HSDD 転生生徒のケイオスワールド2 卒業生のアザゼルカップ   作:グレン×グレン

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謀略準備 ~かつての世界最強

ホワイトハウスの一室で、アメリカ合衆国大統領はため息をついていた。

 

「……冥界は、ある意味でフロンティアだと思わないかね?」

 

 彼が見ているのは、悪魔と堕天使が住まう冥界の土地についての情報。

 

 そこからわかるのは、その土地の大半が手つかずだという事実。

 

 神秘的な力を重視し、かつ絶対的な人口が圧倒的に少ない悪魔と堕天使は、地下資源などをあまり集めていないという事実がある。

 

 資源の残量が危ぶまれる時代において、冥界及び異形の存在はあまりにも甘美な果実すぎる。

 

「いずれ存在が知れれば、人類と異形の間で大規模な争いがおこることは間違いないだろう。そして、それが遅くなれば遅くなるほど、異世界に漁夫の利を取られる可能性がある」

 

「ならば迅速に行動すべき。それに関しては理解しております」

 

 秘書官はそう返答する。

 

 それは決しておだてているわけでも立場上同意するほかないというわけでもない。

 

 彼もまた、米国の未来を憂いているのである。

 

「こと第三次世界大戦の大敗による心象と、フィフス・エリクシルの核攻撃による実情での大打撃は、今後の世界の命運すら左右します。我ら米国が最強の国であり続けることが世界の安定を生むというのに、余計なことをしてくれたものです」

 

 人間界最強の国家の地位を百年近くにわたって守ってきたアメリカは、いまあまりに大打撃を受けていた。

 

 先制攻撃でアフリカ担当の艦隊がまず壊滅。その後世界各国の軍隊とともに派遣した多数の艦隊も大打撃。

 

 第三世界の国家連合という弱小な集まりと高をくくった結果がこれだ。この時点で米国の威信は地に落ちた。

 

 そこに、さらにやってきたのがフィフス・エリクシルによる連続攻撃。

 

 まずは自国の核兵器をあっさりハッキングされて発射されたというのが痛い。

 

 それが直接攻撃で使われなかったことは幸いだが、しかしEMPによる大打撃はあまりにひどかった。

 

 まがいなりにも対策を施してある軍事施設すら大打撃を受けている。これはまだいい。

 

 だが、対策すら行っていない都市インフラは耐えられない。

 

 一度真剣に考えればすぐに気づくだろうが、現代の人間たちの生活は個人から都市にいたるまで、電子機器が当たり前の存在と化している。

 

 それが、いきなりなくなればどうなるかなど一瞬でも思考することすら恐怖することが起きたのだ。

 

 これにより、いまだ大都市の数々は文明レベルが大きく衰退。どこの大都市でもいまだ犯罪発生率は十倍以上に跳ね上がっている。挙句の果てに、その犯罪者の何割かはマーベ○かとツッコミを入れたくなるような特殊能力者であり、警察の殉職率にいたっては数十倍に跳ね上がっている。

 

 世界の警察であるアメリカがその機能を完全に停止させたことは、世界中の国々の暴走を引き起こしかねない。少なくとも大統領と秘書官はそう思っている。

 

 幸いなのは、どこの国も似たようなことになっており、戦争をしている余裕があまりないということだ。

 

 とはいえあまりに大打撃というほかない。怒りに任せて残りの核兵器を全投入したいところだったが、そんなことをすれば後が怖く、しかも発射したミサイルがすべて自国に向かいかねないためそれもできない。

 

 さらにトリプルシックスという虎の子がある以上、残りの艦隊を総動員しても一蹴されるのがオチだ。どうあがいてもクージョー連盟を放置するしかなかった。

 

 幸い、異形たちのしりぬぐいによってクージョー連盟は空中分裂を起こしているが、それでもその爪痕は大きすぎる。

 

 世界大国のほとんどは異能力者による犯罪が多発して国力が低下。クージョー連盟は結局フィフスたちが無理やり従えていたようなものなため大紛争地帯と化しているが、技術力が急激に高くなっていることに変わりはない。ほかの第三世界も、アメリカという抑えがなくなったことで紛争はより増大している。

 

 そんな中、米国にとって幸運だったのは日本がほぼ無傷であったことだ。

 

 日本はアメリカの友好国だ。それも、属国と揶揄されてもおかしくないほどの付き合いである。

 

 さらに国民性ゆえか、他の先進国同様に異能力者が大量発生しているのにもかかわらず犯罪に走るものが大幅に少ない。むしろ平和ボケが核アレルギーによって相殺されたのか、自衛隊や警察の志願数が大幅に増えたという。

 

 かつて艦隊を派遣して護衛していた日本に、逆に増援の警察官が助けにいくほどだ。

 

 数千人規模で生まれた高レベルの能力者たちの存在は、今やアメリカにとっても希望である。

 

 だが、それではいけない。

 

 世界の治安を守る秩序の守護者たるアメリカ合衆国の弱体化は、必然的に世界の混乱を悪化させる。少なくともこの場の者たちはそう信じていた。

 

「今世界に必要なのは、一刻も早く我が国を復活させること。そのためには、冥界の資源は必要不可欠です」

 

「そうだ。しかもだよ補佐官。そのフィフスを始末して英雄扱いされている奴の情報をもう一度見てみたまえ」

 

 そういって投げ捨てるようにデスクに広げられたのは、フィフス・エリクシルと直接退治した四人の少年少女。

 

 日本政府の協力とCIAの意地によって調べ上げられた情報は、できれば信じたくないものだった。

 

広域指定暴力団(ジャパニーズマフィア)の若すぎる幹部と性犯罪者。そしてあのフィフスが所属していたテロリストの幹部だと!? こんな奴らを英雄として讃えるなど、ヴァチカンは気でも狂ったのか!?」

 

「正直、私はキリスト教徒であることを生まれて初めて恥じております、大統領閣下」

 

 お互いに嫌な顔を浮かべている。

 

 テロリストのメンバーとご当地マフィアの幹部待遇。こんなものに超がつくほどの好待遇を与えるなど正気の沙汰ではない。

 

 比較的ましな兵藤一誠も覗きの常習犯。そんなことが知られれば、アメリカの歴史ならよほどのカルトでない限り見切りをつけるレベルだ。

 

 さらに唯一それらの黒い来歴がないリアス・グレモリーにしても、その兵藤一誠を愛しているというし、まったくもって期待ができない。

 

「こんな奴らを、将来我が国を救った英雄としてもてなせと? 我々政治家がそういうスキャンダルを出さないようにどれだけ苦労していると思っている!!」

 

「私も腹立たしいです。年頃の娘を持つ親としては、兵藤一誠という存在には吐き気がしますね」

 

 人間世界でなら信じられないことだ。

 

 犯罪者三人を英雄として祭り上げるなど、正気の沙汰ではない。

 

「先程も言ったが、こんな奴らを英雄とする狂人どもといずれ揉めるのは確実だ。なら、比較的まともなハーデスたち冥府の神々と同盟を結んで立ち向かうのは当然だろう」

 

 大統領はそう結論付ける。

 

 こんな者たちと仲良くやれなどと、この精神的に不安定な状況下で言われれば、間違いなく暴動が百は起きる。

 

 民意で動かされている大半の先進国、その中でも宗教色の比較的薄いこの国なら、間違いなく異形たちとの敵対を決定することになるだろう。

 

 だが、それ以上に危険なのは―

 

「そして、三大勢力の最重要禁則事項とやらの裏はとれたかね?」

 

「……はい。どうやら、主がご崩御されているというのは、ハーデス神の虚言ではなく事実のようです」

 

 そういうと、補佐官はため息をついた。

 

 それに関しては大統領も同意見だ。心から同情する。

 

 つい先ほどキリスト教徒であることを恥じたといった補佐官だが、それでもすぐに信仰を捨てれるわけではない。

 

 一神教において神がすでに死んでいるなど、ショック以外の何物でもない。

 

 これを速攻でばらして天使と悪魔の和平の事実を告げれば、間違いなく人類は三大勢力を敵視する。

 

 神の遺志を無視し、人類の敵と仲良くする裏切り者と糾弾できる。

 

 だが、それも困難なのだ。

 

 いかに宗教色が比較的薄いとはいえ、アメリカ合衆国はキリスト教徒の国といっても過言ではない。

 

 こんな事実が知られれば、この国は確実に終わるのだ。

 

「……ゆえに、戦力は最小限で行くしかない。補佐官。例の件はどうなっている?」

 

「は! すでに元クージョー連盟の技術者は確保しております」

 

 そう告げる補佐官は、すぐに資料を大統領に提示する。

 

 半年もたたずに崩壊したクージョー連盟の本拠地であるアフリカでは、紛争がいくつも生まれていた。

 

 もとよりフィフスに恐喝されていたことが大きな原因のクージョー連盟。それがなくなったことで、アフリカは戦国時代ともいえる状態になっていた。

 

 アメリカという抑え役がいなくなったことにより、紛争は激化。さらにそのストレスで能力者が暴走しクーデターを起こすは、テロ組織になるわと大わらわ。

 

 そして、米国はただ力業だけで挑んだわけではない。

 

 その隙をついてCIAという諜報組織はクージョー連盟の技術者を買収できないかどうか行動を準備していた。

 

 そしてクージョー連盟の崩壊に伴い、より優れた技術を手に入れることにも成功している。

 

 その協力により、多くの兵士が生まれている。

 

 ………彼らを投入するべきだろう。

 

 少なくとも、英雄もどきの犯罪者には消えてもらう。

 

 あんな世界の恥部をのさばらせるなど、アメリカのプライドにかけてできない。

 

「補佐官、兵藤一誠の場所はわかっているな」

 

「はい。現在はグラシャラボラスが購入している島にいるそうです。なんでも上級悪魔の訓練だとか」

 

「好都合だ。サイエンスフォースの準備をしろ」

 

「はっ!」

 

 まずは斥候を派遣し、自分たちの体に彼らの脅威を刻み込もう。

 

 運よく貴族を数人でも殺すことができれば万々歳だ。ハーデスに恩が売れるのだから。

 

「しかし、兵藤一誠も自業自得だな。自国の恥は自国が注ぐのが当然なのだから」

 

「同感ですな、閣下」

 

 

 

 




実は俗っぽい裏の理由もきちんとある人類側。

海が存在しない=陸地が多い=資源を採掘しやすい……という図式により、さらに人口が少ないことによる消費量の少なさも合わさり、うまくすれば国力増大に使えるという皮算用があります。
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