第3話
セシリアと秋十の試合が終わり、管制室では千冬と真耶が試合の感想を述べていた。
「完全に遊ばれたな」
「そうですね。
「大丈夫です」
箒の言葉に振り返る二人。
箒は構わず続ける。
「6年ぶりに会った一夏は私との約束を覚えていました。折れること無く歩み続けてました。少なくとも、
「ほう、大きく出たな篠ノ之」
「信じてますから、一夏を」
千冬は面白くなさそうに大画面に向き直る。
その時の箒は、男を信じ待つ女の顔をしていた。
セシリアは補給の為ピットに戻っていた。ピットにはシャルロットやヒイロの他に簪がいた。
「お疲れさま、セシル」
「完封だったな」
「あの程度の輩に敗北するなどありえませんわ」
補給をしながら雑談する三人を他所に簪は俯いていた。
(あんな人のISを開発する為に私の打鉄弐式は凍結された。それに・・・)
あの2門高速連射型荷電粒子砲は元々自分の機体に搭載される筈だった春雷である事を見抜いた簪。
もう義理立てする必要もない。
決断した簪はヒイロに向き直る。
「ヒイロ」
「何だ?」
「あの話、受ける」
「分かった」
「すみません、あの話とは?」
「簪、話してもいいか?」
「うん、構わない」
了承を得たヒイロは二人に話し始める。
話が進むに連れて二人の表情が険しい物になって行く。終わった頃には不愉快極まりないと言わんばかりの顔になっていた。
「何、それ。努力した人を途中で切り捨ててぽっと出を優先したって事?」
「しかも簪さんの機体に搭載される筈だった武装をあんな男の機体に使うなど、簪さんを侮辱しているとしか思えませんわ」
「無能なのだから仕方がないだろ。それよりもセシリア、そろそろ時間だ」
「そうですわね。では、行って参りますわ」
「セシル、頑張って」
「応援してる」
「セシリア、気を付けろ
セシリアは三人に笑顔を向けるとピットからフィールドに飛び立った。
「来ましたわね?」
「ああ、俺は負けるわけにはいかないんだ」
「それは下らないプライドの為ですか?」
「いいや、こんなところで負けてたら何一つ守れない。それだけだ」
「そうですか。なら」
セシリアはビットを展開しスターライトmk-Ⅲを構える。
「お別れですわ!」
4つの銃口からレーザーが放たれた。
ビットのレーザーは逃げ場を潰しスターライトのレーザーが一夏の眉間を狙う。しかし目標に届くこと無く一夏が振るった雪片二型の一閃で霧散する。
それにセシリアは驚愕するも表には出さず自身もブルーティアーズとビットを翔り、
対する一夏も負けていない。レーザーを無駄のない動きで避け、避けられないものは雪片で切り捨てる。焦ること無く機をうかがう様は理性を持った凶暴な肉食獣そのものだ。
(クッ、これはISを動かしたばかりの操縦者のものではありませんわ!腐ってもブリュンヒルデの弟と言ったところですわね)
(間合いを詰められねえ。これが代表候補生か!)
(ブルー・ティアーズは元々燃費の悪さ故に長期戦は危うい。ならば)
(僅かながらダメージが蓄積していってる。このままじゃじり貧だ。なら)
((次で決める(決めますわ)!!))
一夏とセシリアの動きが同時に変わった。互いに間合いを詰める。
「フィナーレですわ!」
セシリアはビットミサイルを2基放つ。一夏は動きを止めること無くそれをを切り払い、ミサイルは爆発する。爆煙で視界が遮られる。一瞬ではあるものの、その一瞬こそがセシリアの狙いであった。
「チェックメイトですわ」
爆煙の中、一夏は下から襲いかかる光の奔流を見た。
鳥籠
セシリアがBT兵器の特性をフルに使い編み出した大技。
ビットミサイルで相手を怯ませる、または視界を遮ぎる事で出来た隙に
(決まりましたわ!)
セシリアは爆煙に消えるレーザーを見送りながら確信する。
しかし
「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
一夏の雄叫びと同時に爆煙とレーザーが一閃の元に吹き飛ばされ、霧散する。
それと同時に一夏はセシリアとの間合いを潰しにかかる。
(ッ!?一体どうやって・・・・・・!あれは)
セシリアは一夏の手にある雪片二型が大きく変化していることに気付く。
ブレードの刀身が二つに割れて鍔になり、開いた部分から青のエネルギーがほとばしっていたのだ。
(零落白夜!?不味いですわ!)
セシリアは牽制の射撃を行うも一夏は全て零落白夜で霧散させる。そしてとうとうセシリアと肉薄した。接近戦武装の展開すらさせない。その時、セシリアは確かに見た。一夏の瞳に確かな信念と意志の光が宿っていることに。
(ああ、完敗ですわ)
零落白夜をその身に受けるセシリア。同時に零落白夜の弱点であるSEの消費で残り少なかったSEを枯渇させた一夏。
『両機SEエンプティー。よってこの試合、引き分けとする』
アリーナが大歓声に包まれた。