HSDD 転生生徒のケイオスワールド2 卒業生のアザゼルカップ   作:グレン×グレン

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女王と英雄と実兄と

「……ああ、汝は神々に翻弄されし魔導の女王」

 

 それは、魔術を起動するパスコード。

 

「竜すら眠らす魔導の知識を、どうか愚かな魔術使いに与えたまえ」

 

 それは、特定条件における最強の切り札を呼ぶ至高の呪文。

 

 そして―

 

「―行くぜ相棒、お前の同類を、救ってくれ!!」

 

 彼にとっての最高の相棒の力を借りる、願いの言葉。

 

 そして、彼女はそれに応える。

 

「七式起動、モデル弓式!!」

 

 その言葉と共に展開されるのは、紫のローブとねじ曲がった短刀。

 

 そして同時に籠手から莫大な力が放出される。

 

「チッ! 人形ども!! 先にそいつをぶっ殺せ!!」

 

 流石にバスラ―もその危険性に気が付いたが、しかし一歩遅い。

 

破戒すべき(ルール)―」

 

 逆にそれで間合いがつまり、そして何より彼には赤い籠手がある。

 

『Penetrate!』

 

 天使が放つ余剰次元薄膜など、天龍が放つ透過の前には無力。

 

 そして何よりどんな術式であろうとも―

 

「―全ての符《ブレイカー》!!」

 

 彼女の前には、無力に等しい。

 

 そして次の瞬間、全ての術式を消滅されて人に堕ちた三人を、兵夜は軽やかに抱えると速やかに着地した。

 

「―夏音!!」

 

 思わず駆け寄るラ・フォリアに夏音を預けながら、兵夜は圧倒的勝者の笑みを浮かべて残る三人を見る。

 

「さて、おたくの術式は全部無に帰したわけだが、どうするつもりだ?」

 

「余剰次元薄膜を無視するどころか、神格振動波駆動術式に匹敵どころか上回る魔術無効化能力とは……っ」

 

 その優れた頭脳ゆえに、全てを理解した賢生が崩れ落ちる。

 

 自分の全てが無になったことで、完膚なきまでに敗北を認めてしまったのだ。

 

「な、嘘だろ……オイ!」

 

「賢生の術式をあっさり解除!?」

 

 狼狽するロウとバスラ―に兵夜は視線を向けると単刀直入に告げる。

 

「さて、非戦闘員にまで手をかけるような輩、この場で殺されても文句は言えないわけだが」

 

 しかし、兵夜としては懸念材料があるがゆえにどうしてもこの場で殺すことはためらわれる。

 

 ゆえに、さっさと問いただすことにした。

 

「アテってのはまさか、白髪でそっくりさんが大量にいる「……これが」が口癖の奴とか言わないだろうな」

 

 そう、それこそが兵夜の最大の懸念。

 

 今回簡単に圧勝できたが、それは見事なまでの相性差があったからのこと。

 

 模造天使の余剰次元薄膜は中級以下はもちろん、上級ですら勝ち目がない。少なくとも対抗装備の開発は難航するだろう。

 

 そして、フォンフ達ならば疑似赤龍帝と破戒すべき全ての符の組み合わせなら余裕で突破できることは即座に想定できる。こんな敗北で見切りをつけるとは思えない。

 

 ゆえに速攻で問いただして、できることなら技術を確保しておかねばならない。

 

 その判断は的確で、しかし全てが遅すぎた。

 

「五秒以内にYESorNOで答えろ。さもないとこのまま半殺しに―」

 

 さっさと聞き出そうと殺意を全力にして聞き出そうとした次の瞬間―

 

「―炎神の咆哮(アグニ・ガーンディーヴァ)

 

 ―炎を纏った矢の一撃が、兵夜を吹き飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「宮白!?」

 

 一瞬で起きたその光景に、古城は呆気に取られて反応できなかった

 

 どこからともなく放たれた超音速の一撃が、一瞬で兵夜を吹っ飛ばしたのだ。

 

「かまうな! シルシ、敵影を探せ!!」

 

「既に見つけたけど……嘘でしょう!?」

 

 致命傷を避けていた兵夜の命令を聞く前から実行していたシルシだが、その結果に唖然とする。

 

「キロメートル換算で10は離れてる! あんな距離から精密狙撃だなんてありえない!?」

 

「はぁ!? 見間違いとしか思えないんだけど!?」

 

 反撃体勢を整えていた紗矢華が唖然とする中、さらに遠距離から追撃が放たれる。

 

 威力は先ほどに比べれば低いが、それでも列車砲の砲撃と見間違うような攻撃が、遠慮なく連射で正確に打ち放たれた。

 

 そんなもの、基本が人間の雪菜達では耐えられない。

 

「……獅子の黄金(レグルス・アウルム)!!」

 

 とっさに古城は眷獣を召喚して迎撃する。

 

 莫大な雷光を放つ戦略兵器クラスの一撃は、しかし矢の連射を阻むので精一杯だった。

 

 その光景に、雪菜は目を見開いて愕然とする他ない。

 

 天災の具現化ともいえる真祖の眷獣。それを驚くべきことに一人で相手取っている敵がいきなり現れたのだ。当然の反応以外の何物でもない。

 

「先輩の眷獣でも迎撃に手間取るような敵がいたなんて!」

 

「どうするのよコレ! 海の上からあんなに離れてたら反撃できないんだけど!?」

 

「仕方ないわね。こうなったら不死の力を頼りに接近するしか……」

 

 このままでは手が出せない状況に焦る紗矢華に安心させるように微笑みながら、シルシは一歩前に出る。

 

 届くかどうかはギリギリだったが、しかしこうでもしなければジリ貧。こうなれば、アーティファクトを使用しての力押し以外に狙い目はなく―

 

「いいえ。それは無理よ」

 

―そして、それをさせない程度には敵も優秀だった。

 

「前衛も用意しているとは驚きでしたね。乱戦になれば狙撃は難易度が高くなるはずですが」

 

 呪式銃を構えたラ・フォリアの視線の先、そこにいたのは一人の少女。

 

 黒髪を短く切った鋭い視線の少女が、いつの間にか海岸に立っていた。

 

 少女は拳を構えてステップを踏みながら、口を開く。

 

「先に言っておくけど、私は宮白兵夜を殺すのが目的だから、それとそこの三人を引き渡してくれるなら見逃してもいいけれど」

 

「論外ですね」

 

 即答で、ラ・フォリアは拒否を示した。

 

 当然だ。彼女にしてみれば、賢生たち三人は叔母を実験台にした怨敵。

 

 ましてやバスラーとロウは飛行船を襲撃して自分の従者を何十人も殺した仇でもある。

 

 しかるべき裁きを下さずに、明らかに犯罪者と思われる相手に引き渡すなど選択肢としてあり得ない。

 

 そして、そんなことは少女も納得済みだった。

 

「ま、いうと思ったわ……よ!!」

 

 ステップから一気に加速すると、少女は真っ先に古城を狙う。

 

 遠距離砲撃を防いでいるのは古城の眷獣だ。それを殺せばすぐにでも戦いは終わるといってもいい。

 

 だが、そんなことをむざむざ許すほど甘い戦いなわけがなかった。

 

「雪霞狼!!」

 

 一瞬先の未来を読めるがゆえに不意打ちの通用しない雪菜が速攻で迎撃を行い、古城に向けて放たれる拳を弾き飛ばす。

 

 そして、そこから連携で紗矢華が剣で切りかかった。

 

 紗矢華が保有する煌華麟は、剣と弓の二つの形態を保有する複合武装。

 

 弓の形態で使えば鳴り鏑矢を応用した大規模魔術。それによる一瞬での高レベルの詠唱により時間のかかる術式を一瞬で放つ高い性能を発揮する装備。

 

 そして、剣の形態では疑似的な空間切断による攻防を行う。

 

 疑似的とはいえ空間ごと切断されれば、切れぬものなど存在しない。

 

 そう、存在しない……()()だった。

 

「甘いわね」

 

 その一撃は、少女の腕で止められた。

 

 そして、その腕は人間のそれではなくなっていた。

 

 甲殻類を思わせる外骨格に覆われたそれは、間違いなく強度の点で人間のそれを上回る。

 

 だが、それでも本来空間切断を止めることなど信じられない芸当だ。

 

 だがそんな奇跡の芸当を成し遂げながら、少女は何一つ動揺せずに冷静だった。

 

 不可能を可能とした高揚もなければ、想定外の奇跡に対する動揺もない。

 

 そこにあるのは、ただ当然の事実を受け止める冷静さだった。

 

「悪いけど、攻撃の余波で空間が裂けることぐらい、あの世界の最上級なら割とできるから」

 

「そうですか、それは実に興味深いですね」

 

 その言葉に答えながら、ラ・フォリアは至近距離で呪式銃を発射する。

 

 おそらくこれでも死なないと確信しているからこそできる容赦のない攻撃。

 

 そして、確かにその攻撃でも彼女は死ななかった。

 

 そもそも、当たってすらいなかった。

 

「……正直に言うと、宮白兵夜以外の相手は殺したくないんだけど」

 

 そうやれやれと首を振る少女は、既に十メートルは離れている。

 

 誰の目にも止まらない神速の移動。しかし、その正体を約二名は知っている。

 

「瞬動術!? やっぱり私達の世界の人間ね!?」

 

 千里眼で未来を疑似的に読んで先読みしていたシルシが、それに素早く追いついてエストックによる攻撃を連続で放つ。

 

 そしてそれを冷静にかわしながらカウンターのジャブを叩き込みつつ、少女は敵意を込めた目で兵夜を睨んだ。

 

「人の人生を台無しにしてくれた割には、自分の人生は幸福そうね。反吐が出るわ!」

 

「……逆恨み以外で、人から恨まれる覚えは、ないんだがな」

 

 よろよろと立ち上がりながら、兵夜はすぐに龍の鎧を展開すると遠方を睨む。

 

「精密狙撃でこの距離を当てるとは。やはり幻想兵装か」

 

 陣地の極限ともいえる英霊の技量。それぐらいなければこの奇跡の攻撃はあり得ない。

 

 そして、それはかなり危険な事態である。

 

「この距離からの狙撃。何とかするには攻撃をかいくぐって接近する以外に道はないんだが……」

 

 そう言いながら、兵夜はちらりを視線を少女に向ける。

 

「させると思う?」

 

「ですよね」

 

 ああ、これはかなり危険な状況だ。

 

 そして、更に危険な状況が増えてきた。

 

 海から出てくる人影が更に一人。

 

 日本刀を構えた一人の男。それも全く隙を見せない超一流の戦士としか思えない男が、更に追加で現れた。

 

 そして、それを見た兵夜は心から嫌そうな顔を浮かべてため息をつく。

 

「……おい、なんであんたがここにいる」

 

「決まっている。武の神髄を極めるには、生死の境を超えることが最も確実にして基本。つまりはそういうことだ」

 

 まっすぐに、躊躇いなく答えられたその言葉に兵夜は割とまっすぐに敵意を向けた。

 

 仲がいいなどとは口が裂けても言えないが、しかしこの再会だけはできれば嫌だと思っていた。

 

 それを平然と行う姿に、殺意すら生まれてくる。

 

「ふざけたことを言うなよ、()()

 

 そこにいる男の名前は宮白天騎。

 

 宮白兵夜の実の兄であった。

 




馬鹿兄貴登場。

いっそのことリインカーネイション編で出すことも考えてましたが、タイミングがずれてこんな時期に。

しかも兵夜の兄貴なので能力高めの強敵となる予定です。そして兵夜の実兄なので別の意味ですごいところがあります。









そして幻想兵装味方側バージョン登場。通称七式ですが、まだまだ未完成です。

とりあえず弓式は現在兵夜の専用武装。彼がアーチャーの内臓を大量に移植しているからこそできる芸当でもあります。
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