理不尽な世界を、君と生きる   作:H&K YAMATO

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時間ができたのでもう一話投稿させていただきます。

opイメージ 轟音で搔き消した音 by 幽閉サテライト


edイメージ 百花繚乱 by kalafina


初戦

「五十鈴、出撃します!」

 

彼女の力強い声と共に、妖精たちがあわただしく動き始めた。

 

「第一戦速!戦闘速度まで早く上げなさい!」

 

機関部のうなる音が増し、船体が波を蹴立てて進み始める。

 

「俺たちはどうすればいいんだ?」

 

俺は思わず彼女に尋ねてしまっていた。

見たところ戦闘準備は妖精たちがやってしまっているようなので、やることがない。

 

「そうね、あなたはここに残って。残りは応急修理班の手伝いをお願い。妖精に案内させるわ。」

 

なぜか俺だけが艦橋に残れと言われた。

なんだかよくわからない状況になったなと考えつつ、俺は皆に指示を出す。

 

「聞いての通りだ、我々はあのイ級と交戦する。連戦でつらいかもしれないが、やるしかない。みんな頼む!」

 

「「「解りました」」」」

 

俺の部下は妖精に誘導され、艦内に散っていった。

部下が出ていったのを確認し、俺は彼女に質問した。

 

「なぜ俺だけを残した?」

 

「敵のことを少しでも知っている人がほしかったからよ。」

 

私はあの敵と戦ったことないしね、とつぶやきながらも彼女は敵から目を離さない。

 

「では、なぜ俺なんだ?」

 

「あなたがあの人たちの指揮官みたいだったし、勇気がありそうだったから。」

 

「そうか。」

 

面と向かって勇気があると言われ、少し恥ずかしくなった。

 

「あら、照れてるの?」

 

彼女がこちらを見て笑っていた。

 

「そ、そんなわけないだろ!」

 

その場をごまかすために、俺は敵を双眼鏡で見つめた。

 

「今の感じだと、T字戦か同航戦になりそうね。」

 

彼女が言う。

 

「この艦の武装は?」

 

「竣工時にまで戻ってるみたいだから、14cm単装砲7門に8cm単装高角砲2門、それから魚雷発射管が8門よ。」

 

「電探は?」

 

「ないわよ。」

 

自称するだけあって旧海軍らしい武装だ。

 

「敵艦の射程は?」

 

「だいたいヒトハチマルマル(18000m)で撃ってくる。」

 

敵は主砲らしき単装砲が五基あり魚雷発射管も見える。

 

「大きさは駆逐艦ぐらいだし、たぶん砲戦で圧倒できるはずよ。砲撃戦で仕留める!」

 

「いや、あいつには砲撃や雷撃の類は効かないぞ。」

 

効いていれば先ほどの戦闘で衝角戦などやる必要がなかった。

 

「そんなのやってみなきゃわからないじゃない!」

 

「いや、俺たちが試して駄目だったから言ってるんだよ!」

 

その言葉に五十鈴は少し考え込んだ。

 

「でも私にはそれ以外の武装がないのよ、だから駄目元で試すしかないようね。」

 

少し不安げに言う。

 

「なんだ、怖気づいたのか?」

 

「そんなわけないじゃない!本当よ!」

 

彼女の態度が、冷徹な軍人から馬鹿にされた子供のようになった。

素の彼女は案外挑発に乗りやすいのかもしれない。

思わずにやにやしてしまった。

 

「なによ、馬鹿にして!」

 

「わかった、すまない。謝るから怒るな。」

 

こんなところで関係が気まずくなってもまずいので、素直に謝った。

 

「・・・まあいいわ。ヒトハチマルマルで砲撃戦開始よ。」

 

悔しそうな顔で彼女がこれからの方針を告げる。

 

「14㎝砲ならヒトキュウマルマル(19000m)でも行けるんじゃないか?」

 

「馬鹿ね、最大射程で命中弾出せるわけないでしょ。」

 

今の護衛艦なら出せるんだが、と俺は心の中で言った。

敵の船影が段々と大きくなってくる。

もう少しでヒトハチマルマルの距離に入るという時、五十鈴が命令を出した。

 

「面舵!」

 

「オモォォォカァァァジ、15ド!」

 

妖精が命令を復唱する。

あの小さい体でなぜ大きな声が出るんだ、とどうでもいい疑問が頭に浮かぶ。

そんな事を考えていると、船が右に向きを変え始める。

しばらくすると、五十鈴がまた命令を出した。

 

「戻せ!」

 

「モドーセェェェ、カジチュウオウ!」

 

舵は戻ったが船はまだ右に動いている。

 

「取り舵に当て!」

 

「トリイィィィカァァァジ二アテェェェ、5ド!」

 

先ほどとは逆の力が働き、船が直進に戻る。

 

「戻せ!」

 

「モドーセェェェ、カジチュウオウ!」

 

船が方向転換を終えた。先ほどから45度回頭している。

敵艦も回頭しこちらに並走する形となった。

敵とは同航戦で戦うようだ。

 

「第三戦速!」

 

「ダイサンセンソクゥゥゥ、ヨーソロー」

 

タービンの唸りが増し、船が急加速する。

体が引っ張られて倒れそうになるが、足を踏ん張って耐えた。

 

「テキカン、ハッポウシマシタ!」

 

敵の砲弾が飛んでくるが、すべて船の手前に落ちた。

 

「思ったよりも敵の散布界が広いわね。」

 

彼女が敵の練度を笑う。

 

「そんなんじゃ漁船だって沈められないわよ。」

 

じゃあこいつらに沈められた俺らは、いったい何なのだろうか。

 

「左砲戦用意!目標、敵先頭艦。」

 

「サホウセンヨォォォイ!」

 

六基の主砲が旋回し、敵を睨む。

 

「ソウテンヨシ」

 

「ショウジュンヨシ」

 

「シャゲキジュンビカンリョウ!イツデモドウゾ。」

 

彼女は大きく息を吸い、大声で命じる。

 

「撃ちかたはじめ!」

 

「ウテェェェ!」

 

ドガガーン!

 

轟音と共に主砲が火を噴いた。

 

「ダンチャァァァク、イマ!」

 

敵艦が水柱に包み込まれた。

 

「キョウサデス!」

 

「次弾装填、急ぎなさい!」

 

俺は素直に驚いた。

 

「初弾から夾叉を出したのか。すごいな。」

 

「この距離なら当然よ。」

 

五十鈴は自慢げに胸を張った。

 

「テキカンハッポウ!」

 

敵が砲弾を放つが当たらない。

全て水に落ちてしぶきを上げるだけだ。

最大射程ぎりぎりだからだろうか。

 

「馬鹿ね、距離をつめようともしないなんて。」

 

俺たちにも、もっと口径の大きい主砲があればよかったのにと思った。

 

「ソウテンヨシ」

 

「撃ち方はじめ!」

 

「ウテェェェ!」

 

またも主砲が火を噴き、砲弾が敵艦に向け殺到する。

しかし今度は、先ほどと明確に違う点があった。

 

「ダンチャァァァク、イマ!」

 

敵艦で火災が起こったのだ。

 

「メイチュウダンヲカクニン!」

 

「数は!?」

 

「ニハツデス。」

 

信じられなかった。

 

体当たりまでしてようやっと沈めた敵艦が、簡単に燃えている。

 

「なんだ、砲撃でも大丈夫そうじゃない。ってどうしたの!?」

 

五十鈴が俺の顔をみて驚く。

うれしかった。

奴らが被害をこうむっていることが。

だが悲しかった。

被害を与えているのは、俺たちでないことが。

 

「何でもない!」

 

俺は目元をぬぐって怒鳴った。

 

「それより砲撃を続けてくれ!」

 

「え、ええ。」

 

彼女は戸惑いながらも砲撃を続行させた。

そして第五射を放った時、それは起こった。

 

「ダンチャァァァク、イマ!」

 

主砲塔の根元がひと際強く光ったかと思うと、敵艦で大爆発が起こった。

 

「状況は!?」

 

「テキセントウカンノダンヤクコガユウバクシタトオモワレマス!」

 

敵は残り一隻。

 

「テキカンカイトウ、リダツシテイキマス!」

 

「追撃か、撤退か、どちらにしようかしら。」

 

彼女が悩んでいたので俺は言った。

 

「ここは追わない方がいい。単艦で追撃すると、不測の事態が起こったときに対処できないだろう。」

 

彼女は俺の言葉にうなずいた。

 

「そうね。とりあえず入港できる場所はある?」

 

「呉基地まで回してくれないか?そこなら何とかなるだろう。」

 

「わかったわ。」

 

こうして俺たちと五十鈴の初戦闘は終わったのだった。

 

 

 

 

 




次回 建造

「新しい仲間が、艦隊に加わるのね。」





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