HSDD 転生生徒のケイオスワールド2 卒業生のアザゼルカップ 作:グレン×グレン
スラッシュドッグは好都合でしたね!!
一方そのころ、日本でも対異形の準備が進められていた。
しかも、その本気度はある意味でアメリカを超える。
なにせ、問題とされているフィフス討伐の英雄の内、二人は純日本人なのだ。
ある意味で自国の恥ともいえるあの二人を抹殺するのは、自分たちの責任ともいえる。
とはいえ、全面的に動けるかというとそうでもない。
今回の行動は一部の者たちが動いている結果であり、厳密に言えば国本来の動きではない。
だがしかし、政府側もその過半数が知っていて黙認しているようなものだった。
「……五大宗家の動きはどうなっている?」
その動きを見せるトップである政治家は、秘書に状況を調べている。
「はい。幸い今のところ動きは見られません。どうやらまだ気づいていないようです」
「そうか。最悪の場合は米国に亡命する必要もある。船の準備はしておいてくれ」
そう告げ、その政治家は歩き出すが、しかしそうしたくないというのが実情だった。
なぜなら、五大宗家たちの保有する術式は宝の山だからだ。
その秘術をもってすれば、資源の絶対量が少ないという、この国の発言権を下げる問題点を解決することも不可能ではなかったはずだ。
こと宗教面で異端ともいえるこの国のありかたならば、五大宗家たちの排他的な真似さえなければ、ある意味で異能大国としてアメリカすら超える力を発揮することもできていたはずだ。
にもかかわらず、五大宗家も日本にかかわる異形たちも、その技術を広めようとしなかった。
それに対する不満は強く、自分たちのような軍事的反発組織ができていたほどだ。
それでも、真正面から挑めば返り討ちに合うことを考慮して、今までは静観していた。
だが、それも今日までだ。
「……大臣、よろしいでしょうか?」
その言葉を聞いて、大臣は声を放ったものに振り返る。
「百鬼君か」
「はっ! 特務自衛隊第一師団所属、百鬼天竜一尉であります!!」
敬礼する大尉に鷹揚に頷き、大臣は大事なことを告げる。
「……いいのかね? 追放された身とはいえ、キミは五大宗家の出身だろう」
「それに関しては、すでに覚悟は決まっております」
それは大臣の良心からくる発言だったが、天竜はそう告げる。
「五大宗家は日本を勝手に動かしすぎました。民に選ばれたものが動かす民主主義国家に、彼らのような存在を許しておくわけにはいかないでしょう。これは、好機です」
それはまっすぐな目であり、間違いなく本音であった。
そして、さらに隠された理由もあっさりと天竜は告げる。
「そもそも、我が国の性犯罪者と犯罪組織の者を褒め讃えるなど国の威信にかかわります。そんな者を褒め称える今の五大宗家に、かつての威信はありません」
はっきりと、嫌悪の感情を浮かべていた。
「特に今代の黄龍は、兵藤一誠を慕っているというではありませんか。……もはや一刻の猶予もありません。五代宗家は切り捨てるべきです」
それに関しては大臣も同意見だった。
自国の性犯罪者を英雄として祭り上げる悪魔たち。
最早これだけでいろんな意味で最悪だろう。
だが、しかしそうも言ってられない。
今回の件はあくまで一部の独断によるものでなくてはならない。
少なくとも、本格的な戦闘が勃発した時に勝てなければ、トカゲのしっぽ切りで切り捨てられることは確実だ。その準備には自分も参加している。
ゆえに、自分たちが生き残るためには作戦を成功させるしかないのだ。
少なくとも異形たちの主要人物の首を打ち取ることができれば、それだけで大きな成果になる。それをもってして、自分たちは勝利を手にしよう。
「……話を戻そう。百鬼君、すでに量産は行われているのだね?」
そのための切り札を、自分達は手にしなくてはならない。
そして、その答えは満足のいくものだった。
「むろんです大臣。……こちらへどうぞ」
そして百鬼に連れられ、大臣が目にしたのは壮観な光景だった。
強い意志を秘めた数千人の自衛隊員たち。
彼らはみな、将来異形が存在を公表されるその時まで、存在を秘匿された状態で訓練をし続けねばならない。
むろん、それは五大宗家にもだ。なによりも五大宗家などの民主主義に沿わない者たちに対するカウンターとして、この師団は存在するのだから。
だが、そんな中彼らは腐らずにここまで頑張ってくれた。それが誇らしい。
そして、同じぐらい感動するのは彼らの装備だ。
彼らの半分近くは歩兵だった。
現代においても歩兵は戦争における主力。これをおろそかにする者は戦争に負け、国を蹂躙されるだろう。
その彼らが保有するのは、まるで銃に見える杖だった。
……かつて、空蝉機関という存在がいた。
五代宗家の当時の方針ゆえにはじき出された者たちが、逆襲のために集まった勢力だ。
彼らは、
しかし神滅具の一つの持ち主がいる学校の生徒を実験台に使ったことがきっかけとなり、その計画は露と消えた。
だがしかし、五大宗家から追放されたものは全員が空蝉機関に参加したわけではない。
いずれ、異形の力を国家の繁栄のために使うために。正真正銘政府機関が、異形たちとの国防も行うために。そして何よりあまりに古いがゆえに民主主義であるこの国と相いれない要素を持つ五大宗家をはじめとする異能組織から日本が脱却するために。
政府は、五大宗家の在り方を利用し、そのはぐれ物たちを何人も集めていた。
そして彼らによって異形との戦い方を習得した者たちで編成された自衛隊の特殊部隊。それこそが特務自衛隊。異形たちに対する国家の刃。
同様の組織はアメリカなど一部の国でも保有されている。それは異形たちには秘匿されており、まさに異形たちに対抗するための組織なのだ。
ゆえに表の軍隊よりもはるかに強大な力を保有しながら、しかし第三次世界大戦ではそれゆえに参加することができなかった。
なにせ表の戦争だと思っていたし、大規模に動かせば異形たちに存在を公表するのと同義なのだ。それはあまりに危険だった。
まだ実験段階だったこの組織は、戦力が異形たちと戦うには全く持って足りていないと判断されていたからだ。
だが、その第三次世界大戦がそれを変えた。
そこから漏れた大量の異世界技術。これを最も活かせたのは、その異形たちの対抗戦力を独自に作り出していた国々なのだ。
一気に大量のデータが手に入ったことで、急激な戦力上昇が行われた。
そして、その技術によってついに完成したのだ。
「魔導兵器の開発こそ米国の協力を受けたが、しかしおかげで戦力は大幅に確保出来たな」
「その分ウツセミの技術を持っていかれましたがね。これ、米国との共同開発といってごまかしましたが、堕天使あたりには間違いなくつつかれるのでは?」
「気にすることはないでしょう。ほとんどこちらで開発しましたが、共同開発していたことには間違いないのですから」
大臣と秘書官と天竜はため息をつくが、しかしアメリカの協力は必要だった。
なにせ異形たちの戦闘能力は莫大なのだ。それに対抗するためにはウツセミではそれを動かす本体側の戦闘能力があまり上がらないという欠点がある。
だが、米国が研究していた人造神器のデットコピーである魔導兵装があれば話は別だ。
そして、その成果を見せることもできる。
「総員! ウツセミ展開!!」
その声とともに、空蝉が展開される。
その言葉とともに、隊員たちはいっせいに腕輪を掲げると意識を集中させる。
そして現れる異形たちの姿を見て、大臣は満足げにうなづいた。
「素晴らしい。すでにほかのウツセミも生産体制に入っているのだろう? これは素晴らしいというほかない。」
そして、その声に返答したのは、新たなる存在だった。
「それはナイスだね! できれば私達にももっと技術を提供してほしいけど、それが難しいのがバッドだよ!!」
その言葉とともに姿を現すのは、金のメッシュを雷のような形に入れた茶髪の女性。
その女性を姿を見て、百鬼は少しだけ目を開いた。
「来ていたのか、ウッドフィールド博士」
「もちろん! 日本の対異形技術の最先端を、ぜひ本場で見てみたかったからね!!」
そう答えるウッドフィールドと呼ばれた女性は、USBメモリを投げて渡す。
「いいものを見せてもらったからお返しだよ。それが、能力者開発のためのアプローチ方法だ。もちろん、第三次世界大戦で流出したのとは全く別のアプローチで、それで効果を発揮する可能性が高い人間を選別する調査技術も込みでプレゼントだよ」
その言葉に、大臣は目を見開いた。
「そ、それは良いのかね!? 合衆国にあとで文句を言われたら困るのだが!?」
うれしい半分恐ろしいともいえる。
高位能力者。……それも超能力の域になった者は神滅具とも真正面から戦える。それは事情を知るどの国もが欲するものだ。
なにせ、神器との併用で疑似的に到達したものが、ルール上いくつかの手札を封印していたとはいえ歴代最優とまで称された兵藤一誠を一対一で押していたのだ。
そして、同時に、低レベルの能力者の存在はあまり役に立たないといってもいい。
由来する異世界の魔術に対する拒否反応が出てくることが最大の理由だ。それらもまた効果があることを考えると、莫大なコストをかけたうえで成果が出ませんでしたなどという悪夢になりかねない。
……それを、確実にとは言わないがある程度あたりをつけることができる。
そんな技術を不用意に渡せば、もらった自分たちはアメリカの怒りを買うことになりかねない。
……だが、ウッドフィールドはからからと笑うと大臣の肩をたたいた。
「心配する必要はナッシングだよ! それはあくまで一つのアプローチだからね。能力者開発の方法はかなり多岐にわたるし、私が知っている範囲内である他の方法は本国にプレゼントしているさ!!」
なら、まあいいのだろう。
自分たち日本は、属国に近い友好国だ。第三次世界大戦及び五の動乱における影響の差からパワーバランスはだいぶ対等になっているが、だからといって自衛隊とアメリカ軍で戦争を起こしたくはない。
もとより、日本という国の特異性をもってすれば異能技術は大量に手に入りやすいのだ。ならばアメリカの機嫌を損ねてまで、能力者を大量生産する必要はない。
必要はない……が。
「しかし、これはいい戦力を獲得できた。礼を言おう」
「お構いなく! 能力者開発競争が生まれてくれた方が、こっちとしても研究費用を引っ張り込めるからね!!」
なるほど、そういうことか。
そう言われれば、苦笑はするが納得するほかない。
なにせ、こういうのは競争原理が働いた方が発展するものなのだから。
「……まあいいが。君は一体何を考えてるんだ?」
それが知りたい。
目を見た瞬間に、天竜は察した。
彼女は、別にアメリカの未来など考えていない。
それなら、もっと平和的に三大勢力と協力した方が研究が進むのではないだろうか?
その質問に対して、ウッドフィールドは笑みを浮かべた。
その笑みをみて、天竜も大臣も秘書官も戦慄する。
「いや、彼らはたぶん積極的に研究しないと思ってね」
それは、科学者の笑みだった。
「今の世界で、一番能力者開発の研究に金を出したがるのは、アメリカ合衆国だと思っただけだよ」
それは、宮白兵夜が見たらこう評価することだろう。
「……目的のために手段を選ばない。それが
スラッシュドッグによってわかる日本がらみの設定は、今回の特殊自衛隊を作るにあたって非常に好都合でした。
事日本の戦力としてウツセミを用意できたのは、独自色を強くすることができて万々歳です。これは非常に都合がよかった。
それはそれとして能力者研究を行うウッドフィールド……まあ、こいつが誰かなんて禁書知ってる人ならすぐにわかるか。