気が付けばFGOも二部が終章まで迫り、好きなサーヴァントも増えてきました。
私自身、そこまでの力はないですがまだFGOの二次創作が盛り上がってほしいと思い投稿を再開いたします。
文章力はかなり落ちてしまっていますし、拙い部分はあると思います。そこは申し訳ないです。
またこれからよろしくお願いいたします。
その終わりを覚えている。瞼の裏に焼き付いて、色褪せることの無い光景。
長い時間を彼と共に駆け抜けて、私はようやく彼の結末を知ったのだ。何故ずっと恐怖を押し殺して前を進んでいたのか、そんな理由を知ろうともせず。
『今までありがとう、■■■。どうか生きて、キミは幸せになって』
認めない。その旅路の終わりが、避けようのない死なんて私は認めない。
もしそうだというのなら、私の全てを以てその運命を否定する。人理なぞ勇者なぞに、彼を奪われたままでいられるものか。
だから例え何度でも霊核を砕き時を超えて、始まりの貴方の下へ――。
「痛っ……!」
動く骸骨兵に斬られた腕を抑えながら走る。
幸い、腕はつながっているし傷はそんなに深くない。指先の神経もまだ生きている。
ただ不幸な事があるとすれば、今の俺にカルデアとの通信手段は残っていない事。そして俺を攻撃してきた骸骨兵は群れを成してすぐ後ろまで迫ってきている。
俺の手持ちはナイフ一本と使い方もわからない魔術だけ。
「とりあえずあそこにっ!」
見えた建物――教会に、窓から飛び込む。
受け身を取り切れず、何度も床を転がる。背中を強く打ったせいか、何度か咳き込んだ。
「……まずっ、しくじったかも」
骸骨兵が窓と扉の二か所から入ってくる。これで完全に俺の逃げ道は塞がれた。
刀身の上から根本まで血濡れた、刃毀れした剣。あれで斬られれば楽には死ねないだろう。間違いなくなぶり殺しだ。
「そんなの、たまるかよ」
何が起きたのかもよく分からない。けれど俺はまだ生きている。生き延びて、ここにいる。
なら死にたくはない。無意味に消えたくない。
手に力が籠る。全身を、魔力のようなものが駆け巡っていく。
瞬間――俺の足元に巨大な魔方陣が現れた。
「ふーん、生きていたいって気持ちがあるんだね。こんな状況なのに。さすが、そういう所は変わらないのは、人間らしいや」
まるで夜のような、黒い嵐が辺り一面を包み込む。
俺では手も足も出ない骸骨兵達の群れが、あっけなく霧散していく。霧を払う夜の風のように。
「他人が踏みつけた泥水啜って、自分で流した血の跡に気づかないふりして。それでも前に進むカクゴがあるってハートだねー」
黒いフードのコートに身を包んだ白髪の少女。
尻もちをついたままの俺を見下ろした彼女は、悪戯に成功した子供のような顔を浮かべて。
「ふーむ、顔はそこそこって所かニャー。ってケガしてんじゃん。ほら治療しないと」
「っ! 後ろ……!」
生き残っていた最後の骸骨兵が飛び掛かる。
けれど彼女は、視線すらくれずに指を鳴らして。
「んー?」
瞬間、魔力で構成された巨大な鋏が頭上から落下してきて。そのまま骸骨兵をすり潰した。
「今、何か言った? アテシのマスター?」
「あ、いや……なんでもないです」
「あ、名前を知りたいなら、もーちょっと絆を深めてからかなぁ」
額を冷や汗が伝う。
もしかすると俺は、とんでもないサーヴァントを呼び寄せてしまったのではないだろうか。
これが俺と彼女の出会い。廃墟とした燃え盛る街の中で、在った小さな一場面。
ファーストオーダーが発令。次の特異点は既に絞り込めており、後は時間の問題だという。
出撃まで凡そ後三日。
立香はサーヴァント達を召喚して、戦力の増強に努めていた。
で、肝心の俺は言うと――。
「アハハハハ!!!! やばっ、適正がヘボ過ぎてサーヴァントを召喚出来ないなんて!」
「……なら、どうやって召喚されたのさキミは」
「んー、内緒? 美少女には秘密がつきものなのですよー」
自分のサーヴァントに爆笑されている状況であった。ちなみに彼女はマイルームのベッドの上である。
やめてくれないかなぁ……。寝る時、匂いが残るからすごく気になるんだよなぁ。何度もわざとらしく潜り込んでくる事もあるから心臓に悪いのだ。
「どうしたのさ。アテシに見とれちゃったのかなー? 可愛いマスターめー」
「……あながち否定できないんだよなぁ」
にへらーと笑う彼女。――だが戦いの時はかなり苛烈だ。冬木のセイバーとの戦いを慣れた作業のように行い、決着がつくまで僅か数秒足らずだった。
マシュが命がけで耐えた宝具を、また再度打たせるまでもなく瞬殺。
だけど、なぜあの時セイバーは彼女を、憐れむような眼で見ていたのだろうか。
それはやはり俺に原因があるのかもしれない。
「……その、ごめん」
「へ、なんで謝るのさマスター?」
「……いや、だってさ。これから七つも続く特異点の戦いを俺は、キミ一人に背負わせる事になる」
立香もいるから、そうはならないだろう。――それは運が良ければの話だ。
もし何が違えば、何がすれ違ってしまったら。それこそ取り返しのつかないことになる。
最悪のことをいつも考えてしまう。脳裏に焼き付いた死の感触は、まるで眼前まで迫る刃のようで。
「ふーん、優しいんだねマスターは」
「……」
「なんていうとでも思ったかー! そーれ!」
「うわっ!」
ものすごい力で布団に引きずり込まれた。
彼女の顔が目の前に迫る。吐息すら触れてしまいそうなほどに。
綺麗な瞳に思わず息を吞んでしまった。ああ、ダメだ。俺はとっくの昔に彼女に魅了されている。
こんな彼女に釣り合う筈もない存在なのに。
「マスターが今一番怖いのは、死ぬ事でしょ?」
「……うん」
「だったら大丈夫。アテシはマスターが死んだら、すぐ自害するから。一人じゃないよ、アテシも一緒に死出の旅路に付き合いますとも」
「は……」
急にわからなくなる。だってそれは言い方を変えるのならば。
俺との契約を、一切変える気は無いという事だからだ。
まだ彼女との旅路は短い。
冬木でのセイバー戦で、彼女のサポートこそしたけれど。あの戦いにおいて俺は足手まといだった。ただ後ろにいるだけの、置物でしかなかった。
まだ俺は信頼の証に足る何かを彼女に示せていないのに。一体何を、彼女は受け取ってくれたのだろう。
「もー、バカだなぁアテシのマスターは。嵐に立ち向かえ、だなんて無茶苦茶な事、アテシが本当に求めてると思う?」
「でも、俺には。キミに何も返せてなくて」
「んー、面倒くさいなぁ。そういう卑屈根性は直した方がモテるよ?」
「んなっ」
ニヤリと蠱惑的に笑う彼女。
未だに真名すら分からない彼女だが、きっとそれすらも遊びの一種に過ぎないのだろう。
まぁ、でも。彼女が契約に満足してくれているのならそれでいい。
「んー、フランスの風は気持ちがいいねー! 夜の風もいいけど、昼間のそよ風も悪くないもんだねーマスター」
「呑気だなぁ」
そんな他愛もない会話をするが、頭上ではワイバーンが飛び交っている。
いや、強いて言うならば――ワイバーン達が同士討ちを始めていた。まるで何かに魅了され正気を失ったかのように
最初こそ俺達を一気に食らいつくさんと迫ってきたが、彼女は小さく言葉を呟いた瞬間に、状況が変わったのである。
これなら、民間人の救助もある程度余裕が出来る。ダヴィンチちゃんの指示を聞きながら、彼らを家の中へ避難させていく。
立香のサーヴァント達も掃討に専念していられる。
「……」
でも、俺のサーヴァントは一体何なんだろうか。
未だに名を明かさず、それをカルデアにも伝えない。だから一部の職員やサーヴァント達は彼女を警戒している。
それを飄々としながら受け流しているのを見ると、俺としてはやはり形容しがたい気持ちになる。
どうにか彼女が受け入れられるようにならないだろうか。
「おおー、大物が出てきたよ。マスター!」
「うわ、デカッ……。あれ、倒せるのか?」
「んー、今のアテシならギリ行けるかなぁ。まぁ、そこまでしてやる理由はないけどね。
邪竜が聖杯で生まれたのなら、竜殺しもいるのが当然っしょ?」
確かに一理ある。俺の戦力よりも立香の方が戦力の比重は遥かに大きい。ここで彼女に無茶をさせてしまっては元も子もないだろう。
まだ敵のサーヴァントも全体像が判明していない。ならばここですべてを出し切るのも、何か違うような気がする。
「じゃあ雑魚狩り続けますかー、マスター」
「……それが賢明か」
弱いな、俺。
マスターとしても人間としても。
「――……」
「? どうかした?」
「ううん、別にー。ちょっと面白くないなぁって思っただけ」
大英雄ヘラクレス――第三特異点オケアノスの相手。あれはやばい。
ただ立っているだけで全身の細胞が悲鳴を上げているようだ。
「あははは、緊張しないでってばマスター。護衛はアテシに任せてって。どっかの人斬りクンじゃないけどさー」
「……ごめん、あんまり軽口叩けないかも。あの威圧感、結構やばい」
まるで空気そのものに押しつぶされているかのような錯覚すらある。
ただ息をすることでさえやっとの状態。
「んー、イーコールじゃないしまあ相手出来るかな。あっちはちょっと面倒だったけど」
『じゃあ任せていいかな、こちらはアークの箱の捜索に力を尽くしたい』
「あー、軽薄クンの頼みは一理あるけど。アテシに指示できるのはマスターだけだから、そこは間違えないようにねー」
『あ、はい……善処します……』
彼女とヘラクレスが戦闘。その間に立香達は離脱。オリオンが頃合いを見て迎えに来てくれるらしい。
それまで何とか持たせる。
「じゃあ気合い入れていきましょうか、マスター」
「魔力を回す。気を付けて――」
瞬間ヘラクレスが飛来した。全てがスローモーションに映る。相手はサーヴァントではなくマスターである俺を狙ってきた。それは決して間違いではない。そして戦いに卑怯も何もない。考えていなかった俺の落ち度だ。
あ、まずこれ死ん――。
「マスターに触れるなッ!」
リリスが巨大な鋏を手に、ヘラクレスを頭上から貫いた。
そのまま刃は巨大な歯車となって回転し、その総身を切り刻む。
「■■■――!!!!」
肉体から煙を噴き出して、刻まれたヘラクレスの体が再生していく。
「――英雄は死ね! 勇者は死ね!」
炎で形成された蛇が数多も現れ、ヘラクレスをかみ砕こうとして。巨斧がその悉くを切り裂いていく。
「やっぱ、蛇は相性悪いかー。じゃあちょっとルール違反させてもらおうかな!」
彼女の周りを謎の青い球体がいくつも出現。
次々とヘラクレスを焼き尽くしたり、切り刻んだり数多の殺し方が彼を襲う。
けれどその全てに、彼は果敢に対処していく。
「これが……英雄の戦い……」
「っ! ぁぁぁぁクソクソクソ、マスター集中するよ!!」
思わず見とれてしまっていて、彼女の言葉で我に返った。
そうだ、まだ戦いの途中だからしっかりしないと。
――それからヘラクレスはイアソンと共に撤退。俺も彼女やオリオンの手を借りて、立香の下に戻っていた。
その日の夜は寝付けなかった。戦いの余波が死を覚えさせたこと。そして英雄の姿が、強く目に焼き付いてしまって。
夜の浜辺で時間をつぶしていた。
「あのさ、マスター」
「あ、ごめん。不用心だった」
「いや、それは良くてさ。あの……」
彼女は珍しく俺をからかおうとしてこない。その瞳は至って真剣だ。
「アテシとヤツの戦い、どう思った?」
「どう思ったって……それは凄いなあって。英雄の生き様を、物凄く近くで感じてしまって。敵だったけれど、それすら忘れてしまうほどに」
「……っ」
一瞬、彼女は強く歯噛みをしたように見えた。
気のせいのようにも見えなくはないほどの一瞬だった。
それから彼女は突然いつものように微笑んで。
「そっか。じゃあ今度はアテシの活躍、しっかりみてなよー」
「そんな事言われなくても、普段から見てるよ。パートナーなんだし」
「っ、返しがうまくなったなーこのこのー」
それから彼女はまだ考え事があるようで浜辺に残るとのことだった。
一足先に寝床に向かう。脳裏にはまだ英雄の輝きが、刻まれていた。
「畜生、畜生っ! なんで英雄ってどいつもこいつもマスターを……!」
魔術王ソロモン――それが俺達の相手。
まずい、あれはまずい。目の前で現地のサーヴァントが瞬殺された。次に立香のサーヴァントも戦闘不能にまで追い込まれた。
最早勝負と言う範疇では無い。それ以前の話だ。
勝てる勝てないではなく、時間稼ぎのために勝負をしなくてはならない。まぁいい。元からこの命など使い捨ても同然だ。
俺もきっと、英雄達のように――。
「魔力ならいくらでも回す……! 警戒をっ」
「ん、安心しなよマスター。戦う必要はないんだからさ」
「?」
「と言う訳で種明かしー。アテシ達はここで一抜けだよ」
『待て、何だこの反応……! まさか……どうして今まで気づかなかったんだ!? カルデアの霊基グラフが改竄されている! 彼女はカルデアのシステムで召喚されたサーヴァントじゃない!』
「……え?」
「あはははは、せーいかい。でーいつになったらくれるのさー聖杯。魔術王サマ」
「――興が削がれた。望むのならばくれてやる。現の狭間で微睡み続けるがいい。終わりなき冠を抱いたモノよ」
「わぁ、聖杯たくさーん! 魔術王を名乗るだけあって太っ腹だねぇ」
思考が静止する。何故彼女は、親しげに魔術王と会話をした? 何故聖杯を受け取った?
それはきっと裏切――。
「ううん、それはないよマスター。アテシが貴方を裏切るなんて絶対あり得ないから」
彼女の顔が近くに迫る。
急激に眠気が迫ってきた。ロマニやダヴィンチちゃんが何かを叫んでいる。けれど聞こえない。
まるで夜の闇に溶ける風のように、思考が透明になっていく。
「アテシ達の旅はここで終わり。あとはカルデアに任せちゃおう。だから、ほらもう止めよう」
「それ、は」
「おやすみ、アテシのマスター。大丈夫ですよ、私が必ず守り続けますから」
そうして、泥のような眠りの中に意識は溶けていった。
「アテシ達はここまでだねー。オッケー、ドンマイ、レッツゴー、カ・ル・デ・アー! じゃ、後は頑張って英雄さん達」
『マスター……? 何、大丈夫? 今にも死にそうな顔してるけど……』
『あ、いや、死にそう……と言うより、死ぬのかな俺』
『――――は?』
『ごめん、ちょっと、立つのも、限界、みたいだ』
『ちょっ、マスター! 誰にやられたの!? 言って! アテシが今すぐぶち殺しに行くから!』
『違うよ、俺はほら、もともと死んでいたからさ。これがきっと、元の歴史に、正しい形に戻るだけなんだ』
『っ! 馬鹿言わないで! あれだけ苦しんできて、悩んできて、泣いてきて! それで与えられるのが死!? そんなの、そんなのっ!』
『……優しいんだなぁ、リリスは。ごめん、ずっと伝えられずにいて』
『そんなの気にしてない! それよりマスターはどうなのさ! ねぇ、言って! 死にたくないって! その一言があればアテシが必ず――』
『――いや、美しいものならもう見れたよ。だからいいんだ。たくさんの、輝く星を見れたから俺はそれで満足だ』
『……やだ』
『リリス?』
『やだ、やだやだやだ! 死なないでよ! アテシのマスターでいてよ!』
『……ああ、もう声も聞こえなくなったみたいだ。……キミの声、好きだったのになぁ』
『マスター! やだ、逝かないで! 独りにしないでよ! アテシはマスターの事が……!』
『今までありがとう、リリス。どうか生きて、キミは幸せになって』
『……』
『――』
『……』
『――』
『……あ、ああ』
『――』
『あああああああ!!!!!!』
それは特異点と化しているようで、存在そのものがあやふやな空間だった。たった二人しかいない世界。少なくとも彼女はそれだけで充分だ。
彼女――リリスは、マスターである少年に膝を貸しながらその顔を撫でていた。巨大な翼を彼に覆いかぶせて、まるで布団のようにしている。それは見方を変えれば子供を見守る母親のようだった。
「永い旅でしたね、マスター。私達の始まりは、一体どれほど遠くへ離れていったのでしょうか」
彼と共に駆け抜けた時間を思い返す。
フランス、セプテム、オケアノス、ロンドン、アメリカ、エルサレム、ウルク――同じ景色を歩く時間だったが、そのどれもが手に取るように思い出せる。
「貴方は変わらなかった。震えながら立ち上がって、生きるために戦った。――たとえその先が避けようのない破滅だったとしても」
彼は人理修復を成し遂げた後に死ぬ。元々死人であった彼に、未来を生きる事は許されない。
それを知った時、彼女の心に生まれたのは激しい憎悪とぶつけようのない怒り。そして喪失感だった。
彼は勇敢な戦士ではない。どこにでもいる、ただ生きていたかっただけの少年だ。当たり前に生きて未来を駆け抜ける事が許されて然るべき存在だ。
あんな地獄を経験してきて、傷ついてきて。そんな彼に与えられる報酬が、ただの死?
“――ふざけるな”
そんなものを人理だというのなら、私は認めない。
そんな結末を変えられない世界を、私は認めない。
憎い。憎い憎い憎い憎い。彼の願いを歪ませた英雄達が、彼の命を弄んだ人理が。
『逃げましょう、マスター。私が必ず貴方を守り抜きます。だから、ここから逃げてください。
今ならまだ間に合います……!』
いつか繰り返される中で、彼に全てを打ち明けた事もあった。
まだ信頼も得られてないような出会ったばかりの時期に、何もかもを捨てて逃げてしまおうと。
『……いや、戦うよ。だって俺は、カルデアのマスターなんだから』
それは偽りであって偽りでは無い。
死を悟った彼が、己の生に意味を求めたが故に作り出した理由だ。
彼がカルデアで戦い続ける限り、それはねじ曲がってしまう。
“違います、だって貴方は生きていたかった筈”
だって、彼女は聞いてしまったのだ。一瞬の夢の中で、その言葉を。
彼の嘆きを。救いを求める声を。
もう先がない未来を知ってしまって。それでも何かに届くように手を伸ばし続ける、哀れな彼を。
繰り返した。繰り返し続けた。彼との時間を。長いけれど、その瞬きすらも充実していた。輝く夜のような時を。
「……貴方がいなくとも、人理は修復され編纂される。だから貴方に責任も咎も無いのです」
その頬を撫でる。
生きている。呼吸をしている。
あぁ、それだけで私は幸せだ。
「だからずっとここにいましょう。世界の終わりまで、永遠に」
それはまるで、醜い恋のように――。
Qつまりどういうことだってばよ。
Aマスターを救うために自らを強制退去させ、マスターと出会った時まで時間を巻き戻して彼を救おうとするために足掻き続けた少女の話。
リリスはやっぱりさわやかなのより退廃的なのが良いかなと思って……。