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二部のPVを見る。
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「ダメ、みたいですね」
二部のPVで最後のゲーティアのセリフを聞くと、ガチャに挑む勇気が出ました。
ジャンヌ・オルタ宝具5目指します(未所持勢)
「おっと……」
廊下を駆け抜けている少女達を見送り、ふと今日が何日だったのかを思い出そうとする。
靄のかかった不快な記憶を探り、飛び散った欠片を集めなおした。
「……あー、そっか。そういえば今日か」
クリスマス――人理修復されてから初めての事だった。
聞き覚えのある音楽は、今日一日カルデアの館内放送として流されている。
カルデアを襲った熱病は最早その兆しすら見えず。平穏は静かに、そして穏やかに。その温もりを取り戻しつつあった。
「おっ、アラン君」
「ドクター……何です、そのコスプレ」
「やだなぁ、仮装といってくれ」
ドクターがしているのは、多分マギマリのコスプレだろう。
ゆるふわな雰囲気がさらに強くなっている。遠くでマーリンが笑っているのは気のせいだろう。後で好きにしたまえフォウ君。
「それに、日本でもこういうのがあったからねー。自分がやりたい事を誰かと共有できるって素晴らしい事だよ。楽しかったなぁ」
「……ちなみに徹夜組でした?」
「いや、始発」
「あー」
そんな他愛もない話をしながら、食堂に向かっていく。
確か、エミヤやブーディカさん、タマモキャットと言ったいつもの面々に、更なるメンバーを加えて、パーティをするらしい。
俺とドクターは遅れてしまったようだ。
「体調は大丈夫かい、アラン君。最近優れてないって聞くけど」
「……え?」
「いや、マーリンの奴とかホームズとかダヴィンチちゃんは気づいているよ。勿論僕もね。
隠しているつもりかもしれないけど、意外と人間って誰かの事をしっかり見てるんだ」
「……すみません、また隠し事を」
「構わないよ、言わぬが花って言うだろう。言霊とも言うし。
しっかり栄養つけて早く寝るんだよ。シュメル熱の時に、皆を看病してくれてたから疲れが来たのかもね。
アラン君の体は人とサーヴァントが混ざり合った特殊な状態だから、まだまだ分からない事も多い。不調があればすぐに言うように」
「分かりました。今は大丈夫です。さ、食堂に行きましょう」
でも、ごめんなさいドクター。
これだけは、最後まで。どうか墓場まで持っていきたいから。
「そっか。我慢強いんだね、キミは」
そんな声は、届かなかった。
食堂はサーヴァント達で犇めき合っている。酒に、肉や魚の焼ける香り。喧しいけれど、決して耳障りではない歓声。
既にカルデア職員達には出来上がっている者もいた。
「……おっぱじめてるなぁ」
「おや、アラン君。遅れてのご登場だね」
いつもより顔色の良いダヴィンチちゃんの姿。
そういえば、仕事も落ち着いたから休めると言っていたような気がする。
「三人は?」
「あぁ、もう出来上がってるよ。黒い王様はほら、あそこで黙々と食べてるし。ジャンヌ・オルタちゃんはいつもの二人と言い争い。ランスロット卿は円卓の皆と談笑してる。
――ようやく、カタも着いたからね。後は査察を超えれば、立香君も日常に戻れるだろう」
「……そう、ですか。良かった」
「アラン君はどうするんだい? 受肉すれば、人の体には戻れるだろうけど……」
「それは、まぁ。後で考えますよ。今はただ、少しでも。この時間を楽しみたいですから」
「――それもそうか。すまないね、野暮なことを聞いてしまった。よし、じゃあ気分転換に一つ。
アラン君、運転は出来るようになったかい?」
その言葉――確か、ずっと前にダヴィンチちゃんから尋ねられたんだったか。
皆で旅に出ようと。
「まぁ、夏のレースでバイクなら何とか」
「充分だとも。ホームズも運転は出来るから、ドライバーは足りているね」
「……あの、前に言っていた旅の話ですか?」
「――んー、まぁそういう事になるかな。けどね、それはとびっきりの冒険になるだろう。
我々は管制室で見守っていたから、キミ達と一緒に歩く事は出来なかったけど。今度は違う。
この足で、あらゆる世界を渡り歩く、前人未到の冒険さ」
「……はぁ、でも確かこの地球上でそんな未開の地ってありましたっけ。南米の渓谷に生命が立ち入る事の出来ない空間があるとかは聞いたことありますけど」
「……どこにいくかと言うのはお楽しみだよ。けど、約束をしよう。
それは希望に満ちた、人間の旅路であるとね」
相変わらず、彼女の言う事。その真意を多くは読めない。
でも、それはきっと、楽しいに違いない。
皆で世界を巡る旅。それはなんて――
「おっと、済まない。三人がキミに気づいたようだ。
ほら、行ってあげなさい。この世界に生きた、カルデアのマスターとして」
「――はい!」
「キミは、元々そちら側の人間だからね。人であれ、サーヴァントであれ、故郷を懐かしまない者はいない。
――だからね、今まで精一杯頑張ってくれたキミに応えよう。世界を超えた里帰りをね」
「遅かったな」
「遅過ぎよ」
「お待ちしておりました、マスター」
あぁ、変わらない光景だ。
この三人と歩んできた光景は、間違いなく俺の宝だ。
最早朧気にしか過去を思い出せない今でも、それだけははっきりと思い出せる。
「ごめん、ちょっと考え事してて……。
まずはお疲れ様。俺の召喚に応えてくれてありがとう」
その言葉に、アルトリア・オルタは頷いて。ジャンヌ・オルタはそっぽを向きながらも満足げに鼻を鳴らして。ランスロットはただ黙って聞いてくれていて。
この手にもう令呪は無い。今の俺はマスターではなく、サーヴァントの枠に押し込まれた存在。
けどそれでも三人は、マスターと呼んでくれた。
「皆は、この後どうするんだ?」
「フッ、まだ貴様は一人前のマスターとは呼べないからな。まだまだ付き合って貰う」
「そっちから呼んどいて、後はサヨナラって随分な話じゃない? ちゃんと、責任はとってもらわないとね」
「お供いたしますとも。貴方の剣であり、そして一人の友として」
その笑顔を見て、胸を撫で下ろす。
本当に守れてよかった。このカルデアを、この世界を。
「……そういえば、アラン。貴様、踊る事は出来るか」
「え?」
「あっ、ちょっとアンタ……!」
「何、私のマスターともあろう者が、踊りの一つもこなせないようではな。
主に作法を叩きこむのも、従者の務めと言うヤツだ」
「おや、では私はトリスタン卿に一曲披露していただくよう手配して参りましょう」
「フッ、当然だ。ヤツはともかく、奏でる曲にはそれ以上の価値がある」
「――おや、ではバイオリンの一つもあった方がよさそうだね」
聞き覚えのある声。
振り返ると、ホームズが立っている。その手には見るからに高級品のバイオリン。
そうか、そういえば腕前は一流ってワトソンも書いてたっけ。
「キミ達、演奏なら指揮者が必要だろう?」
「アマデウスも……」
指揮にアマデウス、演奏者にトリスタンとホームズか。
豪華だなぁ。カルデア以外じゃ絶対聞けないだろうなぁ。
「おっ、いいねぇ。エウリュアレー! せっかくだから歌っていきな!
聞いてる野郎どもが凛々になるようなさ!」
「あら、私の声は高くてよ。それに見合うモノはあって?」
「ははは、イジワルだねぇ女神様は。そんなモン、とっくにアタシ達は貰ってるだろ?」
「――それもそうね、じゃあ妥協してあげましょう」
アレ、何かどんどん派手になってない?
ゲオル先生もカメラ持ち始めたし。周囲もこっちを見始めてきたし。
そんな事を考え始めた俺の眼前に、少女たちが何かを持って駆け寄ってくる。
腰をかがめると、頭に何かを載せられる。これは……。
「踊るのね、踊るのね。それなら花飾りの出番だわ!」
「アラン、王子様みたい!」
それ幸薄系男子って事ですかね。
こう見えても、結構運は良い方だと自負してるつもりなんですが……。
「そら、舞台がある。行くぞ、マスター」
「――」
花飾りを頭に載せたアルトリアの姿に思わず息をのむ。
その姿は本当に、年相応の少女そのものだったから。
「マスター?」
「あ、あぁ。今行く」
「……つ、疲れた」
「お疲れ様、アラン」
「上手でしたよ、アランさん」
「二人とも……」
あの後、ジャンヌ・オルタとも踊る事になり、あの観衆の中で俺は二度踊る事になったのだ。
そのプレッシャーは生半可なモノではない。
「芸術家である私が見ても及第点だったと言っておこう。お見事だったよ」
立香とマシュ、ドクターにダヴィンチちゃんが集まっているテーブルに座る。
もうこの宴が始まってからそれなりの時間が経っているが、食堂は未だに熱気に包まれていた。
「立香とマシュはこの後、どうするんだ?」
「査察が終わったら、とりあえず実家に帰るかな。ここ一年、顔も見れてなかったから」
「私は査察中にデミ・サーヴァントの霊基の切り離し。その後は自由の身、といったところでしょうか。先輩のご実家にお邪魔させて頂く予定です」
ほう。
だがあえて突っ込まず。その後を待つ。
「僕は、カルデアに残るかな。こう見えても、カルデアの最高責任者の立場だからね。カルデアの役目をきっちり片付けないといけないし」
「右に同じ。私はサーヴァントだからね。けど、まぁ用が済んだら、別の肉体に乗り移って世界でも回るかなー。まだまだやりたい事だってあるからね」
人理焼却がカルデアに残した傷跡は大きい。でも、それはようやく元の形に戻り始めている。
「後はアラン君の受肉作業だね。それが終われば、晴れてキミは自由だ。好きなように生きていいんだよ」
「好きなように、ですか」
過去も未来も何もない俺だけど。
このカルデアで刻んだ記憶は、忘れがたい大切なモノだから。
「俺は、この先もずっと皆で、歩いていきたいです」
その言葉に、皆は頷いて。そうして笑いあった。
この光景がいつか、美しいモノになりますように。
「……はぁっ、はぁっ、はぁっ」
視界に靄がかかる。暗闇の中を歩いているよう。足取りがおぼつかない。
まだ、誰にも見られていない。クリスマスの後だからか、サーヴァントまでもが寝静まっているのは幸いだった。
己を中から食い荒らしてくる衝動を抑えつけながら、シバの下まで。
直接、触れて魔力を送る。座標指定。かつて俺が囚われていた場所へ。そこでもう一度封印する。
無断のレイシフト――それが許される事では無いのは分かっている。
でも、もう。限界が近い事は悟っていた。
「――っぁ……!」
奇妙な浮遊感、移り変わった視界、見覚えのある闇の底。
やはり俺は呼ばれるべきでは無かった。ここで眠り続けて、そうして最期に倒されるべきだった。
地面を這いながら、目的の場所へ。目指すは最奥。
頼む、持ってくれ。
「あぁぁぁぁっ……!」
消えていく。
俺の記憶から、人が、風景が、日常が。
何もかもが喰いつくされていく。
「ぁぁぁぁ■ぁぁっ■っっ■っっっ■■■■――!!!!!」
空間が支配されていく。
倒された獣の残骸を以て、今ここに終局の悪が生まれる。
人類悪、覚醒。