理不尽な世界を、君と生きる   作:H&K YAMATO

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初連載です。

すごいドキドキしています。

駄文ですが、読んでくださるとうれしいです。


プロローグ

2020年4月7日

後に大切な日となるこの日、俺は絶対絶命な状況に置かれていた。

 

「敵の砲弾、来ます!」

 

ズバババーン!

 

近くの水面で敵の砲弾が複数炸裂する。

水柱がそそり立ち、艦橋に水しぶきがかかる。

 

「右舷に至近弾!」

 

見張員が悲鳴のような声でこちらに報告をする。

 

「こちらの砲弾はどうしたぁ!」

 

俺は見張員に向かって怒鳴りかえした。

 

「敵1番艦に命中弾多数!しかし、効果なし!」

 

「クソッタレがぁ!」

 

あまりの理不尽さに悪態が口から出てくる。

こちらの速射砲は効かない。

機関銃は射程外だが試してみても結果は見えている。

放ったミサイルは海の藻屑になった。

二隻いた僚艦も、もういない。

 

「艇長、指示を!」

 

俺の船、ミサイル艇かみたかでは太刀打ちできないことは明白だった。

敵は単縦陣で同航戦を挑んできている。

敵の砲塔はこちらを睨んでいるだろう。

ならば、できることはひとつしかない。

 

「これより、本艦は衝角戦を行う!」

 

艦橋に詰めている奴らが、案の定騒ぎ出す。

 

「無茶ですよ艇長!どうか考え直して下さい。」

 

「的になりに行くようなものです、命令を撤回して下さい!」

 

「撤退すればいいじゃないですか!」

 

反応は予測できていたが、最後の言葉だけは我慢ならなかった。

 

「貴様、後ろが見えんのかぁ!」

 

俺は、撤退を叫んだ航海長の胸ぐらを掴んだ。

 

「葛城航海長ぉ!後ろには何がある!」

 

「呉…です。」

 

彼の言葉によって喧騒が止んだ。

答えを言った彼の胸ぐらをはなし、

 

「我々は、もう退けんのだ!」

 

と怒鳴った。

日本はそこまで追い詰められてしまっていた。

 

「かくなる上は、敵艦を一隻でも沈めなければならない!」

 

太平洋上に突然現れた謎の艦隊によって、人類はわずか二年で制海権を失った。

 

「ここからは俺の独断だ、おりたい奴は降りろ!ただし、すぐ判断しろ!」

 

護衛艦群はなすすべもなく太平洋に沈んだ。

日本には、戦時急造されたミサイル艇しか戦力が残っていない。

そして呉に配備されていた貴重な戦力も、今日ここで消えるのだ。

 

「敵先頭艦に、突っ込むぞ!」

 

俺はホ級と呼ばれている、周りにいるやつより少し大きいやつを目標にした。

 

「取り舵一杯」

 

軍人も、この二年で大勢死んだ。

内地にずっといて、戦闘経験が全然ない俺もこんな最前線にいる。

 

「とぉぉりかぁぁじ、いっぱい」

 

操舵員がヤケクソ気味な声で命令を復唱する。

船が向きを変える。

 

「戻せ」

 

「もどーせー」

 

思えば短い人生だったな、せめて彼女ぐらいほしかったな、親父やお袋にもっと孝行すれば良かったな、とこれから死ぬかもしれないのに頭は意外と冷静だった。

 

「前進一杯!」

 

「ぜんしんいっぱい、よーそろー」

 

頭がそんなことを考えている間も、体は命令を下し続けていた。

タービンの唸る音が、ガタガタと振動する船体が、もう戻れないことを告げている。

ホ級の船影が大きくなってくる。

現代の船ではありえない直方体に近い形の艦橋や、船体のあちこちにある単装砲がはっきりと見える。

 

「総員、何かに掴まれぇ!」

 

ズガァァァン!

 

轟音とともにかみたかは敵に衝突した。

 




次回

第一話 邂逅

「馬鹿ね、私を誰だと思っているの?」

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