IS-二つの力を合わせる男-   作:甘々胡麻ざらし

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いつも短い文なのに今回は4000近くなってしまった…。


兄弟対決

戦いを終えた秋十はセシリア側のピットにいた。理由は互いに戻ろうとしたときセシリアがふらついたのを危ないと思った秋十が、肩を貸してセシリアを連れてきたからだ。

 

「申し訳ありませんわ。」

 

「いいよいいよ。」

 

「二人ともお疲れさま。」

 

二人が休憩している所に航が現れ声をかける。

 

「あ、わた、五十嵐先生。」

 

「ほんとよくやってくれたよ。期待していたとは言え、本当に代表候補生に引き分けとはね。」

 

「ええ。私も驚きましたわ。」

 

「いや~僕自信も本当に驚いてますよ。で、先生はなんでこっちに?」

 

「そりゃあ実戦で動かした感想を聴きに来たんだよ。今後の改良を兼ねてさ。」

 

「あ、それなら練習通りの動きが出来ましたよ。」

 

「なら良かった。」

 

航が秋十の言葉をメモしていると、セシリアが突然立ち上がり頭を下げた。

 

「…どうしたの?」

 

「この間は申し訳ございませんでした!私が間違っていました!」

 

「あー、いいよいいよ。」

 

「私はあなたを…って軽すぎませんか!?」

 

「俺は別に気にしていなかったからさ。」

 

「ですが!」

 

セシリアは食い下がろうとしたが航はセシリアの頭に手を置き撫で始める。

 

「あ、あの…?」

 

「大丈夫。君がどうしてあんな性格になったか、理由は知ってるよ。でも今回の戦いで君が何かを掴んだのならきっと変われるよ。今の君ならどうするのが一番なのかわかるよね?」

 

セシリアの頭を撫でながら航はハッとして慌てて手を離す。

 

「ごごごごめん!ウサギ学校の子供達みたいについ!」

 

「あ、いえ。なんだか落ち着きましたわ。」

 

「いやーホントごめん!あー、この癖治さないとなぁ…。」

 

航が頭をガリガリと書いているとセシリアはクスリと笑った。

 

「なんだか五十嵐先生は先生というよりお兄さんな気がしますわ。」

 

「え!?」

 

「それはわかる。僕も前は頭撫でてもらってたし。兄さんみたいなんだよねぇ。」

 

「秋十君まで!?」

 

秋十とセシリアが笑いあっているとアナウンスが鳴り、秋十対一夏の試合を知らせた。

 

「あ、もう時間か。」

 

「頑張ってください。」

 

「一発ぶちかましてこい!」

 

「はい!」

 

秋十はULTRAMANを展開し、ビットを飛び出した。

 

「じゃあ俺はもう行くね。オルコット君も痛むところがあったら保健室に行くように。」

 

「はい。」

 

「あと頭撫でてごめんね…。」

 

「だから気にしてませんわ!」

 

そっかと言いながら航がピットから出ていく姿を見て、セシリアは自分の過去を振り返っていた。

 

名家であるオルコット家に婿入りした自分の父は、いつも母の顔色ばかりを伺っていた。幼い頃からそんな父を、見ていたセシリアは情けない父だと思っていた。そしてISが発表されて益々父の態度は弱くなり、母はどこかそれが鬱陶しそうで、父との会話自体を拒んでいるようだった。それと対称に母は強い人だった。女尊男卑以前からいくつもの会社を経営し、成功を収めていた。セシリアはそんな母に憧れた。しかしそんな両親は三年前に事故で亡くなりセシリアには莫大な遺産が残された。セシリアは何故両親がその日に限り一緒に居たのかという疑問すら抱く暇もなく、ひたすら金の亡者から遺産を守るため勉学を重ねて今に至った。

 

しかしセシリアは航に頭を撫でられ、あることを思い出した。

 

 

「セシリア。少しおいで。」

 

「…なんですの?」

 

幼いセシリアはその声に若干鬱陶しそうに返事をし、その男 父親の横に座る。

 

「セシリアはお母さんとお父さん、どっちが好きかい?」

 

「もちろんおかあさまですわ。」

 

「そうか…。」

 

突然父親に頭を撫でられセシリアはギョっとする。

 

「いつも情けない父でごめんね。本当にセシリアにもあの人にも迷惑をかけてばかりだ。」

 

「…。」

 

「でもこれだけは覚えていてほしい。例え情けなくても、セシリア達が私を好きでいなくても、私はセシリア達を愛しているということを。」

 

その言葉を聴いたセシリアが頭を上げると、そこには優しい笑みを浮かべている父親がいた。

 

 

「私は馬鹿ですわ…。」

 

改めて振り返ってみれば、セシリアの父は忙しくても時間を見つけてセシリアと遊んだり、風邪をひいたときは自分に移るまで看病をしたり、忙しい母に変わってセシリアの側に居てくれた。一人ぼっちにはさせなかった。

 

「…私だってお父様を愛してますわ…。」

 

今なら父の言葉を、想いを理解できる。そう思ったセシリアは今度墓参りに行こうと、そしてありったけの想いを伝えようと、そう思った。

 

 

ピットから飛び出した秋十は上を見上げると憎き兄が白いISを纏っていた。

 

「よぉ、秋十。さっきお前どんなズルをしたんだ?」

 

「は?」

 

秋十には一夏が何を言っているのかわからなかった。

 

「惚けるなよ。出来損ないのお前がセシリアに接戦できるわけ無いだろ。」

 

「残念だけど僕はこの一週間特訓したんだ。お前みたいに一週間剣道しかしていなかったのとは違ってね。」

 

「へぇ、言ってくれるねぇ。俺を楯突いたことを後悔させてやるよ!」

 

「僕はもう、あの頃の僕じゃない!」

 

試合開始のブザーが鳴り、一夏が刀《雪片弐型》を振り下ろしてくるが、予め出しておいたウルトラソードで防ぐ。

 

「おい、防ぐんじゃねーよ!」

 

「大人しく斬られてたまるか!」

 

一夏を蹴り距離をとった秋十は空いている手で光弾を放つ。

 

「てめっ!卑怯だぞ!」

 

「戦いに卑怯も何もない!」

 

光弾がいくつも被弾するが、一夏はすぐに慣れ、かわしながら秋十に近づき斬りつける。

 

「グアッ!」

 

「さっさと決めてるぜ!」

 

一夏は雪片弐型を掲げるとそこから光が漏れ出す。自分のSEを消費し、相手のバリアを無効化し、相手に直接ダメージを与え、絶対防御を発動させてSEを大幅に削る技《零落白夜》を発動させる。

 

「セシリアを倒した技で終わりだぁ!」

 

そのまま一夏は秋十を斬り、勝ったと笑みを浮かべた瞬間。胸元に十字に組んだ腕を当てられる。

 

「は?」

 

「スペシウム光線!」

 

秋十からスペシウム光線が放たれ、一夏のSEを大きく削る。だがそれに比べて秋十のSEはあまり減っていなかった。

 

「な、なんで零落白夜が効かないんだよ!」

 

 

一夏の零落白夜が効かないことを目の当たりにした千冬は、ピットの端っこで呑気にコーヒーを飲んでいる航に詰め寄る。

 

「おい、何故一夏の零落白夜が効いていていないんだ!」

 

「そりゃそうでしょ。零落白夜は相手のバリアを切り裂いて、本人に直接ダメージを与える技。でも秋十君が使っているULTRA SYSTEM 通称USは防御特化した全身装甲なんですよ?装甲で防御を任せてるからバリアのシステムを取っ払ってますよ。零落白夜を使ってもただ斬ったときのダメージしか入りません。」

 

「な、なんだと!?それではまるで。」

 

「対零落白夜対策をした専用機とでも?全くの偶然ですよ。狙って出来るわけないじゃないですか。」

 

だが航はあることを気にしていた。それはセシリアとの戦いで最大火力のレーザーを受けていることだ。メンテナンスはしたものの、下手をすれば装甲が砕けてしまうかのうせいがある。そうなれば一夏は徹底的に狙ってくる。

 

「(頼むから何も起きないでくれよ…。)」

 

航はそう思い、モニターを見た。

 

 

「チッ!零落白夜が効かないのはとんだ誤算だったな。だがそれが無くても俺は勝さ!」

 

「あっそ。」

 

その後も一夏は雪片で何度も斬り、秋十のSEを削っていった。だが瞬間、突然秋十のSEが大幅に削れたのだ。

 

「やっぱりな。」

 

「!?」

 

秋十が慌ててガードしていた腕を見ると、右腕の装甲にヒビが入っており、肌が露出していたのだ。絶対防御は操縦者の身体を守るため、肌が露出している所は大きく削れてしまうのだ。

 

「まさかこれが狙いだったのか!?」

 

「へっ!戦いに卑怯も何もないんだよなぁ?行くぜ!」

 

一夏はその後も腕を執拗に狙い、何度も斬りつける。そして秋十は防戦一方だった。

 

「だったらもう一度!スペシウム光線!」

 

秋十はスペシウム光線をもう一度放つが、疲労のせいか一夏にかわされ、隙が出来てしまう。

 

「零落白夜ぁ!」

 

一夏は零落白夜を発動させ秋十の左腕を突き刺した。

 

「がぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

間一髪絶対防御が発動し、距離を取ったが、左腕はその衝撃で腫れていた。

 

「やっぱりお前は俺には勝てないんだよ。」

 

「…。」

 

「じゃあな!」

 

一夏は零落白夜を使い秋十に斬りかかるが、秋十は右腕で雪片を掴む。

 

「っ!放せ!」

 

一夏は秋十の手から雪片を引き抜こうとするが、秋十はそれを離さないよう手に力を込める。

 

「このままじゃSEが。」

 

一夏はSEの残量を気にして零落白夜を解除する。

 

「今だ!」

 

だが秋十はその隙を見逃さず、掴んでいる腕を軸に左腕を持ち上げ十字にクロスする。

 

「スペシウム…っ!」

 

だが左腕が先程のダメージのせいかガクンと落ち、十字が崩れる。

 

「勝った!」

 

一夏は勝ちの笑みを浮かべる。だが秋十は歯を食い縛り両腕に力を込る。

 

「僕は…絶対に…勝つんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

なんと秋十の右腕からスペシウム光線とは遥かに巨大な光線が放たれ一夏に直撃する。

 

「馬鹿な!お前の技は十字で撃てるはずだろ!?なんで"L字"で撃てるんだよ!?」

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

そのまま巨大な光線は一夏を吹き飛ばし、SEを0にした。

 

《し、勝者!織斑秋十!》

 

アリーナからアナンウスが鳴り、勝者を告げた。

 

 

「な、なんだと…!」

 

モニターを見つめていた航は秋十の勝利と同時にある光景に目を見開いた。

 

そこには一瞬だが二本の角を持ち、赤いマントを羽織ったウルトラマンがいた。

 

 

「へぇ。」

 

時を同じくして遠くから秋十の試合を見つめていたペルソナは、面白いものを見つけたかのような顔をしていた。

 

「光と闇を持つ子か。面白くなってきそう。」

 

そう言いペルソナは一枚のカードを取りだしスキャンした。




次回も見てください!

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