「うん?ここは…?」
航が目を覚ますと自分は公園のベンチに寝ていて、体を起こすとそこは自分がいた世界とよく似ている風景があった。そして枕の替わりにしていたトランクケースに目が行き、それを開けると。
『コレの手紙を読んでいるということは、どうやら無事に転生したようですね。ここはインフィニット・ストラトスの世界です。そしてあなたが倒すべき人物はこの世界の主人公に憑依した"織斑一夏"です。』
「なるほど。確かに主人公ならハーレムを作るには丁度いいからな。」
『そしてあなたの特典として専用機を与えます。』
「専用機?」
航は手紙と一緒に入っていた物を手に取る。
「これは…、カードデッキとスキャナーか?」
そこにはカードデッキが入っていて、中には何も描かれていないカードが数枚あり、他にもカードを読み込ませるであろう銀色のスキャナーがあった。そしてそれと一緒に説明書のようなのが付属していた。
『それはISの力を秘めたインフィニットカードとそれを読み込むストラトスキャナーです。使い方はストラトスキャナーを腕に巻き付け、インフィニットカードを二枚スラッシュスキャンし、ストラトスキャナーのグリップにあるトリガーを押すことであなたの専用機が現れます。つまりオーブやジードみたいに二つのISの力を合わせて戦うのです!』
「へぇ~。なんか格好いいな。」
そういい航は早速ストラトスキャナーを腕に当て、グリップを握ると、自動的にベルトが射出され、腕巻き付き固定された。
「そういえば俺って今何歳ぐらいなんだろ?」
ドォォォォォン!
突然近くで爆発音が鳴り一瞬ふらつく。
「な、何が起きたんだ!?」
航はトランクケースに手紙とカードデッキを仕舞い爆発音のしたところにいった。そこには…。
「あはははははは!男なんて死ねばいいのよ!」
ISの一つ、ラファール・リヴァイブを纏った女がアサルトライフルを乱射していた。恐らく近くにあった展示品でも触れたのだろう。
「うわぁ!」
慌てて航も近くの物陰に逃げたが、手を見るとブルブルと震えていた。それもそうだ。元々航は戦いなど無関係の一般市民。突然銃を乱射されたら逃げるし怖い。
「(くそっ!いきなりこんなのってありかよ!ヒーローの資格があるとか言ってたけどこんなの無理だろ!)」
航はこっそり逃げようとしたが、その足を止めた。
「ヒック!グスッ!」
「…僕どうしたんだ?」
「お父さんとはぐれちゃったの…。僕怖いよ…。」
「そっか…。でもここは危ない。早く一緒に逃げよう。」
「でもお父さんが…。お父さんが…。」
男の子の不安そうな顔を見て航は拳を握りしめた。
「…。(俺は何をしているんだよ…。この子の不安を増やすことして。俺がこの世界に来たのは逃げるためじゃない。この子のような人たちの笑顔を守るためだろ!)…大丈夫だよ、僕。ヒーローは必ずやって来る。あんな悪いやつ倒しちゃうよ!」
「ほんと?」
「ああ!俺がお前のヒーローになる!」
航はトランクケースからカードデッキを取りだし、腰に付けてISを纏った女の前に出た。
「おいお前!これ以上罪もない人を傷つけるな!」
「はぁ?男の癖に偉そうにいうんじゃないよ!」
バン!と発砲音なり咄嗟に左にかわすと腕を弾が掠めた。
「っ!(いってぇぇぇ!)」
その後もなんとか物陰を利用して自分に注意を反らし、その隙に周りの人たちも避難を始める。
「はぁ…はぁ…。(さっきの男の子は…。よかった。お父さんに会えたみたいだな。)」
「しつこい男ね!いい加減に死になさい!」
女は銃を連射し航は死を覚悟したが、弾丸が届くことはなかった。恐る恐る見ると二枚のカードがバリアを張るように空中に浮かんでいた。
「これは…。うわっ!」
突然カードが光り、目を開けると神秘的な空間が漂っていた。
《あなたは力を使う資格を手にいれました。そこで問います。あなたはこの力で何をしますか?》
「俺は…俺は目の前で傷つく人を見たくない!これから先も手の届く限り誰かの笑顔を守る!立ち止まってる場合じゃない!"ストップするなら止まらず進む!"」
《それがあなたの答えなのですね。》
突然再びカードが光り、目を開けると先ほどまで真っ黒だったカードが機械の絵柄が描かれたカードに変化し、それを受け取る。それと同時に光が消え現実に戻される。
「な、なにが起きたの?」
ISを纏った女はあまりの光景に後ずさりする。
「…見せてやるよ!俺流のヒーローを!」
そう言い航はインフィニットカードとストラトスキャナーを構える。
「打鉄!」
《打鉄!》
「リヴァイブ!」
《ラファール・リヴァイブ!》
二枚のカードをスキャンするとカードに描かれた打鉄とラファール・リヴァイブが出現する。
「二つの力、今こそ一つに!」
《フュージョンライド!》
ストラトスキャナーのトリガーを押すと二機のISが粒子となり航の全身を覆い、特撮ヒーローを彷彿とさせる緑と灰色の姿になった。それと同時に銀色だったストラトスキャナーの色が緑と灰色の二色に変わる。
《ライド・オン・ストラトス!アインゲイル!》
「お、男がISを装着した…?」
またしても女は驚きの声をあげる。
「さぁ!いくぜ!はぁっ!」
ISを纏った航は地面を蹴り拳を喰らわそうとしたが。
「うわっ!ぶへっ!」
何故か20メートルほど飛び上がってしまい地面に顔をぶつけた。
「いてて…。なんだこれ?体がビックリするぐらい軽いぞ?」
《それはそうですよ。だってあなたの体は今この"ストラトス"の力で強化されていますから。》
「スキャナーが喋った!?ってその声…。」
スキャナーから声が聞こえて思わず驚きの声をあげたが、それは先ほどの航があの神秘的な空間で聴いた声だった。
《はい。私はこの機体のAIであり、あなたのパートナーでもあります。今は初戦ですし私がサポートします。》
「そっか。頼むぜステラ!」
《ステラ?》
「そう!お前の名前。気に入った?」
《…ええ。これからはステラが私の名前です。》
「何をごちゃごちゃ言ってるのよ!」
女はこの光景にイラつき銃を撃つが。
「無駄無駄!」
「がっ!」
先ほどとは違い弾丸を全て避け、右肩に拳を喰らわせた。
《このISはスキャンした機体の武器を使うことも出来ます。》
「わかった!こい、葵!」
航は自分がスキャンした打鉄の刀型近接ブレード《葵》を展開させ斬りかかるが、女は持っていた銃で接近する航を撃つ。しかし航は強化された動体視力で弾丸を全て切り、一撃、二撃と攻撃を喰らわせる。
「こんなの…ありえない!男に負けるなんて!」
「へっ!せいぜい刑務所で喚いてな!トドメだ!」
《フィニッシュ!》
ストラトスキャナーのトリガーを再び押すと電子音声が鳴り響き葵の刀身が緑色に発光する。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
《アインゲイル・インパクト!》
そしてトリガーをもう一度押し、葵をそのまま降り下ろして、女のISのSEを0にした。ISを解除された女は必殺技の威力が強すぎたのかそのまま気絶した。
「ふぅ…。なんとか…倒せ…た…。」
しかし航は傷のせいで出血があり、そのまま地面に倒れた。
「ふーん。君面白いね。」
「誰…だ…?」
消え行く意識の中航が目にしたのは、紫色の髪をした不思議の国のアリスだった。