どうも、小木 琉山です。
遂に最終話です。
お付き合いのほどよろしくお願い致します。
では、本編をどうぞ
「もしかして、シンヤ、なの?」
「・・・へ?」
真後ろから聞こえた声に思わず、間の抜けた声を出してしまう。だが、それも仕方ない事だろう。
後ろから聞こえた声は、紛う筈も無い、ユウキその人の声だったのだ。
え、う、あ?どういう事だ。え、だってユウキはもう・・・万能薬だって、今は研究所だ。
それでも、自分の耳で聞いたユウキの声を聞き間違えるほど俺のユウキへの愛は落ちぶれてはいない筈だ。
恐る恐ると、後ろを振り返る。
これで、後ろにいるのがユウキではなかった場合は、この病院の精神科にでも行かないといけないな。と、場違いなことを考えながら。
ゆっくりと、だが確かな確信と共に。
「あ、やっぱりシンヤだ!」
そこには、ユウキが・・・いや、木綿季がいた。アバターではなく、現実世界の木綿季が。
「木綿・・季、だよな・・・?本当に、木綿季なんだよな?」
分かっている、目の前にいるのが本物の木綿季であることは。だが、聞かずにはいられなかった。
「うん、初めまして、紺野 木綿季です。よろしくね、シンヤ!」
笑顔でそう言うユウキ。そういえば、こうやって、機会を通さずに会話するのは初めてだったな。
俺は、膝立ちの状態からゆっくりと立ち上がった。もちろん、先程まで泣いてたせいで、クシャクシャになっている顔を拭くのも忘れない。
何がどうなっているのか、皆目見当もつかないが今はどうだっていい。
木綿季が生きていて、元気な姿を見せてくれている。それだけで十分だ。
それなら、俺も自分の目的を、この世界に来た目的を果たそう。
「初めまして、桐本 真也です。よろしくな、木綿季。」
そう、これこそが、俺の目的だった。
木綿季の病気を治して、現実世界の木綿季にこう挨拶すること。
長かった、前世で木綿季を知って五年。神のもとでの百年。転生してから十七年。百二十七年も待ちわびたこの瞬間まで。ただひたすら、この時のことだけを考えて来た。
俺が挨拶をした後、俺と木綿季はジッと見つめ合い・・・
どちらからともなく笑い出した。
「あはははは!何これ、すごい変な感じがするよ!」
「正直、ALOと感覚が同じすぎるんだよ!逆に恥ずかしくなったぞ!」
木綿季が無事だったからこそできる会話だが。だからこそ、実感が湧いてくる。
木綿季はもう大丈夫だ。
そう考えると更に嬉しさが込み上げてくる。
木綿季が笑い続けているのも、病気が治った嬉しさからだろうか。
俺と木綿季が笑い合っていると
「えーっと、そろそろ気づいてくれないかい?」
と、横から声が聞こえた。
「「うおっ(うわぁ)!?」
驚いて横を見てみるとそこには、少し気まずそうにしている、倉橋先生がいた。
え、いつからいた?
木綿季も驚いていることから木綿季も気づいてなかったのだろう。
「うん、分かっていたよ。二人が気づいてないことくらい。・・・あれ?おかしいな。目から汗が。」
そう言う、倉橋先生の目の淵がキラリと光る。
「いやいや、気づいてましたよ!だけど、やっぱり、木綿季と倉橋先生のどっちを選ぶかって言われたら、木綿季を選ぶのは当然じゃないですか!そう、これは当然のことなんです!だから泣かないでください!」
「真也、それフォローになってないよ!?寧ろ、トドメを刺してるよ!そこは、影が薄くてボク達の感知能力だと気づかなかったってことにしないと!」
「木綿季くんも大概だよ!?」
おぉ、これは俺と木綿季の、俗に言う夫婦漫才という奴ではなかろうか。・・・違いますね、はい。
まぁ、倉橋先生もノリノリな当たり、俺たちの浮かれようが分かるだろう。
こればかりは神に感謝しかない。この光景を見る事が出来たのも、神のおかげだ。
そうこう考えていると、ある考えが頭をよぎった。
あれ?そういえば、メールには木綿季の病状が急変したとか、書いてたけど。どう言うことだ?
思い立ったが吉日、取り敢えず倉橋先生に聞いて見ることにした。
「なぁ、倉橋先生。メールには木綿季の病状が急変したって書いてたけど。あれはどう言うことだ?」
「ん?簡単な事ですよ。良い方向に急変したんです。」
事も投げに言ってのける倉橋先生。えっと?つまりあれか?
俺はこの人のせいで、要らぬ心配をしたと言うことか?
よし、後で病院に掛け合ってこの人を減給してもらおう。
そう、決意を固めていると、倉橋先生は聞きずてならないことを、木綿季に聞こえないよう、俺の耳元で囁いた。
「それもこれも、真也くんの万能薬のおかげですよ。」
・・・は?突然何言ってんだこの人。
万能薬って、あれは今研究所の最新の機械の中じゃ・・・
「一ヶ月で公式に実際に投与できるようになる程、医学の世界は進歩していないんですよ。因みに、最新の機械なんてのも嘘。本当は僕の独断で投与しました。」
・・・やっぱりこの人は医師を辞めた方が良いと思う。いくら夢で神からのお告げをがあったからって、普通そこまでするか?いつかやらかす未来が見えるようだ。
まぁ、今回の事に関しては『よくやった!!』としか言えないけど。
「二人とも、何をコソコソしてるの?ボクも混ぜてよ!」
業を煮やしたのか木綿季は、軽やかな足取りで俺と倉橋先生の間に割り込んでくる。
そう、軽やかな・・・足取り・・・
「・・・て、今更だけど、木綿季は病み上がりだよな!?そんなに動いて大丈夫なのか!?」
三年間も寝たきりだったんだよな!?それにしては、筋力が衰えているようにも見えないし。五感もしっかりしてそうだ・・・
「大丈夫だよ!倉橋先生がくれた薬を飲んだら、この通り、普通に動けるようになったよ!」
そう言って、跳んだり跳ねたりと、体を動かす木綿季。
・・・万能薬、凄いなー
「僕も驚いてるんですよ。AIDSが治るだけでも万々歳だったんですけど。まさか、その他の感染症、更に体力まで回復させてしまうなんて。」
サービス精神旺盛な神様だなぁ。個数制限があって当然だ。たしかにこんな代物、量産できたら、即、世界のバランスが崩れまくるからな。
「先程、軽く検査をしてたんですけど。特に異常も見当たりませんでした。これなら、急げば、今年の四月から学校に通う事だってできるでしょう。」
これには俺だけでなく、木綿季も目を見開いた。
つまり、木綿季は一年だけとはいえ、明日奈さんと、一緒の学校に通えるということだ。
明日奈さんラブのユウキからしたら、堪らない程嬉しいはずだ。
その後、倉橋先生は、少し後処理などがあると言って行ってしまった。
二人きりになった病室に静寂が立ち込める。
「・・・ねぇ、真也。ボク、学校に行けるの?」
唐突に木綿季は口を開き、そう言った。
「・・・あぁ、明日奈さんも、里香さんも、珪子さんも、直葉さんも。みんなと同じように、学生になれるよ。」
どこの学校に行く事になるのかは分からないがそれだけは確かだ。
まぁ、どこの学校に言っても木綿季は人気者になれるだろうな。
「・・・みんなと勉強したり、運動したり。旅行に行ったりもできるの?」
そう言う木綿季の声は徐々に潤んできていた。
普通の健康な人なら当たり前のことでも。木綿季からしたら、憧れの日々だったのだろう。
学校に行けると聞いて、実感が湧いたのかもしれない。
「・・・ボク、本当に。・・・本当に、これからも、普通に・・・生きていけるの?」
いつ、病状が急変するか。いつ、死んでしまうのか。毎日、同じような恐怖に襲われていたのだろう。
木綿季の声は既に涙声になっていた。
「・・・あぁ、勿論だ。これからもずっと、みんなと一緒の日々を過ごせるんだ。」
俺が答えた途端に、木綿季は俺にしがみついて、ダムが決壊したかのように、泣き出した。
「・・・怖かった!・・・寂しかった!どんなに楽しくても、ずっと、どこかでもうすぐ、終わりが来ちゃうんだって!ずっと、ずっとずっと!!」
堰を切ったように次々と、木綿季が押し込めていただろう、弱音が溢れ出てくる。
いつもなら、木綿季にこんな風に抱きつかれたら、役得とか思ってたんだろうけど。
今ばっかりは、そんな気持ちにはならないな。
この世の中には、人の数だけ物語がある。
楽しい物語や、時には悲しい物語。
それぞれが、その物語の主人公が生きてきた軌跡だ。
そして今、終わる筈だった一人の少女の物語に続きが生まれた。
彼女は、誰も知らないような、新しい物語を紡いでいくだろう。
そして、この物語の主人公である少年もまた、これからも物語を紡いでいく。
そう、
『絶剣を愛する転生者の物語』を。
〜〜Fin〜〜
作者「この度はこの様な駄文のお話にお付き合い下さりありがとうございました。小木 琉山の次回作にご期(真也「させるかぁ!!!!」ゴフゥ!?」
真也「いやいや、何勝手に終わらそうとしてんの?まだ、俺と木綿季のイチャイチャが書かれてないじゃねーか!!」
作者「え、えぇ!?そんな無茶な!そもそも、もう前回で最終話って言っちゃいましたし!」
真也「それは、0章プロローグの最終話って話だろ!?だから何も問題はない。早く俺に木綿季とイチャイチャさせろ!!!」
作者「お、横暴だぁぁぁぁ!!!」
・・・続きます!!