Fate/"re"terminate   作:とり


原作:Fate/zero
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あらゆるものが規則外な新たな聖杯戦争。
衛宮切嗣の前に現れたのは────

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設定度外視。「○○は~~じゃね?」とかつっこんじゃ駄目だよ! そんなの言われるまでもなくわかってるからね!考えてはいけないものなんだ!
あと「連載書かずに何書いてんの?」とか言わないで!


Fate/"re"terminate

 

 

『 素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。

 祖には我が大師シュバインオーグ 』

 

『 降り立つ風には壁を。

 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ』

 

閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)

 

『 繰り返すつどに五度。

  ただ、満たされる刻を破却する 』

 

 

 

 

 

────────── それは悲劇の序幕。

 

とうに呪われた聖杯を、そうとは知らぬ者たちが身命を賭して求め奪い合う殺し合い。

 

どれほどの血を流そうと、どれだけの罪を背負おうと、

その果てには絶望しか在り得ない、徒労の極みに終わる物語。

 

 

 

 

 

『 ――――――告げる 』

 

『 汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

 聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ』

 

 

 

 

 

聖杯に孕まれた呪詛の赤子が誕生の刻を待ち、

定められた終幕が出演者(にんぎょう)達の絶望への刻限を愉しげに数える。

 

 

 

 

 

『 誓いを此処に。

 我は常世総ての善と成る者。

 我は常世総ての悪を敷く者 』

 

 

 

 

 

これはどこまでも救われない物語。

終わりの定まりきった道化達の愚かな舞踏。

真なる物語へ至るための、只の踏み台でしかない犠牲者達の死地────

 

 

 

 

 

『 汝三大の言霊を纏う七天、

 抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!』

 

 

 

 

 

 

 

────────── その、筈だった。

 

 

 

 

 

 

......................................................

 

 

 

「……だから訊いておろうが。貴様、余のマスターで相違ないのだな?」

 

「そ――そう! ぼぼぼボクが、いやワタシが! オマエのマスターの、ウ、ウェイバー・ベルベットです! いや、なのだッ! マスターなんだってばッ!!」

 

 

とある郊外の森にて結ばれた騎乗兵の契約。

 

それだけが、『本来』通りの……唯一の、契約。

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

『ライダー』陣営

 

主【 ウェイバー・ベルベット 】

従【 『征服王』イスカンダル 】

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

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その、他の契りは───────……

 

 

 

......................................................

 

 

 

 

 

「………………女性……?」

 

 

英雄王ギルガメッシュを召喚すべく、万全の態勢で臨んだ召喚の儀式。

まさに磐石無欠の状況で行えたという自負は、遠坂時臣に召喚の成功を確信させた。

 

だが。

 

(……失敗、したのか?)

 

今時臣の前に現れ、光の残滓と靄の中で目を閉じているのは明らかな女性だ。

それも……赤い()()の、だ。

どう見ても、古代ウルクに縁のある人物には見えない。

 

(……失敗だ。だが、なってしまったものは仕方がない。この英霊で)

 

勝つしかない、と時臣が余裕を持ちなおしたとき。

 

す、と女性が目を開いた。

 

 

(…………?)

 

妙な既視感。

何というか、その瞳を知っているような。

あるいは、その顔を、姿全体を────?

 

(いや、今はまず口上と挨拶、そして情報だ)

 

遠坂当主として、サーヴァントの主として、無様なところを見せるわけにはいかない。

 

「お初にお目に掛かる……」

 

相手は明らかに王ではない。当初予定していた臣従の姿勢はおかしいだろう。

いつの時代かは知れぬが日本人のようでもあり、一般的な礼節が相応しいだろう、と時臣が口を開くが。

 

 

「……お父、様…………?」

 

 

女性が僅かに目を見開いて、驚いたように口にした言葉で、口上は止まらざるを得なかった。

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

『キャスター』陣営

 

主【 遠坂時臣 】

従【 『第二魔法の担い手』遠坂凛 (UBW/凛ルート) 】

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

......................................................

 

 

 

 

(……此奴。バーサーカーではない……?)

 

間桐の地下、蟲蔵にて、魔法陣の上に立つ青年を見て、間桐臓硯はいぶかしむ。

その青年の気配も表情もひどく理知的で、どう見ても狂戦士のクラスには見えない。

 

(雁夜め、クラス指定すら失敗しよるか)

 

召喚を実行し、今は息も絶え絶えに膝を付き召喚したサーヴァントを見上げる出来損ないの子孫に、呆れを通り越して感嘆すら覚える。

システム上失敗などするはずがないタイミングで失敗するとは、最早見事なまでの運と力の無さ。

単に狂戦士のクラスが他のマスターに先に取られただけとも見えるが、人気の無い狂戦士のクラスでさえ競り負けたということ。運の無さは否定しようがないだろう。

 

(む、いや、あるいは)

 

狂戦士を指定するよう告げたのは臓硯だ。雁夜自身はそれを望んではいなかった。

むしろ雁夜を破滅させるための指定だったために、雁夜にはこれは幸運と言えるのかもしれない。

 

(鬱陶しい悪運か。全くもって不快な「ギィッ!!!?」

 

唐突な激痛をもって、間桐臓硯の魂は損壊した。

 

 

 

 

「なっ……!?」

 

いやに清廉な気配を放つ長剣に貫かれ、悲鳴を上げて崩れていく化物を目にして、間桐雁夜は目を見開く。

 

「な、な……」

 

間桐臓硯だったモノはぐじゅぐじゅと蟲の山と化していき、その蟲の群も急速な勢いで腐ってゆく。

雁夜にとって恐怖と憎悪の具現といっていい存在が唐突に『死んで』ゆく光景に、雁夜の理解は追いつかない。

 

ただ蟲共が腐り朽ちていく様を見続けることしかできない雁夜の耳に、小さな呟きが届く。

 

 

「……こんな脆弱な下衆が、桜を壊したのか…………」

 

 

静かに、それでも確かに憎悪と憤激の込められたその呟きの中には、雁夜が絶対に聞き逃せない名前があった。

 

「桜……?」

 

それは雁夜が救おうとしている、愛した女性(ひと)の娘。

落伍者とされる雁夜が、嫌悪する生家に戻り血生臭い殺し合いに関わる理由となった名前。

そして今の呟きからして、この青年の口にした『桜』は、その間桐桜なのだろう。

 

「あんた、一体……」

 

雁夜を、そして桜を縛り苦しめていた元凶を、ただの一擲で滅ぼした青年。

召喚の負担で立ち上がることも儘ならない雁夜だが、必死に顔を上げて、青年に問う。

 

それに、青年は。

 

「……間桐の第四次……ああ、カリヤ、か? 桜が言っていた『おじさん』か。なるほど、俺を召喚できるわけだ」

 

優しく、それでいて男らしい笑みを浮かべ、雁夜に手を差し出す。

 

「安心しろ、間桐カリヤ。桜は救う。これ以上苦しませやしない。絶対に、だ。……ああ、なんたって俺は……」

 

 

気付いてみれば現代風の衣装に、赤い聖骸布をアクセントの様に纏う赤毛の青年は笑う。

 

 

「 ────桜の味方、だからさ 」

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

『アーチャー』陣営

 

主【 間桐雁夜 】

従【 『第三魔法の成功例』衛宮士郎 (HF/桜ルート) 】

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

......................................................

 

 

 

 

「…………勘弁してほしいものだ……」

 

魔術師らしき装いの長髪のサーヴァントが、頭に手を当て嘆いている。

主たる召喚者に一切の配慮も敬意も見せないその無礼に、ケイネス・エルメロイ・アーチボルトは眉を顰める。

 

最初に目を合わせた時点でこのサーヴァントは無礼だった。

召喚者ケイネスを前にしてまずは膝を付くべきであろうに、このサーヴァントはあろうことか盛大に顔を顰めたのだ。ケイネスの顔を見て。

その後名乗りも挨拶もせずに今の状態だ。従者にして使い魔たるサーヴァント如きには許されないふざけた態度だ。

 

「……名乗ることもしないのかね? 貴様はこの私の従者となるのだが?」

 

相手から何のアクションも無い為にケイネスが話を振るしかない。

現段階で既に契約は成されているが、形式的に主従の誓いを行うまでが召喚儀式だ。

せめてサーヴァントの方から名乗り忠誠を誓うのが様式として必要だろう。

主たるケイネスから名乗るつもりは無い。

 

「…………イレギュラークラス、『トレーナー』だ」

 

ケイネスに催促され、あからさまに嫌そうな表情で名乗るサーヴァント。

その表情も勿論だが真名ではなくクラスを名乗ったこと、そして『育成者(トレーナー)』という奇怪なクラス名に、ケイネスは眉間の皺をさらに深める。

 

「『トレーナー』だと? いや、それよりもだ。真名は何だ」

 

英霊、仮にも人の上位存在への態度としては高圧的過ぎる態度だが、ケイネスからすればサーヴァントとはただの使い魔。

元にしている存在こそ偉大とはいえ実際に召喚されるのはただの写し身、模造品であり、本質的には高級な肖像画のようなもの。

魔術師として当然の思考を持つケイネスとしては順当な姿勢であり、そしてケイネスは知らないことだが、サーヴァントの方もそのことを理解している為に反発心などは起こしていない。

サーヴァントの顔に浮かぶのは、ただ『この状況は遠慮願いたい』、という嫌そうな表情だ。

 

「……教えることにメリットがない。私はこの時代より未来の英霊だ」

 

「何……?」

 

回答を拒否されたことにケイネスの機嫌は更なる下降をみせるが、サーヴァントの告げた事項がケイネスの興味を引く。

 

 

未来の英霊。

 

システム的にあり得ない事ではない。英霊の座に時間軸など存在しないはずであり、サーヴァント召喚に過去も未来も関係はない。

成る程そうであれば確かにケイネスがこのサーヴァントの真名を知ることにメリットは無いだろう。

この時代では未だ存在しない英雄の名前など何の意味もないし、ケイネスも興味が無い。

 

……このサーヴァントの言っていることが事実であれば、だが。

 

「……現代より後に英雄が生まれるということも信じ難いが……貴様。『トレーナー』よ」

 

「……なんだ、『マスター』」

 

一応は私をマスターと認めはするのだな、と呆れを抱きながら、大事なことを確認する。

 

「なぜ私の顔をみて顔を顰めた。貴様、私に関わる者か?」

 

 

最初にケイネスを見て、トレーナーは確実にケイネスの顔に反応した。

それはつまり……この英雄、生前にケイネスと関わったということではないのか。

 

至極当然の疑問を刺し向けられトレーナーは自らの失態を恥じるかのように頭を抱える。

私というやつは……と小さく呟いてから、諦めたように息をついて疑問の答えを返す。

 

「正解だ、ケイネス・エルメロイ・アーチボルト。私は貴方に関わる者だよ」

 

『貴方』という呼称に含まれた微量の敬意を感じ取り、ケイネスは意外さに眉を上げる。

とりあえずは置いておくが。

 

「ほう。貴様が英雄と成る時代は随分と近代なのだな。……今現在の私の知己か?」

 

実は先程から、トレーナーには微妙な既視感があるような気がしている。ないような気もしているくらいの微妙さだが。

とりあえずは親しい間柄ではなさそうだと見当を付ける。

 

「嘘はつかない方針でいくが……おそらくは知己だろうな」

 

「誰だ?」

 

「言っただろう、教えるメリットが無い」

 

「私の興味というメリットが生まれた。話せ」

 

「話せば絶大なデメリットが生まれる。断言するが、聞かない方が貴方の為になる」

 

一切譲る気を見せないサーヴァント。

ケイネスは疑心を抱き令呪の使用も考えるが、それほどの価値はない情報だとも判断する。

サーヴァントの言を信じるわけではないが、万が一聞くことでデメリットが生まれるとしてそれでもなお強引に聞き出すだけのメリットも考え付かない。

 

「……ふん、まあ良い。所詮は写し身、どうでも良い。せいぜい私に貢献できるという栄誉を誇るために働きたまえ」

 

「……了承した、マスター」

 

はぁ、と。『聖杯戦争を終わらせた者』は小さくため息をついた。

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

『トレーナー』陣営

 

主【 ケイネス・エルメロイ・アーチボルト 】

従【 『王冠へ導く者』ロード・エルメロイⅡ世 】

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

......................................................

 

 

 

 

召喚儀式を成功させた言峰綺礼の胸を埋めつくしたのは、驚愕と動揺だった。

 

綺礼は本来そうそう心を揺るがすことはない。

その胸には常に空虚が巣食っており、どんな異常事態にも冷めた感応しか抱かない、それが言峰綺礼という青年だ。

だがその綺礼は今、これまで経験したことの無い動揺に陥っていた。

 

「ほう……泥から引きずり出されてみれば、これはなかなか。悪くないな」

 

綺礼に召喚されたサーヴァントは、主たる綺礼を見て薄く笑う。

そこには邪悪さも獰猛さもなく、余裕と威厳に満ちた聖職者のような笑み。

 

いや……綺礼は知っている。このサーヴァントは、この男は、正しく聖職者だと。

なぜならば。なぜならば、この男は。

 

「十年前の己に会うというのも面白い体験だ。自らの未熟と無知を前に気恥ずかしさもあるが」

 

己よりわずかに老いた……綺礼自身だからだ。

 

 

だが、そんなことはどうでもいい。

自身が英霊に成っているだの、もうひとりの自分を前にしていることだの、どうでもいい。

綺礼の心を乱すのは、綺礼を大きく揺るがすのは、そんなものではない。

 

「…………な、ぜ。なぜ、だ。……ある、のか?」

 

綺礼の目に映るのは。綺礼が目を離せないのは。

自身の可能性たる男の瞳に宿る、

 

「答えが、あるのか? お前は辿りつけたのか、この空虚を満たす答えにっっ!!」

 

綺礼がずっと持ち得なかった、そしてこれからもそうだろうと、どこかで諦めていた……愉悦(かんじょう)の色。

言峰綺礼という空虚がひたすらに渇望してきた、人間の(ねつ)

それを、目の前の『言峰綺礼』は持っている──────!

 

 

「……くくっ。ああ、そうだ。言峰綺礼(わたし)は辿り着いた。そして言峰綺礼(おまえ)も辿り着ける」

 

若き、愚かなかつての己を前に、歓迎するように腕を広げ、亡霊たる言峰綺礼は宣託のごとく告げる。

 

「悦べ、未だ迷う私よ。なにせ答えはここに在る。私はお前を知っている。そしてお前は私を知る」

 

それは迷い子を導く聖職者の助言であり、先達が(ともがら)に手を差し伸べる(いざな)いであり。

 

「悦びを、愉悦を、酒の味を、世界の色を─────お前に教えてやろうではないか」

 

純粋なる者を果てなき奈落へと引き堕とす、破綻者の囁きだった。

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

『プレイヤー』陣営

 

主【 言峰綺礼 】

従【 言峰綺礼 】

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

......................................................

 

 

 

 

「すっげ! すっげすっげスッゲーっ!!」

 

血と惨劇の臭いに満ち、魔法陣から光が溢れる中で青年は歓喜する。

 

「COOLだぜ! マジでこんなんあんだなあ! スッゲーや!」

 

青年は、雨生龍之介は『本来』通りに、生贄を用いて召喚儀式を成功させた。

そして召喚された者もまた同一ではあった。

 

「おお……マジモンの悪魔ってやつ……」

 

ただ、ひとつだけ『本来』と異なっていたのは。

 

 

 

「■■■■■■■■■■──────!」

 

 

 

その『クラス』だった。

 

 

けぽっ、と、場違いな音と共に青年は赤い液体に還る。

青年が召喚の贄としていた子供も同じく。

そしてその赤い産湯の中から這い産まれる……蠢く触手達。

 

「■■■■■■■■■■───」

 

ギョロリとした、空洞のような目を定まることなく彷徨わせながら、狂者のサーヴァントは歩き出す。

言葉を失い、思考も朧となりながらも────

 

 

…………己の身を保たんと、人喰いの本能に従って。

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

『バーサーカー』陣営

 

主【 不在 】

従【 『青髭』ジル・ド・レェ 】

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

......................................................

 

 

 

 

…………(ことごと)く。

悉くが新たな道行きへ進む。

 

殆ど全ての従者が流血の果てを知り、されど向く先は重ならず。

無為の宿命(さだめ)は覆し得るも、流血は拒み得ず。

『本来』と異なる闘争は緩やかに芽吹き。

 

そして、『本来』の勝者であり、そして『今回』もまた主要に陣取る殺人機械も、同じく────

 

 

 

 

......................................................

 

 

 

 

(…………失敗、か)

 

アインツベルンの傭兵、衛宮切嗣は眼前に現れた男の姿を目視して、否、正確にはそのステータスを視認して、当初の思惑の失敗を認識する。

雇い主の意向に従い召喚を予定していた駒はブリテン王アーサー。数多の武勇と伝説を誇る誉れの極致。最高位の英雄。

だが今切嗣の目の前にいるのは、酷く脆弱な……恐らくは下級の英霊。

その衣服もかの騎士王には全く相応しくない草臥(くたび)れたもの、そして何よりも……クラスだ。

 

(いや……これはむしろ、僥倖だ)

 

高貴なるアインツベルンは好まないだろう、騎士王とは真逆の立ち位置にある弱者の座。

だが切嗣からすれば最も望ましいと考えていた駒であり、この予想外の事態は切嗣にとって幸運と呼べるかもしれない。

 

そう、この駒のクラス────『暗殺者(アサシン)』は。

 

 

(……まずは、能力の把握)

 

この英霊のステータスは英霊と思えないほどに総じて低いが、宝具のみは飛び抜けている。

間違いなく何らかに特化した極端(ピーキー)な性能の暗殺者だろう。

それを活用する戦略を練るためにも、まずはその詳細を調べるべきと、衛宮切嗣の妻と駒の会話を待つ姿勢は、

 

 

「……衛宮切嗣……イリヤスフィール・フォン・アインツベルン……? いや、その母体か?」

 

 

サーヴァントの小さな呟きがこぼれた瞬間に、起源弾(切り札)を向けての臨戦態勢に切り替わる。

 

 

 

(コンテンダー)を眼前の男に向けて構えながら、衛宮切嗣は短く詰問する。

 

「貴様、何者だ」

 

本来であれば、断じて行わないつもりであった、『道具』への問いかけ。

だがそれも当然のこと。

眼前の男は今、『駒』に相当していない……不明瞭な『何か』、だ。

 

サーヴァントが切嗣の名を看破するのは問題ではない。暗殺者が相手の名を見抜く類の宝具やスキルを持っていても、有用とは判断しても驚くようなことではない。

だが、この男はここには居ない切嗣の娘の名を出した。それも、妻の顔を見て、怪訝そうな色を浮かべて、だ。

仮に、相手の弱点や親類を見抜く能力を持っているとするなら、ここで娘の名が出ること自体は有り得ないことではない。だが、今の状況はおかしい。

この男が妻や切嗣から娘の名に至ったなら、怪訝そうな色を浮かべるのも、母体という言葉を疑問形で呟くことにもなるまい。

 

そう、今の男の呟きを最も合理的に判断するならば……『この男は切嗣とイリヤスフィールの顔を知っていた』という可能性。

 

娘は妻によく似ている。ならば娘から妻のことを推察したと考えれば今の呟きも納得がゆく。

長く戦場に生きてきた殺人機械としてわずかな言葉から瞬時に状況の仮説を成り立たせ、しかしそれ以上に辿り着く道筋もなくただ警戒を強く抱いている切嗣に向かい、サーヴァントたる男は皮肉げに笑う。

 

「落ち着け、衛宮切嗣。不用意に警戒を煽った私にも非はあるが……その()()()()()英霊(サーヴァント)には効かんぞ」

 

起源弾を装填してあるコンテンダーをただの銃と侮ったか、あるいは起源弾の効力を解析してのことか、男は意にも介さない。

事実、起源弾は魔術回路を励起している相手なら英霊相手でも効果がある可能性も見込めるとはいえ、平常状態の相手にはただの銃弾でしかない。こと英霊相手となれば傷一つ付け得まい。

 

しかし切嗣はブラフも含め、銃は下ろさずに重ねて詰問する。

 

「何者だ、と訊いている。僕を知っているのか?」

 

娘の名は出さない。少なくとも、切嗣を知っているならばここで娘の名を出す必要は無いと、あえて言葉を削る。

機械的な魔術師殺しの貌で冷淡に相対する切嗣に、男は皮肉げな笑みをなぜか柔らかくした。

 

「ふっ……成る程、言峰綺礼の評価も言い得て妙。まさに私は衛宮切嗣だったようだ」

 

「何を、言っている?」

 

新たに出て来た名前も含め、男の言葉は一段と不可解さを増す。

俄かに敵対的な色も浮かぶ程に険しくなりかけている衛宮切嗣を前に、

白髪に褐色の肌、そして()()外套(コート)の妙に草臥れた青年は笑う。

 

「喜べ、衛宮切嗣…………この徒労に終わる道化の劇も、此度は有意に使い潰せる」

 

衛宮切嗣と似た空気で、硝煙の臭いすら漂わせながら、歴戦の殺戮者の威厳を以て宣告する。

 

「遅くなったが、名乗らせて貰おう、我が主にして我が父よ」

 

 

 

 

「此度の聖杯戦争、暗殺者(アサシン)のクラスで現界した────エミヤシロウという」

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

『アサシン』陣営

 

主【 衛宮切嗣 】

従【 『天秤の量り手』エミヤシロウ(HF/桜ルート 『桜殺害/鉄の心』エンド) 】

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

......................................................

 

 

 

 

 

必須たる三騎士が内、二騎すら欠いた異常だらけの聖杯戦争。

 

条理を道理を法理を失い、どこまでも宿命(フェイト)を逸脱する新たな運命(フェイト)

 

 

この物語は始まりへは向かわない。

 

 

ただただ、終幕へ向かうのみ───────

 

 

 

 

 

 

 




■遠坂凛
凛さんじゅうはっさい。えいえんのおとめダヨ。NGワードは「歳」。ふれればしぬ。
凛ルート後、順当に成長した遠坂凛。
外見年齢は二十代なのは努力の結果。あとたぶん愛とかそこらへん。
遠坂家の流れに反し和装なのは、和服の方が外人には印象深いからという打算的な理由と夫の影響で。家は相変わらず洋邸だし洋服も着る。
うっかりはまだやる一児の母。
でもなんだかんだで魔法使いらしく色々別格。
父を根源に導くくらいはいいかな、と思っている。自分が根源如きに行く気は無い。
「なんで私の士郎はいないのかしら、喚ぼうかしら?」


■HF士郎
桜ルートで桜を救い人間じゃなくなった衛宮士郎。
存在自体が規格外。無限の剣製は使えないが別の固有結界を持つ。
そもそも人外なので人間の限界が適用されない。
戦争に興味は無いが桜と雁夜が死なずに済むように動く。


■ロード・エルメロイⅡ世
時計塔の重鎮。
指導力チートで他は凡才。
一応月霊髄液改造版も持つとはいえ戦闘力は皆無に近いが……?
現状で聖杯を安全に解体する方法を思案中。


■言峰綺礼
言峰さん。


■青髭
片っ端から食事兼召喚。
魔力炉大活躍。


■鉄心エミヤ
桜ルートで桜を殺した士郎の成れの果て。
剣、固有結界の他に銃や謀殺といった多彩な殺害手段を持つ。
その凄惨な生涯の果てにあったのは……


 

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