返信がものすごく遅れて本当に申し訳ありません。(土下座)
夏イベ終わってからリアルが忙しくて、新艦娘のレベリングやサンマ漁そして秋イベに時間を割いていたらハーメルンにログインする時間が取れませんでした。
今回は説明会なので少し読むのが面倒、ストーリーが進まなくて退屈という考えが浮かんでしまうかもしれません。
ですが、どうかよんでくださるとありがたいです。
opイメージ 轟音で搔き消した音 by 幽閉サテライト
edイメージ 百花繚乱 by kalafina
イ級との戦いが終わった俺たちは、呉基地へと向かっていた。
「五十鈴、呉に連絡したいんだがこの艦に置いてある無線機の種類はなんだ?」
俺は彼女に聞いた。
「90式無線電話改四よ。」
まったく名前を知らない無線機が出てきた。
使い方もそうだが、自衛隊に通じるのかどうかすらわからない。
「しょうがない、入港直前に探照灯で連絡するしかないか。」
「何よ、私が悪いみたいじゃない!」
五十鈴がこちらを睨んできた。
非常に気まずいので話題をそらそうと、別の話題をふってみることにする。
「なあ五十鈴、呉に着くまでまだ時間がある。その間にお前のことをもう少し知っておきたい。だから話してくれないか?」
「話すっていっても、何が聞きたいの?」
「まずはこの船のことからだ。」
俺は彼女の目を見て、嘘をついてないか確認しようと努める。
先ほど彼女はこの船が長良型だと言っていた。
俺の記憶が正しければ、旧海軍の軽巡洋艦の名前である。
「この船はいつ、どこで建造された?」
「1920年、浦賀で。」
またもやおかしなことを言う。
いくらこの船の外見が旧海軍のものに酷似していても、まさか本物なわけがない。
「今が何年だかわかっているのか?」
「何年なの?」
「西暦2020年だ」
「・・・そう。」
彼女は悲しそうな顔をして黙り込んでしまった。
何か失敗したのだろうか。
空気を変えるため新たな話題を考える。
「そういえば、君の名前をまだ聞いていなかったな。教えてくれないか?」
今度は地雷にならなそうな話題を振ってみた。
「だから五十鈴だって・・・」
「それは船の名前だろう。」
俺は彼女の言葉を遮るように言う。
俺は軍艦ではなく女性としての名前を聞きたかったのだ。
「あー、そこからなのね。」
彼女は頭に手をやってうなった。
「どう説明したものかしら・・・・」
しばらくうなってから、彼女はこういった。
「私はかつて軍艦だったの。」
意味が解らなかった。
「"私"は本当に、軍艦の"五十鈴"だったはずなのよ。」
彼女は言葉を重ねた。
「"私"は1921年に生まれて、1945年に潜水艦の雷撃で沈んだはずだった。でも気づいたらこの場所にいたの、人間の体っていうおまけつきで。」
それはつまり、
「”私”は意識がない鋼のはずだった。でも”私”の意識は、今確かに存在してるの。」
「馬鹿な!過去の軍艦が意識をもって、しかも人間の体を得るなんてことは・・・」
「ありえないって思うでしょ。」
今度は俺の言葉が遮られる。
「近くで見てたのよね。私はどうやってここに来たのか教えて。」
「それは・・・」
潜水艦でもない船が、突然海上に出てきたなんてことはそれこそ”ありえない”。
「突然海が光ったと思ったらこの船が・・・つまり君がいた。」
「やっぱり普通じゃなかったのね。」
こんなことどう説明しろというのか。
だがあの不思議な光は、超常現象でしか説明できない。
俺は五十鈴の言うことを否定できないのだ。
気が付いたらあった人の体、出てきた場所は未来。
彼女の心中は、俺には想像がつかない。
「君が旧海軍のものだということはとりあえず分かった。だがそれよりも、もっと重要なことがある。」
これこそが本題。
「君が奴らを”砲撃で”沈めることができた、ということだ。」
下手をすれば世界を変えるかもしれない重大事。
「あいつらって本当に砲撃が効かない奴らだったの?」
「そうだ。あいつらのせいで海上自衛隊・・・つまり海軍は壊滅状態だ。」
そんな奴らの沈没に、2度も立ち会うことになるとは思っていなかったが。
「原因に心当たりはあるか?」
「そんなのないわよ!と言いたいけれど、違う場所から来たってことかしらね。」
おそらくそれが理由なのだろう。
「砲撃で奴らを沈めることができる君は、おそらくこの世界で唯一奴らに遠距離攻撃ができる戦力だ。」
彼女はこれからどんな扱いを受けるのか、俺にもわからない。
兵器開発の研究対象にされるかもしれないし、戦力として使いつぶされてしまうかもしれない。
だが、彼女が少しでもいい扱いを受けるように心の中で祈った。
「私のことは話したから、次はあなたのことを教えてよ。」
重くなった空気が嫌になったのか、五十鈴が話題を振ってきた。
「まだ名前も教えてもらってないわよ。」
そういえばそうだったなと思い出し、
「呉地方総監部・警備隊所属、高須裕人だ。元ミサイル艇かみたか艇長で、階級は3等海佐。」
「3等海佐ってどれくらいの階級なの?」
「そっちでいう少佐ぐらいかな。」
「その割には結構若く見えるけど・・・」
「この二年で軍人もたくさん死んだからな、繰り上げって奴だよ。今25歳だ。」
「すごい若いわね。普通だったら30歳でも優秀な方なのに。」
「自慢じゃないが、海軍学校での成績が優秀だったからな。卒業した後に3年間、幹部上級課程修了後に任官されたんだ。」
そうしてしばらく彼女と雑談をした。
それは自衛隊の話だけでなく、家族の話や小さいころの思い出にまで及んだ。
どれも彼女には新鮮だったようで嬉しそうに聞いていた。
時刻はちょうどヒトナナマルマル(17:00)を回ったころだろうか。
彼女と話しているうちに、江田島の明かりが見えてきた。
「ゼンポウ二ショゾクフメイセンヲカクニン!」
見張り妖精が船を発見し報告してきた。
「あの船に見覚えはある?」
「呉所属の内火艇だ。」
五十鈴に味方であることを伝える。
内火艇の様子をうかがっていると、発光信号を出し始めた。
「フメイセンカラハッコウシンゴウデス!」
「読み上げて!」
妖精が信号を読み上げる。
「キカンノショゾクヲノベヨ、デス。」
「あの船は味方でいいのかしら?」
五十鈴が俺の方を見て質問する。
「ああ、そうだ。あれは呉の所属船だよ。」
俺が答えると五十鈴は、
「返信するわ!探照灯照射準備!」
「リョウカイ!」
探照灯が旋回する。
「タンソボウテキセイヲカクニン。」
「ショウシャジュンビカンリョウデス!」
艦橋に準備完了の報告が届くと俺は五十鈴にある提案をした。
「五十鈴、返信文は俺に任せてくれないか?」
「いいわよ。」
俺は彼女の了解を得ると妖精たちに指示を出した。
「前方の友軍に返答!我、元かみたか艇長高須裕人。入港許可を求む!」
探照灯が意志を伝えんと瞬いた。
内火艇はしばらく沈黙した後、「我に続け」と返答してきた。
「五十鈴、誘導に従ってくれ。」
「わかったわ。両舷前進微速!」
速度を合わせて内火艇に追従し、港まで進む。
誘導に従い入港し、タグボートの助けを借りて接岸した。
港には武装した陸軍の軍人や戦車たちがいた。
「副長妖精!留守の間を任せるわ。」
「オマカセクダサイ!」
俺は彼女と元かみたか乗組員を連れて船を降りることにした。
この艦の説明は五十鈴がいなければできないと思ったからである。
また外で何かあっては困るということで、護衛として水兵妖精が2人(?)ついてくることになった。
俺たちが甲板から桟橋へ降りると、
「警備隊司令の星崎1等海佐だ。いったい何があった?」
陸自隊員の中から俺の上司が出てきた。
星崎1等海佐の話によると、かみたかの沈没はレーダーで確認されていたらしい。
司令部は敵の撤退を確認したところで、すぐに救助船を向かわせようとした。
しかし新たな艦が突然現れ、敵艦と交戦し1隻を沈めた。
しかもその艦が呉に向かってきている、ということで司令部は今大騒ぎになっているという。
「それで、今度はその艦から連絡が入ったというから出てみればこれだ。どういうことか説明してほしいんだが?それとそこにいる女性は?」
「はあ・・・、その説明がかなり難しいのですが。」
なんと説明したらよいのか、誰か教えてほしい。
突然船が海から現れ、それに乗って勝ちました。
そんな説明をしたら正気を疑われる。
「とりあえずその船は敵ではないので、攻撃しないでいただきたいのですが。」
「・・・了解した。港にはそう伝えておく。それと、すぐに地方総監部庁舎に出頭してほしい。」
「元乗組員全員ですか?」
「いや、ひとまずは君だけだ。他の奴は後日ということになる。」
「了解しました。」
「では、また後で会おう。」
星崎1等海佐は不吉な言葉を残し、地方総監部方面へと去っていった。
桟橋のすぐそばにある駐車場には海自の人員輸送車3号が2台止まっていた。
片方には元かみたか乗組員たちが乗り込み、高機動車の護衛付きで近くにある乗組員待機所へと向かった。
もう片方は俺と五十鈴、そして第46普通科連隊だと名乗る陸自隊員たちと一緒に地方総監部へと向かった。
庁舎についた俺たちは、待合室に通された。
「しばらく座ってお待ちください。」
周りを連隊員に囲まれて待つこと2時間。
「お待たせしました。第1会議室にお越しください。」
俺たちは陸自連隊員の案内で会議室まで向かった。
会議室の前に着き、俺が扉をノックする。
「高須3等海佐と他3名、参りました。」
「入れ。」
「失礼します!」
扉を開け中に入る。
向かって右の席には星崎1等海佐や地方総監部長官、左には幕僚長や管理部長、そして正面には
「安宋総理大臣!?」
「やかましい、静かにせんか!」
予想外すぎて思わず叫んでしまい、星崎一等海佐にたしなめられた。
さすがの五十鈴も首相が出てきたということに驚きを隠せないようで、目を丸くしている。
「はっはっは、まぁ驚くのも無理はない。楽にしたまえ。」
首相はいたずらが成功した時のような笑みを浮かべていた。
しかしなぜ首相がこんなところにいるのだろうか?
その首相は五十鈴の護衛である妖精をじっと見つめていた。
想定外の事態に混乱していると、
「高須三佐、本日の出撃後から帰還までにあった出来事を報告せよ!」
「はっ!報告いたします。我々は・・・」
そうして俺は今まであったことを報告した。
総監部の幹部たちはキチガイでも見るような顔をして俺を見ていたが、安宋首相だけは違った。
彼はこちらを食い入るように見つめ、一言も聞き漏らすまいという姿勢だった。
「以上で報告を終わります。」
俺は報告を終えて黙った。
内心どんなことを言われるか不安だったが、本当のことである以上言うしかないと開き直った。
会議室は耳が痛くなるぐらい静かになっていた。
その静けさを打ち破ったのは首相の発言だった。
「ではそこにいる彼女が例の艦の艦長、いや"魂"であるということかね?」
「はぁ、そういうことになります。」
首相が五十鈴に目を向けると、彼女は慌てて敬礼をした。
「ああ、楽にしていいよ。」
「はい、ありがとうございます!」
彼女は敬礼していた手を降ろした。
「では五十鈴君とやら、悪いが君が本当に"五十鈴"であるのか確かめたい。少し質問させてもらうがいいかね?」
「はい。」
そうして首相の周りにいた官僚が、資料を見ながら船の五十鈴に関することを訪ねて行った。
五十鈴はその質問すべてに答えた。
「やはり本当だったようだ。」
"やはり"?
「総理、失礼ですが"やはり"というのはどういうことでしょうか?」
「"彼"を部屋に入れてくれ。」
首相は答える代わりに誰かを呼んだ。
部屋に入ってきたのは、
「妖精⁈」
入ってきたのは作業服を着てヘルメットをかぶった妖精だった。
「彼は以前あった大規模戦闘の直後に本土に流れ着いた妖精の一人だ。」
「総理は以前から妖精がいることを知っていらっしゃったということですね。」
「そうだ。」
総理は大きく頷いた。
「だから、君たちが連れている妖精を見たときから味方であるということはわかっていた。だがある程度尋問しないと周りへの示しがつかないからな。そこのところは水に流してくれると嬉しい。」
「いえ、もったいないお言葉です。」
元より最初からすんなりと受け入れられるとは思っていなかった。
それだけにこの程度の尋問で済んだのなら十分だ。
「それで、五十鈴君がなぜ敵を沈めることができたかということなのだが。」
やはりこの話題が来た!
「我々はこの妖精の存在が大きく関与していると睨んでいる。」
ん?五十鈴ではなく妖精?
「つい先日、彼らに作ってもらった12cm砲で極秘に実験を行った。その結果、撃沈には至らなかったもののイ級に損傷を与えることができた。」
自分の知らないところでそんな実験が行われていたのか!
「彼らは、自分たちにもっと資源を与えてもらえば五十鈴君のような軍艦を作ることができると言っている。ただし第二次世界大戦や太平洋戦争に参加した艦に限るらしい。」
それはいい。五十鈴のような戦力を大量に生産できれば、制海権の奪還を夢じゃないはずだ。
「それは素晴らしいことです。ですがなぜその話を私に?」
こんな話は俺にしなくても上層部だけで共有すればいいことだ。
自分に話す意図が分からない。
「近々、妖精たちを集めた施設を作る予定がある。君にはそこの長として着任してもらいたいのだ。」
「理由をうかがってもよろしいですか?」
なぜ自分がそんな重要な施設の長を任されるのか分からなかった。
国防を担うなら自分よりももっと階級が高く、能力的に優れている人物であるべきだからだ。
「初めて奴らを沈めた君たちに何かしらの恩賞が必要であることが一つ。次に、妖精が乗った軍艦に乗艦したことがあるのが現在君たちだということ。だから、その中で最も階級が高い君を長とすることにした。他に質問はあるかね?」
「五十鈴はどうなりますか?」
「君と一緒にその施設に所属してもらうことになる。他には?」
「ありません。」
「追って辞令を出す、それまで待機だ。下がっていい。」
「はっ!」
そうして俺と五十鈴は退室した。
俺はその日乗組員待機所に泊まり、五十鈴は女性職員官舎の空き部屋に泊まることとなった。
そして翌日マルナナマルマル(07:00)、俺と五十鈴は首相がいない第一会議室で、呉地方総監から辞令を受け取った。
一週間ぐらいは待たされると思っていたが、こんなに早く辞令が出るとは…
それには今日中に大黒神島鎮守府に五十鈴を連れて着任しろと書かれていた。
しかも俺は2階級昇進して1等海佐になった。
気前が良すぎて不安だ。
五十鈴に話すと
「あら、あたしのおかげかもね。」
となぜが自慢げな顔。
笑顔はきれいなのだが、解せぬ。
「しかし大黒神島か。あそこに軍事施設は何もないはずだがどういうことなんだろうか?しかも鎮守府だと?」
「行けって言われたんだから行くしかないでしょ。地方総監に聞いても行けばわかるの一点張りだったし。」
俺たちは五十鈴の船体を回航し、大黒神島に向かった。
「なんだこれ・・・」
「私が沈んでいる間に、大黒神島って軍港になったの?」
「そんなわけあるか!」
大黒神島を見た俺たちは困惑した。
ちょっとした丘ぐらいしかなかったはずの島に、巨大な港ができていたのだ。
島はすべて平地にされていて、三百メートル級の桟橋が数本突き出している。
面積も明らかに広くなっており、巨大な倉庫や大型のクレーンそして官舎と思われる建物が五つ、そして屋根付きのドックと思われる施設が四つ。
さらに、防衛用の沿岸砲台と思わしきシルエットも確認できた。
場所を間違えたかと思い、五十鈴と何度も海図で確認したがここは大黒神島で間違いなかった。
困惑して周辺を周回していると、さっさと入港しろと言わんばかりに港からタグボートが出てきた。
タグボートに誘導(連行?)されて接岸すると、桟橋には作業服を着た妖精たちが待ち構えていた。
「シレイカンニーケイレイ!」
掛け声とともに一糸乱れぬ動きで20人ほどの妖精が敬礼する。
彼らには悪いが、おもちゃの兵隊が敬礼しているように見えて少しおかしかった。
とりあえず答礼する。
「ヤスメ!」
号令とともに妖精がたち手を降ろす。
同時に代表と思われる妖精が前に出てきた。
昨日会ったあの妖精だった。
「ヨウコソイラッシャイマシタ、カンゲイイタシマス。ココニイルヨウセイノオサヲシテイマス、コウショウチョウトオヨビクダサイ。」
「では工廠長、この鎮守府の案内を頼む。他の妖精は持ち場に戻っていてくれ。」
俺が解散の指示を出すと妖精たちはそれぞれの持ち場に散っていき、工廠長だけが残った。
「デハゴアンナイシマス。」
最初は俺の執務室と、その隣にある俺の部屋からだった。
執務室には木で作られた重厚な1人用の執務机と、大人数で座れそうな会議机があった。
執務机の後ろには南向きの窓があり、日当たりは良さそうだった。
また執務机から見て左側の壁には黒板があり、作戦の説明に使うようであった。
部屋の隅にはまだ明け終わっていない段ボール箱があり、新設直後の雰囲気を出していた。
次に、俺の部屋は三つに仕切られていた。
玄関から入ってすぐ居間で、両脇に台所と寝室というシンプルな構成だった。
「意外といい部屋でよかったじゃない」
「そうだな。」
その次は官舎を案内された。
しかし、俺たち二人に妖精たち全員を入れてもはるかに余裕がある広さだ。
「なあ工廠長、聞きたいことがあるんだがいいか?」
「ハイ。」
「君たちが建造する船にも、五十鈴のように妖精やその・・・艦の魂を持った女性が乗っているのか?」
「ハイ、ソウナリマス。」
「では、五十鈴はどうして何もない場所から現れたかわかるか?」
「モウシワケアリマセンガソレニカンシテハワカラナイノデス。」
やはり五十鈴の例は妖精たちにとっても特殊なものだったらしい。
まあそこらへんはまた今度考えばいいか。
「それともう一つ、君たちはなぜ我々に協力してくれるのだ?」
ずっと気になっていた。
彼らが作る武器は魅力的だが、理由もなしに協力すると言ってくる輩を信じるのは少し抵抗がある。
「アナタハワレワレガカコノエイレイトイッテモシンジマスカ?」
まあ普通は信じないが、
「信じるよ。過去の亡霊ならすぐ隣にいるしな。」
「ちょっと、亡霊って何よ。失礼ね。私も英霊って言いなさいよ。」
五十鈴が腕をつねってきた、痛い。
仕返しに髪をぐしゃぐしゃにしてやった。
涙目で睨んできた。
ちょっとかわいい。
「ジダイハチガエド、ココハニホンデス。ワタシガウマレソダッタクニデス。ソレガコタエデスヨ。」
「そうか、ありがとう。」
小さい妖精の姿が少しかっこよく見えた。
「ツギハコウショウヲアンナイイタシマス。」
そうして向かった先にドックとつながっている巨大な建物があった。
中に入ると、ドックの他に装備開発用の機械と思われる設備、艦艇修理用足場の材料などが所狭しとおかれていた。
そしてドックの前には数字を入力するような機械があった。
「工廠長、この機会はなんの機械なんだ?」
「フネヲケンゾウスルトキニ、シザイノトウニュウリョウヲキメルキカイデス。」
「投入量?」
「ソウデス。トウニュウリョウニヨッテデキルカンセンガチガイマス。」
俺たちは工廠長から資源や建造システムについて説明を受けた。
まず資源には燃料、弾薬、鋼材、ボーキサイトの四種類があること。
これら四種類の資源は艦の出撃、修理、建造に使われるということ。
このドックでは駆逐艦、軽巡洋艦、重巡洋艦、航空母艦、戦艦を建造することができるということ。
それぞれの艦種で必要な資源量が違うが、投入した資源量に見合った艦が出てくるとは限らないということ。
(つまり戦艦の資源量を投入しても駆逐艦が建造される可能性があるということ)
そして建造されるのは、司令官もしくは五十鈴のような建造艦の招きに艦魂が応じた場合であるということ。
「なんかすごい数の制約がないか?」
「ワレワレトテジユウニカンヲツクレルワケデハナイノデス。ゴリカイショウクダサイ。」
これは妖精でもどうにもならないらしい。
「タメシニケンゾウヲヤッテミマスカ?」
「そうだな、五十鈴1隻だけでは心もとないし、やろう。」
「新しい仲間が、艦隊に加わるのね。」
俺は工廠長から聞いた、駆逐艦の資源量を1番ドックの機械に入力した。
四種類の資源をそれぞれ30ずつ投入すればいいようだ。
五十鈴は2番ドックに入力していた。
建造開始のボタンを押すと、ドックのなかに突如として光の玉が現れた。
「ねえあたしの時もあんな感じだったの?」
「まあそうだな。多分海中で光の玉が光ってたんだろうな。」
「ケンゾウジカンハ18フント22フンデス。」
「そんなに早いのか!? お前らの技術っていったい何なんだよ・・・」
どんな新しい艦が来るのか、今から楽しみだ。
五十鈴も少しそわそわしているように見える。
俺たちは工廠長も交えて3人で雑談をしながら、時が過ぎるのを待った。
「ア、ソウイエバダイホンエイカラシキュウサレタシゲンハソレゾレ300シカアリマセンノデ。」
「そういうことはもっと早く言えよぉ!もう60使っちゃったじゃないか!いやまあ必要経費だけどさぁ!」
前途は多難であった。
次回 仲間
「仲間のためなら身命を賭して、戦う覚悟です。よろしくお願いします。」