多分後四話ぐらいで終わります(えっ)。
自分の作品、どうしても最初が盛り上がりの最大瞬間風速なんですよね……。
話が少ない理由はzero本編と被るところはなるべく減らしたいんです! 許してください! 何でもしますから!
おら、おっきー私服着替えるんだよ、あくしろ(ガチャガチャ)
「そら、どうした。動きが正直だな」
「っ、同じ騎士王でありながらこうも違うか……。
貴公に騎士の誉れは無いのか?」
「何の役にも立たない飾りはとうに捨てた。そんなものであの男を救えはしなかったからな」
ディルムッド・オディナは押されていた。それは彼が弱いからではなく、連戦である事。そして彼女の戦闘スタイルが彼と全く相性が合わないからだ。
先ほどのセイバーの剣技が穏やかな涼風であれば、セイバー・オルタの剣技は荒れた暴風と言う他ない。例え同じ軌道に見えようとも、触れれば瞬く間に吹き飛ばされる。
彼の技量は紛れも無く戦士として一級品だ。風王結界に覆われた剣の間合いを、感覚だけで捉える程に。
だが、その絶技が彼を苦戦に追いやる一番の原因であった。それ以上の決定打が無いのだ。
彼女は魔力を惜しみなく使用する。膨大な魔力を以てして、極長の連撃をたたき出す。得物の間合いを隠すのでなく、魔力で延長させると言う特性上極めて読みづらいのだ。加えてその威力は、一撃で並みのサーヴァントを消し飛ばす必殺でもある。
魔槍で何度か掻き消したが、焼け石に水としか言えない。
“くそっ、何とやり辛い……!”
「そこだ」
斬り上げ――その一撃を防ぎつつ大きく背後へ下がる。
単調な動作の癖に、打ち込まれる破壊力は比較しようがない。
槍で牽制しつつ、戦況を見る。
先ほどまで彼と戦っていたセイバーは、黒のアーチャーと交戦中。やはりやりにくいのか、思うように攻め切れていない。ディルムッドの戦闘で負傷した影響が大きいのだ。そしてそれを見抜いたのか、黒のアーチャーも少しずつセイバーの体力を削り取る戦術を取っている。
ライダーは観戦している最中であり、彼のマスターも何やら諦めた表情。
八人目のマスターである謎の少年――着物のセイバーに周囲を警戒させつつも、戦いの趨勢を見守っている。いや、アレは何かを読み取ろうとしているようにも見える。
ここからどう形勢を覆すか。ディルムッド・オディナは一手先を思案する。
“あのセイバーを無視してマスターを狙う――無謀だな、相手が増えるだけか……。
第一、これ以上フィオナ騎士団の名を汚す事は出来ん……!”
槍を足で打ち出して当てる事も考えたが、それは先ほどのセイバーとの一戦で見せている以上、二度目は通用しないと考えて然るべきだろう。
その様子にセイバー・オルタは小さく舌打ちした。さもつまらないと言いたげな様子で。
「マスター、どうする。このまま潰す事も出来るぞ。
既にコイツの技は見た。押し切る事も可能だが」
それは事実である。
ディルムッド・オディナにとって宝具とは手段であり、切り札では無いのだ。かのケルトの大英雄にも匹敵する程の技量こそが、彼をサーヴァント知らしめる力である。
セイバー・オルタは剣技ではなく、莫大な魔力を以て物量で相手を圧倒する。故に彼とは相性が悪すぎる。
「――ランサーのマスター、見ているんだろう。
彼を、ディルムッド・オディナを引かせてくれ。これ以上この場で戦っても、彼に。そして貴方達の陣営に勝ち目は無い。令呪まで使わせてこの場でマスターを狙うのは、正直無謀だ。
……戦い慣れしていないな、貴方」
『っ! ……わざわざ勝利を手放すと? さすが、サーヴァントを複数も保有しているだけある。
安全を約束された場所で謳う勝利はさぞ優越だろうな』
「まさか。俺はただ、サーヴァントには。願いを果たして貰いたいだけです。
そこのディルムッド・オディナの事も知っています。彼の生前も、伝承も。そして多分、彼が聖杯にかける願いも」
その言葉に唇を噛んで。ディルムッドは少年の目を見た。
戦士の目ではない、けれど決して死を知らない者の目でも無い。
ただ何を口にするべきか、僅かに迷う。
自身の願いを、主に伝えなくてはならない事を、彼の意志に委ねても良いのか。だがそんな世迷い事を、騎士たる己が看過して良い筈がない。
『――退くぞ、ランサー』
「なっ……」
『もうよい。貴様の迷う顔などもう沢山だ。アーチボルト家の名を、サーヴァント風情に落とされてはたまらんからな。
八人目のマスター、その羽織。見たところ時計塔の魔術師と思ったが――見ない顔だ。
あのアーチャーが語った事を察するに貴様、アニムスフィアの者だな?』
「……」
『やはりか、あの小娘よりヴォーダイム家の方がさぞ跡取りには相応しかろう
貴様から剥ぎ取った魔術刻印を送り付けてやると、マリスビリーに伝えておけ』
――ランサーが撤退した。
残りは黒のアーチャーとセイバーのみ。
ランサーのマスター――セリフから察するに時計塔の関係者だろう。
オルガマリー所長の家であるアニムスフィアを知っており、そしてヴォーダイムの名も出した。
俺の服装とギルガメッシュ王との話だけでそこまで見抜かれた事に肝を冷やす。
――サーヴァント対決で本当に良かった。もしマスター同士なら、確実に死んでいた。
「さて、次はどうする? ランサーは引いた。あちらも果敢に攻めてくる様子は無い。
このまま事を長引かせても、時間の無駄だと思うがね。親指を負傷しているのは剣士にとって致命的だな」
「……」
「ほう、ならば今度は余と一戦交えるか? 貴様のサーヴァント総出でかかってきても良いぞ小僧」
「いえ、さすがにそれは……」
ライダーは手綱を持ち、小さく肩をすくめた。
「まぁ、やりあうのはまた今度だな。今の小僧とは戦ってもつまらん。覇気のない時にやり合っても勿体ないわ。
もうちょい、こう。野心ってモンを出せりゃ、こちらも一つ張り合う気になるんだがな」
「それは同感だ、征服王。このマスターには欲が無さ過ぎる」
「ははあ、そいつは良くない。が、説教垂れるのはまた今度だ。
では、さらばだ皆の衆。今度は余と覇を競い合うとしよう! ふはは、胸が高鳴って仕方ないのぅ!」
豪快な笑い声を残しながら、ライダーは戦車を操り空へ消えていく。
いいなぁ、戦車とか乗ってみたいなぁ。アキレウスに頼んだら乗せてくれないかな。
「……随分余裕そうね、八人目のマスターさん?」
「まさか。余裕なんて無いですよ。いつも必死ですから」
「」曰く、今俺は狙われている。
遠方から二ヵ所。いつでも撃とうと思えば撃てるだろう。
オルタ達を信頼していない訳ではない。ただ、この場で出来る限り情報を引き出したい。
エミヤ・オルタも召喚されたばかりであり、そこまで詳細に把握出来てはいないとの事だ。
「……」
彼女の右手はよく見えない。隠されており、恐らくそこには令呪があるだろう。
恐らく三画残っているだろうし、それを使えば俺を仕留める事は出来るかもしれない。アルトリアはそれだけの力を持ったサーヴァントだ。
「酷い顔だな、仮にもブリテンの王なのだろう。何だ、その迷い子のような面は。見ていて虫唾が走る。
さぞその騎士王は使いにくかろう。あの滅びを見届けておきながら、尚も綺麗事を信じる等、まるで呪いだな」
「その言葉は心外だぞ、アーサー。貴方も星の聖剣を手にしたのであれば、それに適う心を持つべきだ」
「フン、よく吼え――」
「ほら、アルトリア、必要以上に挑発しない」
俺の言葉に、アルトリア・オルタはむぅと呟く。
あぁ、そうか。負けず嫌いだから、猶更自分には負けたくないのか。
オルレアンでも立香のアルトリアと張り合ってたしなぁ……。
閑話休題。これ以上話を続けても、望んだ情報は得られないだろう。
と言うよりも今はただサーヴァント達を休ませてあげたい。
「――じゃあ僕らも、これで。あ、それと……」
「……」
「聖杯戦争に参加する時の、参加表明ってどこですか?」
俺の言葉に、セイバーのマスターは目を瞬きさせた後大きくため息を吐いた。
倉庫街から飛び去ったライダーとウェイバー・ベルベットは戦車の上で、今後の方策を考えていた。
無論、その根底にある感情の方向は正反対であるが。
イギリスに帰りたいと言う思いとは裏腹に、頭のどこかは策略を練り続けている。
早速自分がこの男に影響され始めているという事が癪だった。普段は煎餅かじってビデオ見てる癖に。
「さて、どうするか。あの小僧のサーヴァントはどいつもこいつも難敵だぞ。
うははは、どう知略を巡らせるか楽しみで仕方ない」
「あのなぁ……。こっちは一人なのに、向こうは三人もいるんだぞ。どう考えたってボク達が不利に決まってる。各個撃破か、或いは話自体分かりそうなヤツだったし同盟を組むか……」
「心配するな、坊主。余には数の利など、如何様にでも覆せる」
「まぁ、確かに。あのアーサー王を除けば、お前なら倒せそうなヤツばかりだけど」
ふむ、とライダーは顎に手を当てた。戦略家の思考になったと、その瞳が物語っている。
彼にとって今のウェイバーの言葉に、何か思うところがあったのだ。
「なぁ、坊主。貴様はあの小僧のサーヴァントでどいつが一番厄介に見えた?」
「厄介って。そりゃアーサー王だろ。あんなに魔力をまき散らすかなり容赦ない戦い方だったし、正直戦車でも対抗出来るか……」
「……では、坊主。貴様、戦場で自分の警護をさせる時、どいつを一番近くに置く? そう難しく考えるなよ? 単純に考えてみよ」
「そりゃ、守りが上手いとか強いとかじゃないのか」
「ほう、そいつは何故?」
「何故って……。上を落とされたら終わりだからだろ。マスターはサーヴァントにかないっこないんだから」
そこだ、と言わんばかりにライダーは頷いた。その答えに満足そうに。
「何だ、分かっておるではないか坊主。あの着物の女。あれが一番の強敵だ」
「でも見たところただの女の子だったけど……」
「見た目はな、華奢な小娘だが――余から言わせて貰えば、あれは獣だ。外面には一見清楚な女子のようだが、内面に見えぬ牙を潜めておる。
いや、正直に言うぞ。気配が全く掴めなかった。アサシンのクラスと言われても、疑いようがない程にな。余の目を以てしても奥が見えん」
「……反則だろ、そんなの」
「そいつの手綱をしっかり握っている辺り、あの小僧中々肝が据わっておる。それに余の戦車を物欲しそうに見ておったしな。
うん、将を落とすのは楽だろうな。案外、簡単に口説き落とせるかもしれんぞ」
「そんな単純なワケが……! 何だ、今の」
ウェイバーの視界には、戦車の前方を何かが飛来していったようにも見えた。
ライダーも同様であり、地表辺りに目を光らせている。
全く当てるつもりのない速度であり、どちらかというと信号弾の役割に近いようにも思える。
「あいつはバーサーカーか。
……魔力が強化されてる。令呪のバックアップでも受けたのか……?」
視界を強化する。――見えた、影を纏う黒騎士と傍らにいる二人の人影。
男性と年端も行かぬ少女の二人が倒れている。どこかから連れ出されてきたのだろうか。
「一戦交えようって腹じゃあ無さそうだな。下りてみるか?」
「……警戒しつつな。何せバーサーカーなんだから」
「よし、行くとするか!」
倉庫街から去り、大橋のふもとまで来た後で俺はもう一つ問題に気付いた。
――宿が、無い。
肝心のエミヤ・オルタは、また明日の夜気配を追って合流すると言い残しどこかへ消えたのである。
「……どうしよう」
「私は野宿でも構わんぞ」
「同じく」
二人はそう言ってくれるが、女の子二人を外に寝かせるわけにもいかない。
金も無いし、カルデアからの支援も無い。まさか今更どこかのマスターの家に乗り込んで泊めてくださいなんて馬鹿を言えるはずもない。
暗示? 使えませんよ、そんなの。
「……仕方あるまい、どこかの陣営の拠点を落としてくるか。待ってろマスター。聖剣をぶっぱして――」
「ダメダメダメ! まだ状況が整理できていないんだから! 火の粉を払う程度に!」
戦力に関して不安は無い。やろうとすれば、マスターを暗殺なんて事も可能だろう。
けれど。けれど、出来れば倒したくない。殺したくない。もし共に生きる道があれば、それを模索したい。
敵の正体も分からず倒せば、残るのは後悔だけだ。
はっきりと覚えている訳ではないけど、バビロニアでの一件が尾を引いていて仕方ないのだ。
「優しいわね。貴方のそういうところ、大好きよマスター」
「……あ、ありがとう」
「おい、惚気るな。私もお前のサーヴァントだぞ、同様に扱え」
「あら。構ってほしいなら、そうと言えばいいのに」
「……ちっ、やりにくい」
と、アルトリア・オルタが鎧に姿を変えた。
サーヴァントの気配を察知したのだろうか。
――そう思ったとたん、また彼女は鎧を解除していつもの私服に戻した。
「――arrr……」
見ればバーサーカー・ランスロットがそこにいた。感じる魔力は倉庫街の時よりも桁違いだ。令呪を全画使用、そう考えてよい程に。
俺を前に、片膝を着いて。それはカルデアで彼が俺に何度も見せてくれた騎士の誓い。
「……貴方は」
「mas……ter……」
「貴様が、強制的にレイシフトされた後、サーヴァントの接触も不可能になった。この女が貴様の血を辿って座標を観測。ようやくこちらからも接触が可能になったと言う所だ。
尤もカルデアから直接乗り込めたのは私とこの女の二人だけだ。ランスロットはここのバーサーカーと意識を同調。狂気を支配し、馳せ参じたと言う訳だ。突撃女は拒否されたぞ、ざまぁみろ」
下総で立香の下まで来れたのが小太郎だけ、と言う状況と類似している。
じゃあ元々ここにバーサーカーのランスロットがいて。その意識はカルデアで俺と契約したランスロットと言う事か。だからあの倉庫街で、俺を助けてくれたのだ。なんて心強い。
それとカルデアに帰ったらジャンヌに謝ろうねアルトリア。俺も一緒に行くから。
「バーサーカー、貴方の本来のマスターは?」
「――■■■」
「脱出させたそうね。未練があったそうよ」
「……そっか、救いたかったんだ」
ランスロットと再度、契約が繋がったことを知る。
その感触に安堵した。特異点でも幾度となく、彼には助けられてきたから。
「マスター、着いてこいと言っているようだ」
ランスロットの指示する通りに進み、辿り着いたのは街の一角。邸宅とでも呼んだ方がいいのだろうか。
表札には間桐と書いてある。
家主には申し訳ないが、不気味な雰囲気が漂っており人を寄せ付けない空気が醸し出されている。
「間桐って言えば、確か御三家の……」
「……ほう、よくやったぞランスロット卿。喜べマスター。
この邸は無人のようだ。マスターであった人物も街を離れた以上、使う人間もいないだろう。
面倒な
「……有難い」
全く頭が上がらない。
拠点の確保と言う一番の問題が、これで解決した。
「結界とか張って、安全を整えてから休もう」
「ふむ、細かい所に汚れが残っているな。待ってろ、夏に鍛えたメイドスキルを見せてやる」
「あぁ、いや。そこまで気を使わなくていいからね?」
冬木。第四次聖杯戦争――何故そこに突如特異点反応が現れたのか。そして俺だけレイシフトが出来て、他のマスターが全員弾かれたのか。
魔神柱かそれともビースト案件か。或いはどちらでもない、未知の脅威か。それともカルデアが残した負の遺産か。
別にどれでも構わない。俺は戦って生き延びて、必ずカルデアに帰還する。
とある駐車場。衛宮切嗣は久宇舞弥と連絡を取り合い、ランサーのマスターの潜伏先を特定。案の定、冬木市ハイアットホテルのスイートルームに陣地を構えていた。
高い所に陣を構えるのは戦略的には有効だが、れっきとした魔術師にそんな知識がある訳が無いだろう。
何とかと煙は高い所が好きとの言葉通りだ。
事前に仕掛けておいたTNT爆薬を用いた、ホテルの爆破解体。巨大な建造物を支える最低限の地盤を破壊し、後は建物自体の重みで完全に崩壊させる。
参戦した陣営が増えた以上、セイバーがランサー戦で受けた呪いを解除しなくてはそもそも話にならない。
傷が完全に癒えていればあのアーチャーにも後れを取る事は無かった筈だ。
「……」
後はコードを打ち込めば、爆弾が信号を検知。自動的に爆破される。
それを打ち込むべく手を動かし――手にしていたPHSが鳴る。
番号はアイリスフィールからだ。
爆破を優先させるかを考えたが、セイバーが傍にいる事を考慮すると何かあったと考えてもいいだろう。彼女は強い女性だ。例え困難が立ちふさがろうとも、自身で乗り越えようと恐怖を払拭する勇気がある。
「アイリ、どうかしたかい?」
『キリツグ、セイバーの傷が……!』
「――何?」
冬木市ハイアットホテル。
純白のカーペットには血が飛び散っており、床には二人の死体が転がっている。
ケイネス・エルメロイ・アーチボルトとソラウ・ヌァザレ・ソフィアリが、悲壮に表情を狂わせたまま事切れていた。
「貴様……倉庫街の時は意図的に手を抜いていたか……!」
「あぁ、恨まないでくれ。これはオレが勝手にしている事でね。マスターの指示では無い。
だが、その願いを叶えるためにも手段は必要だ。――その二槍、精々利用させてもらうよ。元より戦士とは使い潰されるためにあるようなものだろう?」
ディルムッド・オディナは惨い有様であった。片目は潰され、四肢は砕け、体幹にはいくつもの風穴が出来ている。
――二槍を振るう彼の技量に追いつけるサーヴァントは、それこそ名を馳せた英雄に他ならない。
だが、拳銃を携えた男は違う。
ディルムッドは彼をサーヴァントだと思っていた。この聖杯戦争で、マスターに呼び出されたモノだと。
――否、断じて否。目の前にいる男は普通のサーヴァントでは無い。倉庫街で見せたのは偽装に過ぎない。
何故、何故誰も気づかなかった。この男だけは、他の場所から支援を受けている。それもマスターではない存在から。
「ではな、ディルムッド・オディナ。恨み言の続きは地獄で聞いてやる」
また銃声が一つ響く。――後に残されたのは無常な沈黙のみ。
「――眠れないの?」
「うん、まぁ。色々と大変だったから」
邸宅の一室で、彼は空を見上げていた。
傍らに降り立った彼女を一瞥して、彼は小さく息を吐く。
「それにしてもいい月だ」
「……お芝居はそこまでにしたら? 私が彼を見抜けないとでも思ってる?」
「ありゃりゃ、そいつは失敬。イケると思ったんですが。
アンタも力使ってて大変だろ? 異星の神様だが外宇宙の存在だが知らないけどさ。この体のお守りも大変だね。分子を支配する戦いってのは疲れるでしょ?」
彼の体に黒い紋様が浮かび上がる。その口元には獣のようなニタリとした笑み。
それを見て彼女もまた小さく笑った。
「彼の体を知る存在は私一人で十分だもの。今更欲しがっても渡すつもりなんて無いわ。世界が終わる夜明けまで、私は彼と共にいるから」
「ヒュー、お熱いコトで。挙式の予定があるならいいシスターと教会に当てがある。格安で紹介するぜ? ……あ、やっぱりやめとくわ。何か怖いし」
「お気遣いどうも。それで、どうして貴方が出てきたのかしら?」
「いやいや、オレも完全に消えるつもりだったんですがねぇ。この器が逃がさねぇって言わんばかりに引っ張り上げる訳ですよ? イイ夢を見させてもらった礼はロンドンで返した筈なんだけどさ」
「……そう」
「今更出る幕も無いだろうし、奥底で一眠りするかと思ったらこの有様だ。
一応、この街には切っても切れない縁があるんでね、色々と懐かしくなったのさ」
「貴方、本当に人間らしいわね」
「前のガワのおかげさ。悪はどう反転しても正義にはなれないからな。それにもしかすると今回は、オレにも責任の一端がある。
――アンタにはこの世界、どう見える?」
青年の言葉に、少女は目を瞑って小さく頷いた。
「夢の中、かしら。誰かの記憶を頼りに生まれた現象がカタチとなって顕現した一つの塊。形無き人々の空想によって作られた正史の過去」
「へぇ、そいつはまあ何とも。
オレには夢には見えないがね。コイツは願望だ。純真無垢な祈りそのモノだ」
「……」
「願いは悪意に利用される。真っ白な祈りはドス黒い欲望に変わる。こんなに綺麗な願いなのにな。あの黒のダンナはそれに気づいちゃいないみたいだけどさ。誰だっていくつもの願いを抱えてる。
隈なく隠されたら気づけないのが人間ってもんさ」
世界で一番幸せになりたいと言いながら、誰かの幸せを真摯に願う。平和であれと謡いながら、争いに手を染める。そうでありながらどちらも捨てる事を躊躇う。
人は矛盾した生き物だ。それを彼も彼女も知っている。
この世界――この特異点は、そこを利用された結果なのだと。
「だがそれに気づくにはどうしても気付けの一発が必要だ。さて、このガワはそれを耐えられるか見物だね。まぁ、耐えてくれないとオレもキツいんだけど」
「大丈夫よ、彼は私が守るもの。いつか彼の存在が忘れられてしまったとしても。ずっと、ずっと――」
「おいおい、アンタのずっとはシャレになんねぇよ。どこぞの月の女神ですか。……っと、それと同じぐらいの存在だったな。
にしても心強い懐刀がいたもんだ。だが振る舞いには気を付けなよ。
そっちにそのつもりはなくても、追われる側には後腐れになっちまうもんさ。アンタの存在がコイツの負い目にならなければいいけどな」
「まるで経験してきたような言い方ね」
「言っただろ? この街には思い出が多いのさ。オレは四日ぐらいで飽きちまったがね。それじゃあよろしく頼むぜ。この体から生まれた悪意は、全部オレが呑み込んでやるさ。そういうのなれっこだしな」
――僅かな沈黙の後、少年は少女に静かに告げた。
その一言を、誰かに伝えて欲しいと言わんばかりに。
「死んだらそれで終わり――じゃない。死んだ者の想いが、生きる者に届くことだってある。もう声をかけてやる事は出来なくても、その背中を押してやることぐらいは出来る。
そいつが
今、この体を突き動かしてるのはソレだ。自分だけが生きてしまったから、今を生きる人達のために、全てを捧げるなんて妄想を信じ込んじまってる」
そんなものは捨てようと思えば捨てられる。無かった事にだって出来る。それは決して悪でもない。
けれど彼は、結局生き延びてしまって。生きる事の楽しみをもう一度知ってしまった。
――故に彼はそれから目を逸らす事が出来ずにいる。生き残ってしまったと言う罪から救ってくれる免罪符を探し続けている。
カルデアの日々は彼にとって確かな幸福でもあり、傷口を抉るトラウマでもあるのだ。
「だから言っとく。こいつから目を放すな。閉じこもる事を許すな。
もしそうなっちまえば、コイツはカルデアの敵になる」
「……私がいるわ。
彼を一人になんてさせない。例え何があったって……。必ず……」
「そうかい。なら安心だな。この小言も余計なコトか。
そんじゃあオレはまた引っ込んどきますよ」
――青年の体から紋様が消えていき、張り付いていた笑みが消える。
少女は彼に歩み寄って、その隣に腰かけた。
「……あれ、何で俺ここに」
「私が連れてきたの、マスター。この景色を貴方と見たいと思ったから」
その言葉に彼は目の前に広がる光景を見て、小さく微笑んだ。
少女の手をそっと握る。
「……そういえば、キミと二人きりで過ごす時間って部屋以外だと無かったな」
「……そうね、あの旅は貴方にとって、瞬く間に通り過ぎていく雲のような日々だったもの」
そうだ、と彼は声を挙げた。一つ大切な事を忘れていたのだ。
彼女に報いるモノを。あの地獄のような日々の中で、寄る辺になってくれた彼女に。まだ自分は何もしてあげられていないと。
「何か、望む事とか無いか? もし俺にできる事なら、出来る限りの事を尽くす」
「――」
彼はそう言った。その言葉に少女はかつての光景を思い出す。
――知っていた。あの時の少年の答えなど、質問を問いかけた時から。でも聞かずにはいられなかったのだ。
願いを問う側であった筈がいつの間にか、願いを問われる事になってしまった。その事に少女は思わず苦笑する。
「ありがとう。……でも、いらないわ。このワタシには今の貴方がいるだけで充分だから」
もう、独りじゃない。
それだけで、今の彼女がこの夢を見続ける意味はある。
だからそれ以上、何も望まない。
「そっか……変な事聞いたな。ごめん」
「いいえ。それよりマスター、ほら。綺麗な景色よ。
一人で楽しむには、ちょっと広すぎるわ」
「……いつもありがとう、セイバー。キミに出会えて、本当に良かった」
「――。えぇ、どういたしましてマスター」
体の奥底でソレは語る。
最早誰にも届かぬ警句を。
“忘れるなよ少年。未来も世界も終わりには向かっているが、ひとりでには壊れない。人も術式も、それは同じだ。
――そうなるように仕組んだ者がいる。そいつがアンタ達の敵だ”
倉庫街君、とあるオルタにより原作以上の被害を受けた様子。
(朗報)雁夜おじさん、桜ちゃん病院へ搬送。聖杯戦争より円満退社。
臓硯氏、とある黒騎士より「AUOから奪った(不死殺しの)宝具で、死ねぇ!」と奇襲を受け、退場した模様。本体が別にある? うるせぇ、斬られたんだから死ね。
ランスロット氏、拠点と資金の両方を確保しオリ主に献上すると言う、元主君を差し置いて理想の働きぶりを見せる。
デミヤ、暗躍開始。
ランサー陣営ボッシュート。AZOで救済されたんだからええやろ。
ケリィ「ランサー落ちたんか、じゃあ爆破ええわ」ポイー
ホテル「許された」
運営スタッフ「助かった」
まぁいいや「ケーキが無事でよかった」
「」氏、ホロウの正ヒロインよりヒロインの風格を指導される。