「乾杯―――!」
酒場の席で握ったジョッキを叩きつけると少しだけこぼれるが、そんなことを気にせずに引き寄せ、それを一気に呷る。喉を通る冷えて苦い液体が体の奥底にアルコールという概念を叩きつけてくれて、ここまでの苦労が一気に浮かばれる様な思いだった。一気にジョッキの中身を飲み干したらそれをテーブルの端へと置いてからお代わりをフロアのウェイトレスに頼む。そのまま深く椅子に座り込みながらはぁ、と息を吐いた。
「氷室か水風メイジのいるところは割高になっちまうのが欠点だけど、やっぱりこのキンキンに冷えたエールの味にはどう足掻いても勝てそうにねぇよなぁ……」
「私はどちらかというと馬乳酒のほうが好きなんだが……まぁ、こういうのも悪くはないか」
「余は好きだぞ酒は! ワインの様な上品なものよりはこういう方を余は好むんだがどうも出されるのはワインばかりでな……で、馬乳酒とはどういう酒なんだ? ん? 無論、余にもその魅力を語ってくれるのだろう?」
「む、そうか。ここらでは見る事がないからな。いいだろう、その魅力は私が語らせてもらおうか」
シノの顔に色の変化がないが、既に酔っているというのが言動の端から見える。あんまりアルコールに強くないからなぁ、我が相棒は。そんなことを思いながら新たなジョッキを受け取りつつ、テーブルの上に置いてあるソーセージに手を伸ばし、素手でつかんで口の中へと運んだ。焼きたてのソーセージの肉汁を口内で溢れさせながら、エールをお供にそれを喉に流し込む―――あまり栄養のある食事ではないが、これは自分への労いなのだから、こんなものでいいのだ。今度はチーズをナイフで切り取りながら口の中へと放り込む。中にはフルーツが混じっているフルーツチーズだった。これも良いなぁ、と思いつつ土産に少し買って帰る事を考えた。
「うーむ、それにしても世界は広いな。まさか乳の酒があるとはな……馬の乳か……うむ、これならばこちらでも試せるな!」
「それ以外にも米から作る酒もあるが、そっちもいいぞ」
「む、ライスか? 基本的にパンが主食だから余はあまりアレを口にはせんぞ」
「そりゃあもったいねぇよヨーゼフ」
二人の会話に割り込む。こと、ライスの魅力に関しては既にシノから布教済みであるこの俺がライスの魅力に関して語ろうと思う。いいか、と言葉を置きながらエールで喉を潤した。
「確かにここらではあんまりライスを見かけない、ってか土地の問題でサハラのほうへと行かなきゃ見つからないってのが現状だ。だけどな、それでもな、ライスはいいぞ! パンとはまた違う魅力がある! 暖かく、ふわふわで、そして基本的に何を載せても一緒に食えるって魅力に、それにだな―――あ、ウェイトレス! 肉とチーズと酒追加で!」
「野生スティックを持ってこい」
「余にも追加でエールを……ほうほう、それで?」
「えーと……なんだっけ? あぁ、そうだった。ライスだライス。アレは汁気を良く吸い込むからソースを絡めた料理なんかと一緒に食べる時それを良く吸い込んでだなぁ……」
ライスという食材の持つ魅力をたっぷりとヨーゼフへと洗脳するように布教する。ハンバーグはパンとの組み合わせが最高だと昔は思っていた。だがライスとの出会いによってその印象は大いに変わった。ハルケギニアの人間の多くはあの魅惑の食材を食べずに過ごしているのだ。それは何という勿体なさなのだろうか……。ライスの上に乗せ、ソースに絡めたあの味を食べる至福の瞬間をどうにかヨーゼフへと伝えたい……。
などと思っていると、注文したものが運ばれてくる。ついでにミートソーススパゲティーも注文してしまう。食べても食べても足りないとはまさにこのことだ―――いや、確かにエナジーを使用するには集中力が必要だし、精神力の他にも大量に体力を冒険で消耗している。結局のところ、それはカロリーへと直結するのだ。体と心を動かしたのならその分補充しなくてはならない。必然的に飯は良く食うようになる。自分もシノも体型的には標準体型だが、エナジストとしては一流の領域に入る他、戦士としても一流の領域に入ると思っている。そのため、人の数倍は普通に飯を食う。
まぁ、体を動かしている人間であれば基本的に大量に食うだろうな、とは思う。
運ばれてきたスパゲティを軽く二本のフォークでぐるぐる巻きにまとめて口の中へと流し込みながら味わい、ミートボールの塊を口の中で転がしてから一気に噛み砕いて食べた。ふぅ、と一息つきながら再度呟いた。
「やっぱガリアから去りたくねぇわ……」
「そんなにか?」
「ぶっちゃけトリステインって今世代から次世代でゲルマニアかガリアに吸収されるだろアレ」
「あー……」
それ、言っちゃうかぁ、とシノが表情を変え、ほかのテーブルに座っていた客もまぁ、そうだよなぁ、という感じで表情を浮かべていた。まぁ、このハルケギニアにおける国家間の関係などは非常に解りやすいし、大体誰もが思って居ることだろうとは思う。これぐらいは。死んでもトリステインでこんな話が出来ないから今、ここで吐き出してしまうが。
「いや、だってさ。ゲルマニアとガリアを見ろよ。見て解る国土の広さと大国特有の国力の高さ。特にゲルマニアなんて政治形態を大きく変える他、血筋等ではなく貨幣を通して判断とか始めているし。ガリアも伝統や血筋ではなく能力が国家を成長させるって解ってるし。それが理解できてねぇのトリステインぐらいだろ……」
トリステインは正直詰んでいる。まず王が死んで政治を引き継ぐはずだった王妃が立場を引き継ぐの拒否して政治に関わらなくなり、その王妃の影響を受けて王女の教育が腐った。もうこの時点で色々とやばい、としか表現できないくせにトリステインでは何よりも伝統、そして血筋が重視されるこの大陸でも指折りの貴族社会だ。つまり平民は平民、貴族は貴族という形態に囚われて抜け出せていない。ゲルマニアやガリアという大国がそのシステムから抜け出しているのを見て何も思わないのだろうか? そう思っているとゲルマニアを成金で野蛮、ガリアを無能の統治と言っているから根本的に終わっている。
「しかもこれで国家の中心で一番頑張っている忠臣がロマリアから送られてきた人物で、しかも鳥の骨とか呼んでるからほんと救いがない。他国の人間が必死に国家運営している忠臣ってどういうことだよ!! ちょっと面白すぎるだろ」
ちなみにアルビオンとかいう内乱中の国は論外である。せめて国家として扱ってほしいのなら内乱をどうにかしろという話である。
「まぁ、確かに笑いどころではあるな。トリステインの民もガリアやゲルマニアに飲まれた方がまだ幸福か」
「民にとって重要なのは有能な奴が生活を楽にしてくれる事で、極論、生活が良くなるなら国の名前が変わろうが特に気にする話でもないからな……」
エールを口に含みながら呟いた。それを聞いたヨーゼフはそうであるな、と呟いた。
「真に勝手なことだ、民とは。だがそれが人間という生物の本質でもあるか。どこまでも勝手で、醜く、そして何よりも楽を求める。だからこそ正義や悪を言葉にしても、大衆は常に語られるものに流される。トリステインが占領され、属国となって支配を受ける様になってもおそらくであるが、反発があるのは最初だけであろう。忠誠を誓った貴族も時間をかければ調略が可能であろう」
「今の王家に忠誠を誓うだけの価値があるとは思えないしな……いや、この先は話すのはやめておくか。そろそろ怖くなってきたわ。そこまで言うのなら政治の話をしろよおらぁ!! って言われても俺にはできないしな。究極的に言うと超困る」
「まぁ、貴様は本質的に戦士だからな。人の為とは思えても国の為とは思考できんよ」
シノの言葉にガクリ、と言葉を落としているとヨーゼフは此方を見て惜しい、実に惜しい、と呟いていた。ヨーゼフは握っていたジョッキを下ろすと、視線を此方へと向けてきていた。
「……ここだけの話、本当にガリアへと仕える事を考えぬか? 有能な者をみすみすあの泥船の国へと帰すのは実に惜しい。その才能、そして躊躇のない物良い、ガリアに来た方が間違いなく活躍できるだろうに……」
「だけど俺は別に活躍する事を求めちゃあいないのさ。俺の原動力は冒険! 金! 美味い飯! そしてそれで得た栄誉! 貴族も軍も、法律もごめんだ。ちょっとアングラなところで遺跡を漁って錬金術のロマンを追っかけてる方が気楽なんだよ。今でも十分に良い生活が出来ているしな」
ま、それだけだ、と告げる。ヨーゼフは少しだけ寂しそうな表情をしていたので、拳を突き出す。
「なぁに、俺達探検家、冒険家にとって国境ってのはあってないようなもんだ。民族、種族、主義主張、そんなもん地に出て自分の足で歩いてみて、感じられる世界と比べりゃあみみっちぃもんよ。俺はトリステイン。シノはロバ・アル・カリイエ。そしてお前はガリア。俺達三人は違う国家、背景からやってきたがそれでもこうやって一つの大きな冒険を果たした―――なら一時の離別なんて軽いもんだろ? また会えるもんさ。俺達は一緒に冒険した仲間だろ?」
「そう、か。うむ、そうだな。確かにな! ははは!」
ヨーゼフが正面から拳を叩きつけ、その勢いのまま一気に酒を呷った。その勢いに声を漏らしながら、ようし、と呟きながら財布の中を確認した。中にはまだそれなりに金が残っている。ガリアからトリステインまでの馬車の値段を考え、あと他にも必要な金額を考え、今夜使っても良い、遊べるだけの金額を計算してから20エキュー程財布から抜いて、それを別の財布に入れておくのカウンターの方へと投げた。
「マスター! 今日は無礼講だ、その20エキューで皆に酒や飯を振る舞ってくれ! 俺達の冒険の成功と、そしていつかある再会を祝う為にな!」
「やるじゃねぇかにーさん!」
「よ、ガリアの男よ!」
「はっはっはっは! 褒めろ! 崇めろ! ブリミルじゃねぇ、俺がお前らの神だ……!」
「ヒュー! 最高にロックだぜこいつは!」
酒場に笑い声と歓声が絶えなくなる。酒が入ってさらに陽気になった酒場に男たちの歌声が響く。食べ物の匂いで溢れ、そして満たされるこの酒場の中では誰もが国家や人種なんていうくだらない枠組みにとらわれず、今、この瞬間を笑って過ごしていた。この景色がまたほかの国でも見られれば良いのに―――果たして、何時になったらエナジストが自由に顔を上げて歩ける日が来るのか。そんなことを考えつつも、ガリアで最後の夜が更けて行く。
「あー、クソ。頭が痛ぇ」
「飲み過ぎるからだ、阿呆め」
お前、そんなことを言うのなら人の膝を枕代わりに座るのをやめろよ、と言いたいところだがそれを口にすれば不機嫌になるのは目に見えている。個人用に採取したヘルメスの水、その水滴を一滴だけ口の中へと放り込めば、最悪だった脳の活性具合が一瞬で良好な状態へと回復した。不治の病でさえ治療する万能の薬を二日酔い対策に利用するとは何とも冒涜的で背徳的な感覚ではあったが、俺の発見物なので誰にも文句は言わせない。
それで軽く頭の中のもやを晴らしてからふぅ、と息を吐く。現在、トリステインへと向かうこの辻馬車の中にいる客は自分たちだけだ。あまり大きな声では言えないが、ガリアと諸国の関係はそこまで良くはない。ガリアと対等に付き合っているのはゲルマニアだけで、それ以外の国家は《無能王》ジョゼフが治めるガリアを下にして見下しているのが実情だ。このハルケギニアの大陸では、何よりも伝統と血筋、そして伝えられてきたブリミルの業が大切なのだ。それを脱却しつつあるガリアとゲルマニアはできていない国家からは白い目で見られている―――いや、睨まれている。
だからガリアからトリステインへと向かう人も馬車も少ない。商売で向かう荷馬車はそこそこ見るが、人の動きはそうでもないのだ。まぁ、ガリア現王ジョゼフはメイジの血筋でありながら魔法を使えないという致命的な欠陥を現政治形態で覆ってしまっているのだが、それを覆すだけの政治の才とセンスを持っている。あの無能王と呼ばれる男が本当に無能なら他の国家は超無能と言えるレベルだ。
それが解ってないから未来がないんだよなぁ、と思いながらもトリステインは祖国だ。なんだかんだで離れることが出来ないのが口惜しい。
だからと言って改善する気など一切ない。
なぜなら自分はエナジストにして生粋の
「ラ・ヴァリエール領に戻ったらこの旅も終わりか……そのあとはどうするんだ?」
「そうだな……正直、何も考えてないんだよな」
この数年間、ヘルメスの泉を探す事に躍起になっていた。それが終わったら少なくともトリステインでも泥船からは片足を出してバランスを整えているラ・ヴァリエール領では同胞たちがガリアでいる様に、安心して生きることが出来る。身分を隠さないで良くなる、という事はそれだけで生きやすくなる事でもあるのだ。それが叶うだけで自分は義理や義務、そして育てて貰った恩義には報いただろうとは思う。だからそれが終わったら、
「……ロバ・アル・カリイエへ行くか? 俺とお前で」
「……私の故郷へか」
その言葉でお互いに動きと続きが止まる。そのまま、無言で流れて行く青空を眺める。あまり上等ではない辻馬車は道路によってそれなりに揺れているが、それに身を任せる様に、流れに乗って揺れながら空を見上げ続けていた。そのまま、下へ、顔を向けるのが少し恥ずかしかった、というのもあるらしい。我ながら、こういう雰囲気は苦手である。だけどそうだ、ロバ・アル・カリイエがあったのだ。
「ロバ・アル・カリイエの方はそういやぁ行ったことがないんだよなぁ、サハラを超えなきゃいけないし」
「ロバ・アル・カリイエか……私の故郷も良いところだぞ。此方とはまるで文化が違う。此方程栄えているわけではない。だが私たちは自然と共に生きている。馬に乗り、草原を旅し、そして―――」
目を瞑ってシノの言葉に聞き入る。シノは東方、サハラの向こう側の世界、此方の言葉で言うロバ・アル・カリイエから来た女だった。彼女との出会いは10年以上も前の話になり、また長く、面倒な物語になる。だが彼女はまだ、此方へと来てからは一度も故郷への帰還を果たしていない。当然ながら、彼女が砂漠を超えたのは魔法と、それに発生する事故が起因となる。ロマリア、ほんと余計なことしかしないよな、としかそこらへんは感想が出てこない。ロマリア、ほんと滅べ。
だがそれはそれとして、こうやって一緒にいる責任というものも一応あるんじゃないかなぁ、とは思わなくもない。それはそれとしてロバ・アル・カリイエの料理、遺跡、あちらにも錬金術の遺産はあるのか、そういうのが色々と楽しみであるというのも事実だ。
「ま、しばらくはトリステインで休暇だな」
「そうだな。お前がそうしたいなら私はそれでいい……」
そう言うとシノは黙り込んだ。視線を彼女の方へと向ければ、目をつむって眠り出した様子だった。こりゃあ起こしちゃ悪いな、と思いながら再び馬車の外の空を見上げ始めた。この広い空の下で続く世界のすべてをまだ見て回ったわけじゃない。おそらく一生かかってもその全てを見る事は叶わないだろう、という事は理解している。一生は短く、そしてもったいない。だからこそなるべく好きなことをして生きていたいと思う。なるべく立場や土地に縛られず、生きたい。
「みーんなは何をしてるかなぁー……」
昔一緒に旅をした仲間、一緒に冒険した仲間。今では世界のどっかで自由にやっている他の連中の姿を思い浮かべてから、まだまだトリステインまでの道のりは長いのだと思いだし、目を閉じて眠ることにした。ガリアからトリステインまでは一日で到着するような距離ではないのだ―――ゆっくり風景を眺める時間なんて、飽きる程ある。
―――トリステインの中でも比較的にマシと呼べるのがラ・ヴァリエール公爵家とその領地だと思っている。血筋と家の格が全てのようにふるまっているあの国の中で、公爵という家柄ながらそこまで威張る事をせず、平民への態度は基本的なライン、個人的に良く出来た貴族、と評価できるのがラ・ヴァリエールだと思っている。おそらくその原因はラ・ヴァリエール家が国政にかかわっていないものであり、ゲルマニアとの国境を前に領地を持っていることからトリステインで一番早くからゲルマニアの変化と文化、そして思想に触れてきている事にあると思う。あまりラ・ヴァリエール公爵と話した事がある訳ではないが、理性的な人物であり、常識的な人物でもあった。
果たして、今のトリステインを見てどう思っているのかは、正直気になる所ではある。とはいえ、政治とはそれそのものが怪物であり、あれがどうこうと改善できるような案を出せるわけでもないのに考えるのは無駄なだけだ。……多少考えはするが、一生口に出す事はない分野だ。
ともあれ、そんなラ・ヴァリエール領の一角に隠れ里であるハイディア村が存在し、そこが故郷となっている。この村はエナジストの村であり、自分のように生まれからエナジーを使える人間ばかりが暮らしている。ラ・ヴァリエール公爵も当然ながら、この里を把握している。お互いに必要な時は助け合う事でこっそりとズルをしているようなものだ。そういう関係である。
これはトリステインという国を見ると結構珍しい、或いは他に見ない事である。そしてどれだけ他の領と比べ、ラ・ヴァリエールが柔軟であるか、というのを示しているのでもある。
つまり何度も言っていることだが、トリステインという国は終わりに近い。
王妃か王女が覚醒して政治を形見を売ってでも立て直して、それでもまだトリステインが現在の国力を維持できるイメージがない。正直、ゲルマニアかガリアが戦争で敗北して、トリステインにかかわる暇がなくなって、そしてそこで覚醒入った王家が国家の立て直しを行い、ある程度領土の拡大を行えて、それで漸く未来に目が見えるってレベルだろうか。正直な話、奇跡の上に奇跡を重ねない限りはここから国を維持するのは難しいと思っている。
国内の貴族も噂では
伝統だけで国家を維持できる時代は終わった。近隣諸国が富めば富む程、富まない自分の国を見てトリステイン人は何故我々の生活は豊かにならない? と考えるだろう。それが国としての終わりの始まりだろう。
―――まぁ、そんなことは此方には関係ない。
ガリアから数日間馬車に乗ってゆられ、時折足を止めて休息を挟みながら漸く国境を越えてトリステインへと戻ってくる。とはいえ、ラ・ヴァリエール領はゲルマニアの国境沿いなので、ガリアからトリステインへと入ったところで即座に到着する訳ではない。
ゲルマニアからのトリステインへの侵入ルートであれば比較的に楽にラ・ヴァリエール領へと入れるのだが、その場合は国境を超える回数が二回になり、余計な金と手間がかかる。それゆえに多少面倒ではあるものの、国内を通るルートを選んでいる。なので国境を越えてトリステインに入り、そこからトリステインの中央に存在する王都、トリスタ二アへと向かう。
トリステインそのものは大きくない国で、ガリアと比べるとその国土は半分以下になる。そのため、基本的にトリスタ二アで馬車を拾えばどこへでもいける程度の距離でもある。ガリアをしらみ潰しに遺跡探しをしていた時と比べればだいぶ移動が楽な国である。
王都トリスタ二アから馬車を拾い、ラ・ヴァリエール領へとここからまた数日かけて移動する事になる。小さい国ではあるが、それでも国と名乗れるだけの広さはある。それに焦る必要はなく、既に成果に関しては伝書鳩を使って連絡を入れている。故にあとは此方が到着する事待ちだけの状態となっている。平民が貴族を待たせている、という不思議な優越感を感じる数日間を過ごしつつ、トリステイン帰還の旅路は特に問題もなく進んでいた。
そしてそれは、ラ・ヴァリエール領へと到着しても変わりはなかった。何年間も身分を隠して過ごした故郷のある領地へと、そうやって俺は数年来の旅を終えて漸く帰ってきたのだった。
さりげない黄金の太陽のステマのつもりで交信。世界観クロスの練習用にも、と。やっぱりクロスやるなら世界観を完全に融合させる感じが一番なじんで楽しいんじゃないですかねぇ、というお話。技だけとか人だけとかは一生無理ッスねー……違和感多すぎて……。