「という訳で一年一組のクラス代表は織斑一夏くんに決定した。あ、一繋がりで覚えやすいですね。」
翌日の朝のHRのとき、山田先生が発した言葉に驚く男がいた。そう、織斑一夏だ。
「あの、山田先生?どうして俺がクラス代表なんですか?」
「結果から見て決まったのだ。」
一夏の問いかけに千冬が答える。
「結果?」
「そうだ。織斑兄はオルコットに勝利した。そして織斑弟はオルコットと引き分け。」
「でも俺あいつに負けましたよ?」
一夏は秋十の方を見て言う。
「確かにお前は負けた。だが織斑弟が使ったISはアリス社が開発したまったく違うISの試作型だ。まだまだ危険があるとこちらで判断し、試合が多いクラス代表を辞退してもらうことにした。異論は認めない。」
千冬の言葉に秋十は心のなかで舌打ちした。
「(要するにあいつをクラス代表にするため、僕のUSを危険と評価してクラス代表から下ろしたということか。)」
『いいじゃねーか。面倒事が起きなくなるだろ?』
「(まぁね。)」
頭の中に話しかけてきた声と会話していると、セシリアが手をあげた。
「先生。発言してもよろしいでしょうか?」
「…許可する。」
セシリアは席立ち、教卓の近くまで行くと頭を下げた。
「先日は大変失礼な事を言って申し訳ありませんでした!」
突然の謝罪にクラスの人は慌て始める。
「私は先日の試合で自分の愚かさに気付かされました。ですから許して欲しいわけではありません。ただ一言皆様に謝罪させてください!本当に申し訳ありませんでした!」
セシリアの言葉にクラスの人たちは互いに顔を会わせたり、苦笑いをした。
「ま、まぁ。そんな風に謝られたらこっちも何も言えないし…。」
「本人も反省してるって言ってるしねぇ…。」
「これから頑張ろ~。」
「あ、ありがとうございます!」
こうしてセシリアは無事にクラスの皆とうち解け合うきっかけを得たのだ。
「あれ?所で五十嵐先生は?」
「五十嵐先生は学園長からの依頼により今日は休みだ。」
「そっかぁ。」
「アリス社のISについて色々教えてほしかったのになぁ。」
「HPにも情報書いてるけどわからないこと多いしねぇ。」
女子がワイワイと話していると秋十の専用機であるULTRAMANの待機状態《ウルトラフォン》の画面が光り、メッセージが表示される。
「(放課後セシリアを連れて整備室へか。了解っと。)」
◇
放課後にセシリアを連れた秋十はアリスラボの扉の前に来ていた。
「あ、あの。壁ですわよ?」
「ちょっと待ってね。」
秋十がウルトラフォンを扉の前に向けるといつもの鈴の音が鳴り、セシリアの手を手招きして中に入る。
「ようこそアリスラボへ!」
中に入ると航が椅子でくるくる回っていた。
「おえ、気持ち悪…。」
だがすぐに目を回して口を押さえる。
「何しているんですか航さん。」
「久しぶりに…若い頃の遊びを…思い出してやったら…気持ち悪くなった…。まぁ、そんなことは置いといて。二人とも、こちらに。」
すぐに立ち直った航は二人を手招きして向かい合うように椅子に座る。
「さて、オルコット君に秋十君。先日は色々ありがとう。」
航は椅子に座ったまま深々と頭を下げる。
「いえ、こちらこそ助けていただきありがとうございました。」
「そうですよ。先生には色々助けられましたし。」
「そうかい?さて、本題に入るのだが君達はあの仮面の女、ペルソナが言ったソウルという言葉に聞き覚えはあるかい?」
「いえ、全くありませんわ。」
「僕も。」
「そうか。ではペルソナが君達にしたことを全て話してくれるかい?」
「「はい。」」
秋十達は自分にされたことを全て話した。すると航はどこか納得したような顔をした。
「なるほどね。では君たちにこれを見てもらいたい。」
そう言い航はモニターに数枚の画像と映像を見せる。
「これって今ネットで流行ってい都市伝説ですよね?」
そこには五人組のヒーローやバイクに股がった仮面のヒーロー、フリフリの可愛い衣装を着たヒーローが写っていた。
「その通りだ。左からスーパー戦隊、仮面ライダー、プリキュアと呼ばれている。あとこっちが今世間を賑わせている巨人 ウルトラマンだ。」
「ですがその都市伝説やウルトラマンが何故ソウルと呼ばれるものと関係がありますの?」
「今はまだ仮説程度だがあることが分かれば確信に変わる。」
「「確信…?」」
航の言葉に二人は不思議な顔をする。
「薄々君も気づいているのだろう?秋十君。いや、"ウルトラマンベリアル"。」
「!?」
「な、何のことですか?」
《誤魔化さなくていいぞ。》
秋十のウルトラフォンから声が聞こえ、取り出すと画面の向こうには黒い姿に赤い模様が入ったウルトラマン ウルトラマンベリアルが二頭身の姿で座っていた。
「え!?ベリアル!?」
《本当に用意周到な奴だな。このスマホには俺の意識を反映させて、秋十以外のやつと直接話す事が出来る。偶然にしては出来すぎている。正体がわかっていた証拠だろ?》
「まぁねぇ。秋十君がベリアルなのは薄々感づいていたよ。クロエからの話も合わせてね。」
「マジですか…。」
秋十ははぁとため息をつく。するとセシリアがおずおずと手をあげた。
「あ、あの。本当に秋十さんはウルトラマンなんですの?」
「ああ、そうだよ。僕はウルトラマンベリアルだ。」
そう、ウルトラマンだけはその巨大さから都市伝説ではなくニュースでも取り上げられるほど有名なのだ。
《お前が仮説って言ってたのはウルトラマンや怪獣やその都市伝説にいる奴等がソウルと関係があるってことだろ?》
「その通り。で、実際の所は?」
《お前の言うとおりだ。俺たちはソウルと深い関係がある。というよりソウルは俺たちの魂のことだ。》
「…詳しく聞かせてくれ。」
《ああ。》
ベリアルはウルトラフォン越しに全てを話始めた。
《今から何年も前のことだ。ある日突然俺たちの世界が融合を始めた。しばらくしてようやく馴れたが、ある日戦いが始まった。》
「戦い…。ヒーローVS怪人や怪獣のか?」
《いや違う。ヒーロー組と俺たちの怪物連合が同時に仲間同士で戦い始めたんだよ。そして亀裂が広がり、遂にはヒーローと悪が手を組み自分たち以外の世界を潰し始めたのさ。俺も最初は戸惑ったが、あいつらを守るためにケンやゼロと共に戦った。そしてある日共に戦っていたセブンがやられた瞬間そいつが光の球となり何処かへ飛んでいった。ちょうどそこの女と同じ色の光だった。そして俺たち怪獣組は黒い闇の球だった。》
「つまりそれがソウルの正体なのか?」
《ああ。そして俺たちは気づいたんだよ。この戦いは誰かの陰謀だってな。だが気づいたときには遅かった。その頃にはどの世界もほとんど全滅し、結果俺たちも全員が滅んだ。》
「なるほど。つまり君たちの目的はその首謀者を見つけるということか。」
《ああ。だが俺はこの通り秋十にくっついているから離れられない。》
「あ、そう言えばそのペルソナだっけ?が言ってた覚醒者とか憑依者って?」
《俺も詳しくは知らねぇ。だが俺と秋十の状態が、向こうで言う覚醒者というのに該当しているのは確かだ。状況から考えてもお前のところにいるクロエとか言う女も覚醒者だろうな。》
「多分な。クロエがあの銀のロックシードの出所を言わなかったのはそれが原因か。まったく、お兄ちゃんに相談くらいしてくれよな…。」
航は一人でぶつぶつの小言を言い始める。
「では私にもあなた達と同じ力が眠っているのですわね?」
《まぁそういうことだ。何が眠っているのかは俺にもわからねぇがな。》
「あ!そうだ!オルコット君に渡す物があったんだった。」
航は突然思い出したかのように席を立ち、近くの作業台から青色の拳銃を渡す。
「これは?」
「俺が開発した対怪物用の銃だ。昨日戦ったライオトルーパーやこの写真に写っている怪物にはISが効かない。だから自己防衛用としてこの銃を君に渡しておく。本当は君や秋十君を今すぐアリス社で保護したいところだけどそれが出来ない…。あいつらの存在を下手に世間に出して混乱させる訳にもいかないんだ…。」
「いえ、先生の心遣いに感謝しますわ。確かにこのような事を世間にでも知られれば恐ろしいことが起こり得ますわね。」
「確かにそうだよね。」
秋十とセシリアは納得した表情をした。
《おい五十嵐って言ったか?俺にも防衛用の武器とかないのか?》
「いや、君の戦闘センスから考えているのかどうか疑わしいんだけど。」
《素手だけだと戦いのバリエーションが少ないんだよ。だからなんか作れ。棍棒系で。》
「はぁ…。わかったよ。確かに秋十君にも武器がいるよね。出来たら渡すよ。」
《頼むぜ。》
「じゃあ後で色々言ってくれ。そのウルトラフォンから俺の端末にメッセージ送れるからさ。じゃあ二人ともまたね。」
「はい、また明日。」
「ごきげんよう。」
秋十とセシリアが出ていくと航はパソコンを操作してあるところと通信する。
「無事にお届け物は渡しておきましたよ。」
画面越しからは男の声が聞こえる。
「本当に驚きましたよ。まさかあなたに娘が居たなんて。」
画面の男は少し困ったような顔をして口を開いた。
「だったら顔を見せては…わかってますよ。流石に"死んで生き返った"なんてこと、普通言えませんからね。やっぱりソウルを持った人間は巡り合うんですね。」
画面の男は何かを言い通信を切った。
「きちんと貴方の娘は守りますよ。名前を変えてまで娘を守りたいと願うあなたの代わりに。」
次回からは鈴ちゃん篇だぁ!