僕の主人は何を思うか   作:ペンギン3

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久々の更新です。
遅々として執筆が進まない……。


3話

 フェイトは朝が苦手である。

 理由は低血圧で、朝は余り調子がよろしくないのだ。

 だけども今日ははっきりと目が覚めた。

 理由は何処にでもあるような些細な事故だ。

 

 

「……ガブッといくよぉ」

 

 

 寝ぼけ瞼のまま、ユーノに齧り付くアルフ。

 その牙が柔らかい下腹部にめり込み、まさに食物連鎖の瞬間に立ち会ってるといっても過言ではない。

 フガフガと幸せそうにユーノを噛み締めている。

 きっとおいしいお肉にでも見えてるのだろう。

 

 

「みぎゃあああぁぁぁぁ」

 

 

 瞬時に絹を裂いたような悲鳴が響き渡る。

 ……心臓に良くない断末魔の叫びが、今日の彼女の目覚ましだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「痕が……消えない」

 

 

「あんた男だろうにね。

 謝ってるんだから、そろそろ許しておくれよ。

 その~、ほら、新しいお洒落っぽく見えるよ」

 

 

「君、全然反省してないよね」

 

 

 朝食の席、フェレット姿で凄むという器用なことをしているユーノを傍目に、もきゅもきゅとパンを咀嚼するフェイト。

 引っ越してきたばかりで冷蔵庫に何にもなかったため、近くのコンビニで適当に買ったパンを食べている。

 何げに初コンビニだったフェイト、これからは面倒な時にコンビニへダッシュするフェイトの姿が見えるようになる。

 

 それにしても品物が豊富だった。

 感心するように思う、と同時にリニスのご飯を懐かしんでしまう。

 流石に手作りの温かみまでは備えてないのだから当然なのかもしれないが。

 よく毎朝、栄養まで計算して朝食を用意してくれたものだと感心してしまう。

 低血圧なフェイト的には毎朝起きてから朝食作りは拷問なので、これからも朝は手抜きになるのだろう。

 

 それはさて置き、一段落付いたユーノがパンを一口食べてぶっ倒れる。

 やっぱり不味かったのかな、レインボゥパンは。

 

 

 

 

 

「で、これからの事なんだけど」

 

 

 ひどい目にあった……ような気がする。

 朝食の時の記憶がない、フェイトは頑なに僕が二度寝したと言っているけど何があったのだろうか。

 まぁ、そんなことよりもこれからの方針のことで話があるのだけども。

 

 

「説得するかか言っていたのに、都合がいいと思うけど君達にはジュエルシードを回収して欲しいんだ」

 

 

 そう言うと訝しげるようにアルフは僕を見てきたが、フェイトは得心がいったといった表情をしている。

 理解力の早い娘だと心の底から思う、少し抜けてるところが見え隠れしているけれども。

 

 

「私達が何もしなかったらジュエルシードの被害が拡大するってことだと思う」

 

 

 合ってる?、と聞いてきたので即座に頷く。

 先日話し合った時、僕は彼女達の行動に対して間違っていると指摘した。

 そのことに関しては僕は間違っていないと思うし、考えを変えることもないと思う。

 

 だけれども、彼女がジュエルシードを集めるのを阻害すると、今度はジュエルシードを封印する人物がいなくなってしまうのである、

 この管理外世界で今ジュエルシードを集められるのは、恐らくここにいる3人だけだろう。

 その誰もが動かなければこの街や世界に、甚大な被害を与えてしまうだろう。

 

 だからこそ、大口叩いたくせに情けないことこの上ないが、フェイト達にお願いしなくてはならない。

 他の世界や自分たちの都合だけで、この世界の住人に迷惑をかけるわけにはいかないのだから。

 

 

「で、あんたはあたし達に頼み込むわけだけど」

 

 アルフの口角が上がっている。

 ただでお願いするのはさすがにムシがよすぎる。

 暗にそう言ってるのがひしひしと伝わってくる。

 

 無論自分でもそう思う。

 ただ、自分が賭けられるものがないのだ。

 彼女達の期待に答えられるだけの物が。

 

 

 本当に?

 

 

 そう、冷静な自分が問いかけてくる。

 ……自分でもわかっている。

 本当はたった一つだけ賭けれるものがあることを。

 だが、踏ん切りがつかないのだ。

 

 信じきれていないのだ……それが正しいことなのか。

 自分が信じていないことを行い、自分が間違っていた時、それが……怖い。

 

 

「ユーノ」

 

 

 迷いを悟られたのだろう。

 フェイトの真摯な目が僕を射抜いていた。

 

 

「無理をしないでいいよ」

 

 

 あぁ、この娘はやっぱり優しい。

 

 

 それは単なる甘さなのかもしれない。

 ここで迷いを断ち切るように促したり、無理やりにでも従わせることもできるだろう。

 もしかしたら、その方が後々で互いの益になるのかもしれない。

 

 

 だがそれは、他人に迫られて下した決断に過ぎない。

 自分で考えた末の事ではない。

 そのことで僕達は対等で無くなってしまうのだ。

 

 

「ふん、フェイトの優しさに感謝するんだね!」

 

 

 ウジウジして情けない、心の中でアルフはそう毒づいた。

 少しイライラしてきた。

 ……もしかしたら期待していたのかもしれない。

 このバカネズミが私達を助けてくれることを。

 世の中そんなに都合の良いように出来てないのは、よく分かっているのに。

 

 

「何時かちゃんと答えを出すから」

 

 

 アルフが考えているだろうことが、よく分かる。

 自分で言って情けなくてたまらなくなる。

 だけど、だからこそ芯の通った、、すっきりとした答えと出したい。

 曖昧模糊のようなものでなく、自信を持って告げられる物を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ユーノの奴、自分の立場をわかってんのかねぇ」

 

 

「ユーノも一生懸命考えてると思う。

 それに最初から私達だけでジュエルシードは集める予定だった。

 問題なんてないよ、アルフ」

 

 

 話し合いの終わった後、家に居づらくて買い物に出かけたフェイトとアルフ。

 アルフは「家主は私等なのに、何で私達が気を利かせなきゃならないんだ!」とガルガル唸っていたけど、ユーノを外出させる訳にもいかないからしょうがないと思う。

 

 

「男なんだから、ウジウジした態度がうっとおしいんだよ。

 サッサとはっきりさせるべきなんだよ。

 それにフェイト、何かあいつに甘くないかい?」

 

 

 フェイトの態度は一貫して、ユーノの意見を尊重するばかり。

 それがアルフにはあまり気に入らなかった。

 敵のはずの奴を何故慮らなければいけないのか。

 そんなアルフの態度が、分かりやすい形でフェイトには伝わってきている。

 隠そうともしていないのだから当たり前でもあるが。

 

 

「無理矢理ユーノを戦わせようとしても、きっと力を出しきれない。

 それに元々は私たち家族の問題だから」

 

 

 だから他人(ユーノ)は関係ない。

 私たちの手によって成されるべき。

 

 

「それだけじゃない癖に」

 

 

 少し怒っているような声音だが、険が無い位の区別はつく。

 あえて言うなら、やれやれといった感じである。

 

「私達を手伝うなら、あのバカは管理局とも戦うことになる。

 そういうことも気にしてるんだろう、フェイト」

 

 

 当たり。

 アルフは私の使い魔を伊達にやってない、よく分かってる。

 

 ユーノはこの次元世界を、ジュエルシードの危険から守る為にやってきた。

 なのに私達を手伝うことを選んだら、ユーノは必然的に管理局とも敵対することになってしまう。

 それこそ本末転倒というものだろう。

 

 私達がジュエルシードを集めるために、管理局に協力するのと同じレベルの暴挙だ。

 ユーノは優しいから迷ってるだけで、元いた自分の立ち位置を見失っていない。

 恐らく彼は私達に協力することはないだろう。

 

 

 アルフはユーノの優しさに、つけ込もうとも思っているのだろう。

 と言っても決してユーノを利用するだけ、というわけでもない。

 アルフがユーノをここまで一緒に戦わせたがっているのは彼を気に入っているから。

 でなければ、ずっと閉じ込めておくべきとでも言うだろう。

 もう少しアルフも素直になれたらなぁ、何て考えてしまう。

 

 

「フェイト、今失礼なことを考えなかったかい?」

 

 

「……そんなことはない」

 

 

 本当のことしか、考えていないから。

 何て思っていたのがいけなかったのか。

 

 

 アルフと会話しながら歩いていると、誰かとぶつかってしまった。

 

 

「っきゃ」

 

 

「ふぇっ」

 

 

 痛……くわない。

 双方とも、歩きながらぶつかったので衝撃もそこまで無かった。

 ただ、相手の少女は驚いた拍子に後ろに倒れ込んでしまっていた。

 

 

「あ、ごめんなさい」

 

 

「いえ、私の方こそすみません」

 

 

「ドジだねぇ、ほら、掴まんな」

 

 

 そう言って、手を差し伸べてアルフが彼女を起こし上げた瞬間、それは起こった。

 

 

(この感覚、ジュエルシードが発動した!)

 

 

『二人とも、ジュエルシードが発動したよ!』

 

 

『そんなこと、言われなくても分かってるよ。

 行くよ、フェイト!』

 

 

『分かってる、アルフ』

 

 

 事態の確認をした2人は、念話で互いにその場所へと走り始める。

 起こしてもらった少女が、何か言いたそうにしていたが気にしている場合ではない。

 少女を一瞥したあと、フェイト達は全力でジュエルシードが発動した場所へと向かう。

 ……人目が多く魔法が使えないため、走ってだが。

 

 

 

 

 

「大丈夫……だよね、あの二人なら」

 

 

 自分以外、誰もいない部屋で独り言つユーノ。

 それは自分に言い聞かせるようで、余りに虚しさを伴うものだった。

 

 

(自分は何をしにここに来たのだろう)

 

 

 そう考えさせられるには十分な時間だった。

 今、ジュエルシードを封印する為に奔走しているのはフェイト達。

 自分は安全な場所にいて、何もしていない。

 それがどうしても歯がゆくてならなかった。

 

 

(自分ができること……)

 

 

 少年は悩み続ける。

 飽きることなどはなく、ただ延々と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 神社の長い階段を走る、前へ、前へと。

 ジュエルシードは波動を広げる。

 ここだ!ここだ!と主張するように。

 

 

「見つけた」

 

 

 そこにいたのは犬だった。

 只の犬を名乗るには余りに凶悪な外見が、ジュエルシードを取り込んだ証左だったが。

 

 

「graaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!」

 

 

 本来、生き物が出せない叫びを発して、私達に飛びかかる。

 だが、その動きは余りにも遅い。

 避けるのは容易いだろう。

 

 

 しかし、

 

 

「フェイトに手をだそうなんて100万年早いんだよ!」

 

 

 そもそも避ける必要などない。

 私には優秀な使い魔のサポートがあるのだから。

 

 アルフのプロテクションのプロテクションに阻まれ、そのまま失速する。

 

 

「バルディッシュ」

 

 

『yes,sir.Bind』

 

 

 攻勢を止められた、ジュエルシードモンスターはいとも簡単にバインドに絡め取られる。

 バインドから這い出そうと、身を揺らすが全く意味をなさない。

 そしてそんな隙を見逃す訳が無い。

 

 

「シュエルシード、シリアル16……封印っ!」

 

 

 ジュエルシードが、犬から吐き出される。

 そしてその光を段々と鎮めていく。

 コトリ、と音を立てて神社の石段に力なくその姿を晒していた

 

 

「これで3つ」

 

 

 思わず顔を綻ばせてしまう。

 この世界に来て少しの時間だけで、こんなにも収穫があるとは思わなかった。

 

 これならお母さんにも褒めてもらえる!

 

 

「順調だねぇ、これならあの鬼婆も怒るかとはないね」

 

 

「またアルフは、そんなことを言って。

 お母さんは少しイライラしているだけ、普段はもっと優しい」

 

 

 そう、早くジュエルシードを集めれば昔のような家族団欒が戻ってくる。

 だから、それまでは……

 

 

「アルフ、お母さんの為にも頑張ろう」

 

 

「あたしが頑張るのはフェイトの為さ」

 

 

 アルフは何時もお母さんのことを悪く言う。

 たまたま機嫌が悪い時に、私がお母さんに近づいた私が悪いだけなのに。

 いけないのは私なのだから、罰を受けるのも仕方ないのだから。

 

 

「ただ……」

 

 

 アルフが言葉を選びながら、懸命に何かを伝えようとしていた。

 別に悪いことではないのは分かる。

 少し照れくさそうにさえしているのだから。

 

 

「ジュエルシードを全部集めて、本当にフェイトの言う優しいお母さんに戻ったのならさ、一発殴るだけであの鬼婆を許してやるよ」

 

 

「お母さんを殴るのは許さないよ。

 どうで殴るなら私にして」

 

 

「なんであの婆許すのに、フェイトを殴らにゃきゃいけないのさ!?」

 

 

 アルフは今はこんなこと言ってるけど、何時ものお母さんに会えば分かってくれる。

 だからアルフ、その時は絶対に殴らないでね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さっきの子」

 

 

 私が小物を見ながらの帰り道。

 余所見をしていたせいで、ぶつかってしまった。

 どこか印象深い目をしていた金髪の女の子。

 

 

「何でそう思ったんだろう?」

 

 

 あの目は、そう。

 寂しそうな目をしていた。

 まるで、小さい時の私のような。

 

 

「また、会えるかなぁ」

 

 

 次に会えたなら、友達になってみたい。

 もしかしたら、全部私の錯覚かもしれない。

 だけど、もし錯覚で無かったのなら……。

 

 力になりたい。

 だって私もそれ、分かるから。

 余計なお世話だって思われるかもしれないけど。

 

 

「よし、帰っておやつ食べよっと」

 

 

 あの子と一緒に、おやつを食べながらお喋りするのもきっと楽しいと思う。

 アリサちゃんやすずかちゃんも紹介したいなぁ。

 

 

「ん?」

 

 

 足元に赤い綺麗な珠が落ちている。

 多分、さっきの子が落としたんだと思う。

 

 

「ふふっ」

 

 

 もしかしたら良い口実が出来たのかもしれない。

 今度あの子に会えたなら、これを切っ掛けにお茶にでも誘おう。

 アリサちゃんやすずかちゃんの家の様に、良い紅茶とかはないけど家のケーキはすっごく美味しいと自負している。

 

 

 

 そんなことを思いながら少女はフェイトの落とした赤い珠を拾い、家に帰る。

 お母さんやお父さんがお帰りと返事をしてくれる家へ。




今回はユーノ、影薄かったですね。
ごめんよ、構成力が無いせいで割を食わせてしまって。
しかしユーノ、状況的に囚われのお姫様……?
彼がヒロインの可能性が微レ存?

そして最後の彼女、無論あの娘です。
この小説では大暴れすることなく過ごしていくでしょう(多分)。
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