カルデアに生き延びました。   作:ソン

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漫画版がとても素晴らしかったので、それに触発されるように。
アフター編は構想に苦しんでるから待ってください……。何でクリプター出したんや自分。

時期的には二週目。つまりは裏切っていない状態でのスタートです。そこから第三特異点まで書ければかと。
かなり長丁場になりそうですがよろしくお願いします。ちなみに第二特異点は舞台だけ借りて再構築しようかなと思ってます。とりあえずオルレアン編を完結出来ればいいなと言う気持ち。

あ、後アーケードなのですが、こういった感じのゲームですと言う事を紹介したいと思い、ニコニコ動画に動画上げてます。タイトルは「それ逝け、僕らのGW前線」です。下手くそプレイですがよろしくお願いします。

LB3楽しみ


Rewrite 邪竜百年戦争オルレアン1

 

 

 特異点Fから帰還する。

 既にカルデアの施設は酷い有様で、全滅していると言ってもいい有様だった。

 管制室――カルデアスと極僅かなコフィンだけが無事な状態。そこでドクターは俺と立香に告げた。

 

「――レフ・ライノールのテロによって、カルデア職員は百名近くが死亡。無論、それは皆作戦遂行において大きな助けになる筈だった専門家達だ。全世界からかき集めたレイシフト適正者四十八人。生きているのは、戦えるのは――たった二人。

 そして生存者はここにいる二十名。当初の人数よりも極僅かな人員。それがカルデアに残る全戦力だ。

 管制室などの主要な機能はかろうじて復旧出来たが、他は全く意味を為さない。

カルデアに残った、この全てで、これから先七つの人類史と戦わなくてはならない」

 

 悲痛な面持ちでドクターはそう告げた。

 自分の無力さを呪うように、強く両手を握りしめて。顔を伏せながら、その視線だけは俺達を見つめて。

 特異点F――そこだけで何度死にかけただろうか。アレと同じことを、後七度も繰り返さなくてはならない。

 

「マスター適正者二番アラン・フィシス。マスター適正者四十八番藤丸立香。

 キミ達に、七つの人類史と戦う覚悟は――」

 

 出来る訳が無い。

 ――それでもやらないと。

 俺はただの人だ。何の力も無い。

 ――それはここにいる皆も同じだ。

 勇気なんて無い。

 ――だから共に進めばいい。

 

 逃げようとする言葉だけが、頭の中を反芻し続けている。

 その苦悩に気づいているように。重い表情で、ドクターは言葉を差し出した。

 

 

「――人類の未来を背負う覚悟はあるか?」

 

 

 視線が集う。マシュも、特異点Fで戦ってくれたランスロットも言葉を挟まず、じっと俺達を見つめていた。

 言葉が出ない。

 それでも何とか返事をするために、乾びた口を動かそうとする。

 

「俺、は」

「――外って、どうなりました」

 

 俯いた顔を上げないまま、立香はそう口にした。

 

「……調査に行ったスタッフは、存在を消失した。――生き残っているのは、カルデアにいる僕達だけだ。ここにいる全員が、最後の生き残りとなる。

 でも、カルデアは無事だ。防壁は幾重にも張ってるからそう簡単に……!」

「電話を、しようと思ったんです」

 

 食いしばるような声だった。自分の気持ちを抑え込んだ、壊れかけの叫びだった。

 

「両親や友人には、まだ何も言えてなかったから。俺を、心配してるだろうから。

 離れたところにいるけれど、俺は元気で。優しい人達と過ごせてるって。

 ――他にも、沢山話したい事が、出来たんです」

 

 それもその筈だ。

 だって彼は。魔術とは何の縁も無い、平穏に暮らしていた筈の、ただの少年なんだから。

 

「覚悟は、まだ出来てません。魔術も、サーヴァントも、人理も、まだ分からない。

 けど、まだ可能性が残っているのなら。この結末を、変える事が出来るのなら」

 

 恐怖を押し殺して。彼は眦を振り絞って、前を向いた。

 

「――背負います。それが、今の俺に出来る事なら」

 

 ……あぁ、そうだ。

 最早俺は傍観者でも、観察者でもない。彼らと共に戦う、一人のマスターなんだ。

 なら、言葉にすべき事は決まっている。

 

「――俺も、戦います。生き残って、しまったから。

 カルデアに、生き延びたから。戦います、死んでいった彼らの為に」

 

 ドクターは、深く頭を下げた。

 俺達の決意に、ただ感謝を示すように。

 

「ありがとう……。キミ達が、最後の希望だ。

 ――これより現時刻を以て、カルデアの全権限はロマニ・アーキマンが引き継ぐ!

 作戦名をファースト・オーダーから変更! 冠位指定(グランドオーダー)――魔術世界における最高位の名を以て、我々は! 全人類の、奪われた未来を取り戻す!」

 

 

 

 

 

 ――1431年 フランス ヴォークルール地方郊外。

 

『レイシフトの完了を確認した。調子はどうだい?』

「えっと、大丈夫です」

「はい、バイタルに異常ありません」

「こっちも無事です」

 

 レイシフト直前に召喚した英霊。

 立香にはマシュとエミヤ、そしてセイバー、アルトリア。

 俺は特異点Fで召喚したランスロットと、セイバーオルタ。

 これがカルデアの全戦力だ。聖剣があると言うのは心強い。

 

「醜態を晒してくれるなよ、マスター(・・・・)? 私にとってこの特異点はお前を見定める事でもあるのだからな」

「……分かってる」

 

 セイバーオルタから重圧を感じながら、空を見上げる。

 ――空に浮かび上がる極光。どうしてかそれが、酷く見覚えのあるものに見えた。

 

『マスター』

 

 聞き覚えのある少女の声に、頭が僅かに痛む。幻聴だと、気づけるうちはまだいい。

 大分、精神が参っているようだ。

 

『まずは状況を整理しよう。そこは1431年のフランス、ヴォークルール地方だ。

 さて、ちょっと軽い授業だけどその時フランスでは何が起きていたと思う?』

「すみません、世界史はどうも……。フランスって言われるとナポレオンぐらいしか」

「勉強していきましょうね、先輩」

「……ジャンヌ・ダルクの処刑、ですよね」

『アラン君、正解。この時、フランスはイングランドとの百年戦争の真っ只中だ。最終的にはフランスが勝利するが、その代償はとてつもなく大きかった。

 けれども皮肉な事に、互いに争った両国はその後、絶対君主制――即ち絶対王権への道を歩んでいく事になる』

『ダヴィンチちゃんの言う通り、その後のフランスが生んだ政治体制は未来に大きな影響を残していくんだ。だから、もしここでフランスが消滅してしまえば、人理崩壊につながる』

「……これから、どうしていけば」

 

 何もかもが分からない。けれども少しずつ進んでいくしかない。

 

『まずは齟齬を探そう。この時代に決して無かったモノ。あり得ない存在。オーパーツではない、明らかにズレた形。

 ――まぁ、要するに情報収集ってコトさ』

「――マスターに、ダヴィンチ女史。少し歩いたところに街がある。そこに向かう事を提案しよう」

『おや、さすがアーチャー。目には自信があるね、頼もしいよ』

「何、昔の知恵だよ知恵。さて、善は急げとも言う。何はともあれ、まずは進もうじゃないかマスター」

 

 

 

 

「なぁ、アラン。ジャンヌ・ダルクってさ、具体的にはどんな事をした人なんだ」

 

 幸い街へ向かう道中はそれほど険しくも無く、まるで散歩のような感覚だった。

 その道中ふと立香が言葉を開く。

 ……あぁ、確かに。名前ぐらいしか聞いたことが無いって人もいるよな。

 

「救国の聖女。――陥落寸前だったオルレアンを取り戻して、フランスの劣勢状況を覆した少女だよ。彼女のおかげで、フランスは敗北を免れた」

『そうそう。百年戦争においてオルレアンはフランスを守る最後の防壁でもあったんだ。何しろ1415年での戦いからこのオルレアン包囲戦まで、ずっと負け戦だったんだからね』

「そんなに……」

『けれど、フランスは彼女を見捨てた。

 救国の為に戦った彼女の最期は、余りにも残酷極まりない結末だった。あらゆる尊厳と純潔を踏み躙られ、屈辱を受けて――。

 ――……あー、やめやめ。ダメだね、英雄の最期は暗くなる。ここは一つ楽しい話でも』

「俺なら大丈夫ですよ、続きをお願いします」

 

 ジャンヌ・ダルクの最期に共感したのか、立香は瞳を伏せながらそう告げた。

 

『……あぁ、そうか。余計なお節介だったね。

 フランスのために戦った少女はフランスに見捨てられるように、命を落とした。――そういう話さ』

「……」

 

 マシュはまるで理解出来ないと言わんばかりの表情だ。彼女にはまだ、その精神が理解できないのだろう。

 でも、まだ旅は始まったばかりだ。とりあえずは今やるべき事を考えよう。

 

「先輩、アランさん。ヴォークルールに着きました。手分けして情報を集めますか?」

「……うん、そうしよう」

「じゃあ、俺と立香の二手に分かれよう。また一時間後合流を」

 

 

 

 

 さっきから時折、見覚えのない顔がよぎる。

 何の変哲も無い、どこにでもいるような少年。――それが唐突に頭に張り付いて離れない。

 

「――……っ」

「おや、どうかされましたかジャンヌ?」

「いえ、別に。何でもないわ、ジル」

 

 ただただ、腹が立つ。

 名も知らない少年が、どうしてこんなにも自分を苛立たせるのか。

 八つ当たりのようにして、焼け焦げていた物体をもう一度焼き尽くす。

 もう豚のような叫び声を上げる事は無い。せめてそれが聴ければ少しは憂さ晴らしにもなるだろうに。

 あの少年を探し出して焼いてみるかと、思案した途端に酷く胸が痛む。

 これじゃあまるで――。

 

「あぁ、本当に馬鹿みたい。どうせ全部灰にしてやるのに」

「えぇ、えぇ、既にオルレアンは貴方の炎の中。この国は全て、何もかも――ただの贄に過ぎませぬ」

「……そう。そうよね」

 

 何かが違うと、叫んでいる。

 会うべき人、探すべき人がいると。

 でもそんな人間を、私は知らない。

 

「ジル、留守は任せたから。手当たり次第に焼き尽くしてくるわ」

「はい、お任せを」

 

 

 

 

「――良い街ですね、ここは」

「そういえばランスロットはフランス出身だっけ」

「ええ、この時代ではありませんが。それでも祖国の空気を忘れた事はありません」

 

 ヴォークルールにはフランス兵達がいて、ランスロットが上手く話を引き出してくれた。

 竜の魔女が復活し、この国にはワイバーンが無数に存在していると。この時代の修正点とすれば、その竜の魔女だろう。

 ドクター達には既に報告していて、後は立香と合流するだけだ。

 でもせっかく時間があるのだから、こうした街並みを目に焼き付けておきたいと思う。

 

「……妙な顔をしているな、貴様は」

「?」

「酷く懐かしいモノを見たような目をしている。そういえば私を召喚した時もそうだったな。

 まさかと思うが、故郷が恋しくなったのか」

「……いや、少し違うよ。

 俺達が生まれるずっと前から、こうして時代って存在していたんだなぁって。本の中でしか知らない世界だったから」

「……フン、呑気な事だ」

 

 ――遠くで喧しく鐘が鳴らされる。

 

「逃げろ! ワイバーンが来たぞっ!」

 

 その声が響いた途端、兵士達が一斉に武器を構え空を睨む。

 ――彼らの視線に釣られるように空を見た。

 

「え」

 

 無数の飛竜――本の中でしか語られない存在が今そこにあって。

 俺の目の前で人を襲っている。

 

『反応を感知! ワイバーン多数! アラン君、立香君と合流してそこから脱出するんだ!』

「……でもそれじゃあここの人達は」

 

 兵士達が体を食われ、苦痛に顔をゆがめながらも、残った手で剣と槍を振るい道連れにしていく。

 誰一人、ここから逃げようとしない。市民達――守るべき者の避難が終わるまで。

 

「二人で当たれ! 一人で戦おうとするな!」

「女子供を先に逃がせ!」

 

 目の前で、命が消えていく。そして、それを救う力は、俺には無い。

 ――でも、それでも。

 

“電話を、しようと思ったんです”

 

 その決意が頭から離れない。

 迷い中で答えを出しきれず、ただ黙っていた俺とは違って。

 自分に出来る事をしたいと、彼は言った。

 

『全てを救う事は出来ない。ここではキミ達の命が最優先だ。いいね、これは命令だよ』

「……でも、それでも。俺、は!」

 

 ダヴィンチちゃんの言う事はきっと正しい。この場から逃げて。情報をまとめて。特異点を修正するのが正しい選択の筈だ。

 ――どこか遠く、誰かの言葉が脳裏を駆ける。

 

“そなたが思うがままに生きよ”

 

 少しだけ心が軽くなる。

 確かに賢くは無い。正しくは無い。いや、正確にいえば最悪に近い。何の意味も無い、悪手だ。

 

「――誰かが苦しんでいる光景を! 見なかった事に出来ません!」

 

 俺を狙ってきたワイバーンを、ランスロットとアルトリアオルタが斬り捨てた。

 彼らとの間を遮るように二人が立つ。

 

「悪いな、ダヴィンチ。ここで一つ剣の具合を確かめたい所だ。満足行くまで振るわせてもらう」

「マスターが苦悩しているのなら、共に背負うがサーヴァントの務め。罰なら私も共に受けましょう」

 

 上空を矢が駆けていく。――否、射出されているのは剣だ。

 幾重の剣が、まるで矢のように打ち出されてワイバーン達を貫いている。

 

『そうか……立香君もキミも同じ答えか。スタッフ達は皆支援体制に入っているし、これは仕方ないな』

「……すみません」

『謝られても困るさ。キミが決断した事だ。なら、最後まで貫きなさい』

 

 拳を握る。

 これが、戦う事。選択するという事。もう取り消す事は出来ない。……ただ、苦しい。

 何も出来ないこの体が、ただ不甲斐無いばかりで――。

 

「これは、罰だ! 聖女を見捨てた事に対するこの国への報復だ!」

 

 突然、一人の兵士が叫んだ。誰が見ても正常な目ではない。

 誰もがそれを無視する中、一人の女性が頬を叩いた。

 

「馬鹿な事言わないで! あの子はそんな人じゃない!」

 

 腰まで届く長い金髪の女性。彼女も避難民だろう。

 でも、何かが違う。

 

『彼女は――』

「っ! 危ないっ!」

 

 ワイバーンが兵士を食い殺して、その女性にも襲い掛かろうとする。

 咄嗟にランスロットが体勢を変える。アルトリアオルタが魔力放出で駆け付けようとする。だが、間に合わない。

 

「――!!」

 

 その喉元を突如、旗で一突き――目では追えない程の速さ。

 姿はフードとマントを羽織っていてよく見えないけれど、女性という事だけ理解出来た。

 

『説明は後! 彼女と協力して、この街を守るんだ!』

 

 その旗を振るう姿は紛れも無く――。

 

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