HSDD 転生生徒のケイオスワールド2 卒業生のアザゼルカップ 作:グレン×グレン
獣人たちとの攻防は、かなり一進一退となっていた。
「ああもう! これ、LCOと組んでたって言われてもおかしくないぐらいの数なんだけど!!」
「確かにそうね! 一個中隊ぐらいの戦力が集まってるわよ!!」
銃撃やら爆弾やら接近戦やら、様々な攻撃を捌きながら、シルシ達はしかし善戦していた。
獣人は人間よりはるかに高い身体能力を持っており、純粋な身体能力という意味では魔族の中でも高位に位置する。
だが、雪菜も紗矢華もそんな魔族を倒すために訓練を積んできた実力者。加えて武装も非常に高性能であり、実戦経験も数はともかく高密度のものを積んでいる。
そして、シルシ・ポイニクスは上級悪魔。
上級悪魔としては及第点の実力。だが、その戦闘能力は単独では戦車や攻撃ヘリごとき遊び相手にもならないほどの圧倒的な力を秘めた存在。
低く見積もっても、その戦闘能力は半端な魔族を倒すことができるほどの力を発揮するのだ。
とはいえ、これだけの数が連携で攻めてこられればかなり面倒ではある。
距離をとっての遠距離制圧射撃などで動きを止めながら、ロケットランチャーなどによる砲撃を叩き込んでくるのが実にいやらしい。
「フハハハハ! 獅子王機関の攻魔師といえど、お前たち小娘ではこの程度か! 我らの波状攻撃の前に吹き飛ぶがいい!!」
囚人が勝利を確信したのか高笑いするが、しかしシルシは動じない。
すでに、こちらにとって好都合なことが起きていることに気づいていたからだ。
「ああ、えっと、そこのあなた?」
「フェル・オルトロだ。それで?」
律儀に名前を教えてくれることに感心しながら、シルシは少しだけ考える。
そうだ。兵夜が教えてくれたとあるお笑いを参考に使用。
「志村ー、後ろ後ろー」
「は?」
指をさして後ろを指示され、フェルはナイフを鏡にして後ろを念のため確認する。
灼熱の鳥と溶岩の糸が襲い掛かっていた。
「ぬぉおおおおおお!?」
獣人たちが炎に包まれる中、シルシはそれをなした者たちに視線を向ける。
「一応、お礼を言っておくべきかしら?」
「いらん。貴様らを助けたわけではない」
にべもなく告げられる怜悧な声を放つのは、まるで刃物を連想させる風貌の重大に見える男。
だが、おそらく見かけ通りの年齢ではない。
先程の攻撃を放ったのは、吸血鬼の眷獣。それも貴族クラスの高レベルの代物だ。
それを放つということは、すなわち年齢の方も百は越えているだろう。
少し警戒するが、しかしその男にいた隣の吸血鬼は温和な笑みを浮かべる。
「お初にお目にかかります、姫柊雪菜様に煌坂紗矢華様。そちらの方は存じ上げませんが、獅子王機関の攻魔師の方ですか?」
「い、いえ。彼女はそれとは別の個人的な友人です」
雪菜が戸惑いながらそういうが、シルシはそれに苦笑する。
本来のことを話すとややこしいことになるのだから、相手に勘違いさせておいた方が楽といえば楽なのだ。
とはいえ、深入りするつもりはないのか、その吸血鬼は残っている獣人たちを視線で牽制しながら告げる。
「ヴァトラー様から、「闘ってもつまらなさそうなのは間引いといてヨ」といわれておりますので、もしよろしければこちらで片づけておきましょうか?」
「……姫柊ちゃん。あなたも面倒なのに目をつけられてるのね」
「いえ、目をつけられてるのはあの変態真祖の方なんだけど」
紗矢華がそう訂正するが、しかしあまり問題としては変わらないだろう。
とはいえ、南宮那月の安全を確保するのが最優先の身としては、ここで戦力を分散させたままにしておくのも馬鹿らしい。
しかも、簡単に話を聞いた限りではそのヴァトラーとかいうのが面白がって静観したせいでこの事態が起きた節もあるのだ。
責任を取って少しぐらい相手をしてもらうのも当然といえば当然だろう。
「それじゃあ、お任せしようかしら。……いくわよ、二人とも!!」
「あ、ちょっと待ちなさいよ!!」
「あ、シルシさん待ってください!!」
シルシに引っ張られる形で雪菜と紗矢華も走っていき、すぐに曲がり角を曲がって見えなくなる。
それを不機嫌そうに見ながら、眼付きの悪い吸血鬼―トビアス・ジャガンは舌打ちする。
「なんで俺たちがあんな奴らの尻ぬぐいをしなければならないんだ。キラ、貴様も余計なことを言うな」
「いいじゃないか。どちらにしても、僕らごときをどうにかできないような相手なら、ヴァトラー様の相手をする資格はない」
そういい合いながら、吸血鬼二人は獣人部隊と向き合った。
後ろからの強襲にいったんは混乱状態だった獣人部隊だったが、すでに冷静さを取り戻して戦闘態勢を取り直している。
「チッ! やってくれるな蝙蝠風情が!! そちらがそのつもりならこっちも容赦はしない!!」
その言葉とともに、ただでさえ獣のそれと化したフェルの体がさらに変化する。
「……神獣化か。どうやら少しはできるようだ」
「流石は監獄結界の囚人ということですか。これは試してみる価値がありそうだ」
次の瞬間、激戦が再開された。
さて、まあ集中砲火を喰らったわけなんだが……。
「流石に最上級悪魔候補が、サブマシンガンごときの弾丸を防げなかったら笑い話にもならないんでな」
俺は即座に結界を展開して、その攻撃を無効化する。
ふっふっふ。俺らの世界の悪魔を舐めてもらっては困る。
暁の眷獣の攻撃にすら耐える奴が結構ごろごろいるのが我らが世界の業界。俺とて最上級悪魔に手が届いた男として、それなりの防御力は保有しているのだよ!!
「あらあら。せっかく手に入れた戦力なのにこれは残念ね」
ジリオラはそういうが、口調は全くの余裕だった。
まあ、この戦法の最大の利点は人質作戦にある。
攻撃してくるにしても、相手は操られている被害者なので真っ当な価値観の奴なら攻撃を躊躇するだろう。少なくとも、殺すのを極力させる程度の行動はとるのが過半数だ。
そんなのが抵抗までしてくるのなら、もはや厄介以外の何物でもない。
だが、甘く見てみてもらっては困るな。
俺は即座に機械的な杖を取り出すと、撃ってきている相手に狙いを定める。
「……バン」
そして、一発でヘッドショットを決めた。
「「「………え?」」」
ジリオラはもちろん、暁と藍羽も目が点になってる。
ふむ、とりあえずはちゃんと使えるようだ。
「さて、堅実に一人ずつ減らしていくか」
俺はこっちに攻撃が当たらないのをいいことに、一発ずつ正確に狙いをつけて敵を減らしていく。
ヘッドショットは狙いがつけずらかったので、鳩尾に狙いを定める。これなら外しても高確率で体のどこかに命中するはずだ。
よし、また当たった。まだテストもあまりしてないけど、なかなか使えるな、コレ。
「いや、ちょっと待ちなさい!! 彼らは私が操っているだけよ!!」
「お前ちょっと待て! いくら状況がやばいからって、それはないだろ!!」
ジリオラと一緒に暁まで慌ててるが、何がどうしたというのだ。
なんかよくわからず首をかしげると、アスタルテが眷獣で藍羽達をガードしながら、静かに倒れている人を観察した。
「質問。攻撃をもらったアイランドガードに負傷が見当たりません。おそらく誰も状況を理解できていないので、説明をお願いします」
あ。
「いっけね。またうっかり」
「うっかりじゃねえ! 心臓に悪い!!」
「あの宮白さん? 本当にいい加減にしてくれない?」
うわぁ怒られる!!
と、とりあえず種だけ説明しないと!!
「ヴぃ、ヴィヴィ達の世界の魔法技術ってさ、純粋魔力攻撃設定ってのがあって、肉体的なダメージをほぼゼロにできる攻撃方法が存在するだよ。で、これは時空管理局のデバイスをツテでもらってきたんだ。だから大丈夫大丈夫死なない死なない」
「そういうことは先に言え!!」
悪かった暁。ついうっかり。
「だ、だからって普通操られてる人たちを躊躇なく撃つ?」
「ごめんなさい。この人あなたたちとは別の意味で問題だらけなのよ」
コラそこ藍羽。ジリオラと仲良くなるな。
まあ、この調子でいけばアイランドガードは十分ぐらいで無力化できるな。
さて、ジリオラの方は―
「暁、露払いは任せろ。……嫁をいじめたビッチをぶんなぐって来い」
「……いや、その発言はおかしい」
ツッコミが飛んできたが、それはそれとして暁は結界から飛び出て突っ込んでいく。
「これを忘れてないかしら、毒針たち《アグイホン》!」
ジリオラは当然蜂の眷獣をだして攻撃を行うが、しかし忘れているのはお前の方だ。
「スーパー雪侶ビーム!!」
「お前はいつもマイペースだなぁ」
俺たちはほかにもいるのだよ!!
かろうじて追いついた雪侶とグランソードの攻撃が、眷獣を弾き飛ばす。
そして、暁は一気にジリオラへと接近する。
「覚悟しな。浅葱と那月ちゃんとアスタルテの礼はさせてもらう!!」
「できるのかしら? あなたの眷獣じゃあ、このあたり一帯が灰燼と帰すわよ?」
そう。暁の眷獣は市街戦には涙が出るほど向いていない。
例えるなら、人ひとり倒すのに爆撃機を投入するようなもの。確実性は高いが、余計な被害がでかすぎる。
そんなものを自分の住んでいる街で平然と使えるほど、暁は非常識じゃない。
それが読めているから、ジリオラはまだ余裕がある。
精神支配の眷獣らしき鞭を振るい、隙をついて暁を制御しようとして―
「なめんな!!」
アッパーが、ジリオラの顔面に叩き込まれた。
「なっ!?」
そのまま浮き上がったジリオラの体に、暁は体を半回転させながら勢いよく蹴りを叩き込む。
骨が折れる音が響いて、そのままジリオラはコンクリートにたたきつけられた。
うん、死んだんじゃね?
「な、吸血鬼が、格闘……戦?」
口から血を流しながら、ジリオラがそうつぶやいて気絶する。
とたんに条件を満たしたのか、鎖がどこからともなく飛び出て、虚空にジリオラを吸い込んでいった。
「……サンキューな、ノーヴェ」
暁がそう感謝の言葉を漏らす。
ああ、ノーヴェ。お前やっぱりすごいよ。
言ったとおりだ。まさにドンピシャ。
ヴァトラーの思惑もあり、いろいろと乱戦じみたことになってきた南宮那月争奪戦。
そして暁はストライクアーツを(すこし)習得した! 街中でもある程度戦闘ができるようになった!!
これで原作よりも少しだけ強化された暁。だがフォンフ・アーチャーもフォンフ・ランサーもむちゃくちゃ強いからこの程度じゃ焼け石に水だぜ(ヤケクソ
因みに、ネギまの設定を思い返していたら暁にふさわしいアーティファクトを思いついた。だけど―
兵夜がした場合:男同士のキスとか誰得だよ
久遠がした場合:兵夜が死ぬ!!
……どうしたもんか。