HSDD 転生生徒のケイオスワールド2 卒業生のアザゼルカップ   作:グレン×グレン

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さて、バトル始まります


大波乱の、予感です!

 

 フォンフ・ランサーは一礼を阿夜に返す。

 

 たったそれだけの行動で、阿夜は得心したようだ。

 

「ふむ。汝はよもやLCOと手を組んだのか?」

 

「ああ。研究データのやり取りをするついでに、監獄結界の破壊の手伝いを任されてね。もっとも、本命の貴女には必要なかったみたいだが」

 

 そう言いながら、フォンフは視線を監獄結界の囚人達に向ける。

 

 その視線は、値踏みに近いものだったが、すぐにため息をともに肩をすくめた。

 

「……やめておこう。どうやら、言うことを聞いてくれそうなのがほぼいない」

 

「あぁん!? なんで俺達がお前なんかの手伝いをしなきゃならねえんだよ?」

 

 さっきすら込めてシュトラ・Dが睨み付けるが、フォンフは涼しげに受け流す。

 

 シュトラ・Dも仮にも脱出に手を貸したものを即座に殺すつもりはないのか、攻撃はしてこなかった。

 

「……まあいい。空隙の魔女を殺せば、残りの連中も解放される。こういうのは質だけじゃなくて量も必要だし、何より監獄結界の囚人なら木っ端クラスでも充分禍の団の中堅どころぐらいは―」

 

「―待てよ。させると思ってるのか」

 

 古城は、立ち上がると魔力を込め始める。

 

 体調は万全には程遠いが、しかし引くわけにはいかない。

 

 そもそも、監獄結界を破るために自分の力が使用されたのだ。責任も多少は存在する。

 

 第一、自分の恩人にして担任教師をむざむざ死なせるつもりはかけらもなかった。

 

「てめえら全員ここで叩きのめす! 那月ちゃんのところにはいかせねえ」

 

「ったく。たかが真祖風情が、俺の邪魔をする気かぁ?」

 

 シュトラ・Dが腕を鳴らしながら、監獄結界から飛び降りる。

 

 彼は全くもって古城を恐れていなかった。

 

 言ったとおり、真祖風情にやられるような自分ではないという自信があったからだ。

 

「くたばりやがれ、第四真祖ぉ!」

 

 そしてそのまま腕を振り下ろし―

 

「―あら、そうはさせないわよ?」

 

 ―そのまま高出力の火炎とぶつかり合った。

 

 その出力は、下位の眷獣をしのぐ破壊力。

 

 間違いなく並の魔族なら一瞬で消し炭にする一撃が、しかしシュトラ・Dの小手調べの一撃に相殺される。

 

 だが、その光景に驚いたのは、何よりもシュトラ・Dだった。

 

「んだとぉ? 俺の轟嵐砕斧を見切っただと!?」

 

 警戒心を全力で出しながら構えるシュトラ・Dの前に現れるのは、青い髪を伸ばしたスレンダーな少女。

 

「……シルシさん!?」

 

「数日ぶりね暁くん。……助けに来たわよ」

 

 平然と長髪をなびかせながら、シルシが悠然と微笑んだ。

 

「はっ! 俺の轟嵐砕斧を見切るとはやるじゃねえか姉ちゃん! プライド傷ついちまったから本気出すか!」

 

 シュトラ・Dは驚いている古城と雪菜をよそに、遠慮なく追撃を放つ。

 

 口調から怒気が見え隠れするほど、自分の自信の一撃を出し切る前に止められたことが腹に据えかねているらしい。

 

 だが、その一撃は全くもって当たらない。

 

 誰が見ても分かるぐらい余裕をもって、シルシは一歩右にずれる。

 

 そして、破壊はそのまま素通りした。

 

「……不可視に頼りすぎで雑ね。悪いけど、眼は良いからこの程度簡単に見切れるの」

 

「んのアマ! よけてんじゃねえ!!」

 

 青筋を浮かべながら遠慮なく放たれる連続攻撃を、しかしシルシは涼しい顔でかわしていく。

 

 シルシ・ポイニクスの戦闘能力は、上級悪魔としては低い部類に相当する。

 

 フェニックス分家であるポイニクスに由来する再生の力は強大だが、それを踏まえてもフェニックス家の系列の部類では低いレベルでしかない。

 

 だが、一つだけ圧倒的に優れているのが目だ。

 

 シルシの右目は高レベルの千里眼。それも、状況次第では相手の心の内すら見通すほどの力を持つ。

 

 その前に、半端な不可視は意味をなさない。それによって発生する力すべてを完璧に見切る。

 

 その特性だよりの戦闘スタイルでは、圧倒的に相性が悪い。

 

「あらあら、私はこれでも弱い部類なんだけれど? この程度なら簡単に倒せるわよ?」

 

「んの小娘ぇ!! うざってぇんだよ!!」

 

 激昂するシュトラ・Dは広範囲に攻撃を放つが、しかしそれすらシルシはあっさりと回避する。

 

 既にシルシには相手に攻撃が大体読めていた。

 

 絡繰りはわからないが、放たれる攻撃は多数放たれることはあっても一つ一つの攻撃範囲はそこまで広くない。

 

 ならば、その攻撃の隙間を狙ってかいくぐれば何の問題もない。

 

 ましてや、自分は速度に優れた騎士の駒で転生した眷属悪魔。この眼と併用すれば、雑な攻撃などではやられはしない。

 

「とりあえず、一人消えてもらおうかし―」

 

「サガっていろ、おマエではムリだ」

 

 しかし、敵もまた何人もいる強敵達。

 

 鎧を身に纏った男が、大剣を振り下ろしながら降下する。

 

 シルシはそれを素早く避けるが、胸から炎が噴き出す。

 

 回避しきれずかすめたのだ、それも、それだけで常人なら即死するほどのダメージが刻まれた。

 

「ほぅ? 貴様も炎を使えるのか。なら儂とどちらが上か比べるか?」

 

 さらに、修行僧のような老人が炎を放つ。

 

 攻撃の余波でバランスを崩したシルシではそれを回避しきれない。

 

「……雪霞狼!!」

 

 だが、それは雪菜が振るう雪霞狼の一振りで霧散する。

 

 神格振動波駆動術式を保有する雪霞狼の一閃は、魔力による攻撃ならば問答無用でかき消せる。

 

 これもまた相性の問題。老人の能力では雪菜は倒せない。

 

「小娘……っ」

 

「うぜえんだよこのアマ共!!」

 

 老人とシュトラ・Dが睨み付ける中、既に回復を終えたシルシと雪菜が、同時に得物を構える。

 

「とりあえず暁くんはその子を連れて下がりなさい!」

 

「先輩の眷獣では火力が強すぎます! こんなところでは戦えません!」

 

「バカか! だからってお前らを置いていけるわけが―」

 

「―ヨソミをしているヨユウが、あるのか?」

 

 そこに、巨漢の男が剣を構えて突撃を仕掛ける。

 

 かすめただけで上級悪魔に重傷を与える一撃。それに耐えられるものなどこの場には―

 

「スーパー! 雪侶! キック!!」

 

 ―否、ここに何人もいる。

 

 氷雪を纏いながら飛び掛かる少女が、その一撃を蹴りで相殺する。

 

 一撃で爆発が起きたのかと錯覚するほどの破壊が起きるが、しかしその中心部にいる二人は無傷。

 

 そのままお互いに反作用で弾き飛ばされるが、片方は笑みを、片方は苛立ちを浮かべる。

 

「コムスメ……っ」

 

「ご無事ですのシルシ義姉様方! っていうか状況が読めませんのよ!?」

 

「雪侶さんまで!? なんでこんなところに!?」

 

 雪菜は戦闘態勢をとりながらも、しかし状況が全く読めない。

 

 そもそも、なぜこんなところにシルシと雪侶がいるのか。

 

 いや、増援としては非常にありがたいメンツなのだが、それはそれとして疑問だらけだ。

 

 そして、そんな時間を与えてくれるほど相手も甘くなかった。

 

「あら、そんな話し合いをしていていいのかしら?」

 

 美女の周囲から大量の巨大な蜂が現れ、一斉に五人を包囲する。

 

 それらは一体一体が半端な攻魔師を凌駕する化け物。眷獣だった。

 

 それすなわち、その女性の正体が吸血鬼であることの証明。

 

 しかも、この大量の数はすなわち高位の吸血鬼の証である。

 

 さらに、白衣の男が指を鳴らすと、大量の狗の眷獣が追加で現れる。

 

 溶岩でできた眷獣が、一斉に火炎弾を発射した。

 

「くそ! こうなったらイチかバチか―」

 

 古城は眷獣を使う覚悟を決める。

 

 この全方位攻撃。雪菜達ではカバーが追い付かず―

 

「おいおい、こんなところでんな大火力出すんじゃねえよ」

 

 しかし、それより早く全方位に大量の蠅が現れた。

 

 それも、圧倒的な密度の魔力で構成された、圧倒的な力の具現だった。

 

 それらが結界を生み出し眷獣を攻撃を防ぐ中、さらに攻撃を受け止めながら突貫するのは一人の青年。

 

 グランソード・ベルゼブブが、遠慮なく巨漢を殴り飛ばす。

 

「おらよっと!」

 

「ぬっ!?」

 

 巨漢はそれを剣で受け止めるが、衝撃を受け止め切れずに十メートルは弾き飛ばされた。

 

 そして、それだけの一撃を放ったグランソードは、感心するかのように殴りつけた手を見据える。

 

「カッカッカ! カウンターが決まりかけたぜ、やるじゃねえか!」

 

「グランソードまで!」

 

「な、なんでみなさんこんなところに!?」

 

 さらにとどめといわんばかりの増援に、古城も雪菜も唖然となる。

 

 もうこれでは、宮白兵夜眷属が総出ではないか。

 

 と、いうことは―

 

『あー暁に姫柊ちゃん! そして我が眷属達に告げる!』

 

 さらにスピーカーで拡大された声が、想定通りの人物の存在を告げた。

 

『とりあえずいったん仕切り直しだ! 全員すぐに乗り込む準備をしろ!!』

 

 装甲車から、兵夜の声が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まったく、なんだこの状況は!

 

 ゴロゴロとやばそうな連中が大量に。それも一部は禍の団の幹部クラスがいるじゃないか。

 

 こんなの全員まとめて相手できるか。とりあえず仕切り直して増援を求めないとまずいな。

 

「煌坂! 制圧射撃頼む!」

 

「わかってるわ! 雪菜も暁古城も早くこっちに!!」

 

 煌坂に援護射撃を任せ、俺はすぐにドアを開ける。

 

「全員乗り込め! いったん逃げるぞ!!」

 

「おうよ大将! ほらよっと!」

 

「待て待て待て待て! 一人で乗れる!!」

 

 暁とぼろぼろの女の子をグランソードが抱えて乗り込み、さらにシルシ達がそれに続く。

 

 それと同時に、俺は即座にアクセルを踏み込んだ。

 

「撤収!!」

 

 遠慮なく加速し、俺はすぐに距離をとる。

 

 ……っていうか、なんだこの状況は!

 

「暁に姫柊ちゃん! 悪いんだけど詳しい説明よろしく!! 俺簡単にしか聞いてない!!」

 

「あ、ああ。実は……いて!!」

 

 地面がガクガクだから揺れまくってるな。

 

「……シートベルトつけろ。まずはそれからだ」

 

 そんなこんなで十分ぐらいかかって状況把握。

 

 どうやらこのぼろぼろの女の子仙都木優麻。彼女の正体は目的のために製造されたクローンらしい。

 

 なんでも、今回の下手人である仙都木阿夜が、脱獄のために用意した存在らしい。

 

 で、今は魂レベルでつながっている使い魔らしい守護者とかいうのを奪われて死にかけていると。

 

 しかも監獄結界という世界中から集められた実力派犯罪者が十人以上解き放たれたうえ、フォンフまで絡んでいると来たもんだ。

 

「……イッセー達を連れてくればよかった」

 

 マジで泣きたい。

 

 なんだこの緊急事態は! 遊びに来たらとんでもないことに巻き込まれたぞ。

 

 本当に一時期のイッセー達に匹敵するトラブル遭遇率。しかも友人が一枚かんでるとかどんな緊急事態だ

 

「お前一回お祓いに行ったらどうだ? 紹介するぞ、神を」

 

「縁起でもないこと言わないでくれ! ……そんなことより、優麻をどうにかできないか?」

 

 確かに、この世界の異形関係の専門家である姫柊ちゃんと煌坂がどっちも顔を青くしている辺り、かなりやばい事態だ。

 

 魂に癒着している存在を無理やり引きはがされれば、下手したら命に係わるのは俺でも理解できる。

 

 理解はできるが……。

 

「今の俺たちは無理だ。専門知識が足りなすぎるから、下手をすると状況が悪化する」

 

「だな。幽世の聖杯(セフィロト・グラール)があればどうにかなるかもしれねえが、交流が本格化してない世界で使えるようなもんじゃねえ」

 

「ですのね。あれ、使用のデメリットが酷過ぎてかなり厳重な封印のもと傷の回復ができる程度にまで制限されてますもの」

 

 グランソードと雪侶の言葉がすべてを物語っている。

 

 聖杯を使えば何とかなるだろうが、間違いなく正式な交流もスタートしてない現状では使用許可をとるのに時間がかかりすぎる。

 

 ましてや行って戻ってくるまでに手遅れになりかねないだろ、コレ。

 

「獅子王機関で学んだことでどうにかならないのかしら。一応応急処置ぐらいは学んでいるんじゃないの?」

 

「無茶言わないでよ。守護者との契約なんていくらなんでも専門外よ。それこそ高位の魔女か専門の魔導医師の力を借りないと無理だわ」

 

 シルシの意見もすげなく却下。まあ、巫女と魔女って真逆の方向性な印象あるからなぁ。

 

 となるとやはり聖杯か? つっても今から連れて行っても間に合うとは思えないし、そもそも許可が下りるのに何日かかることか……。

 

「宮白、そこ左だ」

 

 ん?

 

「なんだ? まさか心当たりがあるのか?」

 

 素早く左に曲がりながら、俺は質問する。

 

 そもそもこの先に何がある? 暁はそれが分かってるから指示したわけだが。

 

「家に帰ってないなら、たぶんあの人はこの先にあるMARの研究所にいるはずだ。……応急処置ぐらいはできるだろ」

 

「あの人? いったい誰のことよ?」

 

 煌坂の疑問ももっともだ。いったい誰なんだ?

 

「……暁深森。俺の母親だ」

 

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