ラッキースケベ秋十君。以上!←わかるかぁ!
「あ…、えっと…。」
秋十と鈴が互いにフリーズしていたが、たちまち鈴の顔が真っ赤になっていく。
「き、きゃあムグッ!」
鈴は思わず悲鳴をあげようとしたが慌てて秋十が口を押さえたため、その反動でベッドに倒れこむ。俗に言う押し倒した訳である。
「「…。」」
そのまま二人は見つめ合うが先に秋十が口を開いた。
「え、えっと…と、とりあえず服着てきたら…?」
「う、うん。そうする。」
鈴は秋十から離れ、脱衣所の方へと向かう。すると髪を乾かしているのかドライヤーの音が聞こえてくる。
「(お、落ち着け…!とりあえず鈴の体綺麗だったなぁ…じゃなくて!なんで鈴がここに居るんだ!?)」
「お待たせ…。」
秋十が悶えていると脱衣所のドアが開き、パジャマを着た鈴が出てくる。そして秋十の横にちょこんと座る。
「「…。」」
五分ほど無言が過ぎた頃に鈴が口を開いた。
「…変態。」
「第一声がそれ!?」
「だってそうじゃん。て言うかなんであんたがあたしの部屋に入ってくるのよ。まだ教えてないじゃない。」
「いや、だってここは僕の部屋だよ?」
「はぁ?あたしの部屋よ?」
そう言って互いにルームキーの番号を見せあうと同じ番号だった。
「じゃああんたがあたしのルームメイトか。」
「そうなるね。」
「「…。」」
そしてまたしても互いに黙ってしまった。
「…ねぇ。」
「何?」
「聞かないの?」
「何が?」
「あたしが裸で部屋の中に居た理由。」
「…多分風呂に入っていたら着替え忘れていて、どうせ同居人は女だと思っていた帰ってきても大丈夫だと思っていたかな?鈴はがさつな所があるし。」
「…正解。って一言多いわよ。はぁ…。普通男女同じ部屋にする?」
鈴はため息を吐いた。
「…迷惑だった?」
「そんな事ないわよ。むしろ助かったわ。初対面より知り合いの方が気が楽になるし。」
「あはは…。」
「とりあえずあたしも悪かったし、今回は見逃してあげるわ。」
「いや、何様だよ。」
「あら?あたしの裸を見れただけでも感謝したら?」
「そんなの小学校の時に何回も見たよ。」
「何よ!小学生から成長してないとでも言うつもり!?」
ムキーと鈴は立ち上がり秋十を睨み付ける。
「あ、いや。その…そういう意味じゃないよ。むしろ久しぶりに見たからに少し可愛くなったというか綺麗になったというか…って何言ってんだ僕は!?」
秋十はまたしても口を滑らせたと思い鈴を見るが。
「あ、うん…ありがと…///。」
鈴は顔を赤くし、、それにつられて秋十も顔を赤くする。そして互いに見つめ合う。
「鈴…。」
「秋十…。」
《おい、なに俺を忘れてイチャつこうとしてんだよ。》
「「うわぁ!」」
二人の雰囲気をぶち壊すようにベリアルが声あげ、二人は慌てて距離をとる。
「え!?なに!?誰か居るの!?」
「ベ、ベリアル…。せっかくの雰囲気が…。」
《ケッ!お前ら見てると無性に腹が立つぜ。》
秋十はウルトラフォンを取り出してベリアルと向き合う。すると鈴がウルトラフォンを奪いベリアルを見る。
「これ、何かのアプリ?」
《ちげーよ。俺はこいつの専用機のAIのベリアルだ。よろしく。》
「あ、うん。よろしく…。」
《で、秋十。こいつは誰だ?昼休みの時寝てたから話聞きそびれてよ。》
「ああ、うん。この子がいつも話していた鈴だよ。小五の時に中国から引っ越してきて、中二の終わりに国に帰ったからちょうど一年ぶりかな?」
《あー、お前が言って好きな女ってこいつのことか。》
「え!?ちょっ!ベリアル!?」
突然のベリアルの爆弾発言に秋十は慌て始める。
「…え、えーっと…。」
鈴はベリアルの爆弾発言にまたしても顔を真っ赤にし、もじもじし始めた。
「と、友達!友達として好きってことだよ!?」
「あ、うん…。そう、だよね…。」
秋十は鈴に慌てて誤魔化すが鈴はその言葉を聞きガックリと肩を落とす。
「そっか…。友達かぁ…。」
「そう!友達だよ!」
《(こいつら…。)》
ベリアルは秋十のヘタレっぷりと鈴の察しが悪い所にため息を吐きたくなった。
「ごほん!と、所でさ秋十。あたしが中学の時にした約束覚えてる?」
「え、もちろん覚えてるよ。」
「ほんと!?」
鈴はキラキラした眼で秋十を見つめ、その顔に秋十は一瞬戸惑った。
「確かに料理が上達したら毎日酢豚を食べてくれだったよね?」
「そうそれよ!よかったぁ。覚えてなかったらどうしようかと思ったじゃない。それで?」
「それでって?」
「だから返事よ。返事。」
「返事って?」
「ま、まさかあんた意味分かってないの…?」
「え?酢豚を食べさせてくれるって意味じゃないの?」
「っ!」
秋十が言った途端鈴は秋十にビンタを喰らわせた。
「いった!え!?鈴!?」
「最っ低!このバカ!鈍感!馬に蹴られて死ね!」
鈴は目に涙を浮かべ、そのままドアを乱暴に開けて部屋を出ていった。
「…やっぱりそっちの意味だったのか…。」
一人残された秋十は鈴にビンタをされた所を撫でながらボソリと呟いた。
◇
「ひっく!えぐっ!」
鈴は泣きながら寮の廊下を走っていた。すると曲がり角で誰かにぶつかり、転けそうになるが腕を捕まれなんとか踏みとどまった。
「おっとすまない。って泣いてる!?ご、ごめん!そんなに強くぶつかった!?」
「…大丈夫です…。」
鈴とぶつかった航は涙を見て慌てるが鈴は涙を拭いて航を見る。
「って君は昨日の…。」
「あ…、あのとき道案内してくれた人…。」
◇
遡ること昨日の夜。
「もう!この土地広すぎでしょ!」
鈴はIS学園に来ていたが敷地が広すぎて目的地にたどり着けていなかったのだ。
「あ、そこの男の人!ちょっと道教えてくれませんか?」
鈴が声をかけた男性は航であり、航は鈴に見せられた紙を見た。
「うん?ああ、ここなら…。」
航は現在地と目的地までの道のりを分かりやすく紙に書き、鈴に渡した。
「ありがとうございました!」
◇
「どうかしたの?良かったら相談とか乗るよ?凰鈴音君。」
「え、なんであたしの名前を?」
「そりゃあ俺ここの教師だし。あ、俺は五十嵐航だよ。秋十君から何か聞いてない?」
「五十嵐…?あ!え!?あなたが!」
「どうやら聞いてるみたいだね。これも何かの縁だし相談のるよ。」
「じゃあ…。」
航と鈴は近くにあったベンチに座り、原因を話した。
「というわけなんです…。」
「うーん。どっちもどっちだねぇ。」
航は頭を掻きながらそう言った。
「え?あたしも悪いんですか!?」
「まぁね。今の時代で"毎日味噌汁を作ってくれ"とか言っても分かる人少ないし、それがアレンジされてるならもっと分かりにくいよ。例えば"今夜は月が綺麗ですね"って言葉あるでしょ?それの意味分かる?」
「え…、もしかして告白なんですか?」
「正解。ね、分かりにくいでしょ?今の時代なら恥ずかしいのは分かるけど、思いきってストレートに想いを伝える方が効果的だと思うよ。」
「うぅ…。」
鈴は困ったような顔をして俯いた。そして航はそんな鈴を励ますように頭を撫でる。
「大丈夫、大丈夫。きちんと告白すれば相手にもちゃんと伝わるよ。それに秋十君にとって一番身近で仲が良い女の子は君だと思うしね。。」
「え!?ほんとですか!?」
「さぁ?これはただの推測だからわかんない。でも、頑張ってね。面と向かって話すのが気まずいなら俺も協力するからさ。」
「…あの。どうしてそこまでしてくれるんですか?」
「うん?そりゃあ教師は生徒の悩みに答えるのが義務だしね。でも100点の答えなんてその人のためにはならないから、教えれるのはヒントまで。あとは自分で100点に持っていく。じゃ、頑張ってね。」
航はヒラヒラと手を振りながらその場を去っていった。
「五十嵐先生か…。なんか秋十が言ってた気持ち分かるかも。よし!かなり気まずいけどこの際正面からぶちあたってやるぞぉ!」
鈴はペチンと頬を叩き自分の部屋へと向かった。