双主革新奇聞ディストリズム 作:マッキー&仮面兵
――マッキー
転校生――納村不道が『ワラビンピック』を生き延びてから早いもので2日経った。鬼と亀の間の戦闘で顔を合わせてはいるが、しっかりと話したことはない。ここのところ五剣による彼の矯正が立て続けに行われ、話しかけるタイミングがなかった。
そのワラビンピック以降、納村は女子にモテモテ。整ったルックスと二剣を下した実績で既に人気はあったのだが、全校中継の中でロリBBAに勝ったことで好感度が爆上がり。今や歩けば黄色い声が飛び交い、落とした2人は嫉妬に狂う始末。
たびたび彼とお付きの2人が固まって行動しているところを見かけるけど、嫉妬が目に見えて溢れ出している。触らぬ神に祟りなし、っていうのはああいう状況を指すんだろう。実際ほかの生徒は遠巻きに眺めているだけで、あれに交わる勇気は持ち合わせていなかった。仕方ないね。
あのちやほやはいつまで続くのが気になるけど……それよりも気になるのは祈願のことだ。ここ最近アイツの姿を全く見ていない。
「そうは思わないか月夜ちゃん!」
「何を言い出すんですか。いきなり思わないかと言われても意味が分かりません」
「辛辣ッ!ってか前もこのやりとりやったよね?」
「はい、鬼瓦さんと納村さんが戦闘していた日にしていますね」
「まぁよくあるよね。月夜ちゃんは祈願が最近学校来てるか知ってる?」
「左近衛さん、ですか?どうでしょう……言われてみればここのところ声を聞いていない気がします」
月夜ちゃんが聞いてないなら本当に来ていないのだろう。
いやマジでどうしたのか、授業はともかく少なくとも部屋から出ないなんてことはなかったはずだ。何かあった、って考えるのが自然だよなぁ。
「というか授業どころか学校にすら来ないって完全に不良だと思うんだけど月夜ちゃんはどう?」
「不良もなにも、この学校に来ている時点で不良の枠に入るのでは?」
「おっとぉ、これは1本取られたわ。だが祈願の名誉のために言っておくとアイツは被害者だから」
「ほよ、それでも授業を基本サボっているような人は不良でしょう」
「それな!」
何を言ったところでサボり魔はサボり魔、これは完全に不良認定受けるね。擁護できなくてすまんな。
「その不良さんですが、どうやら隔離部屋にこもっているようです。まぁときどき聞こえる独り言から察するに、おそらく監禁されてますね」
「監禁!?祈願は緑のお気に入りだろ!?五剣に関わってるアイツが監禁てどういう――」
「ですから、その緑が監禁しているんですよ」
「――マジで言ってる?五剣といえど、いち生徒を独断で学校に出席させないでいいの?」
「ダメに決まってます。監禁の事実が明るみに出れば花酒さんが黙っていないでしょう」
確かにこの学園における天下五剣の権力は大きいと思う。大きいとは思うが、監禁はいかんだろう。義務教育ではないにせよ、通ってるんだから授業は受けなければならないと思うんだ。
「どの口がそんなことを。ならば貴方も授業に出ないといけないでしょう」
「ふっ、何をバカなことを。授業よりもキミが大切に決まっているだろうッッ!!」
「…………ぁぅ」
「あぁ!照れてる月夜ちゃんが可愛すぎてツラい!!」
「うるさいですうるさいです何も言わないでください!」
反則級に可愛い!!これだから月夜ちゃんは最高なんだ!世界中に届け!月夜ちゃんの照れ声!
「ごちそうさま月夜ちゃん!祈願の情報ありがとう!」
「はやく行ってください!ガッカリです!」
***
午前中ラストの授業時間、俺は月夜ちゃんのもとではなく隔離棟の前にいた。
「お、来たか」
「――下駄箱に"ぽい"手紙が入ってるからもしかしてとは思ったんだが……野郎からのラブレターだとはなぁ」
「『可愛い女の子だと思った?残念!貫井川くんでした!』の一文は自分でも上出来だと思うよ?」
「反射的に破り捨てそうになった手を抑えたオレを褒めてやりたいねぇ……!それで?こんなもので呼び出したからには理由あんだろ?」
棟の入り口で待っていたところにやって来たのは納村不道。誰もいない朝早い時間、コイツの下駄箱の中に招待状(ラブレター)を入れておいたのだ。理由は書かずに時と場所だけを記しておいたんだけど、本当に来てくれるとは思わなかった。
「マジで授業抜けてくるなんてなぁ。来なかったら俺だけで行こうかと思ってたけど、来てくれてよかった」
「よかったなんてよく言うぜ。おたくあれだろ、噂に聞く『変態』だろ?」
「なんだ知ってたのか、自己紹介が省けて楽だな」
「ルームメイトが色々と教えてくれてなぁ。なんでも男共の中で伝説になってるらしいぜ」
「伝説ぅ?そんな敬遠されるような肩書きよりも、俺は一緒にバカやれる悪友が欲しいんだけど」
伝説なんて大層なものはいらないから、同性の悪友か月夜ちゃんみたいな素晴らしい幼女くれないかなぁ!
「そんなことはいいんだ、重要なことじゃない。あ、本題の前に不道って呼んでいい?」
「いきなり馴れ馴れしいねぇおたく……まぁ名前にさん付けしなけりゃ構わんさ」
「よし、俺のことは貫井川でも蓮でも変態でも好きに呼んでくれ。それじゃ話そうか」
「やっと本題かよ、ここまで長かったなぁおい」
「ちょっと不法侵入してみないか?」
「いきなり何言ってんの!?」
不法侵入と聞いて取り乱す不道、何故そんなになるのか分からないんだが……。俺がこの学園に来る前には毎日していたというのになぁ。気になるあの子の様子を家の中まで観察するのがロリコンの宿命……!
「不法侵入って言っても男の部屋だから安心してくれ、いざ行かん!」
「安心できる要素がねぇ!そしておたくはなぜに壁に向かってるんだぁ!?」
「窓から入るために決まってるだろ!早く来い!」
「なんでオレがキレられてんの!?わぁったから置いて行くなぁ!」
「登りやすいところ選んでるんだからついて来いよ~?男の子だろ~?」
登ると言っても所詮は二階の部屋、たいした労力を使わずに窓に到着。下を見ればちゃんと登れている不道が見える。あとは窓をコンコンと叩いてやれば――
「貫井川変パイ!?どうしてここにっていうかどうして窓から!?」
「おう変態とセンパイ混ぜるのやめろ、窓からなのはそういう気分だったからだが?そんじゃま失礼~」
「気分で二階の窓からお邪魔なんてやっぱり変態ですね……ってあれ?後ろから来たのははノム(・)ラセンパイですか?」
「おいおいアクセントは頭につけろっておたく2回目だろぉ!」
「冗談ですよ、後輩のおちゃめぐらい見逃してくださいよノムラセンパイ」
あれ?てっきり初対面だと思ってコイツ連れてきたけど……もしかして面識ある?
「キミらお互いの顔知ってる感じ?もしかして知らなかったの俺だけだったり?」
「昨日散歩の途中で出くわしまして、軽い自己紹介はしてますよ?」
「うっはマジでか、『そろそろ例外の男子で親睦会的なのやるか』とか思ってた俺ってめっちゃ恥ずかしいヤツじゃん勘弁しろよぉ」
「あ~、自己紹介って言ってもホントに名前くらいだったんで無駄ではないですよ?むしろ嬉しいです、僕もセンパイとは仲良くしたいって思ってましたし」
「オレも噂話だけじゃなく、面と向かって話してみたかったってぇのはあるから助かるっちゃあ助かるぜ?おたくら噂と実物が違いすぎるんでなぁ」
「そう?だったらいいや、ボーイズトークしようボーイズトーク!親交深めようぜ!」
せっかく化粧しないでも生き残れてる男が集まったんだからさ、仲良くなるしかないよね!……でもさ、仲良くなる前に聞いておかないといけないことがあったわ。
「なぁ祈願、お前どうして監禁されてんの?」
「かんきん??僕お金にされてるんですか?」
「いや普通に考えて囚われてるって意味だと思うんだが……って監禁!?おたくが!?」
「監禁ってそっちですか。僕が監禁されてるって、いやそんなことないですよ?前よりちょっと厳しいけど普通ですって」
オーケー分かった、この野郎だいぶズレてきてるな。学校への登校含めた外出を全面的、一方的に禁じるってのは普通じゃないってことすら分からなくなってやがるね。これは早急な対処が必要だぞ……。
「ちょっと祈願くんよぉ、緑に何言われてここにこもってるもか教えてくれないか?」
「え?えっと……部屋から出るな、貫井川センパイと会うな、あと特に念押ししてきたのはノムラセンパイの相手をするなってことですね」
「部屋から出るなって、え?おたく学校はどうしてるんだぁ?」
「学校にも行かなくていいって言われたので行ってないです」
「どうよ不道、これでもコイツは監禁って考えてないんだ。だいぶキてるだろ?」
反応がない?と思って見てみると絶賛フリーズ中だった。目の前の状況の整理を頑張って行ってるらしいが、もはや『考えるな感じろ』の域に突入してる感じあるから諦めが肝心だぞ?
しばらく復活を待ってると、状況把握が済んだのか無事再稼働しだした。
「オレも刺激的な生活送ってきたと思ってたんだがなぁ……こいつぁたまげたぜ」
「今は祈願1人だからこの程度だが、緑と一緒のときはもっとやばいからな」
「……もう知ってる、実際この目で見た」
「センパイたちさっきから何を?」
「気にするな、もう少ししたら解決できる問題だから」
いい加減ロリBBAあたりがなんとかしてくれると思うんだが……早くしないと両方手遅れになってしまう。もう監禁まで来てしまったんだ、次は拘束でもしかねないぞあの緑。
――キーンコーンカーンコーン――
とか考えているとチャイムが聞こえた。これは授業終了のやつか。
「授業終了のチャイム!?センパイかなりヤバいです!さとりちゃんは毎日ここでお昼食べてるんですよ!」
「ここでお昼?ということは――」
「眠目がここに来る!?そいつぁマズいんじゃねーの!?さっき接触厳禁とか言ってたよなぁ!?」
「リアルガチでヤバいヤツ!ずらかるぞ不道!二階からなら飛び降りられるだろ!」
緑に感づかれては一巻の終わり、修羅場は免れないだろう!こんなところで死ぬのはゴメンだ!
「じゃあな祈願!今度はちゃんとした男子会やるからな!」
「僕も楽しみにしてます!」
「窓は閉めとけよ!――とう!」
「それじゃオレも行くぜ、次はゆっくり話したいもんだなぁ!」
「はい!また近いうちに!」
***
「見つかってたら即戦闘だった……何とか修羅場だけは回避できたな」
「おたくら2人があんまりにも騒ぐからオレもビックリしたが、実際そんなにヤバかったのかぁ?」
「監禁なんてやらかしてるんだ、今あの緑は相当警戒してる。そこに近づくなと言い聞かせたヤツがいたら確実にちょんぱよ」
「確かに話を聞く限りでは監禁なんだよなぁ……散歩で会ったときはまともそうなヤツだと思ったが、その評価も修正しないといけないかぁ?」
祈願に近づく輩は問答無用で攻撃・排除しようとしてくるから質が悪い。今回の件も、誰かが祈願に不用意に近づいたのが原因だと思われる。しかもつい最近に。
ん?最近になってアイツに近づいた?え、もしかして目の前のコイツが原因だったり?もしそうなら確実に緑は不道を狙うだろう。出来れば杞憂であって欲しいんだが……まず叶わないだろうなぁ。
不道よ、強く生きてくれ!!
納村ではなくとも、初対面時に女子生徒にお姫様抱っこされてイチャイチャと場を去っていく様子を見てしまえば普通の間柄とは思いづらいのではないだろうか。
ちなみに、ワラビンピック授与式の際、さとりが登場するシーンの場所が大きく異なっている。
漫画で輪とメアリが不許可した『二階渡り廊下』を、アニメではさとりがためらいなくぶち破っている。
漫画だとしっかり一階正面から出ているのだが……