HSDD 転生生徒のケイオスワールド2 卒業生のアザゼルカップ   作:グレン×グレン

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今回の題名、完璧に制作側の言葉です


更新しないって言ったけど、ついつい書き溜めちゃうことってよくあるよね(汗

 

 思い返せば数日前のあの騒ぎは、本当に大変だったが、しかし人生最大級というほどでもない。

 

 なにせこちらは世界大戦や異世界間侵略の危機などを潜り抜けてきた猛者だからな。感覚がマヒしてもおかしくないレベルでスケールが違う。

 

 とはいえ、数十万人の命がかかった危機を乗り切ったのだから、報酬はあってしかるべきだと思う。

 

 おのれ獅子王機関。そろそろ嫌がらせの一つでもやってやろうか此畜生が」

 

「神魔殿。お言葉でござるがあれだけの大型浮遊物体の言い訳をさせられたのなら、獅子王機関も痛み分けぐらいには思っていると思うでござる」

 

 リディアーヌ、うるさい。

 

「まあ正論だわな。とはいえ思惑通りに被害を最小限に抑えたんだから、俺らが責められる筋合いはねえけどな」

 

「同感ね。古城くんや雪菜ちゃんをいいように使っている節があるし、それ位の嫌がらせはしても罰は当たらないでしょ」

 

「実際は嫌がらせどころか、其れしか手がなかっただけですけれどね……」

 

 と、俺の眷属達が一斉にうんうんと頷いていた。

 

 ちなみにここは冥界の病院だ。それも最先端医療を行う医大でもある。

 

 そんなところにリディアーヌを連れている事実は大したことではない。

 

 いかに絃神島が滅びるような危機に一枚噛んだとはいえ、それも国家機関が動いたことだ。それも俺達と接点のある国家のやらかしたこと。

 

 下手につつけば貴重な特殊能力やら異能の宝庫である世界とのコンタクトが取りづらくなる。それも暁及び姫柊ちゃんという貴重なチームメンバーを連れてくることも困難になるかもしれない。

 

 故にリディアーヌを利用して堂々と告発するなんて真似は流石にできなかった。

 

 しかしこの小娘が色々手を貸した所為でこっちが面倒なことに巻き込まれたのは事実。無罪放免というわけにもいかない。

 

 と、言うわけで―

 

「で? 肝心のロボットタンクのライセンスはくれるんだろうな?」

 

「うぅ……。足元を見すぎでござる。このライセンス料は流石に赤字一歩手前でござるよ」

 

「やかましい。ディディエ重工に最小限とはいえ儲けをもたらしたのだから感謝しろとは言わんが文句は言うな」

 

 親父の会社にディディエ重工の開発した技術の数々を提供させてもらった。

 

 コラ。そこ鬼とか言わない。足元見て買い叩いたが、儲けが出る程度のライセンス料は支払っている。……正姫工業が。

 

 いやそこ文句は言わないでくれ。異世界の独自技術をもたらす商談を持ってきたんだから、それだけでも十分すぎるほど親孝行してるだろう。俺も暁の損失補填の肩代わりで、ポケットマネーは流石に減りが激しくて損失を抑えたくなっているんだ。

 

 それはともかく。

 

「大体そっちも中々抜け目ないじゃねえか? 未だ姫柊ちゃんや暁しか直に目にしたことのない、この異世界の地球を見てみたいなんて」

 

「はっはっは。拙者も興味があったのでござるよ。しかもリアルサムライが見れるとなれば、このチャンスは見逃せないのでござる」

 

 そうリディアーヌが言うのも当然だろう。

 

 ……今回のアザゼル杯の試合は、アルサム・カークリノラース・グラシャラボラスと、サイラオーグ・バアルの試合である。

 

 アルサムのチームに正体を隠して沖田総司がいることは知っての通り。新選組一番隊隊長ともなれば、まさに歴史の生き証人であるリアルサムライ。

 

 後始末の情報操作に協力させているうちに世間話で漏らしたのを覚えられていたらしく、ライセンス料を値切る代わりに要求が出てきてしまった。

 

 そんなわけで試合観戦の為に連れてきたわけだが、それだけでこんなところには来ない。

 

 連れてくるのに南宮那月の協力が必要になったが、こんなところまで来る羽目になった理由は……だ。

 

「……ふぅ。なんでこんなところまで検査の為に来なくてはいけないんですか」

 

 ……結瞳ちゃんの検査の為だ。

 

 ランサーの宝具に対抗する為に使った中和剤。あれはランサーが幻想兵装で出される可能性などを考慮した結果、念の為に開発したものだ。

 

 しかし、ランサーの宝具の中和剤である以上、テストの為にはランサーの宝具を喰らった者が出てこなくては臨床試験のしようがない。

 

 しかし態々召喚するとか馬鹿でしかない。と、いうわけで必然的に使った後の悪影響や、本当に上手く行っているのかどうかも分からない。

 

 其の為検査は必要だったので、連れてくる必要があったわけだ。

 

「いっそのこと古城さんが血の従者にしてくれたらよかったんですけど。……そうすれば名実ともに私は古城さんのお嫁さんということに!」

 

「はいはい落ち着け。もとをただせば君が変なことを考えたのも原因の一つなんだからな」

 

 妄想を始める夢魔の後頭部にチョップを叩き込みながら、俺は今回の試合について考える。

 

 なにせ、この試合は若手悪魔の中でも最高峰の悪魔同士の戦いだ。

 

 グラシャラボラス家次期当主……を通り越して九大罪王候補であるアルサム・カークリノラース・グラシャラボラス。

 

 バアル家次期当主であり、かつアルサムほどではないが九大罪王の純候補位の位置には立っているであろうサイラオーグ・バアル。

 

 ともに若手純血悪魔の中では最強レベルの実力者。加えてどちらも追加武装込みなら魔王クラスだ。乳乳帝を発動させたイッセーを打倒することが可能な数少ない純血悪魔でもある。

 

 その二人の試合ともなれば、もはや注目度は極めて高い。

 

「間違いなく恐ろしいレベルの激戦になるな。リオちゃんとコロナちゃん大丈夫だろうか?」

 

「案外大丈夫なんじゃねえか? まあ、サイラオーグ・バアルの試合に臨む姿勢は怖がりそうだが」

 

 だよなぁ。

 

 相手の精神を砕く勢いで試合に挑むサイラオーグ・バアル。

 

 あの男は、試合ですら実戦と同じ意気込みで挑んでいる。

 

 それぐらいしなければ隙を見て上役が何かしてきかねないのもあるだろう。それほどまでに彼の立ち位置は苦労する。

 

 だが、このアザゼル杯で好成績を残せばそれも変わらざるを得ない。

 

 異形社会において極めて高い注目度を持つこのアザゼル杯。これで成果を上げた者にそれ相応の待遇をあたえなければ、異形社会で干される可能性がでかいからだ。

 

 王の駒の不正使用の連発がばれて大打撃を受けている、今の大王派にとってそれは致命傷だろう。俺も口を酸っぱくして言っているので大丈夫だと思う。

 

 それに、次期九大罪王準候補なのは間違いないのだ。そのサイラオーグ・バアルがアザゼル杯で上位入賞すれば大王すっ飛ばして九大罪王につけることも不可能ではない。そうすれば大王にする必要もないのだ。

 

 故にむしろ不正にならない範囲でサポートするように念押ししているが、さてどうなるか。

 

「自分の試合じゃないのに難しい顔してるんですか? 大人って余計なことを考えるんですね」

 

「周りが考えてると、こっちも考えないといけないんだ。大人の社会は面倒なしがらみが多くて難しいのさ」

 

 結瞳ちゃんにそう答え、俺は立ち上がる。

 

 検査結果は良好。この調子なら問題はないだろう。

 

 ……さて、それでは試合を見るとするか。

 

「あ、兄上。試合の開始時刻が間違ってましたわ。もう始まってますの」

 

 もっと早く言って雪侶!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 既に戦闘も中盤になっているが、何とか試合会場には間に合った。

 

「遅かったな、もう盛り上がってるぞ?」

 

「わ、悪い。時間間違えた」

 

 暁にそう返すと、俺はすぐに仕合の様子を確認する。

 

 ……ビルがポンポン切り飛ばされたり粉砕されたりしていた。

 

 そしてその破壊を巻き起こすのはアルサムとサイラオーグ。

 

 二人の戦闘スタイルは基本近接戦闘。斬撃と打撃という違いはあれ、飛び道具はあまり使わない。

 

 それであれである。色々とおかしい。

 

「彼氏殿彼氏殿! 件のサムライブレード選手は何処でござるか? リアルサムライは何処に!!」

 

「え? ああ、あっちで大暴れしてるぞ」

 

 と、リディアーヌの問いに暁が答える先、そこではサムライブレードこと沖田総司が、サイラオーグのチームメイトを相手に無双ぶちかましていた。

 

 サイラオーグ・バアルの眷属は決して弱くはない。

 

 マグダレン・バアルの眷属もまた、バアル家次期当主だった男の眷属なだけあって、若手悪魔の中ではかなり強い部類だ。

 

 しかし、それが相手になってない。

 

 これはサイラオーグがアルサムを倒せなければ、紫金の獅子王チームの敗北は免れない。

 

 流石はルシファー眷属。シャレにならん。

 

「……なあ、兵夜。ちょっといいか?」

 

 と、試合を見ていたノーヴェが視線をサイラオーグに向けていた。

 

 心なしか、その表情は険しい。

 

「どうした? なにか気になることでも?」

 

「あの、サイラオーグとかいう人のことだけどさ。戦い方に問題ないか?」

 

 ふむ。

 

「確かにそうですね。有効打はお互いにもらっていないのに、なぜか口から血が流れています」

 

「僕らが見えない、見えない速度で一発もらったとか?」

 

 姫柊ちゃんと須澄が首をかしげるが、別にそういうわけじゃない。

 

「……どちらかというと自壊じゃない? 肉体の限界を超える速度で動いて内蔵が傷ついたとか」

 

 アップ、いい線ついてる。

 

「まあ近いな。そもそも二人はお互いに覇を使っている。アルサムがそうなってないのがおかしいんだ」

 

 本来、覇とはそういう物だ。

 

覇龍(ジャガーノート・ドライブ)にしろ覇獣(ブレイクダウン・ビースト)にしろ、覇というのは本来自らの生命力を代償として捧げて発動する力。文字通り圧倒的な力を手にすることができるとはいえ、その反動は特別でかい」

 

 そう、それこそが覇が不用意に使用できない理由だ。

 

「普通なら寿命がごっそり削られる、文字通り最終兵器ですの。莫大な魔力でそれを制御できるヴァーリ・ルシファーやアルサムさんがおかしいのですわ」

 

 雪侶の言葉に、全員が振り向いてからもう一度サイラオーグ・バアルを見る。

 

 そう、サイラオーグ・バアルの獅子王の(レグルス・レイ・レザー・レックス)紫金剛皮(インペリアル・パーピュア)・覇獣式は変則的だが覇獣そのものだ。必然的にごっそり生命力を消耗する。

 

「サイラオーグは無能ゆえにアルサムやヴァーリのような手段が取れなくてな。それでも肉体の負担が非常に大きい程度で済むことが、あれが別の意味で化け物なことの証明なんだが……」

 

 とはいえ、そうでもしなければ覇剣を抜いたアルサムに対抗することはできまい。

 

 イッセー達相手にほぼ完勝したこともあり、アルサムは悪魔からの参加チームの中では現時点で最強候補とすら言われている。

 

 既に奴は神クラスすら倒してる。それもイッセー達と戦った時より落ち着いてでだ。

 

 調子ぶっこいて出てきた神クラスの大半は、アルサムに戦慄しているという話すら聞く。

 

 それほどまでに魔王剣の力は恐ろしい……というわけでもない。

 

 ルレアベさえ封じれば勝てると、複数の神クラスが参加しているチームが総力を挙げてルレアベに封印をかけるという戦術を取った。

 

 そしてその隙をついて相手チームの主力戦闘要員がアルサムに殴り掛かり―

 

 ―五分後、全身を殴打されてリタイアした。

 

 それと神クラスの一人はアルサムの魔力砲撃で滅多打ちにされた。

 

 最終的に判定勝負になったが、その神クラスチームはアザゼル杯を辞退したという。

 

 アルサム・カークリノラース・グラシャラボラスは魔王剣を使うから強いのではない。強いからこそ魔王剣に選ばれたのだと、この時点で誰もがいやというほど実感した。

 

 実際、俺は見ていないがこの試合でのアルサムとサイラオーグは、最初は生身での戦闘を繰り広げていたらしい。

 

 魔力による中遠距離戦というオーソドックスな戦法で、アルサムはサイラオーグ・バアル相手に真正面から渡り合って見せた。

 

 そしてついに魔王剣ルレアベと獅子王の戦斧を抜いて本番という流れだった。

 

「……ただの試合においても、相手の精神を殺す勢いで勝利をつかむ。それほどの執念があったからこそ、サイラオーグ・バアルは悪魔として非才を通り越して無能でありながら、若手最強とまで称されるようになった。その執念、読み間違えると心が死ぬぞ」

 

 いや、冗談抜きでやばいからな。

 

 純血若手悪魔なら、あの二人に並べる者はいないんじゃないか?

 

「……あの旦那にもいろいろあるってことか」

 

 ノーヴェはその試合を見ながら、そう呟いた。

 

 

 

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