ベジータが、魔人ブウに首を絞められ、そのまま遊ばれている。
それを、満身創痍で動けない体で、助けることも出来ず見守る。
暫く遊ばれ、地面に叩きつけられ離され、ベジータを助けようとした悟空にベジータが早く気を溜めろと怒鳴る。
すると、地面から出てきた魔人ブウの手が強くベジータの首を鷲づかんで高くあげる。
逃げる力も残っていないベジータが、苦しそうな顔をしている。
くそ…動け、動けよ。何でだよ、気付かなかったら元気に動いてただろうが!
悔しさで手も握り締められない身体を恨めしく思った。
代わりに奥歯を噛み締めて、今から行われてしまうであろう事柄を眺める。
……魔人ブウが、エネルギーをあいた左手に溜める。
耐えきれなくなったベジータは超サイヤ人から戻ってしまった。
本当にまずい。本当にだ。
波をうみ、じわじわとやってくる危機感が、自分を焦らせるだけ焦らせる。
まずい、
悟空も、動き出そうとした、
…その時。
「ブウ!!」
そちらへ、目だけを向けると…そこには、ミスターサタンの姿があった。
何故?確か界王神様達と非戦闘員は安全な、星…へ………
……違う、移動していない。
ミスターサタンはあの場におらず、移動していないのだ。
…しまった、まずいぞ。
ミスターサタンは、魔人ブウを挑発しながら、気を関係なくみるならなんともかっこよさげに動く。
…一般の、格闘技世界チャンピオンだというのも頷けた。
…だが、一般なら、だ。
魔人ブウはミスターサタンに向かっていき、ベジータは解放された。
…は、良いのだが…
冷や冷やしながら、その茶番のようななんとなく気の抜けた空間を眺める。
……あのアフロのおじさんは、まったく何を…いい歳をしている筈なのに何をしているんだ……
酷く、恥ずかしくなった。
ミスターサタンを攻撃しようとした魔人ブウから、元の魔人ブウが吐き出された。
なんとか動けるようになったベジータにもつれ合いながらも起こされ、なんとか動けるようになってきた身体で生まれたての子羊の様に震えながら、元の魔人ブウと魔人ブウが戦っているのを見守る。
魔人ブウと戦ってくれる元のま………ブウが、なんとなく可愛く見えてきたのできっと自分は完全に重傷で重症だ。
「な、なんだと!?」
「?」
何事かと後ろを振り向くと、そこには通常の状態に戻ってしまった悟空がいた。
「な、なん…で?!」
「…そ、そんな…!?」
悟空自身も信じられないのか自分の手を見て目を見開いていた。
悟空はすぐに降りてきて、荒く息をはいていた。
ただ、自分は…何も考えられないほどに、絶望した。
ベジータは…じぶんでも言っていたが、魔人ブウにはもともと敵わない。悟空は…いまさっき、頼みの綱の力が消えた。自分は…身体が上手く動かない。…気はなんとか行けそうだが…身体がまだ回復しない。…無理矢理やれば勿論動かせるが。だが、そんな事で魔人ブウを倒せるわけがない。
「どうやら…最悪なゲームになっちまったようだな」
隣で、今にも崩れそうな自分を支えるベジータがそう言った。
ナメック星のポルンガで、願いを叶えた。
ベジータの輪も取れ…地球のみんな、勿論悟飯、悟天、トランクス、ピッコロも生き返ったとしり、良かったと息をついたのち、
「元気玉の用意だ、早くしろ!」
というベジータの言葉。
「げんきだま………元気玉ぁ!?」
「?そりゃなんだべ…?」
「あ、ああ……えっと…こう、手を上げて…ほかのみんな…植物でもなんでも、生き物から半分元気を分けてもらって出来る技だ…」
ベジータに言われた言葉にぽかんとしながらも説明されて、その技のことを知った。
「分けてもらう技…??なんか…すげぇべな…それ…」
聞くとなんだか簡単だが、どうなっているのかを考えると凄く難しい事が分かって思い切り感心した。
…やっぱり悟空は凄い人なんだ。
元気玉を、作り始める。
大きなものが、出来始める。
兄達や、クリリン達の気を感じた。
それであの大きさ。凄い。
…だが、それから他の誰かの気を感じない。
何故?
だが、すぐに分かった。
それ以外が手を、上げていないのだ。
関係ない、知るかよ、誰が上げるかよ。
そんな声に、必死にベジータが呼び掛ける。
…だが、それでも他の気を感じない。
「たまには…たまには貴様らも手を貸せ!!!!」
…無反応。
「なして…なして力をかしてくんねぇべ…!」
自分に刃が向けられなければ、無関係だと思って誰も見向きもしない。
たまらなく、悔しくなった。
同じ星に生きているのに、こんなに。
「なんちゅう無責任な…!」
ミスターサタンがブウを助けるために石を魔人ブウに当て、こちらへ戻ってきたことで悟空と、元気玉の存在に気付かれた。
ベジータが時間を稼ごうと悟空の前へ立ち塞がったので、その前に立ちはだかる。
そしてすぐに目の前に魔人ブウが来て止まった。
「!?悟白貴様何を、」
「お父と一緒に呼び掛けててけれ…!」
それだけ言って、今の自分の体力でなれるギリギリにある超サイヤ人2になり、魔人ブウへラッシュを仕掛けていく。
畜生、身体が重い…!
後ろのベジータの気がゆっくりと降りていったのがわかった。
…よし、呼び掛けてくれ…!!!
少しだけ他の気を感じた。
だが、少しだ。
後ろで説得する声。
休みを貰えずずっと走らされているような酷い疲れに、涙が出てくる。
「ぅ、うゔぅぅぅああああああ!!!!!!!」
ちょっとでも休んだら今の極限状態の自分は負ける。
休めない、休みたい、休めない、休むな。
魔人ブウは疲れも知らないような笑いをずっと浮かべている。
気弾を撃って遠くへ一度引きたいところだが、気弾の為に動きを止めた瞬間自分はやはり、負ける。
だからラッシュで時間を稼ぐ。
…顔が熱い。身体が重たい、足が痺れて感覚がない。
拳の皮膚は裂けて血が出ている。
魔人ブウのゼロ距離の気弾を拳で潰すのだからそうもなるだろう。
…ただ自分に今出来るのは殴ること、蹴ること。
……もっと、上を目指すこと。
もっとだ、もっと上に行くぞ、さあ自分の限界の頂点をどんどん上げろ。
さあ、もっと楽しませろ!!!!
「あああぁぁぁぁあああああああっはあああぁぁぁああ!!!!!」
_______
サタンの呼びかけで、自分の上にある元気玉がとんでもないでかさになる。
放てる。勝てるぞ。
「よおし!行くぞ!!悟白ー!!!!」
目の前で全力のぶつかり合いをしていた悟白へ呼びかけるが、なにやら聞こえていないのかずっとぶつかり合っている。
…どうかしたのか?
「ご、悟白!?どうしたー!!もう撃つぞー!!」
殴る度に悟白から血が舞っているのが分かっていたから、早く休ませないとやばい、と焦る。
「ちっ…!悟白のやつどうやら正気ではないぞ!」
「なに?!」
ベジータがそう言ったので、思わず悟白を凝視した。
…目が血走っていて、涙も出ていて…笑っている?
「な、あいつ笑ってんぞ!どうしちまったんだ!?」
「無理矢理動いて不完全な状態で、休まず時間を稼いでいたからな…頭がイカれたんだ!」
休み無しで動いていて…気が狂った?
「お、おい!悟白を逃がさねぇと撃てねぇ!」
「そんなこと分かっている!だがあんなのにどうやって入れというんだ!」
とびきりヤバイ気弾でもなりふり構わず拳で叩き潰している悟白は、頭のネジが何本か抜けているように思える。
「あがああああああぁぁぁあああああ!!」
「イイャアアアアア!!!」
どんどんスピードがあがる殴り合いに、焦りがつのる。
「くそ、どうする!?」
「……っ、仕方ねぇ…!おい!ベジータ!なんでもいいからとにかく悟白を剥がしてくれ!!」
「……チィ!知らんぞどうなっても!!」
ベジータが、ビッグバンアタックの構えをした。
「ビッグバン…!」
「でやぁ!」
「!?」
「いぇ…?!」
太っちょのブウが、魔人ブウを叩き落とした。
そしてその上にのり動きを止めた。
相手を失った悟白は、すぐに地に落ちていった。
それを助けようとベジータが飛んでいったのと太っちょの魔人ブウがサタンに助けるように言って向うのとは同じタイミングだった。
「うぉわわわわ!?」
「ちっ…!」
ベジータがサタンの襟元を握り、悟白を抱える事になるのは分かりきったことだった。
「やれカカロット!!!」
「おおし…!サンキュー!」
後ろの太っちょの魔人ブウは投げ飛ばされていた。
…撃てる!
「くたばっちまえ______!!!!!!」
_____
魔人ブウが…………消えた。
しかも……自分がなにやら、魔人ブウとのラッシュ…その途中から気を失って、そこからの展開を見ない間に。
気がついたのは、ベジータと悟空が2人でグーサインを出し合っている時で…
「なに…してるべ…???」
と思わず言ってしまった。
事情を話され、いい所を見られなかった…という気持ちになった。
「おら、いいとこ見逃したべよ…」
「ははは!いいじゃねぇか、ブウは消え去ったんだ!」
「ええ…でもおら、ぶつかり合ってる途中からなんか記憶ねぇべよ、結構前からおら…うーん…」
「い?あんなのやっててか?」
「あんなの??」
「…ま、いっか!」
「な、何したべか!?教えてけろ!」
「いいじゃんいいじゃん!」
「ちょ、お父さ!!!」
逃げる悟空を追いかけ、ボロボロの界王神界を走った。
「…ったく、なんて元気な奴らだ」
その後ろで、ベジータが呆れながら笑っていた事は知らずに。
極限状態になった悟白がちょっとだけ可笑しくなってましたね。
完全にいっちゃってます。
そんなことより、魔人ブウが消滅しました。
平和です。ピース。
超強大な敵がいなくなっちゃいました。
…あんなにいきてたらヤバイヤバイやらないとって思ってたのに、いなくなるとなんか足りないって感じになります。
うーん、ドラゴンボールパワー?
閲覧ありがとうございました!