転生したらAUOの兄だった件について   作:けんさん&コハク

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 この頃子ギルを強化しまくってたらふと「子ギルにお兄ちゃん居たらどうなるんだろう?」と思って書きました。


ウルク編
ウルクの第一王子


 諸君は“転生”というものを知っているだろうか。

 簡単な話、死んだ後記憶がそのままで別の世界や別の人間として生まれ変わるというものだ。

 なぜ今そんな話をするのかと言うと、実際に今この俺がその転生を体験したからである。

 俺が覚えているのは、病気で20歳という若いうちに死んでしまったという事だ。

 まだ死にたくないとか思わないでもなかったけど、俺の家は悪いとこに借りた借金のせいで崩壊寸前、それなのに死にそうだった俺に父さんや母さんは頑張って看病のためにお金を使ってくれた。

 少し不謹慎だけど、俺が死ぬことによって俺にかけられていた保険金によって多少は楽になるだろう。

 だから俺は死んでもよかったと思ってる………でも、もう少し別の方法で親孝行したかったな………。

 まぁそれはいいとして、次に気になるのは一体どんな人物として生まれたのかという事だろう。

 多分だけど………【ギルガメッシュ】のお兄ちゃん。

 父は国の第1王朝第3代の国王らしくて………父の名前は聞いた事がないけど国名がすっごい聞き覚えがあるんだよね。

 父は【ルガルバンダ】母は【リマト・ニンスン】そして国名は【ウルク】だ。

 このウルクっていうのが、ギルガメッシュが治めていた国のはずだ。

 まぁ俺はギルガメッシュ叙事詩は見た事がないから確証はないけど、俺がハマってたFGOってゲームで見た覚えがあるんだよね。

 いやギルガメッシュのお兄ちゃんは別にいいとは思うけど、歴史が変わったりしないかな?

 だってギルガメッシュってお兄ちゃんいないよね?

 ちなみに今俺は7歳で、聞いた話は6年前に俺の弟が産まれたらしい。

 らしいというのは、実は俺はこの歳までウルクの外に居たのだ。

 理由は武者修行的なやつで、国の周りの村や町が今どんな状態かを1歳からずっと見てきたのだが………1歳の子供にやらせる事じゃないよなこれ?

 まぁ理由は知っている………俺は産まれるはずじゃなかったらしい。

 父は神のお告げが聞こえたらしく、産まれる子供はギルガメッシュだけと聞いたそうだ。

 しかも産まれるのは一年ちょっと後だと言ってたそうだ。

 それで大丈夫だと知った父はその夜にファイト一発!をした結果、神からのお告げには言ってなかった俺が産まれてしまったらしい。

 それで気味悪がった父は俺を遠ざけようと、将来治めるべき国の現状を知るという名目で旅に出したらしい。

 実際は10歳くらいまで帰ってこられないと思っていたらしいがそれは残念。

 前世の記憶もあるこの俺からすれば結構楽だったし、何よりそんな勝手にファイト一発をして産まれた子供を遠ざけようとするような父が驚愕してアホヅラ晒すと思うとなんか頑張れたのだ。

 まぁそんな理由で弟を見た事がないのだ。

 今日は父に会うのだが、父にあった後俺の弟に会ってみようと思う。

 その時にギルガメッシュだったとしたら、ある程度まで成長したのを見届けてこの国を去ろうと思う。

 だって考えてみなさいよ、さっきも言ったけど自分が勝手にファイト一発をしておいて産まれた子供を遠ざけようとするような父と一緒にいたいと思う?

 俺は嫌だ。

 まぁ俺が居なくなってもギルガメッシュが居たら歴史通りに行くだけだろう。

 あと、歴史の修正力的なので死んだら嫌だし。

 さて、そんなことを考えていると父が居るはずの部屋の前に来た。

 ちなみに緊張はするけどワクワクはない。

 部屋の前に居た見張員の人に中に入る許可を取りに行ってもらっているので少し待ちましょう。

 

 ………

 

 ………………

 

 ……………………………

 

 ……………………………………まだ?

 

 ガチャ

 

「お待たせいたしました【エルシュ】様。

 今からお会いできるそうです」

 

「ありがとうございます。

 あと、全然待っていないので気にしないでください。

 お仕事頑張ってください」

 

「はい、ありがとうございます。

 エルシュ様もお気をつけて」

 

「はい」

 

 全然待っていないという訳ではないが、心が日本人な俺はつい反射的にこう返してしまう。

 いくら転生後でも自分の根本は変わらないようだ。

 あとエルシュというのは俺の名前で、この名前は実を言うと結構気に入っている。

 そんなどうでもいい話はいいか。

 さっさと会って軽く話してさよなら( ゚д゚)、ペッってして弟とあってゆっくりと話そう。

 そう思いながら部屋に入ると、玉座の上にイケメンのおじさんが居る。

 あれが俺の父であるルガルバンダだ。

 

「思ったよりも早く戻ったな、エルシュよ」

 

「いえ、父上様。

 私はウルクの王たる貴方の息子の名に恥じぬよう努力した次第です」

 

 嘘ですそんなこと一ミリも思っていません。

 

「そうか。

 ところでエルシュよ、お前は弟に会ったか?」

 

「いえ、しかし父上様と顔を合わせた後に会いに行こうかと思っておりました」

 

「そうか、お前に会えると言ったら楽しみだと言っていた。

 早く会いに行け………私は仕事があるからこれ以上話は出来ぬのだ」

 

「はい、お忙しいところ失礼いたしました」

 

 俺は回れ右をして扉へと移動する。

 しかし仕事があるからと言っても久しぶりに会った息子にあれは酷くない?

 前世の父親がいい人だったせいでこの父がすっごく嫌に感じる。

 まあいいやさっさと弟に会いに行くとするか。

 そう思いながら部屋を出て行く。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 見張員に弟の場所を聞いて只今移動中です。

 というか俺の父はこの城で俺という息子がいることすら隠しているらしい。

 いい加減にしねえとぶっ飛ばすぞてめえ。

 会う人々に挨拶するたび【この子誰だ?親と一緒にこの城に来たのか?】って顔されて城の門まで連れていかれそうになる。

 正直優しさでやってくれるのは有り難いけど、面倒臭い。

 その度に適当な嘘をついて逃げている。

 なので出来るだけ人に会わないようにコソコソと歩いています。

 俺この国の第一王子なのになんで城の中をコソコソしてなきゃいけないんだよ。

 そんなこんな考えていたら弟がいるという部屋の扉の前に来た。

 コンコンとノックをして少々待つ。

 数秒後扉が開き中から金髪赤眼の美少年が出て来た。

 

「はい………誰ですか?」

 

「…………………」

 

 うん、完全に子供ギルガメッシュ本人だ。

 略して子ギル。

 

「あの?」

 

 これで確信した。

 ここはギルガメッシュ叙事詩の中の物語だ。

 そして俺はギルガメッシュの兄という居なかったはずな人物、いわばこの世界の異物と捉えてもいいのかな?

 

「あの!お兄さん!」

 

「あ?なんだ」

 

 声張り上げなくても聞こえるよ?

 目の前にいるんだし。

 

「貴方はもしかして………僕の兄ですか?

 もしそうなら名前を教えてください」

 

 そういえば父から俺、つまり自分の兄がいると教えられていんだったな。

 あいつ名前くらい教えとけよ。

 

「あぁ、そうだ。

 俺の名前はエルシュだ。

 良ければお前の名前を教えてくれないか?」

 

「やっぱり僕のお兄さんだったんだ!

 僕の名前はギルガメッシュ、気軽にギルって呼んで!」

 

 そう言いながら笑うその笑顔には太陽のような光が見える。

 そして俺はギルではなくギルくんと呼ぶ事にしよう。

 理由?可愛いから。

 

「そういえばよく俺が兄だって分かったな。

 特徴でも聞いていたのか?」

 

 実際、俺はギルくんのことを会うまで知らなかった。

 それなのにギルくんは一発で俺のことを言い当てた。

 特徴を聞いてたとしか思えない。

 もしそうだとしたら俺にもギルくんの特徴教えろよあの野郎()

 

「ううん、僕と容姿が似てたからすぐに分かったんだよ。

 僕以外に金髪に赤眼の人って居ないから。

 そんなことより部屋に入って!いっぱいお話ししたいことがあるんだ!」

 

 確かに俺の容姿は金髪に赤眼、そしてギルくんほど顔は整っていないがギルくんに似ているのだ。

 あれ?こんなヒントあるのになんで俺気づかなかったんだ?

 というかギルくん、腕をそんなに引っ張るなちゃんと入るから。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 さて、ギルくんの部屋に入ったんだけど………いくらなんでも何もなさすぎない?

 ベッドや机といった物はあるが他には何にもない。

 子供らしいおもちゃやボールといった遊びになるものが一切ない。

 

「おいギルくん、お前はオモチャとか遊ぶもんは持ってないのか?

 それにこの部屋寂しくないか?」

 

「ギルくん?僕は基本的なものは宝物庫に仕舞っているから部屋が寂しいのはそのせいだよ。

 ほら、こんな感じに」

 

 そう言うと空に手をかざす。

 すると金色の波紋が出てきてその中にギルくんは手を入れる。

 

 王の財宝(ゲートオブバビロン)

 

 Fateを知っているものならばお馴染みであるギルガメッシュの宝具(・・)だ。

 宝具とはサーヴァントと呼ばれる偉業を成し遂げた英雄が死後、人々に祀り上げられ英霊化したものを膨大な魔力を使用して一時的に現世に召喚した者達のことで、その者達が持つ人間の幻想を骨子に創り上げられた武装………まぁ簡単な話は必殺技のようなものだ。

 ギルガメッシュの宝具は自身の膨大な宝物を庫から出し入れする事が出来るもので、大人になったギルガメッシュはこの性能を活かし武器を遠方から射出する事で敵を串刺しにするという攻撃方法をとる。

 これはかつて………いや、これから先の時代に世界の全てを手中に収めたとされる英雄王が有する宝物庫に、ありとあらゆる伝説の原典となった宝具が財宝として収められている。

 有名どころだとエクスカリバーやゲイ・ボルクなどの原型があるといった感じだ。

 だがそれは死した後出来る様になるものなのであって普通は生前に出来るものではない。

 そして偉業を成し遂げていない人物が使える訳がもっと無い。

 そういうのも、実は俺も何故か王の財宝(ゲートオブバビロン)が使える。

 しかも宝物庫の中は超がつく一流の武具やら霊薬やら超触り心地の良い絹などなど色々なものがある。

 だが、この宝具はあくまで自身が手にした(・・・・・・・)ものを庫から出すのであって、持っていないものを庫から出すことはできない。

 そりゃそうだろ、これはあくまで物入れ()なのだからな。

 庫の中に無いものを出すことは出来ない。

 なんで出来るかやなんで中身(財宝)があるのかを知るのが今後の課題になりそうだ。

 ちなみにギルくんがなんでこれを使えるのかは考えない。

 ギルくんもといギルガメッシュの優秀さを考えるなんて無駄無駄。

 

 さっきからガサゴソガサゴソと何かを探すギルくん。

 何かを掴んだギルくんはゆっくりと庫から手を出す。

 その手には銀で装飾されて翡翠の宝石が埋め込まれたネックレスが握られていた。

 どうやらギルくんと俺の庫の中身が繋がっているというわけでは無い様だ。

 その証拠に俺の庫にはあのネックレスは入っていない。

 う〜ん、俺の庫に物がある理由の一番な可能性が蔵と蔵の中身が繋がっているっていうのだったんだけどな。

 

「こんな感じで、僕は全部を宝物庫にしまい込んでいるんだよ。

 あとお近づきの印にこれどうぞ♪」

 

 そう言いながらネックレスを俺に差し出す。

 しかも可愛い笑顔付き。

 ほっこりなるな。

 

「おう、ありがとうな。

 それじゃあ俺からも」

 

「!」

 

 ネックレスを受け取り首につける。

 そして俺も宝物庫を開けて中に手を入れる。

 それを見たギルくんは一瞬信じられない様な顔をしたと思ったら一転して尊敬の目をこちらに向けてきた。

 

「すごい!なんで僕と同じ事が出来るの!?

 これ僕だけしか出来なかったのに!」

 

 はしゃいでる。

 あのAUOとは思えないほどはしゃいでる。

 これ(子ギル)がなぜああなる(AUO)のだろうか………。

 というかあれ(・・)何処にしまったかな?

 なんでこの宝物庫の中身はあの猫型ロボットの四次元ポケットみたいなことになってるんだ?

 手を入れたら出てくるシステムなら良かったのに。

 お、あったあった。

 

「ほらよ、これやるよ」

 

 出したのはパーカーだ。

 誤字とか同じ名前とかではなく皆さんが知っているパーカーだ。

 なんでこれが入ってるのかとかは気にしたらいけない事だと思っている。

 だがこれはただのパーカーでは無い。

 魔術を使って寒さ暑さを中和してちょうど良い体温にしてくれて、その上決して破れずに汚れもしない。

 完璧なパーカーだ。

 それに確かギルくんの服装は白いパーカーを着ていたはず………あげても大丈夫だろう。

 

「ありがとう!大切に使うよ!」

 

 ギュッとパーカーを抱きしめるギルくん。

 うむ、良い笑顔だ。

 

「ねえ、話をしようよ!

 お兄ちゃんとゆっくりと話をしたいと思っていたんだ!

 お兄ちゃんの話を聞かせてよ!」

 

 いつの間にか俺のことをお兄ちゃんと呼ぶ様になっている。

 まぁ可愛いから良いや。

 

「何から話す?」

 

「なんでも良いよ、お兄ちゃんと話せたらなんでも」

 

 ベットに2人並んで座り込み顔だけを向かい合う。

 こうしていると本当の兄弟なのだと知る。

 頭を撫でると気持ちよさそうにしてくれる。

 きっと俺は居ない方が歴史的にも世界的にも良いことなのかもしれない。

 だけど

 

「さっ話そっか!」

 

「あぁ、そうだな」

 

 今くらいは歴史とか世界とか関係なくただの二人の兄弟として話したい。

 少しくらいなら許してくれるだろう。

 

「それじゃあ5歳の頃の話をしようか。

 あれは俺がクタという町に行った時にーーーー

 

 願わくばこの瞬間が一瞬でも長く続きますように。

 

 

 


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