海外移住したら人外に好かれる件について   作:宮野花

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【注意】

今回のThe Queen of Hatredという話ですが全体を通して以下の要素が含まれます

※同性愛に近い表現(百合)
※ヤンデレに近い表現

同性愛に関してはアブノーマリティの姿が少女ということが関係してきます。
ヤンデレについてもアブノーマリティの性格、性質上の表現のためです。

「アブノーマリティという未知の存在だから」と割り切れない方、苦手な方は避けることをオススメします。
















The Queen of Hatred_1

休みの日に部屋の片付けをしていたら、懐かしいものを見つけた。

小さい、人形のキーホルダー。

フリフリのワンピースを着て杖片手にウインクしている人形の少女は小さい時に好きだったアニメの魔法少女だ。

今となってはあの時の熱狂的な憧れはないけれど、その懐かしさに処分するのは気がひけてしまった。

 

 

 

※※※

 

 

 

結局その後色々気を取られて順調に片付けが進んだとはいえない。

片付けが長引いてしまったせいで寝るのが遅くなり、業務開始の合図をチーム本部で待っている間、大きくあくびをしてしまった。

 

「ユリさん寝不足?」

 

そう声をかけてくれたのは同じチームのリナリアさんだった。

彼女は最近仲良くなった先輩だ。最初こそ中央本部チームの皆さんとは距離を感じたけれど、暫く接していくうちにだいぶ打ち解けたと思う。

あと例の抱き枕の件について同情してくれているようで、哀れみの目で優しくしてもらうことが多かった。

 

「リナリアさん……ちょっと昨日夜更かししちゃって。」

「ちゃんと休まないと駄目だよ。……あれ、かわいいの持ってるんだね。」

 

リナリアさんが指さしたのは昨日見つけたキーホルダーだった。

その辺に放っておくと無くすだろうと思って、手帳型のスマホカバーにつけておいたのを忘れてた。

 

「あっ……えっとこれは、昨日片付けてたら見つけて、懐かしくて……。」

 

事実を言っているのに、子供っぽさを見せてしまった恥ずかしさに声が小さくなる。なんだか言い訳臭くなって肩を竦めた。

そんな私を察してかリナリアさんはクスクスと笑ってキーホルダーを撫でた。

 

「可愛いねー、そう言えば、アブノーマリティにこれと似た子がいるよ。」

「このキーホルダーと?」

「うん。名前は確か……、」

「私語なんて随分呑気なんだな。」

「え……あ、す、すいません……。」

 

会話に割って入ってきたのは同じチームの男性エージェント、レナードさんだった。

その強い声に押されてつい謝罪をしてしまう。肩をすくめるとレナードさんはふんっと不機嫌に鼻を鳴らす。

 

「何その言い方。レナード、感じ悪いよ。」

 

そう言い返したのはリナリアさんだった。

 

「君達がうるさいのがいけないんだろう。ここは仕事場だぞ。」

「まだ業務前よ。別に会話ぐらいいいじゃない。」

「そういう緊張感のなさが命取りなんだよ。特にあくびなんかしてる君は早死するね。」

「ちょっと!そういう不謹慎なこと普通言う!?」

「事実を言ったまでだろ。……ほら、業務開始時間だ。君達のお喋りに付き合ってる程、俺は不真面目じゃないもんでね。先に行くよ。」

「レナード!待ちなさい!ユリさんに謝りなさいよ!!」

 

業務開始の合図と共に、足早にレナードさんは去ってしまった。

リナリアさんは大きくため息をついて、申し訳なさそうに眉尻を下げた。

 

「ごめんね、ユリさん。私が話しかけたから……。」

「そんな!リナリアさんのせいじゃないです!!」

「レナードの言ってること、気にしなくていいからね。彼、元々言い方きついの。今日は特に機嫌が悪かったんだと思う。」

「ありがとうございます。私も寝不足で、生活リズム崩しちゃってるのもいけなかったんです。それがレナードさんの気に障っちゃったのかもしれません。気をつけますね。」

「そんな!ユリさんは悪くないからね。気にしちゃダメだよ。」

 

そこでピピピッと電子音がした。

私とリナリアさん、二人のタブレットに作業指示のメッセージが届いた音だ。

リナリアさんは心配の表情を変えないまま、そして「本当に気にしないでね!」と言葉を残して作業に向かった。

リナリアさんはああ言ったけれど、レナードさんが強く言ったのは機嫌が悪かった以上に、相手が私だったからだろう。

前々からレナードさんとこういうことは多かった。その態度は一目瞭然。露骨に私を嫌っている。

リナリアさんのように優しい人もいるけれど、私の事をよく思わない人はこの研究所内に少なくない。

警戒されたり、変な目で見られたり……は、抱き枕とか6分で業務終了事件があるので仕方ないのだろう。

ただここまであからさまに嫌悪を向けられる事はあまりなく、結構精神にくる。気にしなければいいと言われても、やはり気になってしまうのだ。

もしも、もしも私に家族のような圧倒的な力があれば。昔憧れたアニメの魔法少女のような人を助ける力があれば、もっと認めてもらえたのだろうか。

 

「……考えても、仕方ない。ないものは、ないんだから。」

 

小さくそう呟く。自分に言い聞かせる。

止まっていても仕方ない。目の前のことをやるしか、私は出来ないのだから。

 

手に持っていたスマートフォンを鞄にしまって、代わりにタブレットを取り出した。

タブレットを開いて作業指示を確認する。新しいアブノーマリティだ。

エンサイクロペディアを開いて、アブノーマリティの情報を確認する。

そこには珍しくいい事ばかりが記載されていた。

 

 

 

 

【鼻歌を歌いながら窓の外を眺めている、機嫌はよさそうだ】

 

【彼女は<Name>に挨拶をした。'「今日もいい天気ね!」】

 

【今のところは友好的である】

 

【彼女は「正義」について<Name>に話した】

 

【自分の行なうことそれ自体が正義であると】

 

 

 

 

 

 

 

四角いアイコンには女の子のバストアップが描かれている。

とても可愛い女の子。ピンクの洋服を着て、ウインクとピースサインをしている。

黄色の瞳に星とハートを持っていて、長いアイスブルーの髪が真っ白な肌に生えている。

その絵に私の胸は高鳴った。エンサイクロペディアのアイコンに騙されてはいけないと前例から学んだはずなのに。

鞄の中でキーホルダーが動いた、気がした。

 

〝対象:憎しみの女王(O-01-15-w) 作業内容:交信〟

 

 

 

 

 

 


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