聖女の姉貴   作:ヘタレ騎士

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どうもヘタレ騎士です。もしジャンヌの姉が共に活躍していたら…そんな物語です。なおこの作品には文章力0や独自展開など多数の点が含まれております。ご注意下さい!





プロローグ

 

 

──1430年、ボールヴォワール城にて……

 

 

 

 

コンピエーニュの戦いで捕虜となってしまったジャンヌ。既に二ヶ月は経過しており、もはやシャルル7世が自身を見捨てたことに薄々だがジャンヌは気がついていた。

 

 

 

──こうなることは分かっていた。でも、それでもジャンヌには神に祈らずにはいられないことがあった。

 

私が幼い頃からずっと面倒を見てくれていた、姉カトリーヌの事である。

神のお告げを聞き、16歳でドンレミの村を出奔した時も、オルレアンでの戦いで怪我を負った時にも…いつだって姉は私を助けて、そして守り続けてくれた。

 

あの時、コンピエーニュの戦いだって姉は最後まで反対し、私を行かせようとはしなかった。命令に背くからではない。ただ私の身を案じ、反対してくれた。

 

 

──どうか姉さんだけでも無事でいてください……そう祈り続けていた。

 

 

 

なのに………

 

 

 

ガンッ!っと扉を蹴破り入ってくる女の姿があった。

 

「意外と元気そうで安心したよ。ジャンヌ」

 

「ねぇ……さん……?」

 

「そう!…全く手間のかかる妹なんだから…私がついてないと本当にダメね」

 

──いるはずがない。でも目の前には私がとてもよく知っている姉さんが目に涙を溜めてながらも私に微笑んだ。

 

私が間違ったことをした時は叱り。

私が頑張った時にはよく褒めてくれた。

王太子様に会いに行くときに助言をくれたのも姉であり、オルレアンで怪我したとき一番心配してたのも姉だった…この戦争を戦い抜けたのも姉がいたお陰であった。

 

 

「ど、どうして助けに来たんですか!こうなることは私も分かっていたのに!」

 

「私は…貴女の姉だもの。前に言ったでしょ?」

 

「わ、訳がわかりません!こんな所まで助けに来る理由にはなりませんよ!」

 

「もう!煩いわね!ほら助けに来たんだからサッサと帰るよ!もう貴女の為に馬車を用意してるんだから!サッサとついて来なさい!」

 

 

私の言い分をバッサリと切り捨てると姉さんは私の手を掴みグイグイ引っ張って行く。いつだって彼女は私を導いてくれた、決して見捨てることなく。

 

 

「で、ですが城内は見張りの兵士がいるので脱出するのは──」

 

「何も正面から脱出する訳ないじゃないの、そんなバカなこと私がすると思ってるの?」

 

 

フッ…と得意気な表情で此方を振り返る姉だが肝心な脱出方法を聞かされてない。

 

 

「い、いえ…ではどうやって出るのですか………というより何故、上に階段を上がるのです?」

 

「………」

 

「……あの、姉さん?どうやって脱出するつもりだったんですか?」

 

 

姉が額にジワリと汗をかき、無言でとある部屋に入り窓を全開に解放する。

 

 

「ね、姉さん…?此処は出口ではありませんよ?」

 

「───だよ」

 

「へ?今なんと仰いました?」

 

 

そう訊くと姉はバッと顔を上げて指を差す。………窓に向かって。

 

 

「此処が出口だよ!なんか文句あるか!!!あ?!」

 

「ひ、開き直った!こんな所から飛び降りたら死にますよ!馬鹿じゃないですか!どうしていつも最後の最後でポカやらかすんですか!?」

 

「だ、大丈夫だってさっき馬車用意させたって言ったろ?下に用意してあるからさ!」

 

「下に馬車を用意したって何の役にも立たないじゃないですか!」

 

「うっさい!サッサと逝け!──────!!」

 

 

姉はそういうと私の両肩を掴み窓から突き落とした。

 

 

う、嘘よ…まさか無事を祈った姉に窓から突き落とされるなんて…神様私が何かしましたか?…というか最後に何て言ったんですか!?そうして少しの間の浮遊感を感じながら私は落ちた。

 

 

 

 

藁山に。

 

 

 

 

「わぷっ!こ、これ藁山?!というか私生きてる?!」

 

「聖女様!今すぐに出発します!」

 

「?!ま、待ってください!次は姉さんが───」

 

そう言うと御者の格好をした男はグッと何かを堪えるような顔をすると首を横に振り、馬車を走らせる。

嫌な予感が駆け巡る。真上を見上げると、姉は何処か泣きそうな顔で、しかし笑って私を見送った。

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

いきなりの事で悲鳴すら上げることなく落ちていく妹。窓から妹を突き落とすという本当にお前は救出に来たのか?トドメを刺しに来たの間違いじゃないのか?と言われそうな所業だったが、肝心のジャンヌは見事に馬車…ではなく荷台の藁山に落ちた。暫くすると藁山から顔を出し目を白黒とさせている。

 

 

「……やっと終わったか。どうにも長い様で短い人生だったな…」

 

 

ジャンヌがこちらに向けて何かを叫んでいるが、暫く返事をせずにただ彼女の顔を見ていた。そうしているうちに馬車はあっという間に遠くに消えていく。

彼女の顔を脳裏に焼き付けるとオレは窓を閉じて、今までのことを思い出しながらジャンヌが監禁されていた部屋へと向かう。

 

──オレには前世の記憶がある。小学校、中学校に通い、高校卒業後は実家にほど近い大学に通いだした。大学生活に慣れ始めた頃、事故に遭いアッサリと死んでしまった男の人生だ。

 

死ぬ瞬間、まだ死にたくない。まだ何も成し遂げていない。そんな感情と共に死んだ。まぁ次の瞬間には赤ん坊だったが。

中世フランスの片田舎に生まれたオレには兄妹がいた。ジャクマン、ピエール、ジャン、オレ、ジャンヌ…

そこでふと思い出したのだ。ジャンヌ・ダルクのことを。救国の英雄、聖女、しかし悲劇の最後を迎えた憐れな少女。

生まれた村がドンレミ村なのだからまず間違いないと思った。

 

まさか歴史的人物の家族に転生憑依?するとは思っていなかったが。

 

確かに彼女は悲劇的な最期を迎える。しかし第二の人生を彼女を助けるために棒に振る気は到底なかった。

何より、彼女を助けることで歴史を歪める事になると未来にどんな影響が出るか分かったものじゃない。だから出来るだけ知らないふりをしよう。

 

 

「そう…考えていたんだがなぁ…」

 

 

こうして彼女を助けに来ている事で分かると思うが、オレはジャンヌと共にドンレミの村から出て来たのだ。では何故そんな事をしたのか。

 

 

「……だってあの子スッゲェ可愛いんだよ!あんないい子どうやって見捨てろって言うんだよ!!!」

 

 

そう!ジャンヌは可愛かった!もはやいい子とかそんなレベルじゃねぇ!天使だ!天使!あの子こそ天使だ!!

 

出来るだけ関わらないようにしてたのに、お姉ちゃん!お姉ちゃん!と後ろをついて回るのだ。そんな可愛い妹を1人戦地に送り出すことが出来ようか!?いや出来ない!

 

歴史なんて知らねぇよ!そんな精神で共にドンレミの村を出て来たのだ。

後悔はしていない。何より妹との旅は最高だった。あの子の為に命を賭けてもいいとさえ思った。思ってしまった(・・・・・・・)

 

オルレアン、パテーの戦い、シャルル7世の戴冠式…そしてコンピエーニュ包囲戦。

ジャンヌと共に戦場を駆けながら彼女の命を助ける為に沢山の策を練った。

そして今回、実行したのだ。

 

作戦は至極簡単。少数で潜入して、彼女を救出する。

───そしてオレが残る。

 

 

…ジャンヌが生きていることは知られてはならない。

ブルゴーニュだけでなく、イングランド、そしてフランスまでもが彼女を追うだろう。

 

…ジャンヌの代わりが必要である。

姉妹という事もあってか、顔はよく似ている。ならば私が務めよう。

 

 

一番最初に思いついた作戦である。しかし、ジャンヌの代わりに捕まるという事は死を意味する。どうしても踏み出せずにいた。

 

───でも、いざ作戦に移したら…あんまり後悔は無かった。

オレの命でジャンヌの命が助かる。

 

……それで満足だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───1431年5月30日、ルーアン。

ヴィエ・マルシェ広場

 

 

 

 

 

あれから幾ばくか時が過ぎてとうとう火刑に処される時がきた。

 

周りにいるのはイングランド人ばかりで、時折、憎しみの篭った声で罵倒し、石を投げつけてくる。

 

ついついイラっと来てしまうが彼らにとってはオレは魔女なのだから仕方ない…中には泣きそうな顔の人々もいるのだから妹の力は計り知れないと姉として内心は鼻高々だった。

 

胸元を見ると、妹にもらった十字架はとうの昔に取り上げられており、そのことが何処か寂しくて、牢の中では決して泣かなかったのに何故か涙が出そうになった。

 

 

 

何も恥ずべき事はしていないのだ。前を向いて堂々と歩くことにする。

行く先には薪がくべてあり、真ん中には丸太のような木が一本だけ立っている。あそこが第二の人生最期を迎える場所だ。

 

 

 

もうすぐ着くと思った矢先、1人の少女が目の前に歩み出た。

少女は何も言わず、手作りと思われる十字架を手渡してくる。

 

「ありがとう!嬉しいよ」

 

礼を言うときは相手の目を見て笑顔で言いなさい。これは前世と今世の母、2人の言葉だ。少女に十字架を貰い、ほんのちょっとだけ心が温かくなる。

十字架を手に持ちぼーっと眺めているうちに体は鎖でグルグル巻きにして丸太に縛り付けられていた。

 

やがて人々の声が最高潮に達したとき、松明が足元に投げ込まれた。

ゴオゥ!っとすぐに火の手を上げた。オレの体を包み込むように火が溢れるが、不思議と熱さや痛みは感じなかった。

……ふと周りを見つめると松明を投げ込んだ兵士が顔を真っ青にして此方を見ている。

 

 

──気にしないでくれ、貴方は悪くない

 

 

どうにも可哀想に思えて言ったのだが、その言葉を聞くと男は号泣した。

 

ありゃりゃ…そう申し訳なく思いながら手元にある十字架を見る。

前世では神なんて信じてなどいなかったが、転生した事と自慢の妹のおかげかは分からないが今では立派なキリスト教徒である。

戦いがない日、聖書の内容を戦友達に字を教わってよく読んだものだ。

 

妹があれだけ信じている神様なのだからきっと死んだ後に労いの言葉くらいは掛けてくれるだろう……そう思うとちょっとだけ面白おかしく感じてしまう。

 

 

 

───主よ、この身を委ねます……なんてね

 

 

 

段々と視界が霞み始めた頃、脳裏に走る光景は前世の記憶なんかではなく、妹との楽しかった日々だった。

 

 

今頃何をやっているだろうか、何時も見たいに元気に飯を食べていればいいんだが…

 

そんな心配と共に意識は途絶えた。

 

 

 

 





いかがだったでしょうか?今回が初めての投稿の為、至らない点、間違いなどあると思いますがお手柔らかに…また誤字脱字などの報告、感想は大歓迎です。

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