カルデアに生き延びました。   作:ソン

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メイヴ編、凄まじい反響を頂き、私自身も驚愕の一言です。やっぱり恋の物語っていいなぁ……。
そんな私は月の珊瑚を読んで悶えております。乙女回路を鍛えなくては……!

あっ、そういえば20連でクーフーリン・オルタが来ました。異伝でセリフを書いたおかげだろうか……。やはり書けば出る教は真理……。

尚、スカディ(300連爆死)
2030年の欠片が3枚凸、プリコスが2枚凸したぜ……。
あぁ、またガチャ用の錬金術に何か売らなきゃ……。


After6 カルデア大会議

 

 

 

「アイツとマシュをくっつけるぞ」

 

 会議室――そこでムニエルが神妙に呟いた。

 立香とマシュをくっつけると。

 

「え、あの二人まだ付き合ってなかったの?」

 

 一体、次の特異点で何があったのか。

 まさしく二人旅であったのだから、そんなロマンスが生まれて当然だっただろうに。

 ――と言うか、カルデア職員の一部やAチーム、ドクターにダヴィンチちゃんを動員して言う事がそれなのか。

 

「興味ないわ。好きにしたら?」

「同感だ。オレ達が介入する必要性が見えない。全くの徒労だ」

 

 そういって退席していくヒナコさんにデイビットさん。そしてシルビアさんなどの一部カルデア職員。

 ダストンさんやドクター、ダヴィンチちゃんは想定内として、意外と興味無さそうなベリルさんやキリシュタリアさん、オフェリアさんがいるのが意外だ。

 後、カドック。

 その真意を探るべく、そっと耳打ちした。

 

「ひょっとして、興味あるとか」

「……協力しないと凍らすって言われたんだよ、アナスタシアに」

 

 ムニエル、先手打ちやがった。

 あぁ、確かに。人理焼却を乗り越えた一人だもんなぁ。それぐらいの度胸と知恵はついている。

 

「おや、意外だね。Aチームだとペペロンチーノ君だけ残ると思っていたんだけど」

「立香君とマシュの問題なら、私の問題も同然だ。力を尽くすに値するとも」

 

 キリシュタリアさん、さすがのカリスマである。

 ヴォーダイム家、千年の歴史を背負う当主としては充分すぎるだろう。

 

「ま、まぁ私もマシュと友達だし。立香君も大事な後輩ですし。二人の問題である以上、私が関わるのも当然です」

 

 オフェリアさん、先輩してるなぁ……。頼りになる。

 もし人理修復の旅で共にいてくれたら、どれだけ心強かっただろうか。

 

「ん?」

 

 懐にしまっていた通信端末が振動している事に気が付いた。確か「」が気になっていて、代わりに購入したのだ。そして何故か俺の分まで買う事になったのである。

 彼女は今、メールを使いこなしている最中である。

 

『今どこにいるの? どのくらいで戻ってくる?』

 

 分かったら早めに連絡しますとだけ返信しておく。いや、こんなところで俺と彼女がメールのやりとりをしているとなれば、後でムニエルにどれだけ目の敵にされるか分からない。

 

「ムニエル君、プランは立てているのかな?」

「そりゃ勿論。恋愛ゲームを百作もやり込んだオレが綿密にシミュレートしたプランです。失敗は万が一もありませんよ」

 

 ボタンで落とせない女はいないとか、この間言ってましたねこの人。

 そのうち、サングラスかけてゲームライターとか始めるんじゃなかろうか。

 

「そしてマギ☆マリのAIによるプラス補正もかけてある。間違いはないよ」

「うん、二人とも立派なフラグありがとう。ムニエル氏、早速プランをみせてくれるかな?」

「ほい来た」

「少しアタシも拝見ね」

 

 少し気になって、俺も覗き込んだ。

 それはまるで絵コンテのように事細やかに書かれている。

 

「……」

 

 うわぁ、すごいベタだ。

 こうペペさんですら苦笑する程の。

 何だよ最後の、二人は幸せなキスをして終了って。

 人生はギャルゲーじゃねぇんだぞ。

 

「――却下ッ! 却下ですッ!

 “私は、それが輝くさまを視ない”……!」

「待つんだ、オフェリア。それは早計な気もするが」

「いいえ、れっきとした判断よ、ヴォーダイム!

 マシュの初めての交際の切っ掛けがこんな不純なモノの筈が無いわ! 彼女の親友として断言しますっ!」

「いいや、違う! この二人はそうでもしないと動かないんだよ!

 俺が何度じれったい気持ちを味わってきたか……! そしてやらしい雰囲気にするべく動いてきたか、貴方に分かるか!?」

「そんなモノ知らないし分かりたくもありませんっ! 一方的な感情を無理やりカタチにしようなんて、ただの迷惑でしかないわ! これだから、拗らせた男は厄介なのよ!」

「ぐふっ」

 

 ムニエルに痛烈なカウンターとその他何名かに巻き添えのクリティカルを確認。

 彼女の言葉に重みと苦労感があったのは気のせいだろうか。

 ナポレオンってそんなに拗らせてなかったような気もするし、シグルドも違う気がする……。別の可能性の話だろうか。

 と、そこまで考えたところでまた通信端末が振動した。

 

『料理は私が作っておくから安心して。そういえば野菜って洗剤で洗うのよね?』

 

 それ昔の話です。普通の水でいいから、と返信しておく。

 彼女、意外と抜けている所あったりするからなぁ。でもそこも可愛いけれど。

 

「アラン君から何か言ってあげなさいな」

「お、俺からですか……?」

「お前ならわかるよな、アラン! 俺達、友達だろ!?」

 

 やめろ、ムニエル。そんな目で俺を見るな。

 

「ムニエル……現実を見よう」

「クソォッ!」

 

 ここで裏切りとか言わないところが、意外に気を使ってくれてるんだよなぁ。

 嫌いじゃないし苦手でもない。ただ欲望に正直なだけなのだ。

 

「……ところで、例のセイバーちゃんとはどうなの? 着物の方の」

「どうって、いや別にどうも……」

「あらら、ごめんなさい。他人が口を出す事でもないわね。

 ――本当に綺麗ね、貴方の想いは」

 

 ふと通信端末が振動する。またメールが来たらしい。

 

『ねぇ、部屋に虫が出たわ。女の子の対応としては、どうしたらいいの?』

 

 エネミー数体をまとめて屠れる貴方が何を仰っているのか……。

 とりあえず部屋に殺虫剤があるからそれを巻いてもらうように送ろう。

 

『調べたらお湯かけたらいいってあったからかけてみたの。……死んじゃった』

 

 ――分かった、後で俺が片づけするからそのままでいい。

 彼女、あぁ見えて意外と天然なところがある。この間、炭酸飲料を作る機械でオレンジジュースを爆発させていた。……いや、俺もカレー爆発させた事あるからあまり言えないけど。

 

「何、彼女?」

 

 ペペさんが小声でそう呟いてくれた。声を落としてくれたのも、雰囲気を見ての事だろう。

 この人は本当に気遣いが上手だ。

 

「……どっちかと言うとパートナー、ですかね。俺の我儘に付き合ってくれた恩もありますし」

「若いっていいわねぇ~」

 

 未だに向こうではあーだこーだの議論が続いている。

 オフェリアさん率いる清純な交際派閥とムニエルの下に集ったいい加減じれったいからもう無理やりにでも付き合わせてやろう派閥である。

 ちなみに俺は、どうせあの二人は付き合うだろうから別に介入しなくていいだろう派閥である。

 

「……ちなみにキリシュタリアさんはどう思います?」

「私は別にどちらでもいいさ。マシュ・キリエライトにそれだけの存在が出来たと言う事実を素直に祝福する。ただそれだけの事だ。共に見守っていこう」

 

 やだ、キリシュタリアさん凄い大人……!

 と、そこまで考えたところでまた通信端末が鳴った。

 

『ねぇ、マスター。今、幸せ?』

 

 ? 彼女がそんな事を聞いてくるなんて珍しい。

 文面を考えるまでも無く、返信する。

 

『勿論、幸せだよ』

 

 ふと――微笑む少女の顔がよぎった。

 アレは、誰だったか。それとも、インフェルノやカルナと同じように、別の世界の可能性だったりするのだろうか。

 

 

 

 

「……それだけ知る事が出来たから、もう充分ね」

 

 そういって、少女は持っていた通信端末を彼女に返した。

 ――少女は呼び出された存在ではない。たまたまどこかの世界で出来た縁が元となって生まれた残滓に過ぎない。

 彼女にとっては同じ選択を二度選ぶだけの事だ。

 

「顔を見ていかなくてもいいの? 声を交わす事も?」

「……最期にあの人は笑った。だから顔は見なくていいわ。そして愛を告げてくれた。だからそれでいいの」

「――この場所が、貴方と言う存在の最後(・・・・・・・・・・)になっても?」

「彼と歩んだ私は、もう二度と召喚される事は無い。

 メイヴは愛多き女王であって、恋を知らない女の名前。恋を知った私は女王ではなく、少女として全てを終える」

「……」

「いいえ、少し違うわね。勿論再召喚は在り得るわ。でもその時の私は女王メイヴであって彼との記憶はない。

 女王の名を選ぶか、彼との記憶を取るか。――ただそれだけ。だからこの私には迷うまでも無かったわ」

 

 今の彼女が生き続けるためには、女王となければならない。けれどもし女王となってしまえば、それは自身に恋を教えてくれた彼との旅路を否定する事に等しい。

 彼との恋が本物である事を証明するために、彼女は自ら消える事を選んだのだ。――かつて彼を喪った時と同じように。

 

「……そう」

「――恋人と心が繋がる以上に素敵な事がないわ。だから私はそれで充分なの。

 だって私にとってあの人はマスターであるけれど、あの人にとって私は可能性の一つに過ぎない。

 彼の幸せを祈って、私は少女の夢を見る。それでいいのよ」

「夢の続きを、見られるとしても?」

「……それはさすがに迷うわね。でも、いいわ。

 だって、もし私が彼と出会ったら、彼はきっと罪悪感に苛まれるでしょ? だって素敵な人だもの。だからこれでいい。彼が生きて、強く笑ってくれる事。――それが少女になった私の見る、ただ一つの夢」

 

 そういって、彼女は自らの霊基を消滅させていく。

 消え行くその表情には一片の恐れも無い。

 

「――どうか彼を、お願いね」

「……ええ、任せて」

 

 




この話を読んでお気づきの方もいると思いますが、個人的にオリ主の声はあの人を勝手にイメージしてます。
「」をヒロインにすると決めた時にそれは揺るぎませんでした。

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