Snow Fairly Blade Works 作:千本虚刀 斬月
愛は求める心。そして恋は、夢見る心だ。
恋は現実の前に折れ、現実は愛の前に歪み、愛は、恋の前では無力になる。
その部屋には幾多もの液晶モニターが設置されている。そして、その全てにある少女の様々な映像記録が映り、それらを名状しがたい面貌で睨め着ける一人の女。
櫻井 了子であると同時にフィーネを名乗る、黒幕といっても差し支えのない存在。
フィーネは腹の中に溜まった鬱屈としたモノを根刮ぎ排除するかのように深く息を吐いた。
「・・・・・・よもや、な。ここまで明確に抑止力が介入してこようとは。」
Archerと名乗り、そう呼ばれていた少女。本名は衛宮 イリヤスフィール。
漸く明らかになった素性は、フィーネをしても驚愕に値するものだった。
極めて練度の高いホムンクルスをベースに、抑止の使者たる英霊との融合症例。詳細までは解りかねるが、そう見て間違いあるまい。厄介極まる存在だ。
有り得ない、等とは今更言わぬ。こうして実在を目の当たりにして尚、受け入れられぬ程にフィーネは愚昧では無い。
問題なのは、どう対処するべきなのか。
抹殺するだけであれば手段は幾らでも有る。だがしかし、そうすると次はより確実に潰しきれる様に、己の想像を超えるカタチで介入されるのは確実だ。
「・・・ならばいっその事、今は敢て泳がせるのも手か。」
今まで、凡そあらゆる方法で己が目的を挫いてきたシステム。それがここまで判りやすい一手を示すのは稀とさえ言える。
無論の事、抑止力の後押しを受けうる人間は他にも居るだろう。何しろ、この計画の内容を考えるのなら、
「だが、それでも!私は決して諦めない!諦めて、堪るモノか・・・!!」
悠久の時の流れの中で数多の挫折を味わってきた。何度も何度も、フィーネとして覚醒しては、結局果たす事が出来ずに終わってきた。
例えば、「バラルの呪詛」をすり抜け統一言語を習得していたゴドーワード・メイデイ。不確かで曖昧な、情報とも言えぬ噂を頼りに苦心して探し回り、漸く玄霧 皐月の名で教師を務めていると判明した時には、既に死んでいた。その時の無念と後悔は筆舌に尽しがたかった。
或いは、英雄と呼ばれる者達に打倒された事もある。悪政を敷く暴君として、帝を惑わせる傾国の奸女として、悪鬼羅刹を束ねる妖の頭目として。
そんな事を幾度となく繰り返してきた。
「だが、今度こそ!───貴方の元に辿り着く!!・・そうだ、それを邪魔するというのなら、容赦は、しない」
それはもはや狂気をも通り越して、怨念だった。
次回からやっと高校生。
響がバーサ―カーからキャスターにクラスチェンジしました