Snow Fairly Blade Works   作:千本虚刀 斬月

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受験生

 前回のノイズ出現から僅か一月半、イリヤは再びノイズの一団と相対していた。巷では一般人がノイズに遭遇する確率は通り魔に襲われるのと同じくらい低いと言われている。イリヤの場合は、前回がツヴァイウィングへの助太刀で今回も自ら首を突っ込んだ訳だが。

 

平日の深夜、場所は都心の駅前。ここはイリヤの自宅から13㎞程離れているが利用頻度は割と高い。普段ならこの時刻でも人通りはそこそこ多いがイリヤが察知して到着した頃には誰も居なくなっており、炭がそこいら中に積もっていた。

 

『これは、いろんな意味で最悪ね。』

 

彼等は運が悪かった。今は残っているノイズの処理が最優先だ。即座にそう割り切り思考を切り替える。今のイリヤは魔術師では無く魔術使いだが、それでも有事の際は一般的な常識や倫理観を棚上し、死を容認する程度の心構えは出来ている。

 

正直、目撃者の心配をしなくて良いのは好都合だ。既に人払いの結界を展開している以上、余程間の悪い奴で無い限りは巻き込まれることもないだろう。万が一居たとしたら、ソレはもう仕方ない。

 

監視カメラや偵察用のドローン対策に魔術で濃霧を発生(術者本人であるイリヤには普通に周りが見えている)させ、ヘルメットを消し去る。

 

「良い機会だし、角笛か効くかどうか試してみるとしましょうか。」

 

恐慌呼び起こせし魔笛(ラ・ブラック・ルナ)』シャルルマーニュ十二勇士のアストルフォが妖鳥の大群を追い払うのに使用した魔笛。龍の咆哮や神馬の嘶きに例えられる程の音色である。

 

その角笛はイリヤの身体をスッポリと覆うほど大きく、金管楽器のような形状に変化する。

 

「雑音はそれらしく―――――散りなさい!」

 

Cランクとは言え対軍宝具である。まともに食らったノイズは跡形も無く霧散した。だがビルをも超える超大型サイズの個体が1体残ってしまった。位相差障壁は問題なく突破できたものの、殲滅しきるには少しばかり威力不足だったようだ。

 

此までと今回の交戦でイリヤはある程度までならノイズを解析できていた。ノイズとは対人特化の自律兵器で、かつて英雄王ギルガメッシュの宝物庫に納められていたゴーレムの原典とも言える代物であるようだ。格としてはアヴィケブロンの鋳造したゴーレムと同等以上ではあるが宝具には分類されない。

 

まあ要するに、あのいけ好かない金ピカの管理不行き届きの所為で後の人間が迷惑を被っている訳だ。もう全部アイツが悪い。

 

「ふむ、そういう事ならアレとかも効くかもね。投影、開始。」

 

魔笛を消し去り、歪な刃の短剣を出現させる。それは魔力で強化された物体、契約によって繋がった関係、魔力によって生み出された生命を戻す最強の対魔術宝具。

 

イリヤは残る最後のノイズに迫る。ノイズは巨大な鋏の腕を大きく振りかぶるが、その動きは余りに鈍重で、結局腕が振り下ろされる前に破戒の刃は突き立てられた。

 

破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)

 

擦り傷とも言えない一刺しでノイズは炭と崩れ落ちる。

 

イリヤが最初にノイズを感知してから今までで約40分。流石に武装した特異災害対策機動部が到着したので結界を解きライダーヘルメットをかぶる。

 

今回もまたツヴァイウィングと鉢合わせる前に、全力ダッシュで逃げ出したのだった。

 

 

 

 

 

 中学3年生と言えば高校受験のシーズンである。大半の生徒は将来への展望など定まってはおらず、流されるように最寄りの公立校に行く。

 

イリヤもまた例に漏れず公立への進学を志望している。しかし教師等は渋い顔をしている。イリヤの学力ならばもっと上の学校を目指せる以上、学校側としてはそちらに進学して欲しいと思うのは当然と言えば当然だろう。

 

元々イリヤはアインツベルン究極のホムンクルスとしてアハト翁ユーブスタクハイトによる(聖杯戦争のための偏った)英才教育を受けていたのと、エミヤから受け継いだ知識のおかげでどこの高校だろうと問題なく一発合格出来るであろう。

 

とは言え、現在の衛宮邸はイリヤの魔術工房でもあるため、他人には管理など任せられず迂闊に目を離せないと言う事情もある。身体の7割が魔術回路であり、尚且つデミ・サーヴァントのイリヤにとっては『鞘』があろうと定期的なメンテナンスは必須である。リズもセラももう居ないのだから。

 

そういった諸々の事柄をまさかバカ正直に明かすわけにもいかない為、教師に言及される度に曖昧な表情で沈黙している。

 

 

 

 

 昼休みになり、何時ものメンバーで昼食をとる。今日のイリヤのお弁当のメニューは小さめの俵型のおにぎり(塩鮭×2、昆布×2)、砂糖で甘く仕上げた卵焼き、ポテトサラダ、唐揚げである。

 

唐揚げと一口に言っても様々ある。もも、むね、ささみ、手羽、かた、せせり、皮や軟骨等どんな部位を使うのか。片栗粉でサクサクもいいし、小麦粉・卵でしっとりもいい。スパイスを入れてフライドチキンだっていける。衣に味をつけたものも旨いし、肉に味を染み込ませたものも旨い。甘酢ダレでチキン南蛮にしたり、ネギソースで油淋鶏にしてもいいし、甘辛醤油にゴマや胡椒をふりかけるなんてのもありだ。一口サイズは無論のこと、大きいサイズにかぶりつくのも乙なものだ。

 

今日の唐揚げはシンプルに、ももを一口大にカットし、予めたれに漬け込み下拵えをしてから衣を薄くすることでサクサクカリカリに揚げたものである。

 

ちなみにイリヤは何もかけないか少量の塩コショウ派である。

 

「イリヤちゃんのからあげ美味しいよね~。レンジでチンするやつはだいたい衣がべちゃべちゃになるけどコレは冷めてもサクサクカリカリだもん。」

 

「これ、しっかり下味つけて二度揚げしてる?すごいなぁ。揚げ物は少人数だと油が勿体ないんだよね。肉や魚は油がすぐ汚れちゃうし。」

 

「そういうときは焼き揚げがお勧めよ。少し深めのフライパンに2cmくらい油を入れて、あとは焼く要領で両面を揚げるの。使う油少なくてすむし、量を作らないならこれがお勧めね。」

 

「玉子焼きも白い部分が無くてふんわりしてる。」

 

「これは最初にかき混ぜるときに箸でしっかり白身を切るのがポイントよ。焼き加減は基本弱火、強くても中火ね。」

 

「正直、食べ専の私には何を言っているのかさえ良く解らない。」

 

「イリヤちゃんの料理って美味しいからつい食べちゃうんだよね~。」

 

「もう、響ったら自分の分もあるでしょう?だめだよ。」

 

「あら、私は大丈夫よ。ちょうど成長期なのだし、受験勉強で頭を使う分余計にカロリーが必要でしょう。」

 

ちなみにイリヤの場合、成人男性の平均的な食事でも全然太らない。むしろ、平均的な女子と同じ量だとどんどん痩せていく。常時『鞘』を微稼働させ魔力を消費しているのと、日課の鍛錬、何よりデミ・サーヴァントなのが大きいだろう。

 

しかし身長だけは中々伸びない。此方の世界に来てもう4年、実年齢で言えば2X歳。体重:42kg、スリーサイズ:B83/W56/H82、でも身長は150㎝。赤薔薇のローマ皇帝ネロ・クラウディウス・カエサル・アウグストゥス・ゲルマニクスと同じである。髪型を変えればまんま2Pカラーである。いや、やっぱり全然違った。

 

イリヤは食後のデザートにレアチーズタルトを取り出す。身長を伸ばすにはやはりカルシウムとタンパク質だろう。他にもアルギニン、ビタミンA、ビタミンCと必要な栄養素が多分に含まれている。炭水化物はおにぎり、マグネシウムもポテトサラダにたっぷり含まれているので抜かりはない。

 

身長のことが余程コンプレックスなのだろう。イリヤは響と未来が引くほどの勢いでレアチーズタルトをガツガツと喰べ始める。

 

(いつか必ずお母様を越えるスタイルになってやるんだからー!!)

 

そのお母様、アイリスフィールのプロポーションは、身長:158㎝/ 体重:52kg/スリーサイズ:B85/W56/H84である。いつか来たるその日まで頑張れイリヤ!負けるなイリヤ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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