転生したらAUOの兄だった件について   作:けんさん&コハク

10 / 12
 この頃疲れすぎて甘味が欲しくなって、一杯のマグカップのアイスコーヒーにガムシロップ8杯に砂糖が入ってる棒7本入れて飲んだらしています。
 この頃は本当に激動の数ヶ月でした。
 謎の腹痛で高校生活始めての早退と数日の休みを取って、まだ完治していない時に足えげつないくらいくじいて、未だに治っていません。
 それに専門大学に行くために大変だから、ほぼガムシロップになっているコーヒー飲むようになったし。

 ……………はい、言い訳はおしまいです。
 本当に遅くなって申し訳ございません!
 こんなにも時間をかけたのにもかかわらず、今回も良い出来だとは言えません。
 本当に申し訳ないです!
 次は、次こそは早く上がるようにしますので見ていただける優しい方は待っていてくださいませ!


魔猪討伐【終】

 ギルガメッシュは魔猪の騒ぎで誰も外に出ていない静かな町をただひたすらに走っていた。

 目的地は兄であるエルシュの元へ。

 ギルガメッシュはエルシュから町の警護を言い渡されていたが、報告しに来た男の話を聞けば魔猪は一体ではなく、10や20にも届く大群で来たというのだ。

 ジッとなんかしていられない。

 一体だけなら、エルシュの話を聞く限り敗北する事は無いだろう。

 しかし、数が数だ。

 しかも敵は女神イシュタルが育てたという、下位ではあるが神獣にも届きうる力を持つケモノだ。

 万が一にもエルシュに何かあったら。

 そう思うだけでもギルガメッシュの心は焦燥感に苛まれていた。

 自分がいたところで何か出来るとは思っていない。しかし、将来王になってほしいと…………否、将来必ず王になる男(・・・・・・・・・)をここで死なせるわけにはいかない。

 その思いを胸にギルガメッシュはひたすら走った。

 

「………………!」

 

「………………!?」

 

 もう少しでエルシュが居る目的地に着くといった所でナニカの声が聞こえて来た。

 叫び声にも聞こえるその声はだんだんと大きくなってくる。

 より一層足を早めたギルガメッシュはとうとう、エルシュが戦っている畑にたどり着いた。

 

 そこに居たのは血塗れの山を作っている魔猪。

 そしておそらく返り血であろう赤黒い血を身体中に浴び、肩に身の丈4倍はあろう大剣を振り回して肩に担いだエルシュ。

 その腕には中性的な顔立ちの子供を抱き抱えている。

 その目線の先には血塗れで倒れている魔猪と比べて何倍〜十何倍も大きい赤黒い魔猪が一体。その顔には部下を殺された怒りからか、憎悪の表情でエルシュを睨みつけている。

 太陽が頭上に位置し、チリチリと焼くような感覚が肌に伝わる。その太陽の熱によって血が乾き、肉が腐蝕しているのか吐き気を催すような臭いが遠くにいるギルガメッシュの元まで香ってくる。

 おそらく腐肉の山の近くにいるエルシュはギルガメッシュよりも数倍の臭いが漂っているだろう。

 しかし、そんな匂いを感じていないようにエルシュと魔猪は互いに睨み合いを続け、ピクリとも動かない。

 

「……………………」

 

「……………………」

 

「………Grrrrrrrrrrrrrrr!!!」

 

 静寂の中睨み合いを続けていた両者だったが、業を煮やしたのか先に動いたのは魔猪だった。

 魔猪とエルシュまでの距離は数十メートル以上も離れていたというのに一瞬ともいえる速度で魔猪はエルシュに迫っていた。

 

「お…………!」

 

 “お兄ちゃん危ない!”

 

 そう叫び、ギルガメッシュはエルシュを助けようと王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)を向けようとするが、そんな暇も無くエルシュと魔猪は衝突した。

 

 そして何より、ギルガメッシュがそんなことする必要すらなかった。

 

 次の瞬間、ギルガメッシュが見たのは

 

 左右に身体が両断された魔猪

 

 身体や大剣に付いていた乾いた血の上にまた新たな赤黒い血を被りながら、大剣を振り上げているエルシュ

 

 魔猪は地面を滑るようにエルシュの後方へと飛んで行く。エルシュに両断された魔猪は、両断されてなお倒れながら暴れ回っていたがしばらくするとピクリとも動かなくなった。

 完全に死亡したのは誰が見ても明らかであった。

 エルシュはゆっくりと息を吐き、大剣を一振りしてついていた血を払い飛ばした。

 最後に冷徹にも見える瞳で魔猪を見つめ、険しい表情で再び自身の大剣へと視線を戻した。

 

 ギルガメッシュはそんなエルシュを見つめながら自身の中に一つの感情が芽生えている事に混乱していた。

 

 血塗れで大剣を振り回し、敵を両断するエルシュを。

 

 血が太陽で反射され、赤く光っているエルシュを。

 

 敵を殺し、死体へ冷徹な瞳を向けるエルシュを。

 

 こんなにも美しい(・・・)と感じてしまう自分に。

 

 しばらくエルシュを見つめていたギルガメッシュは一つの答えにたどり着いた。

 

 “あぁそうか……アレが、アレこそが

 

 誰もが信仰すべき王の姿か”

 

 自分の頬が赤く紅潮していると分かる。

 このまま見つめていたい。

 ギルガメッシュは自身の宝物庫の中には映像を記録する物も持っているが、ギルガメッシュはそれをしようとしない。

 

 “ダメなんだ

 

 誰かに見られる可能性は1%でもあってはあらない

 

 だってアレを見ていいのは僕だけだから

 

 お兄ちゃんのあの姿は僕だけのモノだから

 

 誰であろうと、例え神であろうと

 

 誰にも見せない

 

 なぜなら

 

 オ兄チャンハ僕ダケノモノダカラ”

 

 ふふっとギルガメッシュは笑い、自分の兄の方へと歩みを進める。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 【エルシュside】

 

 知ってる?人って血塗れになると身体中が痒くなってすっごく身体が重たく感じるんだよ。

 しかも周りは両断された魔猪達。

 その上丁度昼時だから死体は腐蝕してエゲツない匂いが漂ってくる。最初の方に嗅覚が機能停止になってなかったら、戦闘どころではなかった。

 しかし、やっぱり自分以外の命を狩るのはあんまりやりたく無いな。自分がすぐ死んじゃったから抵抗がある。

 でも、この時代は狩らなきゃ殺られる。

 そんな時代だから仕方がない。

 そんな事を考えていると視界の端に見た事がある少年が見えた。

 

「あれ?ギルくん?」

 

 なんでギルくんがこんな所にいるんだ?

 しかも何で頬を染めているの?

 明らかにこの殺戮現場でする様な反応ではないよね?

 

「えーっとギルくん?大丈夫?」

 

「(ブルッ)うん……大丈夫」

 

 えっ本当に大丈夫?

 今よく分からない身震いしてたよ?

 

「そんな事より、早く帰ろ?」

 

「あっちょっと待ってて」

 

 ギルくんには待ってもらって、リーダー魔猪の方へ歩みを進める。

 魔猪の場所へと着いたら宝物庫から鎖を取り出し、魔猪の死体を締め上げ肩に担ぐ。

 周りの魔猪は腐敗しているため持って行くわけにはいかないが、さっき殺したばかりのこいつならば食用(・・)に使える。

 やはり殺生してしまったのだから、何かに使わなければ勿体ないし申し訳ない。

 

「うんじゃ、帰ろうか」

 

「…………うん!」

 

 そういえば片手にエルキドゥ似の子、肩には死んだ魔猪、その上全身血塗れって側から見たらどう見えるのだろうか?

 そう思いながらも俺たちはニップルへと足を進めた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 時は進み現在は帰りの馬車の中。

 無事ニップルに戻った俺たちは村長へと魔猪を引き渡し、帰路の途中である。馬車の中は、右にギルくんが座っており気のせいでなければ距離が異様に近い。

 厳密に言えば俺の腕を抱きしめながら眠っている。

 控えめに言って幸せです。

 そして左を見てみると緑髪で中性な顔の子供がギルくんと同じように俺の腕を抱きしめているというか、締め上げてる。

 腕超痛い。

 …………うん、分かってる。

 何でこうなった?

 

 〜回想〜

 

『流石はエルシュ王子!

 これで私達も安心して過ごせます!』

 

『はい、それなら良かったです。

 あっあと、討伐した魔猪は皆さんで食べてください。

 (多分)毒はないので安心してください』

 

『おぉ、何から何までありがとうございます。

 ところでその少女は?』

 

『あぁ、この子ですか。

 いや、魔猪に襲われていた時に助けたんですよ』

 

『なるほど。

 何か接点でもございましたか?』

 

『前に一度俺と一緒に来ないか?と誘った事があったんですよ。

 まっ断られてしまったんですが。

 それに接点が無くとも助けましたよ』

 

『なるほど。

 …………エルシュ王子、良ければその子を連れて行ってあげてください』

 

『………………はい?』

 

『あぁ、その子を置いて逃げた大馬鹿者どもは私共でシバ………ゔぉっほん!話を付けておきますので安心してください!』

 

『いや、そうじゃなくて『さぁ王子、ギルガメッシュ王子が馬車の中で待っておりますぞ!』だから、勝手に『今回はありがとうございました!』おい、話聞けって『本当は王子達も誘って魔猪の肉を頂きたかったのですが、早くウルクに帰らなければならないのならば仕方ありません、本当にありがとうございました!』お前この子押し付けるつもりじゃ『さぁ皆の衆、馬鹿者共をシバイたら祭りじゃ!』おい、等々シバク言ってんぞジジイ、それに話聞けって『それではお世話になりました!さらばです!』テメェいい加減話聞けやクソジジイ!』

 

 〜回想終了〜

 

 といったような出来事があり、半端押し付けられるようにこの子を連れて来なければならないことになった。

 ていうか………この子っ………超力強い、俺の腕から離れない!痛い痛い痛い!

 あれから一度も目覚めてないのに何でこんなこと出来んの!?

 

「…………お兄ちゃん…………えへへ」

 

 あぁ、今はギルくんだけが癒しです。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「お兄ちゃん、アレ何!?」

 

「あぁ、アレは鍛冶屋だよ。

 兵士たちの武具を作っている場所」

 

「王子王子!アレは何ですか!?」

 

「アレは製糸場兼兼服屋だ。

 糸を作って、半分は服に、もう半分は絨毯とかの他の物に使っているんだ。せっかくだしお前らの服を見繕ってもらって、売ってるのを買うとするか?」

 

「いいんですか王子!」

 

「そんくらいだったら別にいいよ」

 

「ありがとうございます!」

 

 あれから2日、俺たちはウルク市内へとたどり着いた。相も変わらずここは異様なまでに賑やかで楽しい。

 俺の右隣には天使のような笑顔で鍛冶屋に興味を持つギルくん、左には緑髪の子供……名前をエルナル。

 この子、先日起きたと思ったらいきなり俺に忠誠を誓うと言ってきた。最初は断ったんじゃないの?とか、勝手に連れてきたのにいいの?とか聞いたんだけど

 

『次に誘って頂いたら貴方の手を取らせていただきますと言いました。今回は誘われておりませんが、貴方に忠誠を誓わせてください…………』

 

『いや、確かにそう言ったけど』

 

『それに、私にはあの町ではもう厄介者。

 であれば私を連れ出してくれた王子には感謝こそすれど憤るなど出来るわけがございません』

 

『いや……そう………なの?』

 

『そうなんです。

 …………ダメ……………ですか?』

 

『いや、大丈夫だ』

 

 即決でした。

 いや、だって仕方ないじゃん。

 涙目で上目遣いされてダメですか?だよ?

 断れません。

 …………なんか俺って子供に弱いような気がする。

 

「王子!この服ありがとうございます!

 一生の宝物にします!」

 

 結局エルナルに買ってあげた服はFGOのエルキドゥが着ている白いローブ?みたいなやつだ。やっぱり顔がエルキドゥソックリだから白いローブが凄く似合う。

 しかし、買ってあげた服は大人用。

 エルナルは子供だから結構ブカブカだ。

 後でギルくんのパーカーと同じように魔術で加工しなきゃ。

 …………あっそういえば

 

「なぁ、エルナル………言いづらいしエルルでいいや。

 エルルの性別ってどっちなんだ?」

 

「エルル……ですか?…………王子には渾名を頂けるなんて私、幸せです!

 それと私は………………」

 

「?」

 

 何故かエルナル、略して?エルルはギルくんの方に目をやり、ジーっと見つめている。何かを考えているように見えるが、どうしたのだろうか?

 自分の性別を答えるのなんて簡単だろう?

 

「わ、私の性別は…………性別は………」

 

「性別は?」

 

「せ、性別不明です!」

 

「性別不明!?」

 

 性別不明って何!?

 神代はそんな性別あるの!?

 いや、落ち着け俺。

 そんな性別聞いたことないだろ。

 

「いやいや、そんな性別聞いたことが「あ、あー!エルシュ王子!今日泊まる宿が見えてきましたよ!」まぁ、聞かれたくないなら別に良いけど」

 

 明らかに話を晒したエルルに若干の疑問が残るが、聞かれたくないことを無理矢理聞こうとは思わない。

 仕方ないから大人しく宿にチェックインして、部屋に入る。

 しばらくエルルやギルくんとゆっくり話してみると色々と分かったことがある。

 

 一つ、エルナルは昔クソ王から因縁付けられた。

 二つ、他にもこんな人がそれなりにいる。

 三つ、その中には息子である俺もついでに恨んでくるような人間がいるかもしれないこと。

 四つ、このままじゃエルナルを部下にする事は出来ないかもしれない。

 

 困った。

 1〜3までは最悪王様をなんとかすれば良いが、4は困った。

 エルナルは俺が引き取ると約束したからには、何が何でも俺が引き取る。エルナルはもう俺の部下だからな。

 

「王子、王子が何か不利益になるようなら私を捨ててください。貴方に命を救って頂いたのに、貴方の邪魔になるのは絶対に嫌です」

 

 …………いや、良い加減腹をくくろう。

 あのクソ王にエルナルの事をとやかく言われないようにしよう。

 

 〜次の日〜

 

 魔猪討伐を頼まれたから今日で期限ピッタシの10日目。

 俺たちは玉座の間の前に来ていた。

 いつも通り扉の前にいた兵士さんに王様との面談を頼んで、返事待ちだ。

 

「王様、エルナルさんの事許してくれるかな?」

 

「さぁ?まっ何とかするから大丈夫だよ」

 

「王子、ギルくん…………ありがとうございます」

 

 ギルくんはエルナルに懐き、エルナルはギルくんを気に入り、エルナルはギルくんを俺と同じ呼び方をして、ギルくんはエルナルさんと呼んでいる。

 もしギルガメッシュとエルキドゥが子供の頃から一緒だったら、こんな感じになっているのかな?

 2人を見ると肩の力が良い意味で抜けていく。

 覚悟は出来た。

 俺は初めてあのクソ親父に反抗する。

 

「エルシュ王子、ルガルバンダ王が王子との面会を了承されました、お気を付けて」

 

 報告してくれた兵士に軽く会釈をして扉の先に入っていく。

 中に入り進んで行くと、玉座にはルガルバンダ王がこちらを睨むように見つめていた。

 数秒間俺を見つめた後に、今度は俺の隣にいるエルナルへと視線を移動させた。

 エルナルは顔を青ざめ、顔をうつ向け王と目が合わないようにしている。

 また数秒間の時間が経ち、ようやくルガルバンダ王が口を開いた。

 

「今回の魔猪討伐、ご苦労であった。

 これで村は平和になるだろう。

 …………ところで隣の子供は一体誰だ?」

 

 早速聞かれた。

 エルナルの顔は青から最早白くなっている

 ルガルバンダ王の視線に入らないようにエルナルの前に立つ。

 

「王子…………」

 

 エルナルの弱々しい声が聞こえてくる。

 

「…………ほぉ」

 

 ルガルバンダ王は何故か感心したような目でこちらを見てくる。非常に腹立たしい目である。

 

「この人は私の側近です。

 何か問題でも?」

 

「…………………お前もそろそろ部下の1人も居て良いだろう。いや、逆にようやく1人目といった所か?」

 

 こいつ腹立つ。

 何故か小馬鹿にするような顔で言ってくるのが余計に腹立つ。でも、エルナルを部下にする事は了解された。

 それだけでも良しとしよう。

 

「まぁせめてその子供、失わないよう(・・・・・・)気をつける事だな」

 

 こいつ、まさかエルナルに何かしようとしてんのか?

 …………まぁ、別に良い。

 何してこようと守れば良いんだからな。

 

「では、これにて失礼します」

 

「あぁ、早く行け。

 私は仕事が忙しいんだ」

 

「…………っ失礼しました」

 

 こいつはいちいち仕事が忙しい言わなきゃ死ぬのか?

 というか言われなくても出て行くわ。

 ギルくんとエルナルの手を握り、早足で部屋を出て行く。

 部屋を出るとエルナルはゆっくりと息を吐き出し、自分を落ち着かせようとしていた。

 

「…………エルシュ王子、ありがとうございました」

 

「大丈夫、ルガルバンダ王自体が覚えてないようだったからな」

 

 あいつ、自分が何やったのかすら覚えてないのか。

 正直言ってぶん殴りたかった。

 この様子だと他の人間の事も覚えてないだろうな。

 しかし、もしも俺の事を襲ってくる奴がいたらどうしようか。

 相手が人間なだけに殺す訳にもいかないし、かと言って何もせずに殺られるのはもっと嫌だ。

 新たな課題も見つけてしまったな。

 そんな事を考えているとエルナルがこちらに向かって頭を下げて来た。

 

「改めまして、エルシュ王子、ギルくん。

 これからよろしくお願いします!」

 

 まっこれからの事はこれから考えれば良いか。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。