「鈴のやつ足早すぎるだろ…。」
一方その頃秋十は鈴を探していた。
《お前が告白の意味をわざと間違えたのが原因だろ。何がやっぱりそっちの意味だったのか…だよ。白々しい。》
「仕方ないだろ…。まさか鈴が本当に好意を持ってなんてさ…。いや、本当はわかっていたんだ…。でもなんか色々考えてさ…。」
秋十は自分の情けなさに拳を握りしめる。
《人のトラウマなんざそう簡単に無くならねぇよ。だがあの女は違っていた。そうだろ?》
「うん…。」
◇
今から数年前、小学五年生の初めごろに鈴は秋十の居る小学校に転校してきた。
「ハ、ハジメマシテ。中国カラキタ、凰 鈴音デス。ヨロシク、オネガイシマス。」
まだ日本語に馴れていなかった鈴は必死に片言だが日本語で挨拶をした。だが彼女の必死の挨拶に余計なことを言ったやつがいた。
「何でそんな変な風に喋るんだ?普通に話せよ。」
そう、秋十の兄、織斑一夏だ。小学生でよくある無知な言葉。だがそれは鈴を虐めるには十分すぎる切っ掛けだったのだ。その後鈴はクラスに打ち解けれず周りから「パンダ」だの「外国人」だのと虐められていた。しかしある日鈴は出会ったのだ。自分と同じ境遇にありながらも努力を止めない少年と。そう、落ちこぼれと言われていた当時の秋十だ。
「ネェ、君ハ、ドウシテ、頑張ルノ?」
その日鈴は秋十に声をかけた。すると秋十は眼鏡クイっとあげ鈴を見て口を開いた。
「僕は、いつか、見返すの。僕を、馬鹿にする、人たちに。」
それも鈴に伝わるようにゆっくりと、そしてハッキリと言った。そこ時鈴はわかったのだ。この人は自分にしか出来ないことをやっていると。そして鈴には無かった諦めない心を。その日から鈴は必死に日本語を勉強し、小学六年生の頃には普通に話せるようになり、友達も出来るようになった。だが秋十の虐めだけはいつまでも無くならなかった。だから鈴は決心したのだ。そう。
「ねぇ、秋十。あたしと友達になってよ!」
◇
「あの頃からかな?鈴がいつもいつも構ってきてくれて、明るくなれたのは。それに中学に入ってからは弾や数馬とも友達になれた。僕を僕として見てくれる人が出来たんだ。」
《じゃあなんであの女の告白をわざと間違えたんだよ。》
「理由は、僕がウルトラマンだからだよ。」
《はぁ?》
「ベリアルは覚えている?僕が君と出会って初めて変身したあの日を。」
《ああ。だがそれがどうした?》
「あのときは正体がバレないように変身して戦ったよね。そのとき学校の皆はどんな顔していた?」
《…怯えていたな。》
「そう。世間ではウルトラマンは怪獣を倒すヒーローとして語られる反面、破壊者としても言われている。その正体が僕と知れた瞬間、今までの何かが壊れる気がして怖いんだよ…。」
秋十は拳を握る力を強め、爪で食い込んだ皮膚から血が流れる。
《秋十…。》
ベリアルがどう声をかけていいのか迷ったときだった。
「あ、秋十!」
「鈴…。」
「部屋に戻ったら居なくなってたから探してみたらここに居たんだ。…もしかしてあたしを追いかけてくれたの?」
「うん…。」
「そっか。ありがと。ごめんね。さっきはビンタしちゃって。」
「大丈夫だよ。それに僕もごめん。ちゃんと意味がわかっていなくて。」
「ううん。あたしが分かりにくく言ったのが悪いのよ。だからちゃんと言うね。」
鈴は深呼吸をして、秋十をまっすぐ見つめる。
「あたしは秋十の事が異性として好きです!だからあたしと付き合ってください!」
どうでしたか?
ヒーローによくある悩みを書いてみましたが、ちゃんと伝わっているか心配です。
次回 秋十の答えは!