Snow Fairly Blade Works   作:千本虚刀 斬月

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Unlimited Blade Works

 ハロウィンパーティーは大いに盛り上がった。帰り道も3人で楽しく並んで歩く。ハロウィン当日だけあって周りには仮装している人も思っていたよりも沢山居たが、3人の格好はやはり周囲の目を惹いた。本人達が相当な美少女なのもあるが、特にイリヤの甲冑と装飾剣は非常にリアルなのだ。

 

「でも考えてみたら、ちょっとパーティーのバランス悪かったかしら?」

 

「ああ~、私と未来が後衛の魔術師で前衛は剣士のイリヤちゃん1人だもんね。」

 

「確かに攻撃に偏ってるね。私、ヒーラーとかだったら良かったかな?」

 

まあ実際は、イリヤは1人で攻撃(全距離対応可能)、サポート、治療と一通りできるオールラウンダーなのだが。RPGで言えば勇者タイプだ。と言うかマジでチート。

 

そんな事を話しながら歩いていると

 

「すいませ~ん。良ければ写真撮らせて貰っても良いですか~?」

 

と声をかけられた。目を向けると、一人のコスプレイヤーがスマホを手に近付いてくる。少し離れたところには、数人の仮装したグループが盛り上がっていた。恐らく取り合った写真をインスタグラムに上げてその評価に一喜一憂しているのだろう。

 

仮装は、ド定番のジャックオーランタン、妙に胡散臭さい笑顔の神父、小竜公(ドラキュラ)ヴラド3世(吸血鬼ではない。ないのだ!)、魔法少女マジカル☆ブシドー ムサシ。そして声をかけてきた女の子は、ボディアーマーは胸部まででお腹は丸出し、下も黒いレザーのホットパンツで生足にベルトを巻いている。そして、象徴的な紅い外套に漆黒の大弓。その格好は自分(アーチャー)のものだった。

 

(うっ!端から見るとやっぱり恥ずかしいなぁ、この格好。せめてズボンくらいは履くべきかしら?)

 

 

 

 

 

 

 街が黄昏に差し掛かり、濃影と緋光のコントラストに彩られる。陽は地平に沈み、月が宙に昇り往く。昼と夜が入れ替わる瞬間、逢魔時である。

 

黄泉の黄金郷より這い出し魑魅魍魎と、闇を恐れる人が出逢うにはこの上無い刻。『蔵』より顕現せしその群は瞬く間に増大し、雲霞の如く空を覆う。

 

気が付いたときにはもう手遅れで、雑踏の人影は次々に虚影の塵と為りて逝く。彼等は空から降り注ぐ死の豪雨より逃れる術を持たぬが故に。

 

街は突如として阿鼻叫喚に包まれ、掛け値無しに地獄と為った。もはや逃げ場など何処にも在りはしなかった。

 

アレこそは人間に終末をもたらす死の軍勢であり、際限なく自己増殖する人類を殺す災禍。最古の特異点において、統一言語を失い相互理解を放棄した先人達の創り上げた負の遺産である。

 

人間程度が絶望の大波に抗える道理など在るはずも無い。今宵、この街は死都と化す。それが当然の結果。

 

────────だが、ここに例外が存在する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 特異災害対策機動部二課にて、シンフォギア装者である天羽 奏と風鳴 翼が駆けつける。

 

「弦十郎の旦那!!」

 

「状況を教えて下さい!」

 

「現在、反応を絞り込み位置の特定を最優先としています。」

 

この時点でノイズが現れてから10分が経過している。既に多くの人間がノイズの犠牲となり、その数は増え続けている。無論、オペレータの皆は全力で頑張っているのは理解している。それでも二人の少女は、防人で在りながらただ待っているしか出来ない現状に苛立ち、モニターを見ながら歯噛みする。

 

 

「反応、絞り込めました!位置、特定!」

 

「ノイズとは異なる、高出力エネルギーを検知!」

 

「は、波形を照合!急いで!?」

 

モニターには『Archer』と表示される。

 

「しかも、桁違いの量のフォニックゲインを計測!」

 

「映像、出ます!」

 

偵察用のドローンのカメラに写る3人の少女。そのうちの二人は魔法少女の仮装をしていた。そしてもう一人、恐ろしいほどに整った顔立ちと紅玉の如き瞳に処女雪を思わせる髪の少女。あの紅い外套は間違いなくアーチャーのものである。何より彼女から発せられる破格のフォニックゲインが、一般人のコスプレなどでは断じてないのだと証明している。

 

「どうやら、彼女がアーチャーと見て間違いなさそうね。」

 

しかし、その様は窮地と言って差し支えのない状況であった。何しろ100を越えるノイズの大軍勢に完全包囲されているのだ。それは端から見ても絶望的である。いや、これがアーチャー一人だけであったのならこの包囲網を突破できるだろう。しかし今は二人の少女を庇いながらである。

 

「ヤベぇぞ、コイツは!!」

 

アーチャーに庇われている二人は、まず無事では済むまい。最悪の場合、3人全員がノイズに貫かれ絶命に到りうる。だが、もはや自分達が駆け出したところで到底間に合いはしない。ここから現場までどんなに急いでも20分は掛る。

 

しかし、それでも天羽 奏はただモニターを見ているだけだなんて我慢できなかった。それじゃあ5年前の、ただ一人だけ生き残った無力だった頃の自分と何も変わらない。この絶望を超克する為にシンフォギア装者となったのだ。

 

「チクショウ!何か手は無いのかよ!?」

 

じっとして居られないのは風鳴 翼も同様だった。彼女もまた人類守護の防人を自負する者。戦士としては身心共に未熟ではあるが、だからこそ綺麗に割り切れる程に達観出来ていない。若さ故の無鉄砲とも言えるだろう。

 

「司令官!」

 

風鳴 弦十郎とて見捨てる事など到底出来はしない。立場から来る理論や理屈よりも、信念や直感を重視する熱血漢である。人としては善良だが、責任者にあるまじき直情径行ではあるが。

 

「ああ、現場に急行する!何としてでも、彼女達を助けるんだ!!」

 

だが、実際に彼等が動き出すよりも前に、彼方の状況が大きく動いた。

 

 

 

『────そう、なら見せてあげる。』

 

そして彼女は謳い上げる。

 

『体は剣で出来ている』

 

「これは、彼女の聖詠なのか?」

 

『血潮は鉄で、心は硝子』

 

「フォニックゲイン、尚も上昇中!」

 

『幾たびの戦場を越えて不敗』

 

その詩は、風鳴 翼の総身を振るわせた。

 

『ただ一度の敗走もなく』

 

その詩は、天羽 奏の血潮を熱く滾らせた。

 

『ただ一度の勝利もなし』

 

それに異端技術(ブラックアート)の第一人者である櫻井 了子は気が付いた。アーチャ-を中心に空間そのものが侵食され始めたのだと。

 

『遺子はただ独り、剣の雪原で黄昏を待つ』

 

「うそ、まさか位相の異なる世界を自ら展開していると言うの!?」

 

『我が生涯の意義は既に果たし』

 

ドローンのカメラを通じて僅かに垣間見えるその世界は、晴れ渡る蒼穹と無数の刀剣類が乱立している純白の雪原。

 

『この体は、今や剣で出来ていた』

 

そして個人の心象と現実の世界は切り替わり、ドローンからの映像も完全に途切れた。

 

現実に残されたのは、灰燼に塗れた無人の街。そこにノイズはただ一体も居残ってはなかった。

 

その余りにも予想外な展開に暫くの間、二課の誰もが唖然としていたのだった。

 

 

 

 

 

 

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