Snow Fairly Blade Works   作:千本虚刀 斬月

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衛宮

 

 

 キーンコーンカーンコーンキーンコーンカーンコーン

 

チャイムが鳴り、ホームルームが終了する。すると、二人の女生徒が声をかけてきた。名前は立花 響と小日向 未来。私が中学に入って直ぐの頃、この容姿や浮き世離れした雰囲気の所為で孤立気味だったところに声をかけてきたのがこの二人で、なんやかんやとあって気が付いたら友人になっていた。

 

「イリヤちゃん、今日もアルバイト?忙しそうだけど、平気?」

 

「ええ、でも週末はちゃんと休みを取ってあるから心配しなくても大丈夫よ。」

 

「じゃあ3人でツヴァイウィングのライブに行けるんだね。楽しみだな~。」

 

ツヴァイウィングとは、天羽 奏と風鳴 翼の二人から成る今大人気のボーカルユニットである。

 

「でもイリヤちゃんも大変だよね。切嗣さんが亡くなってもう半年、あんな大きなお屋敷の管理を一人でしながらアルバイトまでなんて。」

 

「別にこれくらい慣れてしまえば大したことないわよ。普段は遠出するような用事も特にないし、二人がちょくちょく遊びに来てくれるから寂しくもないもの。」

 

「「イリヤちゃん・・・」」

 

「まったく、そんな辛気くさい顔しないの。明日スコーンでも焼いてきてあげるから元気出しなさい。」

 

「本当!?やったー!」

 

「もう、響ったら」

 

「フフフ、まあこうじゃなきゃ響って感じじゃないわよね。」

 

 

 

 

 

 そう、この世界において、何の因果かイリヤは切嗣に拾われて養子となっていたのだ。此方の世界の切嗣は「魔術師殺し」の魔術使いではなく、国境なき医師団に所属していた。

 

その切嗣も半年前に亡くなった。ノイズ被害者の救助中に傷を負い、そこから感染症を引き起こしたのだ。残念なことではあるが、僅かな期間でも切嗣と親子として過ごし、今度はその最期をちゃんと看取ることが出来た。

 

優しい人たちに出会って、笑いあえる友達が出来て、他愛の無い日常を謳歌できている。それこそユメのような日々。

 

だからこそ願わずには居られない。この幸せがどうか続きますように、と――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 ライブの当日、イリヤ達3人は客席で「ツヴァイウィング」の二人がステージに出てくるのを今か今かと待ちわびている。

 

「いや~すごい人気だよね。満員御礼って感じ。」

 

「うん、はぐれて迷子にならないように気をつけないとね。」

 

「まったくね。(これ、念のためのつもりだったんだけど正解だったみたいね。)」

 

イリヤは今日のライブに備えてマルティーンの聖骸布を投影し、リボン代わりにして身につけていた。士郎がアーチャーの腕を封印するために使っていた魔力殺しの聖骸布で自身の魔力を隠匿しているのだ。そして残念なことに、その心配がただの杞憂では済まなそうな気配が下から漂っていた。

 

 

 

 漸く会場の照明が落ち、ツヴァイウィングが大量の羽根を振りまきながら宙から舞い降りる。スポットライトに照らされた二人はとても幻想的で、観客達をあっという間に魅了する。今の二人は正しく偶像(アイドル)と呼ぶに相応しく、確かに神秘を帯びていた。

 

古今東西、歌と踊りは様々な魔術や呪術、果ては神や精霊と言った上位存在との交信手段に用いられてきた。そう考えれば今の二人が神秘を纏っていたとしてもあり得ないことではないだろう。それだけなら然程問題ではない。今、最も問題なのは

 

(下からすごい魔力を感じる。十中八九、宝具の現物たる聖遺物ね。まったく、何だってこんな所にそんな物が在るのよ!?)

 

しかもその魔力は、ツヴァイウィングの歌唱に共鳴してどんどん増幅されていくのだが、イリヤはそれに若干の不安定さを感じていた。

 

(これ、ちょっと不味いかも。最悪の場合、暴走しかねないわ。どうしようかしら・・・)

 

イリヤは取り合えず、興奮しながらケミカルライトを振る未来と響にBランク相当の魔術障壁と物理保護をかけることにした。

 

(出来ればこのまま、何事もなく済んで欲しいものだけど・・・多分、そうもいかないんでしょうね。はぁ~)

 

直後、会場の中心部分で爆発が起こる。更に、撒き散らされた高濃度の魔力に引き寄せられたのか、ノイズの大群が押し寄せてきた。イリヤは即座に聖骸布の封を解き、赤原礼装を纏う。

 

未来と響はノイズの所為でパニック状態の他の観客達に押し流されてはぐれてしまったのだ。イリヤは自身の迂闊さを責めながらも、干将・莫邪を投影する。後先を考えて顔バレ防止のためのフルフェイスヘルメットも着用する。

 

(手は打っておいたからそう大事にはならないと思うけど、ノイズの炭素転換にどこまで耐えられるかは分らない。何にせよ、先ずはこのノイズ共を片付けないとどうにもならないわね。)

 

ノイズには位相差障壁があるため、此方からは干渉しづらいがカウンター戦術は有効に機能する。イリヤは自身や他の人たちに襲いかかるノイズを片っ端から双剣で切り捨て、あるいは黒鍵の投擲で打ち砕いていく。炭素転換攻撃も当たらなければ意味はない。イリヤからすれば所詮有象無象でしかなく、かすりもしない。

 

「う、うわああぁー!!」「キャ―――!!」「助けてくれー!!」

 

視れば一番大きな出入り口に大型のノイズが4体、獲物を逃がすまいと立ち塞がっていた。

 

『ったくもう!全員、死にたくないなら伏せなさい!!』

 

イリヤは黒い洋弓に捻れた剣をつがえ

 

『我が骨子は捻れ狂う―――偽・螺旋剣(カラドボルグII)!!』

 

ノイズの群を空間ごと抉り穿った。

 

『今のうちに速く逃げなさい!』

 

観客達は我先にと逃げていく。イリヤは周りに眼を走らせると、人が粗方捌けた観客席で逃げ遅れた二人の少女が呆然としているのを見つけた。そしてその二人、未来と響に殺到するノイズを。

 

『っ!?させ「させるかってんだ!!」・・・は?』

 

その光景はイリヤをして、思考に刹那の空白を生じさせる程のものだった。何しろツヴァイウィングの二人がアニメみたいなパワードスーツに身を包み、歌いながらランスと大刀でノイズの群を蹴散らしているのだ。

 

(ていうかあの槍ってオーディンの大神宣言(グングニル)?で、あっちの刀はスサノオの天羽々斬よね?彼の神槍・神剣をよくもまああそこまで魔改造したものね。)

 

とある違法コピーと不正改造の常習犯を全力で棚に上げて呆れ返っていると

 

「おいアンタ、誰だか知らないけど助かったよ。ありがとな。」

 

「貴方にはいろいろと聞きたいことがあります。後ほど、我々と同行していただきますのでそのつもりで。」

 

「相変わらず堅苦しいなぁ、翼は。さて、ワタシ達のことは知ってるだろうから自己紹介は省かせて貰うとして、アンタのことはなんて呼べば良いのかな?」

 

『そうね、とりあえずアーチャーと名乗っておきましょうか。それよりも、そこの二人!惚けてないで急いで避難する!』

 

「「は、はい!」」

 

イリヤは未来と響に襲いかかろうとするノイズの悉くを射貫き、二人の退路を確保する。更には自身の防衛とツヴァイウィングの援護まで並列で行っている。伊達にエミヤのデミ・サーヴァントとなっているわけではないのだ。

 

一般人は全て退避し、ノイズの殲滅も快調に思えたが、急激に天羽 奏の魔力が低下しだした。

 

「クッ!時限式はここまでかよ!?」

 

『ちょっと、どうしたのよランサー?急に調子がガタ落ちしてるみたいだけど。』

 

「どうやらドーピングが切れちまったみたいだ。悪いな、大事なときに・・・」

 

『セイバー!ランサーを少し下がらせなさい。この手のタイプは周りが無理矢理にでも止めないと無茶し続けるわよ?』

 

「っでも、まだノイズが」

 

『残りは私が片付けてあげる。特別サービスよ?っと、一応確認しておくけど貴女達の歌はノイズの位相差障壁を無効化できるってことでいいのかしら?』

 

「ええ、その通りだけど・・・!ノイズが、合体していく。」

 

ノイズの特性の一つとして、ノイズ同士の合体・分離も可能であり、それに伴い形態を変化させることもあるのだ。残存する全てのノイズが一体となったのだ。だがそれはイリヤにとってはむしろ好都合である。なにしろ散らばっていたゴミが一塊のデカい的になったのだ。

 

イリヤは再び螺旋剣を弓につがえ、弦を引き絞り、指を離し、静かに結果を見届ける。その射法八節は端から見ていた二人が思わず見惚れるほどに丁寧で綺麗なものだった。

 

そして二人が正常な判断力を取り戻す前に、全速力で駆け出した。数瞬の後、我に返った二人は追いかけようとするが時既に遅し。その頃には空間転移で会場の彼方まで離脱を果たしていたのだった。

 

 

 

 

 

 

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