カルデアに生き延びました。   作:ソン

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Lostbelt No2クリア記念に。
Fateのシナリオ本当好き。やっぱり恋の物語なんやなって。

ナポレオン爆死したので撤退します。シナリオ見たら引きたくなりましたが、三周年記念と水着がある以上、深追いは出来ぬ……。



After5 消えぬ炎

 

「うぅ、冷えるなぁ」

 

 カルデアの空調設備が破損。人理修復後、メンテナンスはしていたらしいのだが、とある電気系サーヴァントの改造に耐え切れなかったらしい。

 明日には修理されるだろうが、今日は空調無しで過ごさなければならない。

 外の気温は氷点下である以上、どうしても室内の寒冷化は避けられない。

 

「寒くないか」

「大丈夫よ、ありがとう」

 

 自室に炬燵をセット。サーヴァント達も冷えると思い、今夜だけは俺と契約しているサーヴァントを全員、呼んでいた。

 彼女の隣に座り込んで、足を入れる。何て温かい。

 こんな何気ない平和な一時が酷く愛おしい。俺の永い旅の果てに得たモノは、近くて遠い日常。きっと平凡だと思われるであろう、ささやかな幸福だった。

 

「ちょっと、狭いんだけど?」

「痩せるがいい、駄肉め」

「ふーん、持たざる者のひがみってヤツ?」

「マスター、コイツ切り落としていいか」

「やめてください」

 

 オルタ達は変わらず。まぁ、長い付き合いになったし、何となく彼女たちの事も分かるようになってきた。

 長い付き合いになる。戦闘でも頼りになるし、俺がまだ未熟だった時は大きな支えでもあった。今でも未熟さは変わらないけど。

 

「現代機器には驚くばかりです。我らの時は寒さは凌ぐと言う選択肢だけでしたが。

 あぁ、いやガウェイン卿は聖剣を使っていたな……」

「マスター、オレの力なら部屋の温度を上げる事は容易いが?」

「私も、マスターの御身のためであれば……!」

「あぁ、いや大丈夫だよ。ありがとう二人とも」

 

 二人の気持ちは嬉しいが、もし何かあった時の消火役がいなくなる。まさか火消しの水を大英雄であるフィン・マックールに頼む訳にもいかないだろう。

 彼の人柄なら乗り気かもしれないが、俺の気が引ける。そんなことしたら、アイルランドの人々に申し訳が立たない。

 

「……主もそろそろ休息を取るべきでは」

「えぇ、疲れがたまっているようにも見えますわ」

「昨日、夜更かししただけさ。なんてことないよ」

 

 Aチームの呼び出すサーヴァントの伝承も中々に興味深い。

 文字の世界では彼らの姿を想像する事しか出来なかった。けれど、実際に会って話をして。もう一度物語を読むと、また違った興味深さがあるのだ。

 こればかりはマスターと言う立場を経験しなければ分からないだろう。

 おかげで、寝不足になってしまうのは珠に瑕だが。

 そういえば飲み物を用意してなかったと、上の棚のクローゼットを開ける。

 

「あれ……」

 

 お気に入りのココアが無い。

 いつもそれを飲むのが日課だった。人理修復の旅においても、そういった以前の日常を思い出せる欠片であり、それがいつしか習慣になっていたのだろう。

 

「そっか、切らしてたんだっけ」

「創りましょうか?」

「いや、大丈夫。多分、食堂にあるだろうから取ってくるよ」

「オレで良ければ取りに行くが?」

「ありがとう、何かあったら念話で呼ぶから」

「お気をつけて、マスター」

「迷子にならないでよ?」

 

 そんな言葉を背に部屋を出ていく。

 カルデアの照明はほとんど落ちており、月明かりだけが光源であった。恐らく他の部屋でサーヴァント達や職員も騒いでいるに違いないのだが、音が全く聞こえてこないのは騒音対策が完璧だからだろう。

 食堂についてもやはり誰もいない。

 

「さて、替えはっと……」

「――何してるの? アラン」

「オフェリアさん」

 

 オフェリア・ファムルソローネ。元Aチームのマスターの一人。レフ・ライノールのテロにより爆殺された人物の一人。

 蘇生後はマスターとして在籍。そしてキリシュタリアさんと共に俺に魔術を教えてくれる師匠的な存在でもある。

 

「ちょっと切らしてるモノがあって、取りに来たんですよ」

「サーヴァントにさせないのね」

「まぁ、自分で出来る事は自分でしたいですから」

「……そう。確かにそうね。

 丁度良かった、一度貴方とはゆっくり話してみたかったの」

「? 俺でいいなら、喜んで」

 

 二人分のココアをさっと作る。やはり何か飲むものがあった方が、話は進みやすい。

 何か話題に困ったときは何かを飲むことでごまかせるからだ。

 あんまり、人付き合い得意じゃないしなぁ俺。

 

「……ありがとう」

「何がです?」

「マシュを救ってくれた事。彼女から聞いたわ。貴方ともう一人の彼がいなかったら、彼女はここに立っていなかったって」

 

 以前、ドクターから聞いたことがある。

 彼女はマシュに同性として気さくに接してくれたと。

 

「……お礼を言うのは俺の方ですよ。

 マシュと立香がいてくれたから、あの二人と一緒に旅をしてきたから、カルデアの日々があったから。俺は今、ここにいられるんです。

 俺一人じゃ、何も出来なかった」

 

 あの二人は、何事からも目を逸らさなかった。そして例え何度苦難が訪れようと、自分を守るための折り合いをつけなかった。

 その共感の心を、俺はただ尊いと感じたのだ。

 立香は優しい。それは、甘いと言う単純なモノではなく、もっと難しい事。

 人の想いをくみ取り、その感情に共感する。それはすごく簡単なように思えて、ものすごく難しいと俺は思う。背負うという言葉は、決して軽くは無いのだ。

 魔術でも自分の強化は容易だが、他人の強化は至難と言われるように。

 ――だから、どうか。この特異点を修復する日々が完全に終わりを告げて、彼らが日常に帰れる日が来て欲しいと願う。

 

「……」

 

 悲観的だった考えを、彼らが変えてくれた。例え、この命が明日、明後日――そう遠く無い未来消えてしまう運命にあったとしても。

 一度、たった一度でも、心の底から強く笑う事が出来れば。決して無駄ではないと。

 受け継がれていくモノが少しでもあれば、その命に、歴史に、世界に。確かに意味はある。

 

「その時何も出来なかった私達に比べれば。

 ただ文字で知るのと、実際目の当たりにするのは全く別物よ。もっと誇っていいのに」

「まさか。追いつくのに必死です」

「……そうね、なら私も貴方に精一杯、師匠として振舞えるように努力するわ。

 キリシュタリアに負けないぐらいね」

 

 オフェリアさんはキリシュタリアさんに、特別な感情を抱いている。

 きっとその感情をまだ彼女は知らない。でもそれを、カルデアの人々と共に育んで実を成す事が出来たのなら。それは何て美しいモノだろうと思う。

 ただ、彼は俺や立香をかなり気にかけている。人の可能性を信じる者。即ち何の力も無い筈だった俺と立香が人理修復を果たした事は、彼にとって――。

 でもまぁ、それは本人の口から語られない以上、数ある推測の一つに過ぎないのだが。

 

「マシュの方がどうなのかしら。私もサポートしてるつもりなんだけど」

「立香とですよね……。何というか、距離が近すぎた気もします。何というか、異性として見る前に、傍にいるのが普通に思ってるんじゃないかって」

 

 よくある後輩キャラや幼馴染が不遇な理由の一つだ。

 傍にい過ぎたせいで、本命に異性として見てもらえないと言う事。人理修復中は良かったが、いざ日常に戻ってみるとそれが裏目に出ているようにも見えなくない。

 ――なんてことを黒髭が言っていた。

 

「後、溶岩水泳部がですね……」

「……ああ、噂の三人組ね。そんなにすごいのかしら?」

「ちょっと見てみないと伝わらないかと」

 

 アレは目の当たりにしないと分からない。

 オルレアンから帰って来たと思ったら、後ろにピッタリ着いていた時の立香の顔は今でも覚えている。

 何と言うか、見ている俺も下手なホラーより怖かった。

 

「アランはどうなの? 誰が本命?」

「本命……と言うより相棒って言った方がいいんでしょうか。人生を共にするパートナーと言うか。

 まぁ、そんな感じです。マスターとサーヴァントの恋なんて――」

「――有! 大有りだぞ少年!」

 

 その声に変な声を挙げてしまう。

 後ろを見ると、筋骨隆々とした赤毛の青年が立っていた。彼は――。

 

「アーチャー……」

「ん、どうしたマスター(・・・・)? あぁ、スマン、コイバナに花を咲かせていたのか。悪い事したな!」

 

 アーチャー、ナポレオン・ボナパルト。

 オフェリアさんが契約しているサーヴァントの内の一人。戦術家としての側面も持ちながら、人々を鼓舞する力に長けている。何というか見ていて征服王を思い出す人柄だ。

 後、イーリアスが好きなところとか。

 宝具で見る虹の輝き。アレは確か、彼が幼少期の頃に虹をつかんで見せると言った逸話から来たのだろうか。そこを聞こうとしたのだが、あんまり聞けずじまいだ。もう少し仲が良くなってから聞いてみよう。

 

「コイバナって……。何かあるなら念話でいいでしょう」

「いいや、やっぱり話すなら実際言葉を交わさんとな。アンタはそれで済ませるには惜しい程、いい女だ。そうは思わんか少年?」

「面倒見もいいですし、何度も助けられてますけど。そう、女性を口説くのはどうなんですか……」

 

 この間、俺のサーヴァントを口説こうとしていたがさすがに遠慮してもらった。何でも、いい女は口説かないと気が済まない性質らしい。

 実際、話してみると同じ男である俺も惚れかねない程の快男児だ。色々と負けている気分になってしまう。

 でもだからと言って、俺と契約しているサーヴァントを口説こうとするのは看過出来ない。その部分に関しては負けたくない。

 

「今は皇帝なんて立場もないからな、それで女を泣かせる要素も無い。つまりは俺の伊達男ぶりを存分に発揮できるってコトさ!」

「アーチャー……貴方って人は」

 

 まぁ、立場上どうしても女性を泣かせざるを得ない人生だったし。

 それに共感を覚えない事も無い。

 けど、生真面目なオフェリアさんからすれば目の上のたんこぶだろう。

 

「ふむ、世間話と言うヤツか。邪魔をしたな」

「せ、セイバーまで!?」

「アーチャーと手分けして捜索していた。マスターの帰りが遅い事に疑問を生じたからだが」

 

 セイバー、シグルド。俺が握手してもらったサーヴァントの一人。

 竜殺しの大英雄。カルデアにいる全セイバーの中で見ても、紛れも無くトップクラスと言っていい実力を持つ。剣技ならばランスロットと互角、それに彼の持つルーンが合わされば一気に勝負は彼に傾くだろう。そしてなんだ、短剣を格闘で飛ばして攻撃って。かっこよすぎだろ。

 この間、シミュレーションで本気のカルナと互角の戦闘を繰り広げた際、その余波に耐え切れず観測用のモニターがいくつか破損したと言えば、その内容が伝わるだろうか。

 アレは本当に凄かった。あんな光景を目の当たりに出来るなんて生きててよかった。

 

「……」

 

 ナポレオン・ボナパルトとシグルド。この二人がオフェリアさんと契約しているサーヴァント。

 二人とも知名度、実力、人柄共に紛れも無い英雄だ。そしてその二人と良好な関係を結べているオフェリアさんも。カドックと同じく良好な関係だと思う。

 

「アラン殿、マスターの話に付き合って頂いた事感謝する。感謝の形として、当方に出来る事があれば可能な限り善処しよう」

「あ、いえ……大丈夫です。大英雄の貴方からそう言って頂けるだけで、俺は満足ですから」

「……そちらがそれで良いのであれば納得しよう。寛大な対応、痛み入る」

 

 いや、そんな大げさなものじゃないんですけど……。

 オフェリアさんは一息吐いてから、残ったココアを飲み干した。

 

「ありがとう、アラン君。私の話を聞いてくれて。やっぱり貴方はこちら側に踏み入れてはいけない人よ。

 魔術の世界はそういうもの。私は出来れば来てほしくないわ。――それでも貴方の考えは変わらない?」

 

 その視線は、僅かな願いと肯定だった。

 否定してほしいと言う希望と、俺が口にする答えを知っていると言う現実。

 

「はい。今のカルデアがある限り、俺は道を違えはしません。今まで何度も間違ってきましたから。

 だから、今度は大丈夫です。Aチームもいてくれるから、俺はまっすぐ歩いて行けます」

 

 俺の言葉に、オフェリアさんは頷いた。

 

「そう……。なら、指導する手にも熱がこもるわ。また明日から厳しく行くわよ」

「はい、お願いします」

 

 本当に、いい人達に恵まれた。

 

 

 

 

 

 サーヴァントと共に部屋に戻る途中、アーチャーは彼の事をすっかり気に入っているらしい。

 裏表が無く、人に好意的なところが良いと。――確かに彼の理解力は常人のソレでは無い。神秘の探求者である魔術師に近しいとも言えるだろう。そういった意味では、彼は一人前の魔術師になれなくとも、大成するのかもしれない。ロード・エルメロイのように。

 もし、その時が来た時は。キリシュタリアと共に精一杯お祝いをしてあげたいと思う。魔術の才能はからっきしに等しいが、その熱意は私達にとって眩しく、そしていつしか失っていたものだ。

 いや、きっとヴォーダイムはそれをまだ持っていたのかもしれない。彼は千年の系譜を持つ家に相応しい人間であり、人の可能性を信じ続けている。だとすれば彼は、その可能性に応えられる存在なのだろうか。

 ――少し悔しい。師匠でもある私を差し置いて、ヴォーダイムの理想に彼が近いと言う事実を。

 この感情を、今はまだ何と言うのか分からない。私以上に世界を見てきたあの子(マシュ)なら、分かるだろうか。

 

「でもまだ、時間はあるわね」

「ん? 夜更かしは美容の天敵だぜマスター(メイトル)。俺が言うのもなんだが、睡眠はしっかりとるんだぞ」

「肯定、現在差し迫った案件は無い。休息の時間には充分だと思われる」

「分かってるわ」

 

 サーヴァント――彼はその生き様に触れる事が楽しいと言っていた。彼らと同じ心境、目線で触れる事は、また違った視点をもたらすと。

 ――知っている。だって、私はもう救われて、導かれたのだ。誰でもない自分のサーヴァントに。

 

「アーチャー、私に可能性の光と言うモノを教えた以上、その責任はしっかりとりなさい」

「おう、任せときな! アンタ達カルデアの行く空に、虹をかけてやるさ!」

 

 暗闇の中にいた自分に、彼は光を見せた。それはまるで消えぬ炎のようにで――。

 けれどその言葉を伝える事は無い。伝えたところで、またこの男は私を口説こうとするだけ。

 もう嘘をつかれるのは御免だ。

 だから、私は口にする。言いたい事は言えと、それがこの英霊の教えてくれた事だから。たとえそれが、星に掛ける願い事のようであったとしても。

 

「私達の大切な後輩を、しっかり守ってあげて」

 

 彼の生き様に、不可能と言う言葉は存在しないのだから。

 

「――ウィ、オレがここにいる限り、全部守るさ」

「セイバーもお願いね、頼りにしてるわ」

「承諾した。必要であれば、かのマスターに当方がルーンを教えるが?」

「貴方のソレはまだ彼には早いから!」

 

 

 

 

 ドアを開ける。

 大分、時間がかかってしまった。

 

「ごめん、遅くなった」

「お帰りなさい」

 

 部屋に入るとアーチャーが持ち込んだゲームで簡単な大会が行われている。

 現代を楽しむサーヴァントもいいものだ。

 彼らが幸せに暮らしている光景を見ると、俺も笑みがこぼれる。人数分の飲み物を手早く作って、机に置いていく。

 こんな何気ない日常が、今は本当に――。

 

「お、空調が直った」

「ふむ、仕事が早いな」

「他にやる事がないんじゃない?」

 

 さすがオルタ、言い方が辛辣極まりない。

 部屋に帰る? ――何て言うつもりはおきなかった。

 彼らのこの時間を、邪魔したくない。あぁ、いや多分違う。

 俺は見ていたいのだ。この光景を、出来る限り少しでも長く。

 このカルデアが生きる世界を。

 

「……そうだ、まだ言ってなかった」

「? どうかしたの、マスター?」

「これからもよろしく。こんな俺だけど、何とか頑張るよ」

 

 





この小説を投稿してから早、一年が経ちました。
最初は細々とやっていくつもりでしたが、たくさんの方に読んで頂き「これはもう駄文とか駄作とかで言い訳出来んぞ」と思い、シナリオやキャラクター設定を再度見直し、何とか簡潔にこぎつけられた事を考えると非常に感慨深く、そして応援して下さる読者の方々には感謝の想いでいっぱいです。
オリ主ことアランも、最初はよくあるテンプレ主人公で行こうと思っていましたが、シナリオが進むうちにどんどん肉付けされていき、私自身も彼に型月らしい人物に出来たかなと思っています。ただそれは私だけでは決して生まれなかったキャラクターであり、Fateと言う作品があり、そして愛してくれる読者の方がいなければ、現在の形になっていないでしょう。一重にここまで作品が続いたおかげです。
二部は運営の方曰く、長期的に行っていくとの事であり、私自身もFGOと言う作品が一区切りつくまでは、何とか連載をしていきたいと思います。召喚祈願だったり、今回みたいにシナリオの感想だったり、ただ単純にキャラを書きたいだけだったりと作風が変わっていく事もあるかもしません。頭の固い私ですので、いつまで経っても話がテンプレで進行自体が変わり映えしない事もあるかもしれません。その時はただ一重に私の力不足ですが、もしよければお付き合い頂ければと思います。

長々と綴ってきましたが、今後ともこの作品をよろしくお願いします。
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