思い付きにも関わらず投稿すると言う自分を追い込んでいくスタイル。
目標はエタらない事。
zeroイベが復刻されるであろう事を祈って……。
「さて、今回招集をかけたのは他でもない。新たな特異点反応が検出された」
ドクターから招集があり、管制室に向かった第一声がその言葉だった。
魔術王の人理焼却も阻止し、今後予測されるのはその余波に伴う極微細な特異点の出現。
カルデアスの反応からするに、今までとは違う事が予測できた。
「ただ、今までの反応と違うのは……大きさが変動しているんだ。正直、今後どうなるかが予想できない。人理には今のところ全くの影響はないけれどね。不発弾のようなものだ。
今までは二人一組でキミ達マスターをレイシフトしていたが、今回は念には念を入れて九人マスターを送り込む事を決定した。僕らカルデアにとっても因縁浅からぬ土地でもある」
「ふむ……アーキマン。場所はどこだ」
「……冬木だ。本来ならキミ達Aチームが送り込まれる筈だった場所。元々、その地域は色々と曰く付きなんだ。オルガマリー所長や他部門のリーダーと協議し、現状のカルデアにおける最大戦力を投入する事を決定した」
オルガマリー所長も2004年の冬木であの魔力炉心を見たのだ。
それと同じ場所である以上、今回は念には念を入れなくてはならない。
無論、このカルデアにも他のマスターは常駐している。その中でもAチームと立香はずば抜けていると言っても良いだろう。俺はそれに何とか食らいつけている有様だ。
「なるほど、なるほど。俺達にとっちゃあ、リベンジってワケだ! そいつぁいいね、気合が入るってモンだ! なぁ、カドック!」
「……フン、こっちはこっちで上手くやるさ。アンタはアンタのやりたいようにやれよベリル」
Aチームの面々が招集された理由にも納得がいく。確かに彼らからしてみれば、自身の未練を果たす機会でもある。
けど、どうしてか。酷く胸騒ぎがする。――まるで、呼ばれているような。
「今から二時間後に一斉にレイシフトを敢行する。それまではこちらで可能な限り情報を集めておくよ。
マスター諸君は充分に英気を養ってほしい」
ドクターのその言葉を聞き終えると共に、俺はすぐにダヴィンチちゃんの工房に足を運んだ。
魔術こそ研鑽を積むべく弟子入りしているが、到底実戦では扱えたものじゃない。だからと言って、何も出来ないと言う現実をそのまま受け入れる訳にもいかない。
自分だからこそ、今出来る事を。
「おっ、来た来た。丁度間に合ったよ、コレ」
「すみません、いつも手間を」
「なーに、キミには色々とサンプルに手伝ってもらってるからね。そのお礼として安いものだ」
ダヴィンチちゃんから貰ったのは、魔術礼装のナイフ。前回「」から聞いた俺の体質に合わせて、何か特別な機能を入れられないかとダヴィンチちゃんに打診したのだ。
俺はいつも守られてる癖に、何も返せていないから。
せっかくこんな体質があるのなら、すり減るまで使い潰す。ただそれだけを考えた。
「あまり多用しないようにね。今後何らかのデメリットがある事は否定できない。
利を求めるのであれば、苦が待つのは当然の事だとも。タダになれてはいけないぜ?」
「わかってますよ、苦労しないと人は腐りますから。特に俺は守られてばかりでしたし」
「ははは、キミがそれを言うと笑えないかな。
次はもっと気の利いた洒落を期待してるよ」
「……はい、努力します」
ダヴィンチちゃんに礼を言って、代金替わりのQPと素材を支払う。
手にしたナイフを仕舞って、次に自室へと向かう。サーヴァント達の調整だ。特異点にカルデアが保有する全てのサーヴァントを送り込む訳にはいかない。そんな事をすれば、人理定礎は証明負荷に耐え切れず崩壊する。
故に選び抜かなければならない。
他のマスターとの連携も考える。オルタやカルナも出来れば連れていきたいが、彼らの言動が他のマスターやサーヴァントを刺激しかねない。だがどちらも火力においては他者の追随を許さない魅力がある。カルデアに来てから日の浅い魔術師にマスターを変われと迫られた事もあるが、丁重にお断りさせて頂いた。
ランスロットとインフェルノは他のサーヴァントと共も連携が取れやすく、いざと言う時の機転も利く。特にランスロットの宝具も応用力があるため大きな助けだ。そして精神的にも強い支えとなってくれる。
キアラは彼女の状態を見て判断する。出来ればアルターエゴの力は使ってほしくない。彼女には人のままでいて欲しいから。
「」は……他の魔術師の前では姿を隠している。彼女の秘密に気付けば、それに関係する者達に接触を図ろうとする輩が出るからだろう。ただし、ダヴィンチちゃんから貰った礼装を使用するには彼女の協力が不可欠だ。どうしても同行を願わなくてはならない。
――サーヴァント達にこうして協力を頼む都度、俺は自身の無力さを呪いそうになる。
俺には何も出来ない。誰かに救われて、救われ続けてようやく生きているこの俺が、未だに何も返せずに此処にいる。
だから、少しでも。自分を使い潰していくしかない。
それが、それだけが俺の存在証明なのだから。
「あぁ、全く。どうしてキミはいつもそう、我が身を考えないのか。
私には分かるよ、アラン君。キミはいつも誰かを求める。崩れ落ちようとする誰かの体を支えたいと言わんばかりに。
――サバイバーズギルト、なのかな。ならばキミのソレは一際重いだろうね。私達でも想像出来ない程に、怖いんだろう。
だから……その荷物を、一緒に背負わせてくれ。それ以上、申し訳ない顔をしないでくれ。無理に笑おうとしないでくれ。
キミはキミのままでいいんだ。――私達が、そう証明してみせるよ」
全マスターの準備が整った。
参加するマスターはAチームの面々に加え、立香と俺の合計九人。
既にAチームは単独で数多くの特異点を修正する実力を見せており、彼らの実力は疑うべくもない。
頼もしいと言わんばかり。けど、何故か。胸騒ぎが止まらない。
何か酷く、引き付けられているような気がする。
「レイシフト、開始します!」
いつものように、意識が飛ばされる感覚に身を委ねる。
――刹那、骨の髄を削るような悍ましい寒気を覚えた。
■ね
死■ 死ね
死ね
死ね死ね 死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね何故何故違う何故何故お前だけお前だけ生き延びてどうか生きて何故何故死ね死ね何故死ね死ね苦しい熱い痛い死にたくない嫌だ嫌だ嫌だ貴方だけでも苦しい苦しい苦しい助けて助けて何故何故何故何故何故苦しめ苦しめ苦しめ呪われろ憎悪されろ何故何故生きて何故何故お前だけお前だけ生き延びて振り返らず何故何故死ね死ね何故死ね死ね苦しい熱い痛い死にたくない嫌だ嫌だ嫌だ一人でも多く苦しい苦しい苦しい助けて助けて何故何故何故何故何故苦しめ苦しめ苦しめ呪われろ憎悪されろ
お前も こっちに 来い
違う 私達の願いは 彼が――
「! 何だ、何が起きた!」
「レイシフト、弾かれました! 全員失ぱ……いえ、マスターアランだけが強制的にレイシフトされています!」
特異点を検出。座標特定開始。
変異特異点 第四次異聞録冬木 アクセルゼロオーダー
異常を検知。
■■特異点 ■■■■■■冬木 アクセルゼロオー■ー
特異点の変質、変性を確認。座標再度調整。特異点反応の完全証明を確認。
エラー、エラー。これは人理には影響無し――レイシフトの中止を提案――。
これは、願いを否定する物語。
人理定礎値/zero
追想特異点 回帰願望都市冬木1994 アクセルゼロオーバー
――そう、まだ諦めて無かったのね。
待っていてね、マスター。
例え世界が閉ざされていたとしても、それを超えて必ず貴方の下まで。