Snow Fairly Blade Works   作:千本虚刀 斬月

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自分のファッションセンスの無さに愕然とした


ファッション

 10月上旬、夏ももう終わりを迎え、すっかり秋となった。早朝は長袖でも一枚では肌寒さを感じる時期である。

 

生徒達は定期試験の結果に一喜一憂し、間近に控えた高校受験に一層勤しむ。仲の良いグループで勉強会を行う者達も多く、イリヤもその例外には漏れなかった。

 

 

「ベンティアドショットヘーゼルナッツバニラアーモンドキャラメルエキストラホイップキャラメルソースモカソースランバチップチョコレートクリームフラッペチーノ下さい。あと、バターミルクビスケット2つ。」

 

「響、それ全部でカロリーおいくら?あ、私はキャラメルフラペチーノトールエクストラソースエクストラホイップと、アップルパイとオールバターショートブレッドでお願いします。」

 

「いや、未来も私のことあんま言えないし。玲霞さんとイリヤちゃんは?」

 

「そうねぇ、私はグランデノンファットミルクノンホイップチョコチップバニラクリームフラペチーノにしようかしら。それと、デニッシュスティックチョコレート一つにアメリカンスコーンの抹茶を一つ。」

 

「なら私はス○ーバックスラテのアイスと、アメリカンワッフルのプレーンとシナモンロールにするわ。」

 

「かしこまりました。お時間、少々頂きます。席でお待ち下さい。」

 

 

今日の勉強会は某コーヒーショップで行うことのなったのだ。軽食もオーダーしているのは昼食も兼ねているからである。玲霞も一緒なのは、響と未来が受験を受ける私立リディアン音楽院の高等科に在籍している事もあって家庭教師をして貰うからである。

 

流石に玲霞は経験者だけあって教えるのが巧い。イリヤでは、通常の科目ならまだしも音楽的な専門知識には欠けるため、こう巧くは教えられない。おかげで勉強会はつつがなく進行し、1時間ちょっとで一段落ついた。

 

「はふ~、すいませーん。キャラメルマキアート下さい。」

 

「私も同じもので。えっと、二人は何かお代わりする?」

 

「私は抹茶クリームフラペチーノで。」

 

「私はカフェモカにしてみようかしら。」

 

一息ついて今日はもう解散しようかというところで、イリヤはつい

 

「ん~、そろそろ冬モデルの服を買わないといけないかしら。」

 

と漏らしてしまった。

 

 

 

 

 

 イリヤは衣類に関してある種、無頓着と周りから思われる節があった。普通の女子に比べて持っている服の数が少ないのがそう思われる理由だ。だが実際は、大貴族たるアインツベルンの姫君としての美意識は相応に持ち合わせていて、中身の伴わない見てくれだけの派手な装飾や昨今の流行にはあまり興味が無いのだ。半エミヤ化した今のイリヤにとっては、服を沢山よりも上等な調理器具の方が欲しいくらいである。

 

されどそれを許さぬ者がここに三人居る。イリヤは近くにあった大型のアパレルショップに強制連行され、着せ替え人形の如しである。

 

 

響の選んだ服はカジュアル系で、紺のジーンズと黒のタートルネックにトレンチコート。

 

未来の選んだ服はファンシー系で、縦セーターとセミロングスカートに白いケープファーコート。

 

玲霞は意外にも、白のブラウスに藍色のハイウェストスカートに黒のニーソックスであった。セイバーの私服とほとんど同じ筈だが、何故かイリヤの方がより対女性経験に乏しい男兵装に仕上がってしまった。

 

他にもいろいろな服を持ってこられた(その中にはどこかで見たようなブルマが混じっていた)が、最終的にはその3セットを購入した。イリヤとて着飾るのが嫌いという訳ではないし、何より彼女たちの好意を無碍にはしたくなかったのだ。

 

 

 その後、玲霞が派手に彩られたエリアを見てふと呟いた。

 

「そう言えば今月はハロウィンがあったわね。皆は何か仮装パーティーとかしたりしないのかしら?」

 

「ああ、いいかも。ねえ、皆で何かやろうよ。」

 

それに響が食いついた事であれよあれよと話が進み、いつの間にかコペンハーゲンでささやかながらも仮装パーティーをすることになったのだった。

 

 

 

 

 ハロウィンとは日本の盆踊りのようなもので、古代ケルトのドルイド達の間では10月31日が1年の終わりと見なされていた。終わりが過ぎ去り、新たな始まりがやって来る日である。それ故に、現世と霊界との間に目に見えない「門」が開き、この両方の世界の間で自由に行き来が可能となると信じられていた。

 

まあ、それもすっかり形骸化して、今やコスプレパーティーの日と思われているが。

 

 

 

 そして迎えたハロウィン当日。コペンハーゲンの店内には様々なジャック・オー・ランタンが飾り付けられている。

 

響の仮装は、魔法少女である。橙色を基調としたフリフリドレスに、紅い取っ手でヘッド部分は金の五芒星をリングが囲い白い鳥の羽があしらわれたステッキを握っていた。

 

未来の仮装もまた魔法少女だが、此方は蒼色がベースで、ヘッド部分は六芒星でリングの外側に蝶の羽のような意匠が施されていた。あと、響のと比べて露出が際どい事になっていた。

 

イリヤの仮装は姫騎士と言ったところか。髪は聖骸布のリボンでポニーテールに、白のドレスに白銀の甲冑を纏い装飾剣(カリバーン)を携えている。

 

玲霞の仮装は、黒いボディコンみたいな衣装でバイザーを装着している。実は他の衣装(ジャック・ザ・リッパー)で来るつもりだったらしいが、流石にエロすぎると言う理由でボツになった。

 

看板娘のネコさんは、黒い和装に猫耳と典型的な猫又ルック。

 

藤村 大河は、ジャガーの着ぐるみである。

 

 

「いや~、今日はありがとねオトコ。」

 

「「「「有り難うございます、ネコさん。」」」」

 

「良いって事よ。それより藤村、ちゃんとネコって呼びなさいよ!」

 

「あはは、ごめんごめん。これ上げるから許してよ。」

 

そう言って持ってきた中位の段ボール箱3つを指差した。

 

「あの、ずっと気にはなってたんですがこの箱の中身、何なんですか?」

 

「むっふっふ、よくぞ聞いてくれました玲霞ちゃん。ではご開帳!ジャジャーン!!」

 

中には蜜柑と梨と林檎がぎっしり詰まっていた。

 

「そういやアンタの実家、シーズン毎に青果市場かと思うくらいにいろんな果物貰うもんねぇ。」

 

「そうそう、もうどどどーん!てくらい。で、この秋の風情をお裾分けしてあげたーい!っていう暖かい私からの配慮なワケよ。」

 

タイガはえっへん!と胸を張る。

 

「ありがたいんだけど、こんなに沢山食べきれるかなぁ。」

 

「多分、大丈夫なんじゃないでしょうか。ケーキやパイにしたり、それでも使いきれない様ならドライフルーツにしたり、お酒に漬け込むなんて言うのもアリだし。」

 

イリヤが手に取って見た限りはどれも上等の代物である。

 

「おお~、成る程ねー。じゃあイリヤちゃんに任せた。あ、酒漬けにするならラム酒やブランデーなんかで甘~く仕上げたのも良いけど、アタシとしては氷砂糖無しで焼酎とかスピリッツで仕上げたほうが好みかなぁなんて。」

 

「・・・良いんですけど、その場合は店のお酒を使ってしまっても良いんですか?」

 

「んん~。特別に許しましょう!」

 

「了解。覚えておきます。」

 

ちょうどそこでオーブンがチン!となる。どうやらモノが焼き上がった様だ。

 

「おおー、良い匂いだ~。これ、パウンドケーキかにゃ?」

 

「バーンブラックよ。本場アイルランドではハロウィンの定番料理なの。あっちじゃ中に指輪やコインなんかを入れて、パーティーの最後に運勢占いをするんですって。これはちょっとシナモンを効かせたラムレーズン入りのパウンドケーキで、その手の仕込みはないんだけどね。」

 

それから、せっかくなので林檎を使わせて貰うことにする。

 

「お、早速使っちゃう?」

 

「ええ、作るのは焼きリンゴ。フライパンでパパッと簡単にできるやり方があるからね。」

 

「私も何かお手伝いしましょうか?」

 

「ありがと、玲霞さん。じゃあ、リンゴを12等分にしてヘタと種を取り除いて貰えるかしら。あ、リンゴは皮付きで使うから。」

 

その間にイリヤは他の材料を揃え、フライパンを中火で熱してバターを溶かす。

 

リンゴをフライパンに敷き詰め、グラニュー糖大さじ1をまぶす。表面に焼き色がついたらひっくり返して、再びグラニュー糖大さじ1を振りかける。次に、弱火にして蓋をし、5分程度蒸し焼きに。リンゴからしみ出した煮汁をカラメル状になるまで煮詰める。最後に、シナモンパウダーを振りかけるとなお良し。

 

玲霞も冷蔵庫に仕舞っておいたモノを取り出し、切り分けている。

 

「こっちのパンプキンクリームタルトもありますからね。沢山食べて下さいね。」

 

「「「「おおー!」」」」

 

 

 

 

 

 




そろそろ日常パートから本編にシフトしようかな。

次回予告  ネタバレ注意













体は剣で出来ている


血潮は鉄で、心は硝子


幾たびの戦場を越えて不敗


ただ一度の敗走もなく


ただ一度の勝利もなし


遺子はただ独り、剣の雪原で黄昏を待つ


我が生涯の意義は既に果たし


この体は、今や剣で出来ていた
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