僕の主人は何を思うか   作:ペンギン3

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2話

「あは、あはは……」

 

 

 ここに虚ろに笑うフェレットが一匹存在する。

 因みに、オロオロする金髪の少女と頭を痛そうに押さえるケモ耳を生やしたオレンジ髪の女性も加えられる。

 

 

「君は……人間…なの?」

 

 

 思わずといった感じでフェイトは問わざるを得なかった。

 てっきり契約を切られた使い魔とばかり思っていた。

 だが変身魔法でフェレットになっていただけだとは!

 

 

「ソウダネ、僕人間、フェレットチガウ」

 

 

 半ば自分に言い聞かせるように、ぼそぼそと繰り返すユーノ。

 それを見たアルフは呆れた様子で問いを投げる。

 

 

「アンタなんでネズミの姿になってたのさ」

 

 

 誤解の元はそれなんだからさ、そう睨むように言われユーノはカリカリと頭を掻きながら答え始める。

 

 

「ジュエルシードの怪物と戦って消耗していたから回復しようとしたんだよ。

 フェレットモードは燃費が良いからね、魔力が早く回復できるんだ」

 

 

 成程、手酷くやられていた様だしそれなら理解できる。

 ……無論、納得などはしてやるつもりはアルフには毛頭ないのだが。

 

 

「で、どうするフェイト」

 

 

 問われて、びくっとしてしまうフェイト。

 私もそれが知りたい、そう思いつつ答えを探していく。

 

 

「えっと、まず使い魔の契約を解除してそれから……」

 

 

「そうじゃないよフェイト」

 

 

 

 途中で遮られて何で、と思わず首をかしげてしまう。

 ユーノも元に戻れる、とフェイトの言葉を聞いて安心したばかりなので不思議に思った。

 だが次の言葉を聞いた瞬間、ユーノは凍りつく。

 

 

「こいつはジュエルシードを回収しにこの世界に来た、つまりアタシ達の敵だよ」

 

 

 それを聞き、フェイトは暗い顔になり沈黙した。

 そうだ、私はお母さんにお願いされてジュエルシードを手に入れる為、この世界に来たんだ。

 このままではあのフェレットとはお互いにジュエルシードを巡って戦うことになるだろう。

 

 

「そう、だね。

 このまま君を自由することはできない」

 

 

 先ほどのオロオロしていた姿はなりを潜め、フェイトの表情は氷のように凍てついていた。

 全てはお母さんの為、邪魔する者は容赦しない。

 

 

 一方ユーノは慌てていた。

 

 

「一体どうして……」

 

 

 怪我をしていた僕を助けてくれた親切な魔導師、それが今のユーノのフェイトに対する見解であった。

 だが現実はユーノの予想よりも厳しかった。

 自分の想像とは異なり、この二人組は僕を拘束しようとしている。

 

 何故?

 そう思考すれば答えは簡単に見つかった。

 ジュエルシード、これをこの二人は狙っている。

 そう確信できてしまった。

 

 前もって回収していたジュエルシードはレイジングハート、つまりはフェイトの手の中。

 それに思い至り、ユーノは顔が青ざめていくのが理解できた。

 

 

「ごめんね」

 

 

 フェイトは答えを返さない。

 ただ謝るだけ、それがユーノの答えをすべて肯定していた。

 

 

「で、フェイト、コイツどこに閉じ込めておくかい?」

 

 

 アルフはさも当然のごとく提案する。

 現状敵であることを認識し、捕虜?の状態のユーノの処遇は当然軟禁である。

 アルフはそう考えていた、至極当然である。

 

 だが……、

 

 

「ねえ、君」

 

 

 アルフに答えを返さず、ユーノに語りかける。

 

 

「今すぐこの世界から出て行く気はない?」

 

 

 ごく自然にフェイトは提案していた。

 ユーノがこの世界を脱した後で、管理局に駆け込む可能性を理解した上でだ。

 

 

「フェイト、本気かい?」

 

 

 アルフの視線に非難が混じっているのがよく理解できる。

 実際アルフとのラインにも、驚きと少しの苛立ちが混じっているのが分かる。

 

 敵にチャンスを与えるのか?

 そうが訴えてくる。

 

 

『大丈夫だよ、アルフ』

 

 

 アルフを安心させるようにフェイトは念話で話し始める。

 邪魔する者は容赦しない、だが去る者は追わない。

 それがフェイトの出した答えである。

 

 

 幸い、彼の魔力は底をついており転移魔力も使えない。

 最寄りの管理局と連絡取れる場所に行くまでには2週間程掛かるであろう。

 それまでに集めきってしまえばいいのだから。

 

 探索1日目で自分で手に入れた1つ目。

 それとユーノの持っていたもう一つを集めて2つが既に自分の手の内にある。

 この調子でいけば、直ぐに全て集まるだろう。

 フェイトはそう考えることにした。

 

 

 無論これがただの楽観論であることは重々承知している。

 だが、フェイトには甘さがあった。

 勝手に使い魔にしてしまった負い目と、それを利用してこのまま閉じ込めてしまうのに抵抗を感じたのだ。

 

 このまま去ってくれるのなら、彼と態々敵対せずに済む。

 そんな打算もあった。

 折角助けたのに、その人と戦いたい、酷いことをしたい、そう考えるほどフェイトは捻てもいないし変態でもなかった。

 

 

「1つ……聞いてもいいかな?」

 

 

 少し考えてから、意志を感じる声がユーノから発せられた。

 これから大事なことを語ろうとしているのが分かる。

 思わず手をギュッと握りフェイトは続きを促した。

 私に出来る範囲で真摯に応えたいとも思えた。

 

 

「君はどうして僕を助けてくれたの?」

 

 

 それはどうしても聞いておきたいユーノの疑問だった。

 ジュエルシードを狙っているだけなら、態々僕を助ける必要なんてなかった。

 それなのに何故?

 

 ユーノはこの二人の節々に善性を感じていた。

 互いを思い合う優しさ、僕を叱咤してくれた気遣い、そしてさっきの質問。

 出会ってほんの少しの間だけでこれだけの物が見えた。

 この人たちが悪い人で、ジュエルシードを悪用しようとしているなんて全く思えなかったのだ。

 

 

 聞くまでもなく答えを確信しているユーノだが、敢えてあの二人から答えを聞きたいと思った。

 答え次第で、何が彼女たちを行動させているのかが分かると思ったから。

 

 

「戦力になると思ったのさ、使い魔だと思い込んでいたしねぇ」

 

 

 少々の皮肉を交えてアルフが切り返してきた。

 フェイトに無視されたのと、ユーノが何か仕出かすのかと考えてイライラしてしまい、つい言葉に毒が混じってしまう。

 

 その様子を感じ取ったのだろう。

 フェイトはアルフを手で制しつつ答えを述べた。

 

 

「怪我、してたから」

 

 

 端的な答え、それ故によく理解できた。

 

 

「あれだけ弱って死んでしまうと思ったから」

 

 

 この子は優しい子だと。

 

 

 

「うん、ありがとう……うん、決めたよ」

 

 

 その言葉にフェイトは少し身を乗り出し、アルフは威嚇するように睨みつけてくる。

だからユーノは澄んだ瞳で言い切った。

 

 

「僕はここに残るよ。

 いや、残らせてください」

 

 

 その答えに2人揃って思わずポカンとしてしまう。

 ここに残るのは兎も角、残らしてください?

 何故閉じ込められる彼がこっちに願い出ているのだろうか。

 

 

「あんた何を考えているのさ」

 

 

 アルフが少々不気味そうにユーノを見ている。

 フェイトも意味がわからなかった。

 その真意を問いただすべく小さなフェレットを見てみると、彼は自分の思いの丈を吐き出し始めた。

 

 

「僕は君たちに助けてもらった。

 要するに恩人だよ、だから恩人には堂々と道を歩いて欲しい」

 

 

 ここでユーノは一回息を吸い、吐く。

 その小休止の間にアルフが低い声で切り込んできた。

 

 

「あんたに……あんたに何がわかるのさ!

 何も知らないくせに、勝手なこと言ってんじゃないよ!?」

 

 

 そう、ユーノは知らないうちに地雷を踏み抜いていた。

 彼女たちに言った「間違っている」という言葉。

 フェイトにとって、母との仲を修繕すべき儀式とも言える今回の件。

 これが終われば元の優しいお母さんに戻ってくれる、そう信じているのだ。

 

 それを真っ向から間違っていると指摘されれば気分もあまり優れなくなる。

 フェイトはユーノを睨みつけていた。

 何も知らない癖に、そのアルフの言葉に大きく同意できるのだ。

 

 

「そうだね、僕は何も知らない」

 

 

 ユーノは真っ向から二人の言葉と視線を受け止める。

 ユーノは真っ直ぐな視線で二人を見据える。

 

 

「だから教えて欲しい、どうして君たちがジュエルシードを集めるのかを。

 場合によっては協力できるかもしれないし、相談に乗れるかもしれない」

 

 

 頼りないかもしれないけどね、そう弱った口調で言うユーノにふたり揃って毒気を抜かれた。

 

 

「本当にいいの?」

 

 

 最後に確かめるようにフェイトはユーノに問う。

 それにしかと頷き、意思を示した。

 

 

「あんたバカかい」

 

 

 アルフはやれやれとでも言いたげに溜息を吐いた。

 ずっと呆れられたばかりだな、そう思うと情けなさと共に、少し笑いが出てくる。

 

 

「ところで」

 

 

 いつ切り出そうか迷っていたが、今をおいて他にないだろう。

 だからユーノはここにいる皆にとって大事なことを言った。

 

 

「ユーノ・スクライア、これが僕の名前。

 スクライアは部族名だから、ユーノって呼んで欲しい」

 

 

 自分の自己紹介は済んだとばかりに、君たちは?そう可愛く小首をかしげて聞いてくるユーノ。

 それに苦笑して二人は応じた。

 

 

「フェイト・テスタロッサ、フェイトでいい」

 

 

 自分の名前を語るとき、フェイトは綻ばさせた。

 その名前に愛着を持っているのがよく伝わってきた。

 

 

「アルフさ、アルフ様って呼びな」

 

 

 そう言いい、鼻で笑いながらユーノを見下ろすアルフ。

 直後、フェイトの方に冷や汗を流しながら振り返った。

 念話で何か言われたのだろう。

 軽い謝罪を受けた。

 

 

「二人とも、兎も角これから宜しく」

 

 

 その言葉にフェイトは軽く頷き、アルフは馴れ合いなんてしない、とそっぽを向いた。

 その様子を見ながら、仲良くなれたらいつか理由を話してくれるのかな?

 そんな埓もないことを考えてしまう。

 でもいつかは、この二人の輪に入って話ができるようになりたい。

 そんなことを空想した。

 

 

 

 この日から、3人の少し歪な共同生活が始まったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところでだけど」

 

 

「ん、なに?」

 

 

「僕っていつ使い魔契約を破棄してもらえるのかな?」

 

 

「私達がジュエルシードを集め終えるまで」

 

 

「そ、そっか、しばらく無理なんだね」

 

 

「私が言うのも問題があるけど……えっと、その、元気出して」

 

 

「……ありがとう」

 

 

 ■

 

 

「ユーノ、ご飯はフェレットフードでいいかい?」

 

 

「!?」

 

 

「こら、アルフ。ユーノ、ごめんね」

 

 

「え、ううん、大丈夫だよ」

 

 

「そうだよね、ユーノのご飯はジャーキーだもんね」

 

 

「!?」

 




なのはに出てくる子供たちはみんな思考が子供じゃないですよね。
あれは屈折した幼年期のせいでしょうね。
おかげでキャラをどう動かせばいいのかが四苦八苦でした。
キャラが違うと指摘されても全く反論できない仕様です、はい。

長々と言い訳申し訳ございませんでした、それでは。
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