海外移住したら人外に好かれる件について   作:宮野花

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遅くなりました……。





Big Bird_2

声が聞こえる。

それは怒っている。

緑の奥。深い闇。炎の赤。何が起きても見逃さないように。

どうか君がこれ以上傷つかないようにと、それは君を殺した。

優しいそれは闇の中を歩いている。全てを救うために、全てを殺そうとしている。

もうとっくに、すべて殺してしまったのに。

もうとっくに、誰もいないというのに。

声が聞こえる。笑っているようだった。笑うことすらやめられないそれは、休むことが出来ない。

 

そんな夢を見ている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

出勤二日目。昨日教えてもらった通り、地上階の更衣室で、私のロッカーに用意されていた制服に着替える。すると他のエージェントさんからの視線を多く感じた。

チラチラ見られながらヒソヒソと話し声。「あの子が」

「新人」「昨日」「6分の」「シックスさん」「あの子がシックス」

シックス、6、6分。

どうやら二日目にして反応しにくいあだ名を付けられたらしい。シックスさんとかどこかの都市伝説みたいだ。

一応更衣室に入ってくる人たちに初対面の挨拶はしているのだけれど、反応は会釈もとても冷たい。

名前もちゃんと伝えてるのにシックスって言われてるし。悲しい。

 

「おはよう!ユリさん!」

「アネッサさん!おはようございます!」

 

唯一、アネッサさんが眩しい笑顔で挨拶をしてくれた。救世主だと思った。

昨日は午後何をしたの、とかどこに住んでるの、とか普通に接してくれるのがとても有難い。この人が教育係で本当に良かったと思う。

 

「ああそうだ、ユリさんにこれを渡すように言われたの。」

 

そう差し出されたのは封筒と腕時計とスーツのような服。腕時計は昨日ダニーさんがしていたものと同じで、よく見るとエージェントはみんな付けているようだった。

これで業務終了などもわかるみたいなので助かる。左手首に早速つけてみると、アネッサさんが「似合ってるわよ!」と言ってくれた。なんだかアネッサさんに言われると嬉しい。

もう一つは封筒。開けてみると三つ折りの紙が中に入っていて、広げてみた紙面に書いてあった文字は、〝チーム異動〟。は?

紙から視線をあげるとアネッサさんが少し眉を下げて笑っていた。

 

「配属チーム、異動になったんですってね。せっかくかわいい後輩ができると思ってたのに、残念だわ。」

「えっ!?じゃ、じゃあ私の教育係は誰に……?」

「確かダニーさんが引き継ぎになったはずよ。」

 

出てきた名前に昨日一昨日の無茶振りが蘇って、目眩がした。

昨日のことで何となく私の力というか、立場はわかったけれど、私自身どうしてアブノーマリティに好かれてるかわからないし思い当たる節もない。

そんな私が戸惑っているところに、ダニーさんは遠慮なく思いもしないようなことを言ってのける。昨日一昨日みたいな事がこれから先沢山あると思うと……。

いや、仕事だから仕方ない。と言い聞かせる。嫌な事も仕事なのだ。そう、仕事仕事。

 

「……わかりました。アネッサさん、ありがとうございました。」

「こちらこそ本当に短い間だったけれどありがとう!配属チームが違っても気軽に声をかけてね。また今度仕事とは別にご飯でも行きましょう?」

「はい!ぜひご飯いきたいです!ありがとうございます!」

「そう言えばユリさんはどこのチームに異動になったの?」

「中央本部チーム2ってところです。」

「えっ。」

「え?」

 

配属チームの名前を言った途端、アネッサさんの表情が強ばった。

手の中の書面をアネッサがのぞき込んでくる。確認するような動作に、どうしたのだろうと首を傾げた。

 

「アネッサさん?」

「……ユリさん。」

「は、はい。」

「……何でもないわ。ご飯、近いうちに行きましょうね。」

 

にこりと表情をつくるアネッサさん。私は知っている。こういう時の何でもないは何でもなくないこと。

明らかに〝中央本部チーム2〟という言葉にアネッサさんは反応したけれど、このチームもしかして結構危険な所とか問題ありの所なのだろうか。

アネッサさんに詳しく聞こうと口を開いたところで、始業時間が迫っていることに気がついた。二人して急いで更衣室を出る。と、外にダニーさんが待っていた。

 

「おはようございますユリさん。いや、シックスさんの方がいいですかね?」

「お、おはようございます。え、もしかして待ってくださってたんですか?そしてその呼び方やめてください。」

「いいあだ名じゃあないですか。昨日の配属場所とは違うので、案内するために待っていたんですよ。さぁ、行きましょうか。それではアネッサさん、失礼します。」

「あっ、はい!失礼します、アネッサさん!」

 

1人でスタスタと歩いていくダニーさん。アネッサさんに挨拶をしてから慌ててついていく。

ダニーさんは私より背が高いので、コンパスの長さが違うせいでついて行くのも一苦労だ。距離が開かないように気をつけながら、私はその背中に問いかけた。

 

「あの、ダニーさん、私ダニーさんのことなんて呼べばいいですか?」

「?お好きにどうぞ。呼び捨てでも大丈夫ですよ?」

「いやそれは出来ないですけど!その、役職とかお持ちなのかなーって……。」

「あぁ。エージェントには役職や階級はないんですよ。」

「えっ、そうなんですか?」

「はい。勤務が長いから、仕事が出来るからといって誰が偉いとかはありませんね。まぁ尊敬位はされていますが。あとは階級の代わりに社員はレベルで分けられてますね。日頃の業務成果などでレベル1、レベル2、と上がっていきます。」

「そのレベルって、階級とは違うんですか?」

「先程も言ったように誰が偉いとかはないんですよ。ただレベルが上がると給与が上がるだけです。」

「なんか、独特ですね……。各部署の責任者とか、いると思ってたんですけど……。」

「誰が死ぬかわからないから1人に重い責任なんて持たせられないんだろ。」

「えっ」

「……失礼、失言でした。」

 

そう言ってダニーさんは黙ってしまった。私は彼を追いかけながら、それ以上聞くことが出来なかった。

前にある背中はまっすぐ伸びていて、固く感じた。一瞬、この人は一体何を見てきて何を背負っているのだろうと、思ってしまった。変に深く考えるのはいけないと直ぐに打ち消したけど。

けれど、きっとこの人は、何かここで苦しんだことがあるのだろう。

急に崩れた口調。その言葉に、確かに感じたからだ。はっきりとした嫌悪を。

 

 

 

 

 




更新遅れて申し訳ございません。ちょっとお仕事がバタバタしてたのと普通にスランプでした。
そして話が進まない\(^o^)/
とりあえず部署移動はさせる予定だったので書いていたらこんな結果になりました。コントロールルーム(安全圏)にいれると思うなよ?
本当はもう少し続く予定だったんですけど、グダるので一度切ることにしました。早くアブノーマリティだしたい……。

間あいたにも関わらず読んでくださりありがとうございます。

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