HSDD 転生生徒のケイオスワールド2 卒業生のアザゼルカップ 作:グレン×グレン
クロスオーバーとはどういうものかの、ちょっとした実験作とも言えます。
Other Side
その手甲を見た瞬間、アインハルトの中で何かが燃えるのがわかった。
ジークリンデ・エレミア。その名前を知った時に気が付くべきだった。
そう、彼女はエレミアの末裔なのだ。
昔の自分だったなら、激情に任せて感情のままに殴りかかっていたかもしれない。
だが、あの戦いでの言葉が自分を押し止める。
そうだ。自分はクラウスの記憶を継承しているが、クラウスではない。
そして、彼女も自分が知るエレミアではない。
少なくとも、今のアインハルト・ストラトスならそれを理解できる。
ゆえに、アインハルトは動揺こそしたが冷静だった。
「……もしよろしければ、このあとお話をさせてもらってもよろしいでしょうか?」
「ん? よくわからへんけど、別にいいよ?」
ジークリンデはあっさり了承すると、そして一気に殴り掛かった。
「でも、先ずは試合をしてからな?」
「わかっています」
Side Out
「……ふむ、どうやら心配は無用だったか」
思わず立ち上がりかけたアルサムが、すぐに席に戻る。
「っていうか、ハイディどうしたんだ? なんか一瞬様子がおかしかったんだが」
本当に一体何があった?
チャンピオンと面識があるなんて話は聞いてないが……。
「先程から話を聞いていて気になってましたが……」
と、そこでお嬢様風の少女が俺たちに視線を向ける。
「もしかしてアインハルト選手は、ベルカ王族の末裔か何かでしょうか?」
「……たしか、覇王イングヴァルドの記憶継承者と伺っております」
シェンが躊躇い君にそう答えると、何人かが何かに気づいたようだ。
「あれ? ってことはあいつが噂の覇王か?」
「知ってるの?」
「いや、何か月か前に、格闘競技の実力者に勝負を吹っ掛ける覇王を名乗ってる女がいたって話があったんだよ」
……ハイディ、何してんの。
「そ、その覇王が当人かはともかくとして、彼女がベルカ王族の記憶継承者なのは本人から聞いてるが、それが?」
俺はとりあえず話を変えるために会話を変えるが、しかしこれはまた不思議な話だ。
「……古代ベルカの流派などは、元を正すとかなり近しい関係にあることが多いのです」
と、答えるのはお嬢様風の女の子の方だった。
「ジークの流派はエレミア。黒のエレミアと呼ばれた彼女は、聖王家とも関わりがあったと聞いています」
ほほう。これは歴史の深いところを聞いてる気がしてきたぞ。
「どこも世界は広いのか狭いのかわからないわね。というより、初代覇王はエレミアに嫌な目にでも遭わされたのかしら」
「とはいえ、それは過去の怨恨だろう。当代同士が恨みつらみをぶつける必要もないはずだな」
シルシの感想に、アルサムは超正論を叩き付ける。
まあ、それに関しては全面的に同意だがな。
だが、それだけで終わるほどアルサムもどうしようもない男ではない。
「……何より、
そして、その言葉を裏付けるように、ハイディは初のクリーンヒットをチャンピオンに叩き付ける。
……攻撃を読み切ったうえでのカウンター。どうやら、ヴィヴィ達が全面協力した上での結果のようだな。
やるじゃないか、ハイディ。お前、やっぱり強いよ。
「……まずいな」
「ええ、まずいですわね……」
が、隣の少女たちは何故かすごくヤバ気な表情を浮かべていた。
「ど、どうしたんスかリーダー?」
「何がまずいんですか?」
と、取り巻きっぽい女の子達が戸惑う中、俺達はその理由を速攻で理解した。
チャンピオンの、ジークリンデ・エレミアの気配が明らかに変わった。
今までの試合を楽しんでいたような気配から、俺達が良く知っている気配に代わる。
相手を殺すことを前提としているといっても過言ではない、殺し合いの空気。
おい、これは競技試合で出していい気配じゃないだろう。
「……そこの二人! どういうことだこれは!!」
「エレミアの神髄です」
お嬢様が、俺の質問を通り越した詰問に対して警戒心を強めながら言葉を紡ぐ。
「アインハルト選手と同じく、ジークもまた記憶継承者です」
なに? 記憶継承者って意外と多いのか?
だが、その問題はそこではなかった。
「ジークの場合は、過去のエレミアの戦闘経験のみを500年分継承しています。……そして、それによる本能的な戦闘状態がエレミアの神髄」
……500年だと?
それほどまでの戦闘経験。確かに強いわけだ。
だがちょっと待て。そんな本能的な戦闘状態ってことは、実戦前提だよな、オイ。
それも、おそらく殺し合いの……っ!?
「まずいわよ、兵夜さん!!」
シルシが叫ぶ中、試合は一方的な展開になっていた。
これまでとは全く違う容赦のない動きに、ハイディはあっさりと連続攻撃を喰らって動きを止める。
まずい、あれじゃあ動けてもすぐにはまともな戦闘なんて―
「あのバカ! 動けない相手にあんなの喰らわせたらっ!?」
オイちょっと待て、流石にあれマズイ!!
「………手間のかかる奴だ」
その時、ものすごい殺気が一瞬で放たれた。
Other Side
その莫大な殺気は、わかるものならわかる絶妙なレベルで放たれた。
一般人と競技選手が大半を占めるDSAAの会場ではわかるものは少なかったが、ごく一部のわかるものは明確に反応した。
こと、その向けられた先であるジークリンデと、その直近にいたアインハルトは心臓が止まるほどの衝撃だった。
それに対してかろうじて反応できたのは、アインハルトの方が先だった。
本能的に動いていた上に、殺気の対象者であるジークリンデは攻撃の矛先をとっさに殺気を差し向けた相手であるアルサムへと一瞬向けたのも大きい。
ごく僅かとはいえ、その肉体に味わう形で殺気に慣れていたアインハルトにとって、その決定的な隙は好機でしかなかった。
だが、どうする?
既に肉体のダメージはかなり大きく、ティオのサポートにも限度がある。
おそらく、本当に攻撃する気がないアルサムの殺気の本意に気づいて、ジークリンデが攻撃の矛先を戻すのも一瞬。
その一瞬で、相手を倒さなければただでは済まない。
そして、自身の最大の奥義である覇王断空拳をもってしてもそれをなせる可能性はおそらく低い。
絶望的な状況にはいまだ変わらず、しかしならばと覚悟を決める。
走馬灯がよぎる中、思い出すのはほんの僅かに練習したあの妙技。
あれを最大限に利用できれば、あるいは。
その可能性は低く、しかしそれ以外に勝ち目はない。
その一瞬で、アインハルトは覚悟を決めた。
発動方法は単純。踏み込みと同時に魔力操作を行うというただ一点。
その一点の踏み込みをもって、我が奥義を極限まで進化させるのみ。
「覇王―」
成功できるのか、などということはもう考えない。
「―断空拳―」
なぜならば、自分はクラウスではなくその後継者。
ならば、
「―改っ!」
彼を超えなければ彼に向けれる顔がない。
そして、その一撃はリングを大破させた。
覇王、異世界技術で進化するの巻。
瞬動術って、運用次第では踏み込みの強化に使えるのではないかと思ったのが今回の発端。そこから最もそれを利用した技を持っているアインハルトの強化に使いました。
クロスオーバー作品で、ほかの作品の技術を使って別の作品の技を強化するってあまり見かけないような気がしたのでやってみました。