海外移住したら人外に好かれる件について   作:宮野花

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また短くなりました。スマホの充電が…!
家帰って充電できたらコメント返します。申し訳ありません(´;ω;`)


The Silent Orchestra_2

女性の後ろをダニーさんと着いて歩く。

私に話しかけてきた声は今は聞こえない。先程の耳を痛める高音も。

 

「ユリさん、ひとつうかがってもいいですか。」

「なんですか?」

「どうしてリナリア……前歩く女性が私達に害を与えないと思ったのですか。それにメインルームへ行かなければいけないとは?どうしてわかったんですか。」

「……誰かに呼ばれたんです。」

「呼ばれた?」

 

私の隣でダニーさんは首を傾げる。予想はしていたけれど、呼ばれたのは私だけのようだ。

 

「なんか、脳に直接話しかけられたというか……。私をメインルームで待ってるって。その声に敵意がある感じもなかったので、多分大丈夫かなーって。」

「話しかけられた……。アブノーマリティからの交信……?」

「……あの、ダニーさんは今どういう状況かわかってるんですか?もしそうなら、教えてもらいたいんですけど。」

「……少し、待ってください。」

 

また、〝待て〟。いい加減、イライラしてくる。

さっきから私には聞いてくるのに、ダニーさんは何も言ってくれない。企業秘密というやつだろうけど、流石にここまで巻き込んでいて黙りなんて酷いだろう。

苛立っている私の隣でまたダニーさんは通信機で誰かと話している。つい、ため息が出た。

 

「ユリさん、その声ってどんな感じでしたか。」

「……わかりません。」

「では、何を言われたんですか。」

「メインルームへ来てってだけです。」

「他に何も言ってませんでしたか?例えば……音楽、とか、ステージ、とか。」

 

〝最高のステージをお約束しましょう〟

それは呼ぶ誰かに確かに言われた。

「……やっぱり、ダニーさんはわかってるんですね。誰が私を呼んでるのか。」

「え。」

「それなのに、何も教えてくれない。」

「ユリさん、それは。」

「脅すみたいに私を連れてきて、巻き込んでおいて。知ってるのに何も答えない。随分勝手ですね。」

「……申し訳、ありません。」

 

――――怒っているのですか?

 

「え、」

「ユリさん?」

 

―――――何かされたのですか。

――お可哀想に。

―――――その隣の人間ですか。

―――許さない。

 

「……殺す。」

 

そう声を出したのは、前を歩く女性だった。

 

「っ?!」

 

女性はこちらに振り返って、腰の警棒に手をかけた。今度ははっきりした殺意を持ってこちらに襲いかかってきた。

いや、こちらとは違う。ダニーさんにだ。女性はダニーさんを、殺そうとしている。

とっさの事でダニーさんの反応は遅れ、右腕で警棒を受ける。

ダニーさんの顔が痛みで歪む。目の前の暴力に、私の心臓は一気に冷えた。

女性がまた襲いかかってくる。今度はダニーさんも警棒で受ける。けれど負傷した腕はそこから伝わる衝撃すら辛いだろう。

 

「やめて!!!」

 

非力な私はただ無力に叫ぶ。そんなことで止まるわけないのに。と、思いきや女性の動きは本当に止まった。

そのすきを付いてダニーさんは女性を床に組み敷く。動けないようにがっちりホールドしていて痛そうなのに、女性は表情ひとつ変えない。

 

――どうして止めるのですか?

――――その男に怒っているのでしょう。

 

そう言葉が頭に流れてきて、ようやく理解する。

私が怒ったから、ダニーさんに対して怒りを持ったからダニーさんは殺されそうになったのだ。

頬を冷や汗が垂れる。私の感情で、ダニーさんは怪我をした。

私は口を開く。声の主に応えなければいけない。けれど何を言えばいいのだろう。どうすれば止めてくれるのだろう。

私の言葉一つで、この状況が動く。

 

「……暴力は、恐い、の。」

 

震える声でやっと紡いだ言葉はそんな頼りないものだった。

 

―――恐がらせてしまいましたか。

――申し訳ありません。

――――では、違う方法で。

 

「!ゆ、許したから!もう怒ってない!!」

 

返ってきた言葉に慌てて否定する。方法を変えれば、なんて捉え方をされてはまたダニーさんが危険になる。

声は暫く聞こえなくなる。私は返答を待った。沈黙は何か考えているようだった。

 

―――わかりました。

――貴女はお優しいのですね。

――――私もその人間を許しましょう。

 

「!あ、ありがとう……。」

 

――――さぁ、早くいらしてください。

――メインルームへ。

――――待っております。

 

満足したようなその声に、私はただ安堵の息をはくのであった。

 

 

 

 

 

そして、ただ廊下を歩く。

ダニーさんも、私も、呼んでいる誰かも何も言わない。

その廊下の先に、扉。鉄で出来た機械的な扉。

この先だ、と思った。この先にいる。

この先で、誰かが私を待ってる。

女性が扉横の電子盤にパスコードを入力する。ぴ、ぴ、と音がして、その近未来的な扉は上にスライドして開いた。

開いた先、私を待ってる誰かが、この目に映る。

フロア中心に、社員さんに囲まれるように立っているその姿は。

 

「マネ、キン……?」

 

 

 

 

 

 

 

 




もうちょっとだけ続くんじゃ。

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