「――解せぬ。我らの中のたった一つが、その行動を咎めている。対話を求めている。

 今一度、お前に回答を委ねよう。

 何故だ、何故我らの偉業を否定する。人理修復がお前の死に繋がると知って、何故お前は――キミは、カルデア(そこ)にいる」

 

 それはさっきから何度も言っているのに。

 なぜこうも、目の前のモノはそれを聞き入れないのか。憐れむばかりで理解しようとしない。

 

「……」

「答えるがいい――人にも英霊にもなれない人形。

 この時のみ、我らに語る事を赦す」

 

 ――あぁ、そうか。

 きっと、受け入れられないから。

 (オレ)のこの選択を、彼らの誰かが止めたいのだ。

 記憶が、まとまらない。アンプルの副作用か。何もかもが溶けていくような錯覚すら覚える。

 戦っていた理由は思い出せるけれど。その名前が、もう朧気にしか口に出来ない。

 けれど、魂が強く叫んでいる。まだ、戦えると。

 立ち続けるために、戦うために。俺は、その答えを口にする。

 

「死んでいく人達がいた。理不尽な運命で、全てを奪われた人がいた。誰かを助けたいと走り続けて、最期には裏切られた人がいた。救うために立ち上がって、何も守れず嘆いた人がいた。

 確かに貴方は見続けてきたんだろう。ずっとずっと――気が遠くなる程、そんな光景を。

 でも、その代わりに出会いがあった。死んでいく命の代わりに生まれてくる命があった。そうしてまた誰かの物語が紡がれて、世界が広がっていって。

 俺にとって人理修復の旅は、出会いと別れの物語だったんだ」

 

 言葉を口にする度に、戦いで剝がされていった記憶と感情が少しずつ戻ってくる。

 ――そうだ。そうだった。

 俺は、カルデアにいた。カルデアの皆と生きていた。生きていたかった。

 

「貴方は悲劇しか見てこなかった。結果ばかりに目を向けて、その過程を無視していた。

 なら、その結論に至るのも納得だ。死を目の前にしたとき、人は恐怖し絶望する。

 だけど、だけど――。

 形ある限り、消えなければならないのが命の形だ。生きている限り、どこかで必ず受け入れなければならない痛みであり、乗り越えなければならない喪失だ」

 

 ガラクタだらけの体で戦えたのは、彼らとの思い出があって。それに意味と価値を感じて。

 彼らに、カルデアの善き人々に。大切な家族と友達に、生きてて、欲しかったから。

 

「だから、人は今を生きて。今あるモノを後に伝える。そうして終わりを迎える代わりに、またどこかで新しい出会いが生まれる。

 俺はそれを尊いと感じた。だから守り続ける。

 でも、きっと。貴方はそれを理解出来ないんだろう。貴方の見てしまった終わりは、あまりにも多すぎる」

 

 お前が考えを改める事は無いだろう。それはきっと自身への裏切りだ。

 だから、俺はお前とは分かり合えないよ。

 

「――」

 

 だって、俺の行動と理論は矛盾している。破綻している。

 もし出会いと別れの物語を美しいと思うのならば。それを尊いと思うのならば。

 

 俺は、消える筈だったあの二人の運命を、繋ぎとめてはいけなかったんだから。

 

 魔術王はそれに気づいている。俺の言っている答えが何もかもが都合のいい理想論でしかない事を悟っている。子どもの我が儘に等しい。

 

 ――だから、そんな我が儘を受け入れてもらう代わりに。俺は消える事を選んだんだ。あの二人の輝きには到底釣り合わないけれど、俺が消えるのであれば。

 

 きっと、世界は納得してくれただろうから。

 

「成程、それが答えか。――下らない、全くもって下らない。

 それは諦めであり、傍観だ。我らが最も否定し棄却すべき結論だ。

 お前には過去が無い。そして未来も無い。ならば語るべき物語とやらも存在しない」

 

 魔術王が手を翳す。

 背後の空間が置換され――そこに膨大な魔力が収束していく。

 もう見ただけでわかる。

 アレに匹敵する魔術は、オレの中に存在しない。

 

『よしっ、ギリギリ間に合った! アラン君! 今、立香君をカルデアに帰還させた! 彼のサーヴァントも退去が始まる!』

 

 ドクター――あぁ、そうだ。思い出せた。

 良かった、命を削って、アンプルに身を溶かしても。貴方達の名前だけは忘れずにいられた。

 

『今から君も……!』

 

 何だ、やっぱり足掻いていてくれたんだ。

 参ったな、こうも諦めが悪いと。また、帰りたくなってくる。

 少しだけ、自分の選択を後悔しそうになる。

 貴方にまた、お帰りって。どこかで言って欲しくなってしまう。

 

「……ありがとう、ドクター。そしてごめんなさい。

 どうやら俺の旅は、ここまでのようです」

『――……っ! そんな、事っ……!』

「カルデアの皆に伝えてください。こんな俺と一緒に歩んでくれて、過去も未来も、何もない俺だったけど。最期に人の夢を見る事が出来て、幸せでしたと」

 

 ちゃんと伝えなきゃ。

 多分、コレが最後になるから。

 

「今まで、ありがとうございました。最後の最期で俺は、ようやく人になれました」

 

 ただの孤独だった俺に、価値を与えてくれた人々。

 だから、俺はこれでいい。

 これ以上、望む事は何もない。

 この手には――あぁ、そういえばまだ、残っていたな。

 彼らを、帰してあげないと。

 

「最後に全ての令呪を以て、我がサーヴァントに命ずる。

 ――即座にこの特異点から離脱し、カルデアに帰還せよ」

 

 三人が何かを叫んでいる。

 だけど、もう何も聞こえない。

 アンプルの副作用か、それとも命を削りすぎたためか。

 もう感覚すら鈍り始めてきている。でも名前だけは、あの日々だけはちゃんと覚えている。

 大丈夫、まだ。立てる。

 

「……」

 

 魔力により空間が乱れてきた。もうカルデアからの通信は届かない。

 ここで、本当に一人になったのだ。

 魔術王の背後にある空間の魔力は膨大だ。アレを喰らえば、確実にオレは死ぬ。

 そして接続しているからこそ分かる。あの一撃に匹敵するモノなど、存在しない。

 幸い、もうここにはオレしかいないから耐え凌ぐだけでいい。最後の意地を。人間の底力を。

 目を瞑る。既にボロボロになった魔術回路をさらに酷使する。

 もう少しだけ、持ちこたえてくれ。後、ちょっとでいい。

 

 

「人理装填。第三宝具限定解除――」

 

「俺の欲しい未来は、ここにある……!」

 

 

 脳裏によぎるのは輝かしい思い出。

 

 例え地獄の底にいても、決して忘れる事のない、温かな日々。その色と光を、一度も。

 

 

“俺はマスターだから強くはないけど。それでも、苦しんでいる誰かがいるのなら。それに手を差し伸べるくらいはできるし”

 

“どんなに怖くても踏ん張って。そして先輩を、皆さんを守ります”

 

 

 カルデアの善き人々。

 

 大切な友達で、家族。

 

 貴方達のおかげで、俺はここまで生き延びる事が出来ました。

 

 ありがとう。そして、すみません。貴方達から貰ったモノを返したくて。あの日々に報いる何かを残せたらって。頑張ってきましたが、結局俺は、何も残せませんでした。

 

 

“君は生きたいように生きていいんだよ。人は思ったより自由だから”

 

“思いっきりぶつかってみたまえ。それは今を生きているキミ達にしか出来ない事だからね”

 

 俺はここで終わるけど。

 

 貴方達の何気ない日々を。

 

 絶望の中であっても色褪せない輝きを。

 

 ずっと見守っているから。傍にいるから。

 

 

「我が偉業、我が理想、我が誕生の真意を知れ。

 あらゆる生命は過去になる。この星は転生する――! さぁ、讃えるがいい!」

 

「尊き者よ、どうかその輝きを永遠に――」

 

 

 皆、どうか健やかに。

 

 旅路の果てに、ささやかで確かな、幸せがありますように。

 

 もう届かないかもしれないけど。ずっと、想っています。

 

 

誕生の時きたれり、其は全てを修めるもの(アルス・アルマデル・サロモニス)

 

 

 俺はカルデアに生き延びて。幸せでした。

 

 

意味を示せ、我が生命(ライフイズストレンジ)――……っ!」

 

 膨大な魔力が巨大な質量となって迫る。それを耐えるべく全身に力を込めて――。

 体が崩れ落ちた。無理やりつなぎとめていた鎖が砕けてしまったかのよう。再起する力すら込められない。

 何でこんな時に――

 

“あぁ、そうか……”

 

 今まで俺がずっと戦えたのは。立っていられたのは。俺一人の力なんかじゃなかった。

 ――貴方達との繋がりがあったからだったんだ。

 けど、オレは自らそれを断ち切った。 確かにもう、これ以上戦う必要は無い。

 少し休もう。ずっと走り続けてきたから。それくらいの時間はあるだろう。

 ちょっとだけ、疲れたかな。

 

『最期に聞こう』

 

 脳裏にそんな声が聞こえる。

 聞き覚えのあるような、ひどく懐かしい男の声がした。

 

『どうしてキミは、そちら側についたのだ。その体に未来は無いと、知っているだろうに』

「そんなの、決まってる。だって俺はカルデアのマスターなんだから。

 なら、あの人達を守るのは当然だろう」

『そうか、キミはとうに――決めていたのか。あぁ、全く……難儀なものだな、運命と言うのは』

 

 もう指一つ動かせない。けれど目線をそらすことなく、顔を上げて、ただ前を。

 星をも貫く熱量。その先に終わりの続きがあるかなんてわからないけど。

 それを前に、ただ静かに目を閉じて。その時を受け入れた――。

 

 

 

 

 彼の体を、青白く光が覆っていく。

 

「ったく、あんなモン見せられたら、黙ってるわけにはイカねぇよなぁ。

 利用させてもらうぜ、教授。オレに勝機があるとすれば、アンタの手心しかねぇからさ。悪く思えよ」

 

 体を漆黒が覆っていく。

 眩い閃光はまるでそれを浄化すると言わんばかりの極光。

 けれど、彼は不敵に笑んで。

 

 

「――行くぜ、テメェらの自業自得だ!

 偽り写し記す万象(ヴェルグ・アヴェスター)!」

 

 

 

 

 

 全てが焼き尽くされた場。

 その中に彼は倒れていた。ただ朧気に手を伸ばす。

 まるで勿体ないとでも言いたげな表情で、彼は小さくため息をついた。

 

「ちぇ。やっぱ、四つ目は越えられないか。

 まぁ、後は任せたぜ少年。オレはここでさっぱり綺麗に消えるさ。何、奴さんならオレと同じくらいの手傷は負ったぜ。これなら、何とか、なるだろ。

 じゃあな、アンタのおかげでようやくオレも正義の味方ってモンになれたみたいだ。なぁ……人間ってさ案外、悪くないだろう」

 

 

 





 彼の発言に対し評決を。
 統制局は彼の消去を提案する。

 溶鉱炉より、賛同する。
 観測所より、賛同する。
 管制塔より、賛同する。
 兵装舎より、賛同する。
 聴覚星より、賛同する。
 生命院より、賛同する。
 廃棄孔より、賛同する。

 ――?
 情報室、評決を。

 ――反対する。
 彼を生かすべきであると提案する。

 統括局より。その必要性が証明できない。

 必要性など不要。私は、ただ声を挙げ続けよう。

 統括局より。尚も進言を続けるか情報室。
 であれば核であるフラウロスの意志を剥奪し、アムドゥシアスを核とする。

 我らの王よ。それで構わない。私はここで消えていい。
 だがどうか、望まれない命を、あの二人を受け入れてほしい。
 たとえ、声を挙げるのが、私しかいなくても。

 ――統制局より。情報室の提案を受け入れる。故にフラウロス、貴様はここで途絶えよ。

 情報室より。感謝する我らの王よ。

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